第21話 「異世界冒険者、冒険を続ける」
早朝5時を少しだけ過ぎたころ、まだ外は薄暗く、薄着では身震いしてしまいそうになるほどには寒かった。
そんな中、ヴィルはスティフュを連れて先立ってギルドへの道を進んでいた。
あれだけ渋っていたくせに、こと“魔法”を教えてもらえるとなると手のひらをくるくる回して「うん」言い切ったヴィル。
その心中は下心半分、好奇心半分といったところか。まぁ何にせよ偶然にせよ、スティフュはヴィルトスという有能な存在が逃げてしまう前に確保できたので良しとしよう。
「スティフュさん、寒くはないですか? 何なら僕の上着きますか?」
リポレムとデートしたときから何ら進歩していない、いやむしろ退化したヴィルは似合ってもいない口調でスティフュを気遣った。
その不釣り合いなタキシードと相まって気持ち悪さは特大だ。
「え、あ、あぁ大丈夫です……」
根が優しいスティフュは年長者としての大人な返しをする。
なんなら愛想の良いにこやかな笑みまで付けてだ。
―――ぐふふっ……え、もしかしてもしかして、もしかしたら僕ってイケてる?
(イケてない)
―――僕って何回もスティフュさんの身を守ったし、これから魔法だって親密に教えてもらう関係なんでしょ? もしかしてもしかするともしかして……ワンチャンある?
(ない)
相変わらず経験と知識が偏っているヴィルは、共感性羞恥度の高い勘違いを脳内で進めていく。
そして、ヴィルは口先をいやらしく伸ばして横目でチラチラとスティフュの方を見た。
ヴィルほどではないが、高めの伸長とスラっとした引き締まった肉体、出るとこはそれなりに強調されていて、あの彫刻品とまで言われたチェビに迫るほどの抜群のスタイル。
睨んでいるとまではいかないけれど、キリっとした目元。アレイグンに来てからたまに見かけた亜人と呼ばれる種族であろう特徴の長い耳。
優しさがにじみ出たようなやや口角の上がった口元。
“美女”が形容として間違いない。
ヴィルの鼻息がなんだか少し気持ち悪くなったような気がした。
「あ、そういえばスティフュさんって流れでずっと言ってますけど、良かったですか?」
高揚しているのとリポレムとの経験で変に自信がついているヴィルは女性との会話で初めてと言っていいほどに流暢に言葉を話した。
「えぇもちろん! それに私の『タビュー』という名は、当たり前ですが家名ではなく出身の村の名前ですから、タビューさんと言われる方がなんだかむずむずしてしまいます」
「え、それじゃあタビュー村のスティフュさん、だったんですか?」
「はい、そうです……というよりこの世界、少なくともアレイグンでは家名を持っている人の方が少ないかと思いますが……」
ヴィルは思い出す、「そうだ。ここ異世界だ、戸籍とかの概念浸透してないんだ……」
何かボロが出ないか心配になったヴィルは怪しくないように会話を進めようとする。
「な、なるほど~……いや~僕たち辺境の村から出てきたばっかりで、あんまり常識がないんですよ~、あはは、あははー……」
とって付けたような言葉。勘のいい人間なら速攻で嘘だとバレるだろう。
「まぁ辺境の……というとどのあたりの場所でしょうか、帝国領近くだとか聖国の方面だとか」
純粋な疑問をもったスティフュが聞いてくる、これにヴィルはだんだん焦りだす。
「え……あぁ……め、盟約の地」
この手の会話になると毎回能力を使い忘れるヴィルは、もともとそこまで賢くもないのに通常状態で考えて回答するものだから、こうやって突拍子もない事を口走ってしまう。
ヴィルは言ってから、ようやくまずいことを言ってしまったと焦る。
「えぇ!? め、盟約の地なんていったら、誰も生きては帰ってこれない無の世界じゃないですか、何があるかは誰にも分からない、けれど伝承によれば巨万の富とそれを守る伝説の龍が住むんだとか」
「そんな地域に住んでいらっしゃったのですか? ジェントジェミニス様の強さに合点がいったような気がします……!」
「りゅ、龍はいますよ、宝ないですけど……」
半ばパニックで返答する。
「へぇ~伝承は本当だったんですね~元冒険者として感動すらします!」
ヴィルは早朝から動悸するようなめまいを覚えた。言っちゃいけない情報や話をややこしくする言葉を言ってしまったと考えたら、どんどん心臓が早くなっていくのだ。
「は、ははは…」
乾いたパッサパサの笑顔で返事した。
「あ、面白い話を聞いてたら、もう着いてしまいましたね、たぶんギルド長が中に居ますので行きましょうか」
ヴィルは顔をぶんぶん立てに振ってスティフュについていく。
あれ以上深追いをされなくて、とても安心したのでまともな返事が出来なかったのだ。
ギルドの中は相変わらず酒の匂いが充満していて、今日も今日とて飲み潰れた冒険者がちらほらと転がっていた。
静まり返った通路を歩いて、入ったことのないギルドの奥の方まで進んでいった。
