前編
はぁ…また妹が
私も同じですわ
両親が甘やかすから付け上がって
私も
私も
高位も下位も貴族令嬢の話題の中心は今ずるいずるいと我儘な妹の事
妹が居ない令嬢は蚊帳の外
そして私も蚊帳の外
いえ妹が居ない訳ではありませんの。
皆様が困っている妹達と同世代の妹が一人いますの
「ねぇヘンドリック様、最近の流行ご存知?」
ヘンドリック様。私の婚約者
如何なる時も紳士的で、困った事が有れば相談にも乗ってくれる頼りになるお方
私は最近の流行について助言を頂きたく、急遽我が家にて茶会と称して招待したのですが
「流行?あぁ足の短い猫が人気の事かい。あれは愛らしいよね」
「はい!とても愛らしいですわ!!あの短い足でテトテト歩く姿と言ったら」
物凄く可愛い!お母様が猫アレルギーで無ければ…じゃ無いですわ
イヤイヤにゃんこの可愛さに嘘偽りは無いですし、人気ありますけどそれでは無いですわ
何故侍女が椅子を支えているのかしら
あらやだ私ったらにゃんこの可愛さについ腰を浮かせてましたわ
はしたない
「お見苦しい姿を失礼しました」
「いえ、貴女の愛らしい一面を見れ嬉しく思いますよ」
紳士ですわ
不快感を与えずフォローするその姿勢
この方ならやはり私の悩みを解決に導いてくださるに違いないわ
「流行りと言うのは、妹についてなのですが」
「あぁ、あの事かい」
「ヘンドリック様もご存知で」
「最近色んな何処で耳に入るするからね。服を強請ったり。装飾品をねだったり。家に寄って様々だけど総じて皆口にする言葉が『ずるい!ずるい』だっけ」
「はい。ソレですわ」
「その言葉で品物どころか、婚約者まで与える家族が居るとか。
それでこの話の何処に興味が出たのかい?」
あら、婚約者様は何もかもお見通しの様ですわね
では心置き無く打つけましょう
「私流行に完全に乗り遅れてしまいましたわ」
「聴きたく無い方向性だが、ここで聞かないと後悔する事は痛い程理解している。よし続けて」
あらっ何故か気合いを入れて聞く姿勢になった様な
「巷では皆ずるい。ずるいと言われてますわ。ですが私はどうでしょう。
たった一人の妹からその様な言葉聞いた事ないのです」
「ソレは教育も行き届き、人格も健やかに育っていて素晴らしい事じゃないか」
「私もそう思っています。
ソレに身内贔屓かも知れませんが年々美しさに磨きがかかって、あの子に″あの″婚約者が居なければそれこそ我が国の皇太子様の婚約者になったのでは無いかと」
そうあの子は私と一緒で容姿が大変整っているのよ。
まぁ私はどちらかと言えば可愛い系で系統は少し違うのだけど、、、パーツは似ているのよ!うん
今の所誰からも
『御姉妹似てますわね』
っとは言われた事は無いけど今後成長すれば似てくると…私は信じています
「私あの子にずるい以前に何かを強請られた事は無いのです
寧ろ頼み事すらされた事無いのです」
「つまり頼られたいと」
「頼られたいし、流行りのズルいも言われたいのです」
あらぁいつも紳士なヘンドリック様が難しい顔をしてますわ
やはりこの悩みは難問なのね
「随分とハードルの高い悩みだ。
因み何まで強請られたら差し出せれるの」
「服や扇子、靴に鞄。あと装飾品に髪飾り。メイク道具に香水に部屋のオブジェ。他にも私の部屋にある物なら可能な限り」
「凄く豪快だね」
あげて無くなればまた新しく作れば良いのよ。何も困らないわ。寧ろ物ぐらいであの子が擦り寄って来るなら安い物よ
ただ高レベルなのが婚約者を譲るって話しなのよね
「ヘンドリック様を譲る……」
「ちょっと君、私まで渡す気かい!」
いやいや無理よ。流石にコレばっかりは無理よ
うん無理だわ。
あらっ丁度いい所にマイシスターが
「お久しぶりですヘンドリック様。本日も仲睦まじくーーーー」
毎回定型文を無表情で語るマイシスターは今日もクールで可愛いわ。
でも私は言わなくてわ
「ごめんなさい。幾ら可愛い貴女にでも、お慕いするヘンドリック様は譲れませんの」
「…いや別に要りませんけど」
あれれぇ可笑しわね
こんなに素敵なヘンドリック様を欲しないなんて!
この子やっぱ良い子過ぎる
そしてヘンドリック様は嬉しく様な、気まずい様な複雑そうな顔をしてますわね
「すまない。君の姉君はまた暴走しているようだ」
「手綱はしっかり握っておいて下さい」
要らないと言う割に仲良いのよね
私に遠慮しているとか
「姉様、私にも婚約者居るからーーー」
そうでしたわ!!
私ったら何て事口走ったのかしら
しかも自分の婚約者との仲を疑う何て!
