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隠者のユウは隠居ができない  作者: 宮之内誠治(覇気草)
第二章:静かなる騒乱
33/45

三十二話:学生たちの実習訓練 その2(レヴィアタン)

 

 ***


 我は久々の馬車に機嫌がいい。ソフィアも空が飛べるから、近場は徒歩で、遠出は飛んでいくのが常だったからだ。嬉しく尻尾を振っていると、馬車に遅れて今回の主役が入って来た。見て分かる。至って普通の人間だ。ユウやソフィアのような人間の枠組みを超えた奴ではない。

 彼らは我を見るや、恐る恐る自己紹介を始めた。

「ど、どうも初めまして。第二班リーダーのブライアンです。騎士を目指しています」

「・・・シーモスです。魔術師志望です」

「ダリーです。俺も騎士志望です」

「イーグルです。騎士志望です。まぁ、射手としてですけど」

 パッとしない奴らだ。まぁいい、一人旅よりは楽しいだろう。

「我はドラゴンのレヴィアタンだ。よろしくな」

「はい、よろしくお願いします」

 握手を交わす。

「それで、お前たちは何をするのだ?」

「えっと、ゴブリンとウルフの討伐です」

「そうか。手は出さなくてよいな?」

「はい、実習ですので」

「分かった。ほれ、出発するがいい」

「は、はい」

 馬車が動き出す。この振動がまた心地良い。どこまで行くかは聞いていないが、それもまた楽しみだろう。

 ガタガタユラユラ、揺れに揺られてのんびりと、我は牧歌的な雰囲気に心が落ち着く。

 ふと、以前いた竜の巣を思い出す。特別な力を持って生まれたせいか、父母ともに虐げられ、父母は耐えかねて逆上し、死んだ。幼い我をジークフリートは守ってくれたが、孤独を埋める存在にはなってくれなかった。我は少し歳を取り、祖父のデスダイナから来る魔王の血筋が虐げられる原因と知った。同時に、嵐を呼び起こし、また鎮めるこの力が魔王から来るものだと思い込んで竜の巣を去ることにした。それから流れるままに飛んで、ソフィア=マーリンと出会った。我は魔王と名乗って戦いを挑み、あっさりと負けた。だがソフィアは我を家に迎え入れ、色々と話をした。

 それから、この力は魔王の力ではなく、独自の特殊な力であると説明してくれた。ただそのころの我は恥ずかしく、ソフィアの傍に居る勇気が持てずに近くで修行を積んでは魔王と名乗って戦いを挑んだ。何度も何度も・・・五十年くらいは挑み続けた。

 そして、あの男――ユウと出会った。最初はただの強そうな奴と思っていたら、あのざまだ。最早人間の枠組みから抜け出している。我があの強さに手が届くまで、あとどれほどの月日が必要かは分からない。いずれにせよ、我の最盛期の際にはユウもソフィアも、今いる人間たちがいないのは確かだ。何かしらの方法で時間を進めることが出来れば、同じ時を同じ強さで歩めただろうに。



 ――体が揺すられている感覚がする。意識がはっきりして目を開ければ、第二班のリーダーが視界に映った。

「レヴィアタンさん、おはようございます。お昼の休憩です」

 どうやら眠ってしまっていたようだ。我は眠い目を擦りながら言う。

「む、そうか。ところでフライパンとやら、外の天気はどうだ?」

「ブライアンです。外は生憎の大雨ですが、帆付きの馬車なので大丈夫です」

 名前はともかく、彼らは暗雲の下のざざぶりの馬車の中で食事を摂っている。これでは気分は晴れないだろう。

「ふむ・・・それは悪かった。今晴らそう」

「え? 今出ると――」

 我は制止しようとするブラシアンと食事中の三人を気にせずに外へ出る。大量の雨が我を濡らすが、乾いた体にはそれが気持ちいい。暫し雨に当たってから、天に向かって天候の力を溜めた球を打ち上げた。すると途端に天気は雨から曇りへ変わり、曇りから晴れへと変わっていった。振り返ると、帆から顔を出していた彼らが驚きで口を開いていた。