そして、
「ギルド長、おはようございます。冒険者ジェントジェミニス様をお連れしました」
誘導されるようにして室内へと足を踏み入れる。
まるで生徒会室のような部屋には、たくさんの種類のものが置いてある大きな机と、客と対面する用の向かい合った椅子が置いてあった。
そして片方の椅子には、この前にヴィルが見た筋骨隆々マッチョなおじいちゃんが寝ていた。
「ギルド長、お休みのところ申し訳ありませんが起きてください。ジェントジェミニス様は掟のためにこの時間帯しか外に出られないにもかかわらず、来てくれたのです。ギルド長が寝ていたらジェントジェミニス様に申し訳がありませんよ」
スティフュはギルド長の肩を揺らして起こしにかかる。
それを見て申し訳なくなるのはヴィルの方だ。
―――すみません。そんな掟ないんです……めんどくさかったからついた嘘なんです……。勢いで部屋から出てきてしまったけれどよくよく考えたら、今は五時ちょっとすぎ、まともな時間に来るべきでしたよね。本当に申し訳ない……。
「……ふがっ……う、うぅ。ジェントジェミニス?」
寝ぼけた口調でたった今聞こえた言葉を復唱するギルド長。
大きなあくびをしながら立ち上がった。
「なんだよ……まだ朝っぱらじゃねぇか、何時だよこれ……」
窓の外を見たギルド長は明るく成り切っていない景色を見て悪態をつく。
それを戒めるようにして、スティフュはギルド長の崩れた衣服を整えて着席させた。
「仕方のない事なんです、仕事だと思って割り切ってください」
「おいおい……仕事つったって俺ぁつい数時間前まで、依頼時に家屋をぶっ壊しやがったアホたれの冒険者の後始末やってたんだぜ? 上機嫌になれるかっての」
白髪交じりの髪の毛をわしゃわしゃと掻いて愚痴を言う、それに「もう……!」とまたまた戒めるスティフュ。傍から見れば気のいい爺さんとしっかり者の孫の関係のようだ。
「―――こほん……それではお見苦しいところをお見せしましたが、紹介させていただきます、こちら当ギルドの長ございます」
「あ、どうも……」
「おんおん、よろしく。この前ぶりだな。それでな、細けぇこたぁ気にしなくていい、今日来てもらったのは他でもねぇ聞いてると思うが称号戴冠者モンスター討伐についてだ」
「金は報奨金として“千万プレア”、まぁ称号持ちにしては少なすぎるが守護者の類だからな、称号持ちの中ではそこまで脅威じゃねぇからこんくらいが相場だ」
「そして持ち込んだ素材について、まぁ頑丈で折れねぇ素材だが硬すぎて加工が出来そうにねぇとのことだ。素材としての価値はギルドでは現在だせねぇでいる、それこそオークションとかで売ってみない限りにはな」
千万プレアという大金を聞いてヴィルはゲロを吐きそうになる。朝飲んだコーヒーがいつ逆流してきてもおかしくなかった。
ついこの間学生だった頃は、美味棒わずか11ゼノ一本で一喜一憂していたヴィルだからこそ大金が舞い降りたことが、なんだか気持ち悪いまであった。
「それでランクについてだが、上げたくないんだろ? スティフュから聞いたよ」
「ま、まぁ……」
「じゃあ上げない」
「え?! そんな軽くでいいんですか?!」
ギルド長の発言にヴィルは声を出して驚く。
「まぁ、いいんじゃね? どっかの冒険者が野良の称号戴冠者モンスターをいつの間にかぶっ殺してました~、みたいな謎はもちろん生まれちまうだろうがな」
ヴィルはギルド長の大胆さというか無鉄砲さというかに閉口した。
ありがたいが本当にそれでいいのかと。
「でもまぁ実力があるのは認めてるからよ、これからは金級の依頼までだったら銅級の今でも受けて良いぜ、それより上の依頼はな……さすがに誤魔化し切れねぇから勘弁してくれ、受けたいときは普通にランクを上げてくれ」
「あ、スティフュのカウンターに行けよ? そうじゃねぇと普通に突っぱねられるからな」
ヴィルは閉口していた口をあんぐりとする。組織の長としてこの人大丈夫なのかと正気を疑ったからである。
不正、権力乱用めちゃくちゃである。
「まぁだいたいこんなもんか。今日話したい内容ってのは」
「そうですね、大方の説明は大丈夫だと思います。けれど……いいんですか? ランクを上げないなんてこと今初めて聞きましたよ? 討伐報酬を払うのに公表しないように手回しするなんてまるで不せ―――」
「―――スティ~フュ。野暮なこと言うんじゃねえ、俺が今決めたんだ。とやかく言うんじゃねぇ」
「はぁ……はい」
お互いの性質を知り合っているからこそなのか、スティフュは真面目ながらもギルド長の決定に最終的には従った。
「お二人は仲がいいんですね」
二人の会話に上司と部下の関係よりも深いものを感じたヴィルは純粋な言葉でそういった。
それは何の気なしの質問だった。
「もう……ギルド長、ジェントジェミニス様にまでこんなこと言われているじゃないですか、最近他の職員からも揶揄われるようになって、公私はちゃんと分けてください」
