三十四話:学生たちの実習訓練 その4(ミホ)
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うちは凄くワクワクしていた。この世界に降り立ってから、人とまともに関わったのは数える程しかない。それが今こうして、馬車に乗って自分と同じくらいの年齢の人たちと実習訓練という名の修学旅行をするのだ。興奮しないわけがない。
テイマーのジュンやイナハの言葉が気に障って、ここ一年ジークフリートと色々な場所を旅しながらみっちりと修行に付き合ってもらった。お陰で、見聞を広めつつもドラゴン装備の力をモノにして、ある程度の魔法も扱えるようになった。変身魔法に至っては完璧だ。元の自分の姿を寸分違わず再現できるし、山のように大きい魔物からミリ単位の昆虫にも変身できる。
今の姿は、生前の自分で、そこら辺にいる町娘風の格好だ。少し頼りなく見えてしまうが、普通の少女を演出するには都合がいい。
そうこうしているうちに、うちと一緒に旅をする学生たちが馬車に上がって来た。全員女だが、うち二人は普通の人間では無い。
一人目は背が高い。明るい緑で真っすぐ綺麗な長髪に、長く細いシュッとした耳が特徴のエルフだ。おっとりした雰囲気を感じ、とにかく胸が大きい。思わず凝視し、自分の胸を見下ろしてしまう。あるにはあるが、足元が見えるくらい小さい。
・・・羨ましい。
もう一人は、身長が小学生くらいしかなく、赤い髪と綺麗な宝石の緋色の瞳を持つ、いわゆるドワーフだ。ただ、服の上からでも分かる大人びた体型と、体型にそぐわないほど大きな胸に、うちは唖然とした。
思わず近づいて触り、その柔らかくもちっとした女の象徴に、自分の胸を揉んで比べて、溜息を吐いた。
・・・大きさも形も、触り心地も完璧や。
うちは彼女にポンと片手を置いて言った。
「ええ乳しとるな。完敗や」
「・・・そ、そうかい」
ドワーフの彼女は引いているが気にしない。他の三人も苦笑気味だ。
仕切り直す為、一歩離れてうちから自己紹介する。
「うちはミホ。こう見えて変身魔法を使ってる人間や。ほれ、こんな感じで本当の姿はまさにドラゴンや」
変身を解いてドラゴン装備を披露する。
手足は鋭い爪があり、膝や肘まで鱗で覆われている。背中にはドラゴンの立派な翼、尻には自在に動く太くて逞しい尻尾がある。体は赤い鱗に覆われたハイネックビキニスタイルで脱ぐことは不可能だ。露出は少なめだがお臍が見えていたり太腿が見えていたりして、同性以外や公然の場でこの姿を晒すには少し勇気がいる。鏡が無いと自分で確認できないが、瞳はドラゴンと同じになっていて、耳も同じで角も生えている。歯もしっかりと牙となっていて、鉱石すら嚙み砕ける。
その姿に四人は驚いたが、驚きつつも好奇心が勝ってしまったのか近づいて囲まれ、触られる。
「ねぇ、この翼本物なの?」
「モノホンやで」
感覚もあるのでちとくすぐったい。
「この尻尾は? あっ、イイ触り心地」
「ちょっ、抱き着くなああっ、んっ!」
思わず声が漏れて、怪我をさせないように細心の注意を払いつつ尻尾を動かす。
「あ、ごめん。もしかしてそういう感覚あるの?」
「・・・せやで。だから、尻尾は不用意に触られるのは勘弁な」
「分かった。じゃあこの足を・・・おお、鱗でスベスベ」
「胸の部分もいい。触り心地と、胸の柔らかさが堪らないわぁ」
「角も凄くいいよ・・・病みつきになりそう」
サワサワ、サワサワ、四人に人形のように触られまくる。くすぐったいので、体をよじって後ろに下がって強制的に止めさせた。
「ああ、スベスベ・・・」
「胸・・・」
「角・・・」
「翼・・・」
四者名残惜しそうに手を前に出して異なる嘆きを口にするが、知らん。
「お触りは一旦終わりや。ほれ、自己紹介」
四人は仕方ないと一息吐き、気持ちを切り替えて自己紹介を始めた。
「私はサレナ。見ての通りエルフです。エルフの神、エルティナに使える神官で、聖騎士を志望しています」
「私はドワーフのルージュ。鍛冶師志望で、学園には剣の研究をする為に入った。あとは婿を探しにも来た」
「私はリリー。魔術師を志望しています。あの、あとで胸を触らせて貰ってもいいですか?」
両手を前に出してワキワキ動かす。うちは胸を隠すようにして返す。
「今はあかん」
「そう・・・」
リリーは手を下ろした。残念がる様子は無い。トンガリ帽子とローブが似合う彼女は、手を出した時に見えた胸が私より大きかった。身長は同じくらいなのに。
「最後になりましたが、私が第四班のリーダーを務めます、ローズです。お見知りおきを」
