幕間:建国『ドラゴンズトゥーム』
国王となった黄金騎士ヘクター視点。
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ゼロ・・・いや、元からある城と町と領土を考えると五十くらいのスタートになるか。チート装備の黄金一式を持つ俺と、チートスキルのテイマーを持つジュン、もはや人間の枠組みを超えている隠者のユウという男三人によって暫定的な新王国が誕生した。
ユウが最初に行ったことは、レイクンド公国という大陸の最東端の大きな湖を中心として発展した国の大使として、魔王討伐を行ったことをこの地域の周辺国へ知らしめることだった。ついでで俺たちも同行させられ、元の滅んだ国の新国王と宰相として推薦しており、周辺国が領土的野心を見せようものなら自らの手で滅ぼすことを宣言した。
魔王の被害を受けていた周辺国は、魔王を討伐したユウに強く出ることは出来ず、復興支援という名目で金と人と物資を送る約束を取り付け、少しでも優位な立場を得ようとした。
が、彼らから約束事を取り付けて翌日にレイクンド公国へと転移魔法でとんぼ返りをし、ユウが状況をアルフレッド公王に説明、即座に同盟の締結と余剰人員の派遣が決まった。
その際、滅んだ国の名前では縁起が悪く、無名でも書類上よくないのでその場で国名を決めさせられた。幾つか案が浮かんだ中で、ユウのドラゴンズトゥームという名に決定した。
余剰人員を連れてドラゴンズトゥームに戻った後にユウが単独で各国を回ってレイクンド公国との同盟を宣言して周り、俺は公国の余剰人員で来てくれた人たちと一緒に城と城下町の修理を言い渡され、ジュンは戦力を増やしつつ街道の整備を言い渡された。
それから数カ月が優に経った。
他国から来た人々によって城も町も次々と修理され、商いも始まった。国王と言うことで寄せられる問題の中に、商売を始めたいから元手が欲しいというのもあり、俺の独自判断で個別面談したうえで、黄金装備の応用として金貨を生成し、無利子で支給してやることにした。それが功を奏して一度夢破れた者や一攫千金を狙って来たものが殺到し始め、商いが急激に盛んになった。そしてそれを後押しするように、魔物を次々とテイムして戦力を増やしていたジュンが、街道の警戒網を構築して安全性を高めたことで、商人たちの行き来は益々盛んになった。
ユウは俺もジュンも褒め称えた。
俺に対しては王の器、長期的視点による投資の目があると称した。
ジュンに対しては、テイムした魔物の采配や街道の整備手順や進行度合いをみて将軍としても一流であると称した。
褒められた俺たちが単純だったのかもしれないが、波に乗った俺たちは調子に乗って色々とやりまくった。
俺は城と町の修理に飽き足らず、持てる人員で町の外の農業と治水に取り組んだ。自ら指揮を執って人海戦術でやることによって次々と農地は整い、治水は上手く行き、今年の秋には大収穫が望めた。
ジュンの方も魔物を用いて街道の大整備を行いつつ、テイムした魔物やレイクンド公国から志願してきた騎士を活用して新たな騎士と衛兵の育成を始めた。どうやらジュンは教育者としても一流だったようで、僅か数カ月で騎士団と衛兵隊を作り上げてしまった。
だが、ジュン曰く。
「これはまだ飾りに過ぎません。これからは年数を掛けて練度を上げていく必要があります」と言った。
どういう意味なのか理解する為に国王である俺自ら模擬戦を催して戦ってみたら、その意味することが分かった。単純に弱い。全員が若くて熱意溢れ、才能ある者も何人か見受けられたが、経験値が少な過ぎて話にならなかった。ユウにも相談したが、人材というものは一朝一夕で出来上がるものでなく、元の世界で例えるなら正規軍の戦闘機パイロットのようなものだと言われた。成程と納得する。莫大な金と時間を掛けて、ようやくベテランとなれるのだ。
