二十六話:戦いの後の宴
元々のシュレディンガーが使い、夢人に連綿と受け継がれている本当の意味での必殺技だ。斬ろうと思えば、この世界の根幹に関わる概念すら斬れてしまう。
魔王デスダイナの肉体は再び真っ二つに裂け、魂も真っ二つになって輝きを失い、消滅した。念のために少し注視するが、デスダイナの肉体が動くことは二度と無く、勝利を確信した俺はすぐさまデスダイナの肉体を燃やした。汚いし別の要因で復活するのも怖いので丹念に燃やして固体として最小単位に近い塵にまで燃やし尽くし、夢の力で無を展開してそれを消した。
「・・・終わった。はあ」
一連の魔王復活はこれにて完全に終わった。一件落着してついつい溜息が漏れた。展開している夢の力を戻し、ゼーレを鞘に仕舞う。
「帰ったら、何を食べるかな・・・」
呟きながらこの場を後にしようとすると、この空間の隅から拍手の音が鳴り出した。
「・・・いるよなぁ。アジテーター」
言いながら振り向けば、そこにはにやついた笑顔を張り付けたアジテーターが立っていた。目が合って、彼女はこちらにゆっくりと近づいて来る。
「いいものを見せてもらった。流石は隠者のユウ。いや、夢人シュレディンガーというべきか?」
拍手を止めて悩んでいるようなポーズをするが、顔が全く悩んでいない。
「隠者のユウでいい。それで、見ていたんなら手伝って欲しかったが?」
一応、俺の作戦の一つとしてアジテーターを呼ぶというのもあった。呼ばなくてもなんとかなったので呼ばなかったが。
「呼ばれれば、手伝うつもりではいた」
どうやら彼女にとっても、そのつもりで傍にはいたようだ。
「・・・そうか」
「ウフフ・・・」
アジテーターはうっとりとした恍惚の不気味で素敵な笑顔を見せた。謎で勝手な彼女だが、俺としては興味深くて好意すら抱いている。彼女は今、どういう感情を抱いているのか読み取ろうとしたが、そもそも表情が殆ど笑顔で固定されていて分からなかった。
このまま去るのも惜しいと思った俺は、ふと思いつく。
「なあ、これから飯にしようと思うんだが、付き合ってくれないか?」
「奢りなら是非に」
「決まりだな。ではポートローカルの湖のさざなみ亭で落ち合おう。と、忘れるところだった。これをあげる」
インベントリからドワーフの名匠ダーヴィンが作った紅い短剣『シュトラーフェ』を差し出した。
彼女はさっさと受け取り、金の凝った装飾の黒い鞘から引き抜いて刀身をマジマジと見つめた。
「・・・イイ。凄くイイ。これを何処で?」
彼女の笑顔が子供のようにはしゃぐ笑顔に変わった。
「レイクンド城の宝物庫に保管されていたものだ。銘はシュトラーフェ、毒鉱石とかいう危ない鉱石で作られているそうだ。刀身には触れるな。あと、盗みにも行くな」
釘を刺すと彼女は笑顔のまま少し固まり、ちょんちょんと指で刀身に触れながら言った。
「・・・では、これは宝物庫に立ち入らないというユウとの約束として受け取ろう」
シュトラーフェの確認を終えて鞘に仕舞い、早速装備している短剣と付け替えた。
「どうだ、似合っているか?」
「ああ、素敵だよ。とても」
黒白黒の喪服を思わせる洒落た服装に、金色の凝った装飾の黒い鞘は実に映えている。魔王討伐の報酬として確保した甲斐はあったようだ。
「・・・じゃあ、俺はやるべきことをやってくる」
「ああ、また私を呼ぶがいい」
彼女は踊るようにくるりくるりと回りながら離れて行って消えた。夢人として覚醒した自分でも彼女を捉えることは出来ない。彼女のことをどう紹介しようかと考えながら、俺は国の依頼を済ませに掛かった。