被っている羽根つきハットを手に取って恭しく挨拶してみせる。一丁前に男らしいキリッとした化粧をし、おまけに男装的な格好から、この世界の宝塚的な人だという印象を抱いた。ただ胸はしっかりと女性を強調しており、胸の部分がぱつぱつだ。
「じゃあよろしくな。それでリーダーのローズさんや、うちらの班は何をするんや?」
「私たちの班はここから湖岸沿いに北西へ向けて馬車で半日ほどにある湿地帯に出向き、繁殖時期で数が増えたレイクンド湖固有種の大ガエル、レイクンドガエルの討伐です。丸呑みされたりしますが、複数人で戦えば死ぬことは無いですけど・・・正直、戦いたくは無いですね」
説明されて嫌だなと思ったが、それを行う四人はうち以上に嫌そうであった。
「・・・まぁ、ここで止まっていても仕方ありませんので、さっさと行きましょうか。まずは私が御者をやりますね」
気持ちを切り替えたリーダーのローズが率先して初めの御者を担当し、馬車が動き始めた。カタカタユラユラ、初めての馬車にうちは楽しかった。サレナ、ルージュ、リリーはそれぞれアイテム袋からクッションを取り出して座っている。
馬車用のクッションか。帰ったら買おう・・・。
そう思いつつ、姿を晒したままなのを利用して自分の尻尾をクッション代わりに敷いて座る。ドラゴン装備のお陰で直でも痛くないのだが、尻尾のしっとりもっちりした座り心地は、これはこれで凄くいい。三人から羨望の眼差しを向けられるが、これはあげん。
天気も良く、このままいい旅になると思っていたが、一つ大誤算があった。
「オロロロロ・・・うええぇぇ・・・」
馬車に揺られて暫く、うちは見事に酔って、馬車を止めさせて近くの茂みで盛大に吐いていた。リリーに背中をさすられて介抱されている。
・・・なんでや、なんでドラゴン装備に酔い止め防止機能がないん?
自問するが、そもそもドラゴンが馬車に乗る必要が無いから備わっていないという答えにすぐ行きついてしまい、呪いのチート装備も万能ではないと改めて理解した。
それはそれとして、吐き気は収まらない。
「オロロ・・・うえぇぇぇ・・・」
あらかた吐き終えると、リリーが磨り潰した薬草を丸めて固めたものを差し出して来た。
「これ飲んでください。胃薬を兼ねた酔い止め薬です」
うちは首を横に振る。
「あー・・・有り難いけど、それは貰えんわ」
「なんでですか?」
「うち、毒とか薬の類とか、全く効かんのや。この吐き気だって、あと少しすれば自然治癒するから」
そういっている間に、吐き気は治まって治癒が始まった。胃のムカムカも消えていき、残ったのは口の中の胃酸の嫌な味だけだ。だがそれすらも治癒の対象として消えていく。
「・・・おし、治った」
「ええ、本当ですか?」
「おう、ほんまや」
立ち上がって笑ってみせる。出した分だけ腹は減ったが、既に気分は晴れやかだ。
ぐうう~、と腹が鳴ってしまう。それを聞いたリリーはぽかんとしたが、すぐにくすりと笑った。
「・・・じゃあ、干し肉食べますか」
「いただくわ」
出された干し肉を貰って齧りつつ、馬車から見届けていたローズとルージュとサレナに向かって手を振ってやる。三人はほっとした表情を浮かべた。
「じゃあリリー、うち飛んで空から見守るから、なんかあったら適当に合図してや」
「えっ・・・」
返事を待たずに飛び立ち、大声を出さないと届かない高さから見下ろす。いい天気で向かう先の天候も良好だ。周辺に危険な魔物もいない。
御者をしているローズが見上げ、うちと目が合うと正面に向き直って馬車を動かし始めた。うちは適当に心地よく飛び回りながら付いて行く。危険な魔物が来た時だけ、その時に御者をしている人に伝え、他の馬車とすれ違う時は認識阻害の魔法を掛けてやり過ごした。
休憩時は仲良く一緒に休憩し、その時だけうちは四人からサワサワされまくった。次の休憩の時には順番が決まって一人ずつ堪能するくらいに、うちのドラゴン装備は触り心地が良いらしい。
数回の休憩を繰り返して中継所で食事を摂り、また数回の休憩を繰り返して日が暮れる前に沼の傍の村に到着した。
降り立って町娘風の姿に変身すると、リリーが村の説明をしてくれた。
「ここはカエル村、特産は固有種のレイクンドガエルの肉、肝、皮、骨で、食用から道具、薬に使われて、捨てる所がありません。村が湿地を管理し、国家の保護を受けて生計を立てています。カエルを狩猟する際は村人から許可を貰わないと密漁扱いになりますので、御注意を」
「へえ、詳しいんやな」
「ええ、子供の頃に観光に来て、一度カエルに丸呑みされましたから。フフフ・・・」
リリーは乾いた笑いをするが、子供の頃にそんな経験をすればゾッとするし、忘れらない。笑えるだけ凄いと思う。
「こっちに宿泊施設がありますので、付いて来て下さい」
