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バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話  作者: 紅赤
第4章・魔剣争奪戦編
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第58話 タローvsジード(1)

 あの日、自分が愛される者に嫉妬していると自覚した日。

 思えばその時から、嫉妬の魔剣(レヴィアタン)はボクの手によく馴染むようになった。

 自覚する前と後では技の速度、正確性、威力の全てがまるで別のものとなっている。

 自分で言うのもなんだけど……


 ボクはけっこう強いんだよ?


 魔王になって200年は経過したけど、ボクに勝てたモンスターも人間もいない。

 ランとは一目惚れ同士だったから戦いはしなかったけど、それでも模擬戦ではランに負けたことは無い。


 だからボクは、ボクを強いと思った。


 なのにさ――


 これはないだろ!?



 ***



 ジードは連続攻撃の最中、魔剣を逆手に持ち替える。


青龍之雷(せいりゅうのいかづち)!」


 刃に蒼い雷が付与され、そのまま回転の勢いそのままに斬りかかる。


「ビリビリは好きじゃないんだよなー……」


 タローは片手で怠惰の魔剣(ベルフェゴール)を構えたままだ。

 蒼雷を纏った嫉妬の魔剣(レヴィアタン)怠惰の魔剣(ベルフェゴール)とぶつかり合う。

 雷が怠惰の魔剣(ベルフェゴール)を伝い感電する、ジードはそう思った。

 だが、ジード狙いは外れてしまう。

 タローはぶつかり合う瞬間に魔力を放出した。

 そして雷が魔力に当たると、そのまま魔力を拡散。電撃の直撃を防いだのだ。


「――チッ!」


 スピードを活かした連撃を繰り返すが、タローにはまだまともに一撃をくらわせられなかった。


(後先考えてられないな……!)


 ジードは嫉妬の魔剣(レヴィアタン)の魔力を開放する。

 すると、刃がぶれ始めた。そしてそこには――


「……刃が増えた?」


 タローの目に移るのは、まるで手甲鉤(てっこうかぎ)のように、刃が合計で3つ増えた状態の青龍刀(レヴィアタン)

 ジードはそれを、刀で峰打ちするときのように、刃が自分に向くように構えた。

 そして空中に大きく飛び上がると、高速で縦回転して、タローを襲う。


青龍之爪(せいりゅうのつめ)!」


 まるで龍が爪を振るうがごとき威圧。

 本当に龍なのではないかと錯覚してしまうほどであった。

 タローは大きく振りかぶると、怠惰の魔剣(ベルフェゴール)を先ほどより力を込めて振るった。


「――っ!」


 もう何度目かの魔剣同士の衝突。

 だが、今回は先ほどまでとは違い、タローの足元が大きく(へこ)んだ。

 足が少しだけ地面にめり込むのを見て、タローは右腕一本で持っていた魔剣を両手に持ち直した。


「ふんっ!」


 そのまま魔剣でジードを押し返す。

 ジードは空中で回転しながら近くの木に着地する。


「はぁ……はぁ……」


 肩で息をし始めるジード。

 だが、それでもジードは攻撃の手を緩めなかった。

 間髪入れずにもう一度魔力を開放し、蒼雷を付与。

 足に力を入れ大きく踏み込むと、今度は地面でスピンしながら突進する。


青龍之尾(せいりゅうのお)!」


 両手で持つ青龍刀(レヴィアタン)で、今度は平打ちする。

 先ほどの青龍之爪(せいりゅうのつめ)は刃の先端で刺突を目的とした突き技だった。

 しかし、タローの片手での威力は超えたものの、両手では押し返されてしまっている。

 対して青龍之尾(せいりゅうのお)は、刃で斬るのではなく、刃の側面でブッ叩く技である。

 殺傷性は低いが、当たれば全身に鈍痛が響き、まともに動けなくなる。

 動けなくなった隙にとどめを刺せれば勝ちだ。


 だが、それは無理な話だった。



「――うおっと」


 タローは高速で回転するジードの動きを見切ると、刃の側面をバンッ! と素手で止めた。

 そして、好機とばかりに刃を伝ってジードの手を掴む。


「なにっ!?」


 距離を取ろうと藻掻くが、タローの剛力がそれを許さない。

 タローは片手でゆっくりと怠惰の魔剣(ベルフェゴール)を構える。


「つ~か~ま~え~た~~~~ッッ!」


 魔剣が振るわれた直後、ジードの視界では慌ただしく映像が切り替わっていく。

 最初はタロー。

 次は木。

 その次は空。

 雲、木、雲、青空、雲、雲、木、木、木と来て、最後は地面だった。


「――がはッッ!」


 激突による衝撃と、響く腹部への鈍痛。

 思わず吐いた血は少量ではない。

 ポーションで回復したくても、手が震えて取り出せない。

 いや、それどころか何かを飲むという行為すら受け付けないだろう。


「~~~っっがっっっっぐふぉっっ!」


 格好など気にせず無様に跪き血を吐く。

 それしかできないほどに、タローの一撃は強烈なものだった。


(は、ははは……ホントに、こんなのないだろ……)


 ジードは努力した。

『誰か』もわからない『誰か』に認められるために努力した。

 愛されるために努力した。

 強くなれば愛されると信じて努力した。


 そして、やっと出会えた『誰か(ラン)』に愛され、ジードは報われた。


(そうか、ようやくボクは強くなれたんだ!)


 そう思った。


 でも、その思いが間違いであったのかと疑うほど、強い男がいた。


(努力してボクはこの程度……けどこの男は――)


 戦闘前、タローのことを少しだけ調べた。

 特にこれといった血筋でもなければ、特別な訓練をしていたわけではない。

 冒険者になってからも、滅多な修行もせずダラダラと毎日を過ごしているだけの男。


 そんな奴に、ジードは手も足も出なかった。


(負けるのか……こんなに努力したのに?)


 その瞬間(とき)、ジードに異変が起きた。


(努力してないのにコイツは愛されてる。ボクはこんなに努力して愛されたのに?

 なんでコイツばかり愛されてるんだ? なんでコイツはツヨインダ?

 なんデだ……ナンデダ……)


 嫉妬の魔剣(レヴィアタン)は、"嫉妬"を喰らう魔剣。

 嫉妬が強ければ強いほど、その力を増す。

 そして、嫉妬の魔剣(レヴィアタン)の能力は――




「――ナンデ、オマエナンカガアイサレテンダヨォォォォォ!!!」




 ジードの言葉は発音がおかしくなっていた。

 それもそのはずだ。

 ジードの身体が、人が発音できる骨格から変化していたのだから。


 腕は細く鋭い爪が生え、胴は蛇のように長く伸び、頭から角が生えていた。


 その姿はまるで――



「マジかよ……!」


 タローの目の前にいるのは――青き龍。



「ウォォォオオオオオ゛オ゛!!!!」



 嫉妬の魔剣(レヴィアタン)の能力の名は、青龍降臨(ブルードラゴン)


 ジードが行使したのは、嫉妬の魔剣(レヴィアタン)最高技、青龍変化(せいりゅうへんげ)である。


「オマエガ、ウラヤマシイィィィイイイイ゛イ゛!!」


 タローとジードの戦いは、苛烈を極め始める。

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