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第25話 結局心配になってしまった

結局仲間を見捨てられない主人公。

 魔力の気配を追った俺は、森の木々の先に炎がか細く揺らめているのが見えた。

 か細く、今にも消えてしまいそうな小さな火だ。

 それは良い香りがして、だけど炎の火力がいつも以上にないのが気がかりだ。


「この先は……はっ!」


 俺は布で顔を覆った。目の前には沼がある。間違いないのはそれがただの沼ではなく、何処までも深く何処までも人を飲み込む。大口の沼だ。


「フレア!」

「た、助けて。この沼、底がない……のっ」

「わかっている。お前は良くやった。近道をして俺に追いつこうとしたんだな。お前なりに依頼品を探していたんだろ」


 フレアの手には紫の花が握られている。

 依頼品の1つ、毒鱗粉のスイレン華だ。毒沼にしか咲かないとされるそのアイテムをフレアは必死に1人で採取しようとしていた。

 それが仇となった。俺に無理をさせないように、実は一番仲間の前に立とうとしているのはいつもいつも後方支援ばかりやらされているフレア何だ。

 何故なら、アイツは……


「1人で無理してるんじゃねえよ。おい!」

「くはっ! はぁはぁはぁはぁ……はぁはぁ……はぁ、あり、がと、う……」


 俺はフレアを引き上げた。

 全身ドロドロになっている。今まで杖を使って必死に浮力を確保していたんだ。

 しかし間一髪だった。あと一歩、あと一歩遅かったらフレアは沈んでいたと思う。

 確証はないがあれは死のニオイだった。


「無理しすぎるな。お前にはお前なりの戦い方がある。戦略を変えろ」

「そうね。ごめん」

「謝るな。お前のためにアドバイスだ。お前は……前に出て一発で仕留めろ」


 それが今のフレアの戦い方になったのは言うまでもない。

 俺がアイツから好かれるようになったのも、それからだ。

 知らんけど。


 *


 俺は鉱山の奥を目指していた。

 すると視線の先に見えてきたのは、モンスターと戦闘しているエクレアの姿だった。

 背後からコボルトが1匹襲い掛かる。

 俺は反応が鈍ったエクレアの代わりに、背後から迫ったコボルトを切り伏せる。


「そりゃぁ!」

「カイ君!」


 俺はコボルト倒し、次のコボルトに狙いを定める。

 指先に伝わるのはコボルトを切った感触。

 続けざまに身を屈めて近づくと、剣で切り裂いた。


「おんどりゃぁ!」

「か、カイ君どうして。帰ったんじゃないの!」


 エクレアは俺の顔を見るや否や、瞬きをして確かめる。

 俺のことを幽霊とでも勘違いしているのか、心外だな。

 だが俺も俺だ。大概仲間を放って置けないらしい。


「仲間を放って逃げるような性格じゃないんでな。とっとと片付けるぞ!」

「はぁっ! うん」


 エクレアは大きく頷いた。

 すると太陽の聖剣を振りかざし、高らかに光を放つ。《黄昏の陽射し》を発動したのか、鉱山の坑道内部が急に眩しくて明るくなる。

 太陽の聖剣が輝いて、コボルトを真っ二つにする。

 俺もエクレアに負けじと背後を取ると、素早く剣を振り下ろした。コボルトが同時に2匹息絶えた。

 魔石に変わって、坑道内部に転がる。俺は拾い上げると鞄の中に突っ込んだ。


「さてと、これでひとまず危機は去ったな」

「カイ君、私のこと助けに来てくれたんだね」

「勘違いするな。俺は俺が信じることをしただけだ。間違ってはいない……決してな」


 嘘が下手なのかもしれない。俺は自分でそう思った。

 エクレアはプッと笑いだし、俺に笑みを浮かべる。そんなに嬉しかったのか。

 確かに俺は命を救った。だがそれは仲間だから。それ以外に理由はない。そもそも要らない。


「とにかくだ。俺も先に行くから無理はするな。お前は前に出るよりも、誰かと隣の方が分散される」

「誰かって?」

「今は俺がそのポジションだ。だがら何も気にするな。1人で前に立つのは止めだ」


 俺は自分の思うところを口にした。

 するとエクレアはまたしてもニカッと笑みを零して、俺の隣を歩いた。

 狭い坑道なんだ。少しは離れて欲しかった。

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