王族武者は月夜に舞う
平安時代を舞台とした異能系アクションです。初投稿でイマイチ勝手がわからない上、中学生ぐらいのときに思いついたストーリーの焼き直しなので拙いところが多々あるかもしれませんが、大目にみてやってください…(人物を諡号で呼んでいる等…あと、登場人物の出自が一部史実と異なりますが、それはわざとです。)
ここは平安京。時は西暦で言うなら938年ってところかな。
まぁ、平安京って言ったって全くもって「平安」ではないんだけどね。
朝政の覇権を狙う諸勢力の陰謀が渦巻き、強盗に見せかけた暗殺なんかが横行するとんでもない場所だよ。
まぁ、これはどの世界線でも同じことか…
えぇ?それはどういうことかって?そんなこと気にせずともじきに分かるさ。
今は僕が苦労して見つけたこの世界で起きることの顛末を、
のんびりソファーに腰掛けてお茶でも飲みつつ眺めているといい。
ほら、さっき言ってた暗殺者がやってきたよ!
秋風吹く長月九日、六条堀川の宿屋の屋根の上で狩衣姿の青年が一人、
月を眺めていた。
彼は陽成院配下の武者の一人で、今夜も陽成院の命を受けての仕事である。
「あ~、あれが今回の標的ですかね。さて。」
標的を見つけたらしく、彼はそう呟くと屋根から飛び立ち、闇に消えた。
長月九日は、何やら縁起のいい日ということで毎年宴が催されるのだが、
彼の標的はそんな宴帰りの新任国司である。
本来、国司の任命は正月に行われるが、武蔵国の守、介に欠員が出たので臨時に任官されたのであり、今回の宴は任国への赴任前の餞別の意味もあった。
「従者はざっと4,5人。まあそんなものでしょうか。」
「!?な、何奴だッ!」
明かりも殆どなく、月明かりだけが頼りの夜道に、新任国司の従者の動揺混じりの怒号が響く。
無理もない。音もなく突然目の前に現れたのだから。
「武蔵守殿のお命頂戴しに参りました!従者の貴方方は標的ではありませんから、
じっとしていて下されば危害は加えませ…」
「戯言をぬかすなァァ!」
彼が言い終えるより先に従者が斬りかかった。
「わざわざ死に急がずとも…まったく。」「霊術、不敬誅殺法」
彼がそう言った瞬間、従者たちはみな血の気を失い道に突伏した。
「き、貴様ぁ、あ、妖の類か!?」
新任国司こと武蔵守は完全に怯えきって、目の前に立つ笑顔の青年に尋ねる。
「いやだなあ、妖なんて。まあ、契神術《けいしんじゅつ》なんて見たこと無いでしょうし、無理もありませんか。」
「け、契神術だと!そんなものが実在するのものか!仮に実在したとしても浄御原帝の秘儀をなぜ貴様が知っておる!それに、今貴様がしようとしていることは朝廷にた…」
「死を間際にすると、人は随分お喋りになるんですね。」
彼は懐刀で武蔵守の喉笛を裂いた。武蔵守は地面に叩きつけられ、目を血走らせながらヒューヒューとか細い息を漏らしつつ、彼を睨みつける。
「先ほどの貴方の問いに答えてあげましょう。契神術は実在しますよ。さっき使って見せたのがそれです。そして、浄御原帝の秘儀は、ごく一部だけですが父上より継承致しました。あ、そうそう、申し遅れました。私の名は源満仲。水尾院第六子、貞純親王の子です。貴方の主君、朱雀帝や藤原忠平卿もすぐにそちらへお送りするつもりなので、少しの間待っていて下さいね!」
「では、さようなら!」
長月十日の早朝、京の町衆が大路に転がる死体に群がっていた。
「ひどいもんやなぁ。従者まで皆殺しやなんて。近頃こんなんばっかりやなぁ。」
「また夜盗の仕業か?」
「おい!この仏さん、新武蔵守様と違うか?」
「えぇ!また新任の国司さんが殺されはったんか?おお怖。狙われてんと違う?」
そんな喧噪を横目にかの青年、満仲はほくそ笑み、隣の青年に語り掛けた。
「六宮様、万事手筈通りに進んでおります。後は大納言殿の推挙次第ですね。」
「ああ、満仲。我らは必ず皇統の簒奪者らを誅する。そして…」
「皇統を取り返し、再びこの国に平穏を取り戻す!」
どうだい?ぜ~んぜん平安じゃないだろう?
えぇ?どうしてこんなものを見せたのかだって?
聡明な君になら分かるだろう。この世界こそ僕らが干渉すべき特異点だからさ!
でも然るべき時が来るまで君にはもう少し待っていて欲しい。
今はこの世界の登場人物の思うようにさせてあげよう。
まぁ、僕はちょいちょい干渉するんだけどねぇ。
どうでしょう、お気に召しましたか?
この話はまた別のストーリーの前日譚、というより1話の別視点なのですが、もし気が向けばそちらの話も上げていきます。では、また会う日まで。*訂正:一文目「936年」→「「938年」(3/4訂正)