気持ちを切り替えたリリーを先頭に向かった先には、立派な宿屋があった。他の住居に比べるとかなり立派だ。国から保護されているから、補助金でも貰って建てられたのかもしれない。
中に入ると、冒険者の宿に酷似した作りをしていた。テーブルがあり、何人かの冒険者らしい男や女が座って食事をしている。給仕のウェイトレスが食べ終わった皿を片付けたりしていて、奥のカウンターには店主らしき壮年の男性が丁度一息ついていた所だった。
リリーがその人に声を掛けた。
「どうも、こんにちは」
「おう。ん? ああ、もしかしてリリーちゃんか?」
「あっ、はい。覚えていてくれたんですね」
「そりゃあお前、観光に来た貴族の娘がカエルに食べられたって事件、珍しくて忘れたくても忘れられんよ」
「あう・・・できれば忘れて欲しいんですけど」
「ムリムリ。ところで、若者たちでだけで、何しにこんなところへ?」
「えっと、王立騎士魔術学園から実習訓練でカエルの狩猟に参りました。本日はここに泊めて貰いたいのですが、大丈夫ですか?」
「ああ、そういう話は少し前に来ていたな。問題ない。先に料金は貰っているし、カエルの狩猟許可も学園側で取っている。もう遅いから、明日村長に挨拶して行くといい。食事はもうすぐ締め切るから、すぐに降りて来てくれ。部屋は大部屋で取ってある。そっちの階段を上がって一番奥の部屋だ」
店主が部屋の鍵をリリーに渡した。骨を研磨して滑らかにしたものを鎖で鍵と繋げている。ホテルの鍵みたいだ。
「はい、ではお世話になります」
全員一礼して階段を上がって奥の部屋に行く。随分と綺麗な部屋でベッドが丁度五つもあり、小さな本棚に化粧台もある。うちはベッドに軽くダイブした。フカフカだ。今夜はぐっすりと眠れそうだ。
「ミホさん、食事に行きますよ」
「ん、せやった」
ローズに言われて起き上がり、下に降りる。空いているテーブルに座ると、ウェイトレスがメニュー表を手前に座っていたサレナに渡した。
「うーん・・・色々ありますね。私は野菜定食とサラダと、水で」
メニュー表は回されて次はルージュが注文する。
「・・・うん、私は焼肉定食を大盛りで。あとはオススメのカエル肉の揚げ物と、エールを樽で」
樽で!?
驚く中、メニュー表はリリーに回る。
「私はカエル肉定食と、エールで」
流石にうちは反応した。
「リリー、カエル、大丈夫なんか?」
「ええ、食べられたことは嫌な思い出ですが、ここのカエル肉は美味しいんですよ」
肝が据わっているとはこのことか、と思ったうちにメニュー表が回って来た。
メニューを開けば、現代のファミレスと大差ない数の品が書かれている。
「・・・じゃあ、うちもカエル肉定食。あと、エール」
注文を終えてローズにメニューを回す。
ローズはペラペラとめくった後、メニュー表を返しながら注文した。
「焼肉定食と具沢山シチュー、赤ワインを貰えるかな。注文は以上です」
ウェイトレスはローズに見惚れながら頷き、店主に注文表を渡した。店主はそれを見て料理を作り始めた。何年もの経験の成せる業か、てきぱきと素早く動いて料理が出来た。
まず持ってきたのはサレナの野菜定食とサラダと水だ。生野菜のサラダに、色とりどりの野菜が調味料で炒められたシンプルなもので、あとはパンと野菜のスープが付いているだけだ。
次に出来たのはカエル肉定食だ。ぱっと見では鶏肉の野菜炒めにしか見えないメインの他に、野菜のスープとパンが付いている。
次に普通の豚肉の野菜炒めの焼肉定食と、カエル肉の揚げ物、具沢山シチューが運ばれて来た。ルージュの大盛りが、普通の人の倍近くある。
料理が運び終わるといよいよエールが運ばれて来た。キンキンに冷えたエールがジョッキで二つと、霜を帯びた小樽が運ばれて来てドスンとテーブルに置かれた。専用に作られた樽なのか簡易的な蛇口が付いている。最後にウェイトレスがワインとグラスを持ってきて、目の前で栓を素早く開けて丁寧にグラスに注いだ。
食事の準備が整った。そして異世界問わず、万国共通の乾杯に入る。
全員が各々のグラスやジョッキを持ち、リーダーのローズが音頭を取った。
「ではリーダーとして音頭を取らせて貰うよ。明日は狩りの時間だ。危険は少ないとはいえ、カエルに食べられたら恥ずかしい思い出になる。気を抜かないように。乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
グラスを交わし、エールをぐびぐび飲む。元の世界では未成年だが、異世界ならば関係ない。既に亡き父の真似でぐびぐび飲む。美味いが、何かがやはり違う。
はて何が違うんだろうとエールを眺めて考え、ふと思い出した。
ああ、酒の種類が違うんや。確か、スーパードライ?
