第86話 芸術少女
※今回はちょっと胸糞悪い表現があるので、ご注意ください。
アリス・ワンダーランドが、母親を狂っていると認識したのは7歳の頃だった。
「アリス――本当にあなたは奇麗ね」
朝は笑顔で母が起こしに来る。
朝6時に起床させ、身支度を整えさせると、派手なドレスを着させた。
「さあ、食べるのよアリス」
リビングの椅子に座りテーブルに出てきたのは、少量の食事のみ。
アリスの家庭には十分な貯蓄があるため、お金が無いというわけではないのだが……
「……お母さま、アリスもっと食べたいよ……」
食べ盛りの子供にとっては明らかに少ない量だ。
足りないというのも無理はない。
しかし――
「――何言ってるの?」
母親の目は、その瞬間黒く染まった。
そしてアリスの腕を強く掴む。
「いたい! いたいよッお母さま!」
その握力にアリスは泣き出してしまう。
そんなアリスに対し母は、黒い眼でアリスの頬を力いっぱいに叩きつけた。
あまりのことに泣くのをやめ、呆然とするアリスに母は言った。
「いいアリス? あなたは私の『娘』じゃないの。
――あなたは私の『芸術作品』なの。わかる?」
眼前に迫る母の狂気に、アリスは頷くことしか出来なかった。
「ご、ごめ、んなさ……い……」
「そう。それでいいのよアリス」
アリスが謝ると、母は何事もなかったかのように笑みを浮かべた。
「さあアリス――今日もたくさん奇麗になりましょうね」
***
アリスの母親は有名な芸術家であり、美容家でもあった。
『真なる美』を追い求めていた彼女の作品はどれも高値で取引され、彼女は一代で莫大な財産を築くこととなる。
だが、彼女は満たされない。
『美』とは何なのか。
『芸術』とは何なのか。
その答えが出ぬまま葛藤し、10年の月日が流れた頃――
彼女はとうとう答えを導き出す。
曰く。
――人間そのものが『美』であり、『芸術品』である――と。
人間は美しくも醜悪にもなる。
おそらく、その差が出るのは生活の質だろう。
ならば食事、睡眠の質、肌のケア――全てを管理すれば『人間』を創り出すことができるのではないだろうか?
そのために必要なものは、最高の遺伝子だ。
最高の男と、最高の女から生まれる『美』。
――最高の男は探さなければならない。
――だが、最高の女はここにいる。
――美容家から生まれる子こそ、『真なる美』になりえる権利を持つ!
彼女はその後、世界中から男を探した。
そして、4年の歳月をかけ見つけ出した男と交わると、彼女は出産。
『さあ、わたしの最高の芸術になって――アリス』
このときから彼女は、完全に狂っていた。
***
過度な食事制限に加え、肌が焼けぬよう家からは一歩も出してもらえず、生まれてから日の光を一度も浴びることなく生きてきた。
それだけならまだいい。
一度、アリスに虫歯ができてしまったときは地獄であった。
『まだ乳歯で良かったわ――』
母はそう言うと、アリスの口に手を突っ込んだ。
その先は容易に想像できる。
言い表せぬ恐怖がアリスを襲い、身体が小刻みに震えだした。
『や、やめ――』
『大丈夫よ。抜いてもまた生えるから』
麻酔もせぬまま、母は虫歯を思い切り引き抜いた。
『――ッゥがあ゛あぁああぁあ゛あ゛あぁッッ!!』
悲鳴を上げる我が子に、母親は抜いた虫歯を見てニッコリと笑うだけ。
『よかったわ~。奇麗に抜けたわね!』
あくまで母親は、娘を芸術として完成させようとしていた。
・・・
・・・・・
・・・・・・・
アリスが生まれて9年。
地獄のような日々を必死に生きる。
(……お腹がへった――)
アリスは9歳。
それだというのに、食事の量はあのときのままだ。
食べても食べても満腹になるどころか、腹八分目にもならず、ただ必要な栄養を摂取するという目的を達していくのみ。
(……お腹がいっぱいになるとどうなるんだろう? 幸せなのかな? 苦しいのかな? それともそれ以外かな――)
一度でいいから、たくさん食べたかった。
だが、それを言うと母親は悪魔のような顔でアリスに暴力を振るうだろう。
これから自分はどうなるのだろうか?
人間としてではなく芸術品として、一つの人形として生きていくのだろうか?
(……つらいよぉ……くるしいよぉ……)
毎日泣いていたアリスの目には、もう涙は浮かばない。
もうすっかり、泉は枯れてしまった――
トントン――ガチャ……
扉を開ける音が聞こえた。
もちろん正体は母だ。
けれど、その日は違った。
母の後ろには、大勢の男たちがいた。
「アリス、今日はとっても楽しいことをするわよ……」
「たのしい……こと?」
母が頷くと、後ろにいた男たちが前に出る。
すると、おもむろに服を脱ぎ、下半身を露出させた。
「いいアリス――セッ○スは女の魅力を高めるの……だからアリス?」
「……???!!!???」
「たっぷりと――抱かれなさい」
その言葉を最後に、母親は男達だけを残し部屋を出ていってしまう。
外からは鍵を掛けられ、脱出は不可能となった。
「アリスちゃん――」
「本当にかわいい――」
「ほら、怖くないよ――」
「こっちにおいで――」
「い、いや……だ」
アリスは手を伸ばし近づく男たちを躱すと、ドアを必死に叩いた。
「たすけて! あけてお母さま! あけて!」
ドンドンドン! と何度も叩いた。
手には血が滲み、扉に赤が付着する。
『――アリス』
何度もノックしていると、母の声が聞こえた。
「お、お母さ――」
『――大丈夫よ。怖いのは最初だけだから』
けれど、聞こえたのは無情な声。
地獄へ突き落すような、最悪の言葉だった。
力が抜けて膝をつくと、男たちがアリスの腕を掴む。
「ほらほら」
「早く脱いで」
「もう待てないよ。脱がせよう」
ベッドに放り投げられると、腕を力いっぱいに押さえつけられた。
身動きが取れず、暴れようにも力が出ない。
おそらく過度な食事制限によるものだろう。
だが男たちにとっては好都合。
(いやだ……)
眼前に迫る男たちに、アリスは思った。
(もっと食べたかった……ただ、生きたかっただけなのに……――)
恐怖で失禁してしまうが、男たちはそれすら喜び狂喜する。
それが激しく気持ち悪かった。
(……もうだめだ――)
アリスは諦めた。
そして、願った――
(一度でいいから……お腹いっぱい、食べたかったなぁ……――)
アリスの純潔が奪われようとした。
瞬間、アリスの身体を突然の浮遊感が襲った。
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