まず回れ右して壊れている王座に旗を突き刺していると、ジークフリートとレヴィアタンが来た。
「やったみたいだな、ユウ」
「ユウ、魔王はどれほど強かったのだ?」
ジークフリートはともかくとして、レヴィアタンの問い掛けには答え辛い。自分の中の基準がここ数日で跳ね上がってしまって、魔王の強さと言われても言葉で表現するのが難しい。
「・・・まぁ、少し本気を出すくらいには」
としか答えられない。
「ユウの本気とな! それは・・・聞かないでおこう。なんだかコワイ」
レヴィアタンは一瞬だけ子供らしく目を輝かせたが、どうやら俺との一戦がトラウマになってしまっているようですぐに表情を曇らせた。
対するジークフリートは試すように、俺に山に入った時と同様の威圧を放ってきた。傍にいるレヴィアタンに気付かせずにやっているとすると、彼自身の潜在能力は底が知れない。それに、彼には怪我らしい怪我も疲労も全くない。複数のドラゴンを相手にしてだ。
俺は二人に近づき、レヴィアタンの頭を撫でてやる。
「レヴィ、よくやってくれた」
「う、うむ」
素直に頭を撫でさせてくれる。視線が下を向いたのを確認してから、意趣返しの意味を込めてジークフリートに殺意を向けてやる。
「ジークフリート、助かったよ」
「フ・・・同胞らが不甲斐無いだけだ」
面食らう、というよりは返されたことに喜びを見出し、口は笑いつつも目がマジな顔で返事をされた。正直、ジークフリートには夢人の力無しで勝てる気がしない。
そのあとは事情を説明し、一番高い塔や場内の広場、食堂にも旗を取り付け、最後に入り口の門にも旗を揚げて、依頼の一部は完了した。
最期に気絶して眠っているミホとヘクターを回収し、ゲートを通ってポートローカルの湖のさざなみ亭に帰還した。親書を持って各国を回るなど、気疲れするので明日にしたかったのもある。
湖のさざなみ亭に戻れば、エリーとメリーに出迎えられた。レヴィアタンは抱えているミホを早々に部屋に連れて行き、ジーフリートは抱えているヘクターをフロアの端に寝かせた。ミハイル一行たちからは何か言いたげな視線を感じつつも、まずは店主のルナさんに報告した。
「ただいまルナさん。魔王討伐、こなして来たよ」
「そう。じゃあ、今日は宴・・・と言いたいけど、他の仲間はどうしたんだい?」
やはり言われる。俺が何か言おうとすると、店の扉が開いて来店を知らせた。
「いらっしゃ・・・ソフィアさん、お帰りなさい」
「ソフィアおかえり!」
「うん、ただいま」
どうやらソフィアが戻って来たようだ。だがやはりというべきか、エイリーンの姿は無いようだ。
「おかえり。エイリーンは?」
ソフィアは視線を少し横に逸らしたが、言わなきゃいけないといった風に気持ちを引き締めて言った。
「・・・エイリーンは、私が送ったわ」
葬るではなく、送るか。
言い方に何かがあったと察した俺は頷く。
「分かった。お疲れ様。本当、助かった」
「いいよ。それに、彼女からこれを預かったの」
懐から紙を取り出すと、それを広げて見せて来た。定型的な文章でエイリーンからソフィア=マーリンへ全ての財産を譲渡するというものだ。血判でサインまでされている。
さらに懐からエイリーンの商業ギルドカードを取り出して声高らかに言った。
「私、ソフィア=マーリンはエイリーンのしがない魔法薬店を相続します。それと、これからは賢者エイリーンの継承者として二代目の賢者を名乗ります」
・・・それ、宿じゃなくて城でやったらいいんじゃね?
