異形の賜物35
16
私は不思議な感覚を覚えていた。
私のこの人生は、十八歳を迎える前に終わった筈なのに、ダラダラと一年以上の時を過ごしていた。
私の事を大切に思ってくれている人がいて、それを分かっているのに分からない振りをして、ただその人を自分の欲の為に使い、傷付けた後になって、やっと自分の愚かさに気付いた。
あの人が死んでしまった後からは、何故か自分の事を、自分に起きている出来事を全て、俯瞰で見ている事に気が付いた。
あの人と一夜を共にした時を、私の事を大切に思ってくれている彼を代わりにしようと思った時でさえ、何一つ罪悪感さえ抱かなかった。
あの人の代わりの彼が、私の奥まで入って来た時に気付いた。涙が出てきた。誰も代わる事が出来ないんだと。
せめて彼に最後までいってほしくて、私は泣いているのを悟られない様に彼の首に手を回し、引き寄せ、彼が私を使い果てるのを待った。
彼は果てた後に私を見るのだろう、だから無理だった。溢れる涙は止める術が無かった。この涙を見たら彼は傷付いてしまう。もうこれ以上彼を傷付けたく無かった。
でも、もう繕う事の出来ない所まで墜ちてしまい、その時になって自分の存在の不必要な事、誰かを傷付ける事しか出来ないくせに生きている自分を心から呪い、死のうと決意した。
あの人が死んでからの一年と少し、何故生きていく意味も、意志も無いのに死のうとしなかったのかを考えてみた。私は怖かった。多分死を恐れていた。
自殺したあの人と出会う前まで、私は死と向き合った事が無かった。
あの人と出会い、とても遠い筈だった死というものが姿を現し、私の前に居座った。
その姿は、四角とか丸などという型には当てはまらない、異形の禍々しい姿をして、いつまでも私の前に腰を降ろしていた。
浮かれ、恋をした日々は等価交換の様に、幾つものある筈だった幸せな時間を喰い潰していく。
恐れていた死を受け入れる覚悟を持つ事でしか、この異形のモノから逃れられる術は無いのだと気付いた。