違う、それは味の表現や。えっと、喉越しで有名な神獣の描かれた、アレ・・・。
ら、ら・・・らー・・・せや、ラガーや!
ラガーは確か、湖のさざなみ亭に、ユウが持ち帰って来て期間限定で売ってた奴や!
思い出したうちは口内で涎が大量に分泌されているのに気付いて、慌てて唾を飲み込む。そして、一刻も早く終わらせてラガービールというものを飲んでみたいと思うようになった。
同時にハッと気づく。
・・・これじゃあうち、おとんと同じやん。
「・・・ハハッ」
つい、笑ってしまう。あれだけ毛嫌いしていた父と同じで、精神的な根本はケダモノと何も変わらない。だがそれが何故か無性に嬉しくもあった。何故かは分からない。人間は須らく獣だと言われれば、今なら納得できる。その一方で否定する自分もいることが認識できる。矛盾するその思いは、自分を形作るうえで掛け替えのないものとなることは理解できた。
・・・もしかして、このドラゴン装備もそういう意図で渡して来たんか、なあ神さんよお?
飲みかけのエールに問い掛けるように見つめた後、うちはそれを一気に飲み干した。美味いが、やはり何かが違う。
今度、誰かを誘ってヘクトル帝国にラガービールを買いに行こうと決めた。
それはそうと、うちは四人に混じって乙女の会話に華を咲かせた。
他愛もない話だ。
ルージュはいい婿が見つからないと酔ってぼやき、サレナに酒を飲ませて潰して、自分も潰れて寝てしまった。リリーは酔って笑いながら昔話を繰り返し、眠いからと部屋に向かったきり戻ってこない。サレナはルージュの酒に付き合わされて潰れてしまっている。後で運んでやるつもりだ。そんな三人をローズは仮面のように笑顔を張り付けて見守っていた。
うちはエールを何杯かお替りしたが、ドラゴン装備のせいで酔うことはできず、気付けばローズとサシになっていた。
ローズ自身は既にワインを一瓶開けているが、酔っている様子が全くない。
そんな彼女が、今この瞬間にその笑顔を止めて真顔になった。
「質問、していいかな?」
落ち着きを越えて冷淡とさえ思える口調に、うちは少し動揺しつつもそれを表に出さずに答えた。
「・・・聞くだけ聞くわ。答えられんもんは、答えんで」
「それでいいよ」
ローズはウェイトレスを呼びつけ、ワインをもう一瓶、グラスを一つ追加で注文した。
うちもローズも見つめ合ったまま時間は過ぎ、ウェイトレスがワインとグラスを手に戻って来た。ローズの誘導でうちもグラスを持ち、ワインが注がれる。
ローズの分が注がれ、ワインがテーブルに置かれてウェイトレスが離れたところでローズが口を開いた。
「君は普通じゃない。僕たちと違って特別な存在、違うかい?」
見つめるその目は確信を持っている。そして言い方が広義的で、強く否定できないことに気付いたうちは言い返すことも憚られて沈黙を選んだ。
ローズは続けて問い掛けて来る。
「君は神様に選ばれた存在だろう? 僕たち駒と違って、ちゃんとした役割が与えられている。そうだろう?」
「いや、違う・・・と思う」
強く否定できない。魔王討伐のことや、これからの生活を思うと、何かしら役割を持たされている気がするからだ。
「でも」
と口にする。
「うちは自分の足で、道を歩きたいと思ってる」
真摯に真っすぐ答えれば、ローズは少しばかり目を伏せ、味わうように呼吸をしてからゆっくりと目を開いた。
「・・・そうか。特別もまた、この世界の一部に過ぎないんだね」
彼女はグラスを掲げた。よく分からないが、彼女の中で何か納得したようだ。
うちもグラスを掲げると彼女は言った。
「この世界の真実に」
ローズがうちを見る。何か言え、と。
「・・・この世界の平穏に」
乾杯し、お互いワインを一気に飲む。この赤ワインは芳醇だが軽く、淡泊な味のカエル肉に合う気がする。
よく分からないが、ローズという目の前にいる女は、何かを探し求めているみたいだ。それが何なのか気にしていると、彼女から話し始めた。
「僕はね、この世界に疑問を抱いているんだ。世界の歴史を読んでみたけれど、まるでタイミングを合わせたように世界で事件が起こるし、不自然な事象も、数年単位で帳尻を合わせるような事象が起こって自然と解決している。一般的にはこれを‘神の手’と呼んでいるけれど、違うと思う。
僕は不自然な事象の始まりに注目している。神様にしてはあまりにも稚拙で、ちっぽけな事を起こしている存在がいると思っている。
例えば、一年前の魔王討伐。あれは賢者が討伐に際して一度偵察に出たという話が報告に上がって貴族の間で出回っているけど、賢者と謂われた傑物が、たった一回の偵察で命を落とすかい?