と思ったが黙っておく。他の人たちはなんか圧倒されている。
俺はフロアの壁にゲートを作成してもう一人の功労者の様子を見てみた。すると、既に戦いは終わってるのか、転生者のジュンが本物のウサミミと尻尾の二人に性的な尋問、いや拷問的な何かを受けていて、見苦しくて視界から外して空を仰げば、巨大な古代の鮫が上空を遊覧していて圧倒された。
とりあえず、無事っぽいので俺はゲートをそっと閉じた。
そして振り返ってルナさんに報告した。
「ルナさん、イナハも無事みたいなので、宴、始めちゃいましょう!」
「そうか? ユウがそういうなら、仕方ないな」
その瞬間、ミハイル一行、主にレオンがはしゃぎ出して店内にいた客を巻き込んで宴が始まった。ジークフリートは隅の席に座り、エリーに注文を言いつけ始め、ソフィアも賢者を名乗ったせいでエミリアに期待の眼差しで詰め寄られていた。戻って来たレヴィアタンがジークフリートと一緒に食べ始め、俺もミハイルやレオンに絡まれ出した。
驚いたことに、アマンダは笛を、レオンは弦楽器をアイテム袋から取り出して奏でだし、ミハイルもアイテム袋からピアノを取り出して奏でだした。エミリアもそれに合わせてソフィアへの質問攻めを止めて歌って踊り出した。
大きな音で気付いたのか、眠い目を擦り欠伸をしながらミホが起きて来て、エリーとメリーに起き掛けの挨拶をされて目が覚め、状況を説明されてレヴィアタンに誘われて宴に参加した。レヴィアタンが中途半端にドラゴンを主張する人型のせいか、それとも宴の熱狂に冷静な判断能力が低下しているのか、ミホのドラゴン娘の姿を誰も何も言わない。これはこれでいいことなので指摘などせず、俺は久々に宴の雰囲気に酔うことにした。昼から始まった宴は続き、夕方ごろにイナハと生気を失ったジュン、目が覚めたヘクターも一緒になって食って飲んで騒ぎに騒いだ。
陽が沈んだ頃には宴も静まり、気付けば客は帰り、ミハイル一行は酔って寝静まり、エリーとメリーは仕事を終えて部屋でゆっくりしており、ロザリーさんも娘二人とゆっくりしている。では誰が厨房に立っているのかというと、俺だ。
ここ何日もロザリーさんの食事ばかりで、久々に自分で作った料理を食べたくなってロザリーさんに申し出て厨房を借りた。ルナさんも俺の料理に興味があるのか快諾し、今では魔王討伐メンバーと魔王幹部の二人と店主が出来上がる料理を待っている状態だ。
冷蔵庫を確認し、余っている食材の中で酒の摘みの定番、鶏の砂肝を発見して時間を掛けて作ったのは、砂肝の炒め物だ。塩と胡椒に加え、少量の白ワインを垂らし、香草を入れて炒めたことで香りもいい。出来上がった砂肝を自分の分と人数分、それともう一人多めに分けて、最後に切り分けたレモンを添えて提供する。
「どうぞ、砂肝の炒めものです」
「ん、ではでは・・・」
ルナさんが代表して一番に食べる。
コリコリ、サクサク・・・。
食べ応えのある触感に感覚だけで入れた程よい塩味、強く主張する胡椒の辛みと香りに対して手を結んで主張する香草。噛めば噛むほど、炒めたことで凝縮された旨味が出て来て、口の中が濃い味で支配されてついつい米や酒が欲しくなる。案の定、一仕事終えている店主のルナさんは手元にあらかじめおいていたラガーを一気に半分ほど飲んだ。
「・・・かぁっ! 美味いじゃないか、ユウ」
「まぁ、酒を嗜んでますので」
砂肝は安くて噛み応えもあるので満足感もあり、たんぱく質が豊富でカロリーも低いと、筋トレする庶民の味方だ。酒で栄養価は相殺されるとはいえ、砂肝の味自体が酒とも相性が良く、味の微調整と香りを加えるだけでどんどん酒が進む料理へと変化する。
店主の評価に一同が食べ出すと各々の反応で酒やジュースを飲む。
ジークフリート、レヴィアタン、ミホのドラゴン組からは大好評のようで、手が止まらないようだ。
「これは中々・・・」
「美味い、美味いぞ!」