「どうだお主ら。いい天気だろう?」

 我が泣けば、雨が降り、悲しむか怒れば嵐となる。心穏やかで晴れとなり、楽し気になればカンカン照り。最初は散々だったとジークフリートは面白く話すが、ソフィアと戦い続けてある程度コントロールすることができるようになった。でも、今でもたまに無意識で天候を変えてしまうことがある。

 晴れやかな空を眺めながら食事を楽しみ、我はまた馬車に揺られる。そして森が広がる手前の集落に到着した。

 我が出ると話がややこしくなるという理由で待機する。数分もしないうちにこの村の長と話が付いたとブラミリアンが戻って来て、ようやく森の中へ出発。どうやら想定していたよりもウルフやゴブリンが多く生息しているらしい。

 我にとっては取るに足らない存在だが、彼らにとっては脅威になり得る存在だろう。我はどういう戦い方をするのか、問うた。

「なぁブラキリアン、お主らは多勢に対してどう立ち回るつもりだ?」

「ブライアンです。まぁ、少し離れた有利な位置に陣取って、弓矢や魔法で迎え撃ち、残りは接近戦を仕掛けようかと思っています」

 模範的な回答だ。机上の空論ともいう。

「道理だが、間違っている。ウルフもゴブリンも分散して仕掛けるくらいの頭はある。必要なのは分散が出来ず大勢が入り込めない地形に誘い込むことだ」

「というと?」

「それくらいは自分たちで考えるがいい」

「は、はい」

 彼らが懸命にあーだこーだと大きめの声で話し出す。既に森の中に入っていて、いつ何かと遭遇してもおかしくないのに、悠長なことだ。既にウルフやゴブリンの居場所は特定している。ゴブリンの醜悪な臭いは遠くでもよくわかる。ウルフの臭いも独特で癖があって判別は容易い。魔法で透視すれば、視界の効かない森の中でも容易だ。

 ・・・それにしても、この森はやけにざわついているな。

 我はドラゴンとしての気配を殺しているからその原因には当たらない。だが奥深くを探れば原因が分かった。何体かの、この森の生態系の頂点が死んでいるようだ。死因を探ろうにも既に死体を貪り食うものたちによって特定出来そうにない。とにかく、今この森は、頂点を掛けた争いが起こっている。ウルフやゴブリンが増えた原因も、餌を取る魔物が縄張り争いに参加して手が回っていないからだ。

 ・・・おかしい。縄張りの長たちが同時に死ぬものか?

 何かがあったと考えた我は、まだ作戦を考え中の彼らにこのことを伝えるべきか少し悩んだ。正直なところ、森に入ってこの気配に感づけないようでは騎士や魔術師とやらになるには程遠いだろう。恐らく、ポートローカルの下位の冒険者ですらこれくらいは気付く。

 少し考え、これは実習なのだから教えるべきと判断した我は、ぐいっと彼らの間に入り込んだ。

 会話が止まり、我に注目が集まる。

「聞け。この森は今、普通ではない。耳を澄まし、目を凝らし、感覚を研ぎ澄ましてみよ」

 言われた彼らは唖然としたが、ブラリアンが真っ先に実践し出すとそれに倣うように他も行った。

「・・・ウルフの遠吠え、それに、何かが争っている音?」

「あと、血の匂いが・・・うわっ、こんなところに血痕がある」

「ちょっと待って、奥に死体がある」

「俺、ちょっと偵察してくる」

 武装し、弓矢を担いでいるイーサンが駆け出すのを、ブレリアンが止めた。

「待てイーグル。こんな状況で単独は危険過ぎる」

 その通り、今の状況で単独行動は危険過ぎる。興奮した魔物に襲われれば、忽ちに、連鎖的に他の魔物が集まって来るだろう。本来、こういう森は入ること自体が自殺行為だ。

 今すぐ返してやりたいところだが・・・。

 我は来る方向に視線を向ける。遅れて、彼らがそれに気づいてそれぞれ武器を構えた。出て来たのは、話を聞きつけたウルフの群れだ。五や十じゃない、二十はいるだろう。こっちが動く間もなく、包囲されてしまった。