あれっコレは逆に嫉妬に駆られて意地悪する姉
悪役ソノモノじゃないかしら
「ごめんね。君の姉君は思考の旅に発ってしまったようだから、私から説明するよ」
「ぇさ…ねぇさ…姉様」
はっ!!どうか打首だけは!毎日貴女の幸せを願う為修道院行きに!
ってあれココは我邸宅の中庭
アレは…またやらかしましたわ
「姉様、ヘンドリック様から話しは聞きました」
私が思考の渦に飲み込まれている間にっ
流石ヘンドリック様!
出来る紳士は違いますわね
「そう。なら話しが早いですわ。
さぁずるいずるいコールを」
「ずるいずるい」
「…驚く程棒読みだな」
コっコレがあの流行りの『ずるいずるい』なのね
「望みを言いなさい。貴女は何を欲しているの」
「……望み?ずるいって言えばいいだけってヘンドリック様が」
「失念してました。ずるいを言ったら要求するまでがワンセットなんですよ」
もう!ヘンドリック様ったら肝心な箇所を伝えて無いなんて
完璧に見えてちょっぴり抜けてる
そんな所も可愛いわ
「さぁ望みを言いなさい!さぁ!さぁ!!」
「何でも良いので言って欲しい。そうすれば満足するはずだから」
ドキドキするわ。何を所望するの
「では、ずるいずるい今日のデザートはいつもより苺多目が良い」
「そんなの無理よ。駄目ですわ」
「そうですか。では通常通りで」
諦め無いで!
令嬢達の会話では抵抗した末に敢えなく断念する流れになっていますの
本当は直ぐにでも叶えて上げたいけど、焦らしてごめんなさい
「一回断るのが礼儀らしいよ」
ナイスアシストですわ!
「ずるいずるい!苺が食べたい」
その願い今こそ叶えて信ぜます
「ソコの貴方。料理長に今日のデザートは飛び切り甘くて大きい、スペシャルな苺になさいと伝えて頂戴。勿論山程よ」
「かしこまりました」
「姉様、山程は要りません」
「山程は無しよ」
側に居た侍女はホッコリした顔をしてたような
気のせいよね
「っと言う事で私ずるいずるいを経験しましたわ」
「「「まぁ」」」
ウフフっ今日は妹が居る令嬢とのお茶会。記念すべき成果発表の日
ただちょっと不安なので、妹と言っても少し年齢が離れた令嬢ばかりを集めての茶会ですわ。
いえ私は自信があるのよ!
ですがヘンドリック様がどーしても様子見した方が良いっと仰ったので
婚約者の声に耳を傾けるのも淑女の努め
「でわ、妹君にご自分の美味しい苺を分けられのですか」
「いいえ。あの子は自分の分で満足してましたわ」
あの子はそんな大食いでは無くてよ
「…お気を悪くさせたら申し訳ありません。ですがそれでは『ずるいずるい』を体験した事にはならないのではないでしょうか」
「えっ…」
「私共も詳しくは存じませんが、金銭や己の物を差し出してこそ『ずるいずるい』を成立させる事が出来るっと」
「でも妹君の願いを叶えて差上げるとは素晴らしいですわ」
「私もそう思います。かく言う私も3歳の妹にーーー」
「あら其方は3歳ですの。私の妹は1歳と3ヶ月でーーー」
えっ何ですの?どう言う事ですの?
成立して無い。嘘ですわ…嘘ですわ…だってあの子あんなに喜んでいたのよ…違うって…
「…さま…様…大丈夫ですか」
「ッハ!御免なさい。少しボーっとしてましたわ」
あらやだ皆様に心配掛けてしまいましたわ
「先程のお話ですが、私共は妹と年齢が離れ過ぎていてお力には…」
「いえ、良いのです。妹に強請られた事が無いので、少し舞い上がってしまいましたの」
「そうでしたの」
皆様に気を遣わせてしまったわ。あぁヤダわ今夜は落ち込んで眠れないかもしれませんわ…
「でしたら、私の知人が近々変わったお茶会を開くので其方でリサーチをしてきては如何でしょうか?」
変わったお茶会?なに?何?何ですの!
素敵な響き
「ソレはどの様な?」
「何でも私共と同世代の姉妹のみを集めた会だとか」
同世代の姉妹!我家にも招待状届いてるかしら
「参加された際には、後学の為是非私共にも御教示願いたいわ」
「勿論ですわ。私正しい使い方を学んで参りますわ」
パチパチ パチパチ パチパチ
あれっ姉妹参加だとあの子も連れて行かなくてはなら無いのよね……うん。姉妹で学べばより完璧ですわね
善は急げ今夜早速誘いましょ
ふふふっよもや当日の朝まで説得に掛かるとは思いませんでしたわ。
たがしかし招待状も手に入れ、ごねるあの子をもぎたてフルーツで釣り何とか馬車に乗せましたわ
後は会場に入って仕舞えば此方の物ですわ
さぁ、学ますわよ