「これ、オトンの味や・・・」
ソフィアもお酒を嗜むようで、ラガーをイイ感じに半分ほど飲んで見せた。
「ぷはーっ。こういうの、なんていうか久しぶりだわー」
酔っているせいか、若干おやじっぽい。
イナハは異世界においても未成年だと主張して酒を断り、食べてジュースを飲んだ。
「んー・・・味は旨味もあって美味しいけど、少し塩辛い。あっでも、レモンが添えてあるっていうのは、そう思う人への配慮か。ということは、これは単品で食べるものじゃなくて、お酒とかお米と一緒に食べるもの。なるほど、これは売れる・・・なら、販路はどうしようか。村まで行って鶏の食肉化を図ろうか。あーでも、今は卵の生産で成り立ってるから・・・」
なんか真剣な表情をして経営者目線で語り始めている。誰かジュースに酒でも混ぜたか、それとも彼女の素か。分からないが気に入ってはくれたようだ。
黄金の鎧の兜を取ると凄いイケメンだったヘクターと、宴で食事を摂ったことで幾分かマシになったジュンも食べて驚いた。
「・・・いいな、これ」
「レモンを掛けると、くどさが消えてサッパリするね」
二人が普通に飲み食いしているのはいいことだ。だが、今こうして関係者しかいない状況というのは、全員が分かっているからだろう。
キリがいい場面なので、俺も食べながら話を切り出すことにした。
「・・・さて、今回の魔王討伐、敵側だったお二人さんには訳を話して貰おうか」
ヘクターは険しい顔をし、ジュンは俯いた。やはり二人とも本位で魔王側に付いていたわけではないようだ。
「僕は――」
ジュンが話し掛けた直後、ヘクターが手で制した。
「いい、俺が話す」
ジュンは頷き、ヘクターが代わりに話し始めた。
「・・・数カ月前のことだ。俺とジュンは冒険者ギルドで出会った。飲み食いしながら語り合って、お互いの夢が国を作ることで、一緒に国を作るかってパーティを組んだ。それで、強さと名声が必要だということで、依頼を次々と受けていたんだが、ある日、人混みの中で女の声が聞こえたんだ。竜の巣に挑んではどうか、とね。強さと名声を求めている俺としては、丁度いい機会だと挑むことにした。正面からドラゴンに挑み、ジュンはテイマーとして俺が負かしたドラゴンを次々と仲間に引き入れた。最終的にはほぼ全てのドラゴンと戦い、勝利し、竜の巣を二人で乗っ取ることに成功した。
そこまでは良かった。だが一週間ほど経ったある日、魔王が復活したんだ。近くにいたジュンは魅了の魔法で操られ、俺は戦いを挑んだが勝てなかった。逃げ帰ることは出来たんだが、ジュンを置いてはいけず、二人して魔王に付く選択肢しかなくなった。それからは知っての通り、町や村を襲ってアンデットを量産、国一つを堕としてこれから大躍進って所をあんたたちが来てくれて、俺たちは今ここにいる。
罪があることは分かっているし、償う覚悟は出来ている。俺たちの今後をあんたたちに決めて欲しい」
ヘクターは気を紛らわせるようにエールを飲み干した。追加でエールを出してやる。
俺としては、正直なところどうでもいい。快適な生活の為に利用できそうなので生かす方向で考えているだけだ。
他の人の反応を見てみるが、ルナさんは今回の魔王討伐にはほぼ関わっていないので、ノーコメントと言いたげに黙って食べて飲んでを繰り返している。
ジークフリートとソフィアは聞くだけで言いたいこともない様子だ。
レヴィアタンは眉間に皺を寄せているミホを心配そうに見つめ、当のミホは声を荒げた。
「あんたらなぁ・・・大勢の人が亡くなったんやで!? なんで、誰も、何も、二人を責めないんや?」
と、言われてもなぁ・・・。
俺は砂肝を食べながら困惑する。当たり前だからこそ、こうして正義感を持つミホにどう説明したものかと少し悩んでしまう。
この中で最年長のジークフリートが口を開いた。
「・・・ミホ、魔王は災厄なのだ。犠牲は出て当然だ」