 我は問う。

「さて、ここから生き残るにはどうすればいいと思う?」

 答えは簡単だ。幾つかあるが、果たして彼らに解けるだろうか。

 一番最初に動いたのは、やはりリーダーのブレイダンだった。

「突っ込むぞ、こっちだあ!」

 彼が震えた声で気持ちを奮い立たせて、森の入り口に向かって剣を振るいながら突っ込んでいく。

「・・・俺が殿を務める。イーグル、ブライアンの援護を!」

「わかった!」

「なら僕は、全員に身体強化を!」

 ブライアンの動きに勇気づけられた三人はそれに続いて動き出し、イーグルがブライアンに迫るウルフを矢で牽制し、イーグルは全員に身体強化魔法を施してから、無詠唱で火球を撃って自分に迫るウルフを的確に遠ざける。殿を務める彼は、傷つきながらも迫ってくるウルフを迎撃しつつ走った。

 正解だ。

 包囲された時はどの方向でもいいから戦力を集中して突破するのがいい。戦争ならば持久戦も一つの手であるが、遭遇戦なら尚のことだ。的確で素早い判断、彼はいいリーダーだ。

 ウルフとの戦いはもう充分体験しただろうと判断した我は、軽くウルフたちに威圧してやる。するとウルフたちは恐れ戦き、すぐさま我に返ってぱたりと攻撃を止め、群れの長らしいウルフが一吠えして狼たちを纏めて森の奥へ帰って行った。

 四人は息を荒げ、生傷を作りながらも生きていることを喜び、抱き合った。

 そんな四人に、我は声を掛けた。

「ブライアンよ、いい判断だったぞ」

「・・・咄嗟でしたから」

 彼は鼻を啜って手を当てた。

「イーグル、動きながらの射撃、よかったぞ」

「ありがとうございます。リーダーの背中に当てないかと、肝を冷やしましたけどね」

 彼は少し恥ずかしそうに俯いた。

「えーっと、えー・・・モス?」

「シーモスです」

「そう、シーモス。即座に全員へ身体強化の魔法を掛けたのは素晴らしい判断だ。誰かが動けなくなったら、総崩れになる可能性もあったからな」

「先生に、魔術師は常に冷静にと言われていましたから」

 思い返して、確かに冷静だったと改めて思った。シーモスは自分に来る攻撃を慌てずに対処していた。

 彼は謙虚にしているが、あの状況で冷静でいられる度胸は人間としては称賛に値するものだ。もしかしたら、彼は魔術師より騎士の方が向いているかもしれない。

「最後に・・・えー・・・」

「ダリーです」

「うむ、ダリーよ。殿を自ら引き受けるのは相当な覚悟が無いとできないものだ。詮索はしないが、そういうことがあったのか?」

「あー、まぁ、はい。俺ら、友達ですから、死んで欲しく無いんですよ」

 軽々しく言ってのける。だがこの人間の情こそ、面白い。そんなダリーを、三人は背中を叩いて賞賛する。その意味とは、俺らも一緒だ、だろう。

「・・・さて、仲がいいところを見せて貰って悪いが、次のお客さんが来ているぞ?」

 指さす方向から、次々とゴブリンが出て来る。威嚇はすれど仕掛けては来ない。このゴブリンどもは統率された部隊だからだ。

 だからこそ、長たるゴブリンキングが我らを視認して初めて、攻撃の命令が下った。

 最初に反応したのは、やはりリーダーたるブライアン。

「逃げろおおおぉぉぉ!」

 逃げ足は脱兎の如く。背を向け全力で逃げるさまは、まさに逃走を体現するに相応しい。三人も一目散に逃げるので、我も続く。これを笑うつもりは毛頭ない。絶対に勝てない相手に、逃げることが出来て守るものも無い状態で挑むのは馬鹿のすることだ。

 ある程度逃げたところで、我は彼らに知らせる。

「分かっているであろうが、このまま進めば、村へ到達するぞ?」

「えっ・・・」

 ブライアンが戸惑う。どうやらそこまで頭が回っていなかったようだ。我は肩を竦めつつ説明してやる。

「お前の向かっている方向は村だぞ。このまま森を抜ければ、村を見つけたゴブリンどもが押し寄せるだろう。どうする?」

「どうするったって・・・」

 悩む間もなく、ブライアンたちは森を抜けてしまった。

 タイムリミットを悟ったブライアンが立ち止まって振り返り、剣を構えた。遅れて来た三人も振り返って並んで構える。

 そうだ、それでいい。背水の陣だ。退路を断たれた生き物は、どんな奴だって強くなる!

