第100話 ありがとう
ついに100話です!
地面に寝そべり指一本すら動かせない。
アリスのできることは、転移を待つことのみ。
だが、異変はすでに始まっていたのだ。
「――べ、暴食の魔剣!?」
腕に激痛が走り目をやると、持っていた暴食の魔剣はまだ胎動を続けていたのである。
そして胎動ともに、刃がどんどん肥大化していく。
「な、なにがおこって――」
何とか抑え込もうとするものの、全く制御が利かない。
それもそのはず、暴食の魔剣を制御するためには"食欲"が必要だ。
今のアリスは満腹状態。
よって魔剣を制御することは不可能なのだ。
ブレーキを失った暴食の魔剣は、さらに暴走を続けていく。
膨張していた刃がついに暴発を起こすと、同時に大量の魔力が飛び出し、アリスの腕に絡みついていった。
「や、やめて暴食の魔剣! おちついて!」
叫ぶアリスの言葉など聞くはずもなく、魔力は腕から胴へ、足へと範囲を広げていく。
そしてとうとう、魔力はアリスの首へと手を伸ばした。
「が、はッ――」
暴食の魔力は容赦なく首を締めあげていく。
その苦しさに涙を流し、口からは涎と泡を吹き始めていた。
(もしかして、これが魔剣の!?)
話に聞くだけで見るのは――いや、体験するのは初だ。
――魔剣は好みの感情が枯渇した時、所有者の命を喰らう――
満腹となり、食欲が無くなったアリスの命を、暴食の魔剣は喰らうことにしたのである。
魔剣に慈悲など無く、どれほど愛用しようとそのルールは変わらないのだ。
「た、たすけて――」
暴食の魔剣を握る手を離したいところだが、魔力がそれを許さない。
どんなに離そうとしても、無理やり握らせるのである。
もうアリスにできることは無く、死を待つのみだ。
しかし、そんなことを彼は許さなかった。
「――なにしてんだバカヤローが」
暴れ狂う暴食の魔剣に、タローは拳骨を見舞った。
拳骨といえば聞こえはいいが、その威力は凄まじい。
ボゴァオォォッッ!!! という何とも表現しがたい強烈な破壊音がそれを物語った。
そのおかげか、暴食の魔剣は魔力を引っ込めて元の大きさへと姿を戻したのだった。
「――ッ!」
縛っていた魔力から解放されたアリスは、その光景に驚愕。
と、それをきっかけとして思い起こされたことがあった。
それは転移する前のこと。
母が気まぐれに置いていった絵本のお話。
お姫様が悪い盗賊団に捕まるが、白馬に乗った王子がさっそうと現れ、お姫様を助ける――という物語。
いつかきっと、自分を助けてくれる王子様が現れる。そう信じていた。
けっきょく元の世界では助けは来なかったが、どうやら今度は駆け付けてくれたようだ。
(……そっか。あなたがアリスの――)
アリスは年相応の少女らしい、可愛い笑みを浮かべた。
「おい、大丈夫か?」
「……うん……おうじ///」
少女を抱きかかえ、安否を確認する王子。
……ではなくタローを見やると、目を輝かせて頬をポッと染めた。
「え、王子?」
もちろんタローは理解していない。
そんなことをしていると、アリスの身体が光りだした。
強制転移の予兆である。
アリスはそれを察すると、消える前にタローの頬に軽くキスをした。
「……え?」
「……ありがとう。おうじ」
アリスは手を振りながら転移の光に包まれていった。
「だから、王子ってなんだよ……?」
アリスの言動に疑問を持ちつつも、「ま、いっか」と後回しにする。
戦闘中に移動したため、タマコからはかなり離れてしまった。
すぐにでも向かいたいところだが、そうもいかない。
「まだ……戻ってないか」
アリスに食われたステータスは大量だ。
現在回復中ではあるが、まだまだ全回復までは時間がかかりそうである。
「プー、枕」
「(^・ω・^)」
(訳:わかりました)
プーに頼むと、ちょうどいい大きさと柔らかさの枕に変形した。
頭を乗せて、タローは回復のための休憩をとるために、しばし眠りについたのだった。
冒険者アリス・ワンダーランド 脱落
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