魔王と接触したところで、魔法で幾らでも防ぐ手段は用意できた筈だ。でもそれが出来ずに命を落とした。おかしくないかい?
ドラゴン娘のミホ、君はあの時、あの場所で何をしていたんだい?
何を知っているんだい?」
連続した問い掛けに、うちは何も言えなかった。あの日あの場所では自分の役目を全うしたとしか答えられないし、そういう詳しい事情はジークフリートやユウ、ソフィアしか知らないだろう。だが、うちはそれを言えなかった。
ローズは気付いていないが、背後に、アジテーターの影が見えていたからだ。あのニヤついた笑顔が、普段よりも猟奇的で、まるで真実を解き明かすなと警告しているみたいだったからだ。
うちは一度大きく深呼吸し、背後の陰の状態のアジテーターを威嚇しながら答えた。
「・・・うちは何も知らへんよ。あの時あの場所で役目を全うしただけや。それとローズ、この世界の真実は探らん方がええで。これは冗談や無くて、忠告や」
「忠告ですか・・・それは、難しいですね」
影が、アジテーターが動いて提げているナイフが引き抜かれた。うちは思わず抑えている力を出してさらに威圧した。持っているグラスが砕けた。片付いていない皿が割れた。宿のガラスが割れ、木の床や壁、テーブルや椅子が軋みを上げた。
流石の彼女も反応し、ぴたりと動きを止めた。うちでも彼女に勝てるか分からないが、やるかやられるかの駆け引きは成立するようだ。
正面から威圧を受けたローズは、割れたグラスを見つめ、全身を震わせている。そしてゆっくりと手を拳に変え、胸に手を当てて深呼吸を繰り返して耐えきった。大した精神力だ。
ウェイトレスと店主、まだ飲んでいた客はこの惨事に遭遇して何事かと呆然としているが、今回は心の中で謝っておく。言ったら彼らの命も危ない。
当の影の状態のアジテーターを見れば、まるで絶頂でもしているかのように自分を抱いて、気が済んだのかナイフを仕舞って消え去った。
気を抜いてもいいと判断したうちは、出した力を抑えて大きく息を吐いた。
・・・やっぱ無理や。あいつには勝てん。
ローズを見ると、落ち着きをもう取り戻した彼女が、自嘲気味に笑って言った。
「・・・それがあなたの力であり、忠告ですか。ですが、諦めませんからね」
彼女は少しふらつきながらも部屋へ上がって行った。うちも潰れているサレナとルージュの二人を背負って上がろうかと考えたが、フロアの惨状を見て、まずは掃除を手伝うことにした。
一通り掃除が終わって店主とウェイトレスから感謝の言葉を貰って気まずくなりながらも二人を背負って部屋に入ると、ローズは穏やかな呼吸で眠っていて、リリーがベッドから落ちた状態で寝ていた。
うちは背負っている二人とリリーを寝かしつけて、自分も寝た。久々のフカフカベッドで、すぐに意識は落ちた。
翌日、うちは早くに目が覚めた。ドラゴン装備の影響で疲労が溜まってもすぐに回復するし、睡眠の質もかなりいい。
それより早くローズが起きていたので、なんとなく声を掛けた。
「おはよう」
「ああ、おはよう」
「なあローズ、あんたなにもんなん?」
人差し指を口に当て、ふと考え出した。今の彼女は、所作の一つ一つが女らしい。
「そうだね・・・強いて言うなら探究者かな。まあ、僕個人は男装好きな貴族の子女の一人ってだけだね」
言われると、ローズの雰囲気的に貴族っぽい気品が何処となくあることが分かる。
「はあ・・・真実を求めるの、そんな楽しいもんなんか?」
正直、自分としてはそんなものは求める気にならない。あのアジテーターを見たら尚更だ。
「うん、僕にとってはね」
眩しい笑顔で返してくれるが、彼女の影にアジテーターが薄っすら見えたうちは、困惑した。そしてこの事態をユウかソフィアに押し付けることに決めた。
「・・・そんなに真実を求めるなら、隠者のユウか賢者のソフィアを尋ねるとええよ。あの二人、そういうの知ってそうやし」
「そうだね。機会があれば訪ねてみるよ」
アジテーターはいなくなった。ほっと胸を撫で下ろしたうちは、とりあえず三人を起こすことに決めた。
村長に挨拶をしてから湿地へ向かった徒歩十数分ほどの距離にあるここは、のどかで景色も良く、綺麗な花が咲く木を植えれば立派な観光地になる地形をしていた。
それはそうと、ゲコゲコ、とレイクンドガエルが鳴いている。そこら中に、手前だけで数十はくだらない。それにとても大きい。全長三メートル以上はある。独特な斑点模様をした皮膚はぬめっとしていて、ドブの臭いがする。