 彼らはまだ兵士基準で言えば雑兵に過ぎない。だが、こうして一人一人は意志を持って止められない波に立ち向かおうとしている。その意志はあっけなく散ってしまうかもしれないけれども、確たる力を持ってほんの一瞬でも波を食い止めるだろう。

 合格だ。

 我とて、依頼という約束事を請け負った身だ。彼らの安全は確保しなければならない。ついでになるが、彼らの褒美として前に立って背中を見せ、敢えて、この場でドラゴンとしての力を知らしめた。

 森から抜け出たゴブリンどもへ向かって大きな咆哮を放つと、奴らの脚は途端に止まり、震え出し、絶叫しながら逃げ始める。長であるゴブリンキングでさえ我の存在に畏怖し腰を抜かして後ずさる。

 間髪入れず、我は水のブレスを吐いて、向かってきたゴブリンどもを血肉へと変えつつ吹き飛ばした。少し調整を間違えたせいか、森の入り口がぐちゃぐちゃになってしまったが、これで暫くは森から出て来る魔物はいなくなるだろう。

 振り返って彼らの顔を見てやる。きっと喜んでいるだろう思ったら違った。

「あっれぇ~?」

 全員、見事に立ったまま気絶していた。

「・・・しょうがない奴らだ」

 彼らを担いで村に戻り、宿に泊まることに決めた。支払いは、ブライアンのポケットやバッグを弄って出て来た財布から出しておいた。一泊二日豪華夕食・朝食付きだ。彼らの傷を回復魔法で癒した我は、宿から出て乗って来た馬車を動かし、宿の従業員に馬の世話を頼んで村長の場所を聞き、我は向かう。

 コンコン、と戸を叩いて出て来たのは、なんてことはないただの年寄りの男だった。

「誰かね」

「我は今回の実習を監督、護衛しているドラゴンのレヴィアタンだ」

「ではさっきの咆哮は、君か?」

「そうだ。だからこそ聞きたいことがある」

 すると彼は外を見渡し、我に入るように促した。

「中で話そう」

 部屋の中は広々としているが、村長にしては質素な感じで、家具や置かれているものを見ても金銭の執着は見られない。

 村長が戸を閉めて錠を掛けると、部屋の真ん中にあるテーブルの椅子に座った。我も座る。

「それで、何が聞きたいんだい?」

「あの森は縄張り争いが起こっていた。弱い人間にとって危険な状態だ。学生にやらせるようなことではない。村では気付いていたのではないのか?」

「ああ、気付いていたさ。猟師や山菜を採りに行く女が知らせてくれていた。だが実習に来る学生たちには言うなと、ある貴族に脅されていた」

「脅されていた?」

「ああ。数日前に、ヨハン・グリムという貴族に雇われたという冒険者がやって来て、森を荒らし、わしに、数日後に来る学生たちに森の状態を言うな、言ったら村が無くなることになるだろう、と脅されたんだ」

「そうか。邪魔をした」

 我は立ち上がって村長の家を出た。すぐに翼を使って飛び立ち、村を隅々まで見てみたが怪しい人物は見当たらない。

 少し考え、我は一つの結論に達した。

 ・・・占術の類だな。

 ソフィアと暮らす中で、ソフィアが使ったことのある魔法の一種だ。ソフィアが遠出をする際に天気予報で水晶からその場所の現在から数日先の天候を覗き見たことがある。やってみたことがあるが、とても難しいかなり高度な魔法で、その場の数時間先を見るのが限界だった。

 だが、腑に落ちん。ヨハン・グリムという貴族の狙いは何だ?