「せやかて、それに加担してた奴を庇うんか!」
今度はソフィアが答えた。
「納得しないでしょうけど、私は二人を罰する必要はないと思ってる。状況が違えば、あなたも私も魔王の配下になっていた可能性があるわ」
「・・・どういうことや?」
「ジュン、でしたっけ? あなたのテイマーとしての力、ミホに効くでしょう?」
突然言葉を掛けられ、ジュンは面食らう。
「えっ、あー・・・はい。効くでしょうね。多分」
「はぁ? うちは人間やで!」
ミホの矛先はジュンに向いた。ジュンは慌てて言う。
「それは分かってますよ。でも、ミホさんは自分の意思よりドラゴンの力が強過ぎて、テイマーとしてはドラゴンという認識が通ってしまうんですよ」
「・・・・・・ユウ、酒や、酒をくれ!」
ミホが迫るので並々注いだエールを渡すと、一気に飲み干した。そして空になったグラスをこちらに向けて来るので、おかわりを出してやる。
自棄酒を敢行するミホが少し心配だが、俺としてもソフィアやジュンと同意見だ。念には念を入れて戦う相手と方法を指定したのはその為だ。
ミホをフォローする為なのか、次はイナハが問い掛けた。
「ねぇジュン、だったら私はどうなの?」
「ええっと・・・うーん・・・隙を見せてくれれば、もしかしたらもしかするかも、くらいですね。普段のあなたならテイムは有り得ません」
「だそうよミホ。力の使い方を学ぶことだね」
「ふん、言われなくてもそうする! 明日からな」
その後もミホは酒を飲み続け、すぐにトイレへ駆けこんでいった。今頃盛大な嘔吐をしていることだろう。
とりあえず、意見は二人を生かすことが確定しているようなので、いよいよ俺は彼女を紹介することにした。
「・・・次の話に移ろうか。恐らく、今回の騒動の原因の一つだ。アジテーター、いるか?」
「すでにいる」
声のした方へ振り向けば、既に厨房に置いていた砂肝を食べていた。
驚いたのは全員だが、特に驚いて声を出したのはヘクターとソフィアの二人だった。
「その声・・・そうか、あの時の声はお前だったのか」
「・・・エイリーンに囁いていたのは、あなただったのね」
驚く中で俺は紹介する。
「彼女はアジテーター。まぁ見た通り、何処にでも現れて、何処にいるのか分からない奴だ。関わりたいなら、相応の覚悟を持ってくれ」
「よろしく」
いつものにやついた笑顔で挨拶するが、誰もが警戒して挨拶しない。
ここで、一番関係の薄いイナハが疑問を抱いて言った。
「ん? ねぇ、ユウってもしかして彼女のこと知っていたの?」
「ああ、まぁ・・・彼女と何回か接触して、腑に落ちない部分は大体彼女が関わっているんじゃないかと疑っていた。魔王討伐の時も、傍にいたらしい」
恐らく当たっているだろうが、答えはしないだろう。以前のロザリーさん毒殺未遂事件だって、アジテーターがそうするように仕向けたのだと思っている。動機は無い。あってもその方が面白そうだったから、とか言うだけだろう。
だから俺はアジテーターに別のことを聞く。
「アジテーター、何か食べたいものは?」
「宴にも参加していたから、そこまで腹は減っていない。あっさりしたものと、温かいものが欲しい」
そういうことなので、俺は冷蔵庫の中から余っているキャベツを取り出して、適当に細かく刻んで茹でる。その間に鍋に赤ワインと水を少し、さらに蜂蜜を入れ、胡椒とシナモンと少量の辛子と香草を加えて温め、グリューワインが完成。ボイルキャベツも出来上がってピーター特性の酢を水で薄め、塩コショウで味を調えて、和えて完成した。
人数分に分けて提供する。
「どうぞ、ボイルキャベツの酢和えと、グリューワインです」
各々が美味い美味いと反応する中、アジテーターのいた場所に振り向くと、既にいなくなっていた。困った奴だと思いながらも、俺は自分で作った物を食べた。
うむ、美味い。
話すことも無くなり、夜の宴はこれにて終了となった。