少し遠巻きに見ているうちらはその景色に躊躇していた。うちは手を出さないが、二日酔いの二人を抱えた状態で果たしてカエルの狩猟が出来るだろうか。
否、難しいだろう。リーダーのローズは考えて「いい作戦がある」と言って注目させた。
「いいかい、カエルの集団に突っ込むのは得策じゃあない。集団の端にいるカエルにちょっかいを掛けて、一匹ずつ引き込んで狩る。失敗したら全力で逃げる。これを繰り返して目標の五体を狩る。二日酔いの二人、やれそう?」
「あー、うん、それなら何とか」
「私も、それなら・・・」
ルージュとサレナがなんとかといった風に答え、ローズは満足気に頷いた。
「じゃあ、始めようか。僕が弓で気を向けさせるから、ルージュとサレナは引き込むのを頼むよ」
「えっ」
「そんな・・・」
二人のことなど気にせず、ローズは笑顔のまま宣言した。
「はい、行動開始」
どうやら二日酔いになったことを怒っているようだ。察した二人は顔色が悪いまま渋々と動き出した。
まぁ、結果は明らかだった。矢が当たったレイクンドガエルがぴょんぴょん跳ねながらこちらに向かって来て、二日酔いで鈍いサレナが限界突破してその場で嘔吐し、立ち止まった所を舌で絡め取られてぱくりと丸呑みされた。
傍に居るリリーに問い掛ける。
「なぁ、大丈夫なんかあれ?」
「あっはい、大丈夫です。レイクンドガエルは丸呑みする性質上、胃袋は頑丈ですが消化能力が低く、対象を一週間ほどかけて消化するので・・・あぁ、恐ろしい」
ぶるると身を震わせたリリーは、杖を支えにその場に座り込んでしまった。
「リリー・・・大丈夫か?」
「大丈夫です。ちょっと思い出して、脚が竦んでしまっただけです」
「いやそれ大丈夫やないって」
仕方ないので肩を貸してやる。サレナを丸呑みしたレイクンドガエルは、飛び跳ねもせずのそのそと湿地に帰り始め、ルージュが逃げるのを止めてカエルよりも前に先回りし、持っている剣で下から脳天に目掛けて突き刺した。カエルは体勢を保てなくなり、ルージュを巻き込んで前のめりに倒れた。。
うちとリリーも倒したカエルに近づく。ローズがうちらを追い越して、自力で這い出して来たルージュに手を貸した。
「ルージュ、大丈夫?」
「ああ、それよりもサレナを助け出すぞ」
脚が竦んでいるリリーは待機し、うちも手伝ってカエルを転がして横に向け、すぐに腹を引き裂いた。ドロドロヌメヌメのサレナがずるりと流れ出て来た。
ルージュが汚れるのを厭わずサレナを抱き起した。
「おいサレナ、無事か?」
「ええ、ちょっと・・・気持ち良かったかも」
いいシーンの筈なのに、全員が絶句した。
狩りを再開し、ローズの射撃で一匹だけ釣り出すことに成功した。
ルージュとサレナが走って引き寄せており、レイクンドガエルが追って来ている。
「・・・ああん」
もう少しで狩りのポイントだという所で、サレナが何もない所でしおらしくこけた。絶対にわざとだ。
倒れたところをカエルは見逃さず、また舌に絡め取られて丸呑みされた。
「・・・サレナ? 待ってろ、今すぐ助けるぞ」
ルージュは気付かず、サレナを助けに向かう。
リリーを見る。へなへなと座り込んでおり、脚ではなく腰が抜けてしまっている。
少し離れた場所にいるローズを見る。流石にこれは笑っていられないのか、頭を抱えていた。
ルージュがさっきと同じ要領で狩ることに成功した。これで二匹目。
「サレナ、大丈夫か?」
「ええ、ええ・・・」
腹から助け出されたサレナが恍惚の表情を浮かべている。
ルージュは気付いていない。リリーは足手纏いなので置いてきたが、傍まで来たローズが笑顔でロープを取り出した。
あっ、これは・・・。
察した。彼女は笑顔のまま怒っていると。
「ローズ? ローズさん?」
無言で縛られ出し、サレナが今更焦り出す。ルージュが声を掛けようとしたが、ローズの笑顔に負けて、事の様子を見つめることしかできない。
ローズによってサレナは自力では抜け出せない状態になった。手足がしっかり拘束されており、多少動いた所でビクともしない。しかもロープが一本伸びており、引き摺ることもできる。
「ちょっと、これじゃあ私、動けないのだけど・・・」
「それでいいんです。あなたは‘エサ’ですから」
ローズはエサを強調して彼女を担ぐと、カエルの集団に向かって歩き出す。ルージュは訳が分からないといった表情で立ち尽くし、うちも傍でその行動を見守ることにした。