 この場には雇われたという冒険者や怪しい人物は見当たらず、暗殺や誘拐の類ではない。かといって山での不慮の事故は、ドラゴンが護衛している以上ほぼありえないと言える。

 考えてみたが、すぐに止めた。そういう面倒なことは我の領分ではない。

「こういうのは、ユウにでも任せればいいか」

 我は宿に戻って、のんびりすることにした。

 何時間か経って彼らは起きた。我が気絶した後の状況を説明すると、ブライアンが財布の中身を見て落ち込んだが、他の三人が割り勘としてお金を渡して元気を取り戻した。夕食の時間となり、彼らと一緒に豪華な食事を一緒に楽しんだ。





 翌朝、心身ともに回復した彼らは再び森へ入った。

 何故かと問うと、ブライアン曰く。

「まだ、依頼を終わらせていない」

 と答えたからだ。

 二度目と言うこともあって、彼らは同じ轍を踏まないように慎重に進んでいる。周囲に気を配りつつ、射手であるイーグルが斥候として少し前を進んでいる。

 現在の森は、我の咆哮もあって静かなもので、昨日の縄張り争いによるざわつきが嘘のように静まっている。奥まった場所まで行かなければゴブリンもウルフも見つけることができないだろう。

 彼らがそれを理解しているのかは分からないが、順調に森を突き進んで奥まで来た。じっとりとした暗い雰囲気の漂う生い茂った森で、緩やかな傾斜がある。これ以上は傾斜が付き始め、山になるだろう。彼らより先にウルフやゴブリンの居場所は掴んでいる。どちらも洞穴を拠点にした巣のようだ。他にも単体で動く大猪や獰猛な巨大昆虫、じっと潜んでいる食肉植物がいる。

 この雰囲気には彼らも黙ってはいられず、まずイーグルが口を開いた。

「なあブライアン、流石にこれ以上進むのはヤバイと思う」

「そうか。ダリー、シーモス、お前らはどうだ?」

「俺もイーグルと同じだ。さっきまでと雰囲気が違う」

「僕も同じです。これ以上は生きて帰れる気がしません」

「なら、帰るか」

 ブライアンのあっさりとした撤退に、三人は驚いたが、踵を返すように帰路に付き始めた彼を見て、三人は黙ってついて行った。

 何事もなく森を抜け出し、彼らは村長の家を訪問、彼らは自分たちの力ではウルフとゴブリンを退治できないことを告げ、謝罪した。


「すいませんでした」

「「「すいませんでした」」」


 村長はちらりと我を見て、身震いし、彼らに言った。

「頭をあげなさい。ゴブリンやウルフ程度なら、村の者でなんとかできる。むしろ、森の奥まで行って無事に帰って来られて、わしはホッとしたよ。次、頑張りなさい」

「はい、では失礼します」

「「「失礼します」」」


 扉が閉まると、ブライアンたちは馬車の所へ戻った。イーグルが御者として動かし、帰路に入る。

 そこで我はブライアンに問い掛けた。

「なあブライアン。止めはしなかったが、何故あの男に謝罪した? 昨日のことは話した筈だが」

「村長は脅されていて言えなかった。俺たちは森でレヴィアタンさんに助けられた。だから目的は達成できず、謝罪した。これで村長はヨハン・グリム卿の約束を守り、俺たちは本来の目的、やって学ぶという実習を達成した。どちらも困らない、いい判断だろう?」

 したり顔で説明されて少しむかついたが、確かに間違ってはいない。実習に来たのであって、ブライアンたちは冒険者ではないのだ。




 その後、何事もなく学園に帰ることが出来た。学園長には我も同行して報告した。


「・・・以上が、第二班の実習結果です」

 ブライアンの報告が終わる。テーブルで手を組んで険しい表情で聞いていた学園長は口を開いた。

「ありがとうブライアン。ヨハン・グリム卿の件については、学園側で調査しますので安心してください。お疲れでしょうから、今日はもう帰って結構です。後日、レポートの提出を忘れないように」

「はい、失礼します」

「・・ああ、レヴィアタンさんは少し待ってもらえますか?」

 ブライアンたちが出て行こうとすると、我だけ呼び止められた。

 報告の終わった彼らが扉を閉めると、学園長が言った。

「レヴィアタンさん、実は先に帰っていた第一班でもヨハン・グリム卿が関わっていたのですが、何かご存じですか?」

「知らん。我はここ一年ほどソフィアと一緒に過ごしていただけだ。人間の貴族のすることに関わったことは無い」

「そうですか・・・もう、お帰りになられますか?」

「うむ。もう帰る」

「では、報酬をどうぞ、受け取ってください」

 我は金貨を受け取ると、我はさっさと帰った。

 ソフィアは先に帰っているだろうか、それともまだか・・・どちらにせよ、家に帰っての

 んびりしたい。


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