順調に復興が進む中、不穏な事もあった。各国が時期をずらして国境の傍で軍事訓練をしたり、わざと領土を越えたりした。これにはジュンがユウと一緒に各国へ赴いて通達し、テイムした魔物にシンボルを象った布や装飾を付けて牽制させたが、普通の魔物と勘違いしたという理由で次々と殺され、キレたジュンが数日空けると言って竜の巣へ旅立った。
その間の防衛はユウが一身に引き受け、領土を越えた各国の兵士たちを皆殺しにし、死体の首と一緒に城へ乗り込んで国家元首を脅したとか・・・詳しいことは知らない。
だが、ジュンが離れていた間に周辺国の我が国に対する過激派はものの見事に失脚、或いは粛清されたという情報が入って来た。
何がどうしてそうなったのか分からないが、ユウ曰く「アジテーターに依頼を出した」とのこと。
代償として、行き過ぎた行動からドラゴンズトゥームに攻撃を仕掛けて来る兵隊や、各国で反乱を起こした貴族たちがいた。ユウの助言によって、俺は軍や騎士団を率いてその全ての戦場に赴いてチート装備を大いに振るい、あっさりと戦いを鎮めて、多くの敵兵に対して温情を掛けてやった。
その後、家族ぐるみで我が国へ帰順した兵たちを歓迎していると、生き残っていたドラゴンたちと大量のワイバーンを引き連れてジュンが帰って来た。
ジュンは帰って来るなり、ドラゴンに跨り国旗を振るって各国の国境で派手に暴れて見せ、ワイバーンで領土の全てを空から監視するという、レーダーが存在しないファンタジーでは有り得ない警戒網を敷いて見せ、周辺国全てに武力を見せつけた。
流石に各国は態度を軟化せざるを得なかったようで、すぐに不可侵条約をそれぞれ結ぶこととなった。
ジュンはこれ幸いにと、なんと他国と我が国を結ぶ街道の整備を申し出て、素早く丁寧に整備し、さらにテイムした魔物の護衛付きという破格のサービスをみせたことで、各国の商人からは歓迎ムードが上がった。なお、各国の軍から不満の声はあったが、流石にドラゴンと正面からやり合う度胸は持ち合わせていないのか、はたまた反抗できるほどの人材が先ほどの攻撃や反乱で消えたのか、小さな声でしかなかった。
恐らく過去類を見ない速さで復興を遂げて冬を迎え、国王である俺自ら町を練り歩いて裏町の裏まで覗き、不幸そうにしている暗い顔の人間を全員城に招待して年越しをした。国民は盛大に祝い、酒や食事を楽しんだ。
厳しい冬は冷えるだろうと、ジュンが町中でワイバーンやドラゴンのブレスを活用して焚火を設置したり、ユウが気まぐれでグリューワインを衛兵や騎士たちに無償提供したりした。お陰で、新国に関わらず犯罪率はかなり低く抑えられた。
春、陽気な気候が温かくついついだらけたくなるが、国王や宰相の俺たちにそんな余裕はない。もうすぐ建国一周年ということもあって企画から準備でてんやわんやだ。ジュンに至っては国としての仕事と、供養祭、建国記念、各国との友好条約締結の準備で休みなしの日々を過ごしている。色々と出向いて仕事をしている俺も、ジュンの仕事を少しでも軽減する為に事務関係の仕事をしているが、新しい国だけあって量が尋常じゃない。
肝心のユウはこの国の人間じゃないという負い目か、それともこの国で過ごす気は無いのか、開国当初に比べると殆ど手伝わずにそれぞれの持ち場を見て回って俺に報告するだけだった。
事務仕事に嫌気がさした俺は、ペンを置いてイライラを吐き出すように叫んだ。
「ええい、多すぎだ! 誰だよ次から次へ書類を持ってくるのは! 俺の許可いらねぇものが大半じゃねぇか!」