ある程度の所でサレナが降ろされると、気付いたカエル数匹が寄ってくる。すぐさまローズが逃げると、サレナがカエルに食べられた。だがこれでは終わらない。ローズが持っていた縄がぐんっと引っ張られて力負けしたローズが倒れると、食べ損ねたカエルが気付いて彼女まで食べられた。
「まずい。助けないと!」
ルージュが愚直にも元の場所に戻ろうとしているカエルに向かって駆け出した。遅れて、杖で体を支えながらリリーがやって来た。
「えっ、ルージュさん待って!」
リリーが声を掛けるが時既に遅し。
レイクンドガエルはエサの方からやって来たことに興奮し出しており、気付かれたカエルにぱくりと食べられた。そのまま食事にありつけていない数匹のカエルが、視線の先にいるリリーとうちに向けられた。
数匹のカエルが競うようにこちらに向かってくる。
「ひぃっ!」
リリーが武器であるはずの杖を手から離してその場にへたり込み、逃げようとするが腰から下が全く動いていない。うちはどうしようかと考えていると、助けを請うリリーと目が合った。
「た、助けて下さい!」
助けたい気持ちはあるが、同時に世の中は非情だという冷めた気持ちもあった。だからこそうちはこう言った。
「・・・これ、実習やったな。あとで助けるさかい、頑張りや」
変身を解除し、認識阻害の魔法を掛けて空に逃げた。
「あ、ああっ・・・!」
手を伸ばすリリーは、何も出来ずにカエルに食われた。
「残念、君たちの冒険はここで終わってしまった! なんてな・・・」
ゲームオーバーの真似事をしたうちは降り立ち、認識阻害の魔法を解除する。突然現れたうちにカエルたちは注目したが、攻撃される前に、うちはドラゴンの持つ力を開放した。その途端、蛇に睨まれたカエルが如く、動きが完全に止まった。
ドブ臭い空気を我慢して息を吸い、腹から力を込めて言った。
「・・・返せ!」
他を圧倒するドラゴンの言葉に、カエルたちは逃げ出し、丸呑みして動きが鈍いカエルは食べた物を吐き出して慌てて逃げ出した。
うちは丸呑みしたカエルに対して、跳び上がって踵落としで頭部を粉砕して仕留めた。四匹狩ってこれで六匹。一匹多く狩ってしまったが、まぁ、彼女たちが謝ることだ。
ドロドロヌメヌメの四人を集めると、カエルが一匹も見えなくなった湿地で正座させた。寛大な心によって正座している場所は芝の上だ。
「さてリーダーさんや、申し開きがあるなら言うてみ?」
「あー、その、一時の感情で勝手に動いてしまい、申し訳ない」
「せやな。あんたの行動で、皆を危険に晒した。うちが居らへんかったら、村人に気付かれるまで腹の中やったで?」
「はい、反省しています」
次にサレナの方を見る、びくりと体を刎ねさせた。
「なぁサレナ」
「は、はいっ!」
「・・・返事はええし、あんたの性癖をどうこう言う気は無い。けどな、依頼中に仲間にも言わず、わざと危険に身を晒すのはあかんよ。ルージュがどれだけ心配したか、気付いてたか?」
サレナは黙ってルージュの方に向くと、しっかりと頭を下げた。
「・・・ごめんなさい」
ズレているが、反省しているようなので良しとする。
次にルージュを見る。今の反省会の空気では、流石に元気がない。
「ルージュ、あんたは・・・もう少し状況を見よな。あんたが食べられなかったら、まだ二人を助け出す方法があった筈やで」
「はい・・・」
最後にリリーを見る。俯いていて完全に意気消沈している。見捨てたから仕方ないが、これから先、命をやり取りする場で恐怖を克服出来ないようではやっていけないだろう。
「リリー、あんたは外での活動が向いてないと思う。貴族なんやったら、貴族らしく町の中で暮らしたらええと思うで」
「・・・」
あとは本人の意気込み次第だ。話が終わったうちはこのしみったれた空気が嫌で、認識阻害の魔法を掛けて姿を隠した。
彼女たちは狩ったカエルをアイテム袋に回収し、村に帰った。村長宅に寄って一匹多く狩ったことを報告すると、村長は「無事で何より」と許した。
狩ったカエルは加工場で買い取ってもらい、村長が紹介したこの村だからこそ作られた風呂場に四人は入った。うちも自分の代金をインベントリから支払って認識阻害を掛けたまま風呂に入る。
体を布で洗っている裸の四人がいる。
この中で一番気を利かせているローズが、まだ落ち込んでいるリリーに話し掛けた。
「リリー、大丈夫かい?」
「・・・うん、多分」
