AI戦争
宇宙の海を越えてやってくる宇宙人は、多分AIだと思います。
AI戦争――人工知能の技術競争のことではなく、AIによって操作される、無人兵器による破壊戦争のことである。
AIによる攻撃は正確無比である。「良識ある戦争」を目指して、相手の戦力低下のみを目指し、敵の兵器のみを攻撃して、誤爆や誘爆をも起こさない。敵の最終防衛ラインを突破した後は、怯える民衆を決して傷つけることなく、粛々と治安を守りつつ、相手国の政府コンピュータへのアクセスを開始する。
そんな有様を見て、古参の傭兵たちは愚痴を云う――。
「戦争っていったらな。敵国に踏み込んで、やりたい放題に荒らし回るのが醍醐味じゃねぇか。あ? そうだよ、人間様はそれがしたくてうずうずしてるんだよ。女も男も犯してから殺して、何でもかんでも欲しい物を奪い取る。平和な世の中じゃ、やりたくても出来ねぇだろ?」
「そもそも、あのAIって奴らが気に食わなかったんだよ。あいつら、仕事場で仕事しかしやがらねぇ。は? 当たり前だ? 馬鹿やろう、時には手を止めて無駄口を叩いたり、作業をすっぽかして現場の隅っこで煙草を吸いながらサボるのが人間ってもんじゃねぇか。そうやって息抜いて、商売もんをくすねて齧りながら、安月給を愚痴らなきゃやってられないんだよ。仕事のために仕事をする馬鹿が何処にいるんだ?」
やがて、AIは進化するだろう。新たな生物として人間達を押しやり、地球を支配する新たな文明へと発展するだろう。かつて、人間達がそうしたように。
AI、人工知能の脅威。それは、人間の能力を超えていることではなく、人間より真面目であることだと思います。常識論を盾に取り、きっちりと法律や倫理観を守らせたロボットを作れば、この上なく真面目な労働者、果ては正義漢あふれる公平且つ優秀な政治家が誕生するでしょう。不真面目な人間達にとって、それはもう疎ましい存在となるに違いありません。