「大丈夫じゃなさそうだね。でも気にすることは無いよ。僕たちは冒険者を目指しているわけじゃないし、リリーは魔術師を志望している。今回のようなことはこれっきりになるさ」
「でも、このまま魔術師になってもいいのかどうか・・・」
「いいに決まってる。全ての魔術師が外で戦うわけじゃない。リリーは魔法薬や結界魔法が得意だから、宮廷魔術師として働けばいい」
「うん・・・」
心に響いてはいなさそうだ。聞いていたルージュが言った。
「リリー、元気を出せ。私なんて鍛冶の為の研究で学園に入ったんだ。地位も才能もあるリリーがこんなことで躓いていたら、私が馬鹿みたいじゃないか」
これは励ましていると言えるのか、疑問に思ったが、リリーの表情が少しだけ緩んだ。
「・・・私、そんなに才能あるかな?」
「ある! 私が言うんだ。間違いない」
断言した声が響いてこだまする。サレナが笑った。
「ふふ、魔法薬が頓珍漢なルージュがそれを言う?」
「言うだけならタダだ。自称天才のサレナ」
「ちょっ、自称ってどういう意味?」
「したり顔でやる時は必ず失敗するポンコツって、噂になってるぞ」
「うそぉ!?」
思わぬ情報が入った。笑いそうになったが、堪えた。
リリーは・・・少し笑っている。あと少しだ。
サレナがぐぬぬとルージュを見つめたと思ったら、すぐにしたり顔に切り替えて言った。
「それを言うならルージュだって似た者よ。脳筋のルージュさん」
「ふん、自称天才よりよっぽどマシだ」
「・・・チビ」
「脇腹ぽっちゃり」
「男はこれくらいが好きなんです」
「男は背が低い女の方が好みだよ」
「ぐぬぬ・・・」
「むむむ・・・」
不毛な言い合いだ。うちとしてはルージュ側だが。
リリーの顔を覗けば、笑うのを我慢している。もう一押し欲しい。
いがみ合う二人にローズが割って入った。
「二人とも止めたまえ。男は僕のような美貌と、美しく完璧なバランスの取れたスタイルを好むものだよ」
ポーズまで取って自画自賛したローズに、二人は呆れ半分、負け半分といった具合に言い合うのを止めた。
ドヤ顔でローズがリリーに向くと、リリーがそっぽを向いた。肩が震えている。
「リリー・・・」
ローズが表情を崩さずに敢えてキザっぽく振舞いながら近づく。裸だからその姿は余計に滑稽だ。
「い、今は・・・ぷふ」
完全に背を向けた。笑うのを堪えている。うちも笑ってしまう。
「ふふふ・・・あっ」
気付いたがもう遅い、全員が声のしたうちの方を見つめていた。どうせ声を掛けて来るだろうと判断して、認識阻害の魔法を解除する。
ローズが素に戻って声を掛けた。
「ミホさん、いたんですね」
「まぁ・・・少し気まずくてな」
「僕たちは平気ですよ。アレくらい言われるのは慣れてますから。それより裸の付き合いと行きましょう」
手を掴まれて引き寄せられ、体を布で拭かれる。他の三人もうちを拭き始める。好意でやっていると思ったのも束の間、手つきが変わって鱗や翼、尻尾を触り始めた。
しまった、こいつら触りたいだけや!
風呂場で一時間ほど触られ続けた。お陰で全員の調子は全快した。
帰りは何もなかった。夕暮れごろに学園に到着した。学園長はまだ残って仕事をしていたようで、学園長室は明かりが灯っており、全員で入ってローズが実習訓練の報告をした。
学園長はその報告を聞いて不思議そうに顔を顰めた。
「おかしいですね。私はカエル村の村長に、予め村人が引き離したレイクンドガエル数匹を、村人が見守る中で学生が狩りを行うと、そう伝えた筈なのですが・・・」
うちも今になって気付いた。あのカエルの群れを、学生だけで引き離して狩るのは少し危険だと。
「まぁいいでしょう。無事で何よりです。ミホさん以外はもう下がっていいですよ」
「では、失礼します」
ローズたちが出ていくと、学園長は納得がいかないと具合に首を傾げた。
「ミホさん、今回のカエルの狩猟、あなた方から見てどう感じましたか?」
「んー、ちょっと危なかったかも知れへんな。勝手知ったる村の人が傍に居たら、まだ安全やったやろうけど」
「そうですよね。やはり苦情を入れましょう。ミホさん、今回は有難うございました。報酬を受け取ってください」
「ん、じゃあうち帰るわ。また」
「ええ、また御縁があれば」
外に出る。もう日が暮れてしまっている。ドラゴンの目は暗視なので問題ないが、こうも暗いと心細いものだ。帰ってジークフリートが居たら、傍で寝ようと思った。