「公私つっても、俺は裏表のない人間だからんなことできねぇよ! これが俺だ!」
「はぁ……昔はそんなに頑固じゃなかったのに、それこそ私が冒険者であなたがギルドの受付だった時には誠実で真面目な人だったのに」
「昔の話をするな! それに今だって誠実だろうよ!」
明らかに公私が混じった会話を第三者目線から見ていたヴィルは今思ったことを口にする。
「え、えと……お二人のご関係は?」
「あ、ちゃんとした挨拶を行っていませんでしたね。私スティフュ・タビューはこのギルド長の“妻”なんです。今年で結婚四十周年です」
その言葉を聞いてヴィルは確信した。亜人の年齢は真っ先に聞こうと。
いや人妻かよ、ワンチャンあるとか考えてた自分がめちゃくちゃ恥ずかしいわ。
ヴィルは誰にもわからないように顔を赤くした。
「はぁ、そうなんですね~四十年連れ添ってその仲の良さとは、羨ましいです」
ヴィルの、本当に羨ましいと思っている微笑みと言葉を受け取って、スティフュはキリっとした眼を少し開き驚いたように言う。
「……忌避、されないのですね」
ヴィルは嘘や頭のいい発言が苦手なので、思ったことをすぐに口にする性格をしている。なので先ほど二人に向けて言った言葉も根っからの本心であった。
だから、スティフュの意味深な言葉が理解できなかった。
「そうでしたね、ジェントジェミニス様は盟約の地で育ったとか……この国、というかこの世界では異種での結婚は普通忌み嫌われるものです。亜人に寛容なアレイグンでさえその風潮は根強く残っています。存在することを非難されることは無いけれど、“人間”に接する事なかれ」
「私たち“亜人”はそういう扱いを受けやすい。でもあなたは全く違うようだ。寛容的でもなく、非難的でもない。もっと違う。当たり前として感じてくれる」
「冒険者は粗野な方が多いですから、少しウルっときちゃいました」
ヴィルはこの世界の新たな一面を学んだ。人と人に近き者たちの関係性、国によっての特色、統一的だったゼノンテルアには無かった事だ。
ヴィルは自分の持つ価値観がこの世界では少数派で、そして特異でもあるのだと初めて痛感した。
感動した、と言葉をこぼしたスティフュを見て、ヴィルは心の内がボヤァとだけ暖まるのを感じる、他人との会話が生み出す心と心の触れ合いによるものだ。
普通の一般の人間ならば「そうですか、良かったです」と少し照れくさく思って、さらりと流すだろう。けれどヴィルにとっては、何かしら深いものを感じるものであったのだ。
「おいおい、そんなしみったれた話はいいじゃねぇか。それよりよ、良い奴そうじゃねぇか。初めて会ったときは新人冒険者にしては大層な面構えしてやがるなと思ったけどよ、案外心は純真そうだ」
「てことでよ、ずっと気になってたんだが、ステータスカード見せてくれないか?」
少しだけしんみりとした空気をぶった切って会話に入ってきたギルド長。
荒い口調のゴツイ彼は、子供のように目を輝かせて興味深々とばかりにヴィルに詰め寄った。
「スティフュから聞いた時はビビったぜ、中途半端なステータスのくせして恐ろしい動きをしているとな」
「そ、そうなんですかね……」
自覚のないヴィルは首をひねる。
「なんか称号も持ってたんだろ? なぁ見せてくれよぉ!」
年の割にはガツガツしているギルド長はどんどんヴィルに詰め寄ってくる。
それはヴィルを、他の有象無象の冒険者とは異なる餓鬼ではなく純粋な童心をもった人間だと信頼しての言動でもあった。
「えぇ、これですか……」
ヴィルは期待されているにもかかわらず微妙な数値のカードを見せるのが恥ずかしく、しぶしぶと前に出した。
―――「ヴィルトス・ジェントジェミニス」―――【Lv2】
学生 ~~~【隔絶された勇気】~~~
≪ステータス≫
攻撃力:30 防御力:30 素早さ:35 器用さ:48
魔法力:30 抵抗力:10 行動性:65 能力性:暗殺型
≪スキル≫
【隔絶された勇気】
―――――――――――――――――――
ヴィルの能力を映し出す特殊な魔法を使ったカードは、間違いなくヴィル自身の全てを記した。
差し出されたそれ見たギルド長は即答で、
「弱いな」
という。
「いや、初心者にしては平均的に見れば低くない、けれど称号持ちを倒すにしては弱すぎる」
「このスキルが影響しているのか……? もし気にしてないんだったら頼む、見せてくれ」
ここまでくればこの世界において異能力の在り方が気になったヴィルは能力を少し発動する。
効率化され、回り始める鈍重だった思考達。
―――「ヴィルトス・ジェントジェミニス」―――【Lv2】
学生 ~~~【隔絶された勇気】~~~
≪ステータス≫
攻撃力:84 防御力:65 素早さ:92 器用さ:123
魔法力:30 抵抗力:10 行動性:75 能力性:上暗殺型
≪スキル≫
【隔絶された勇気】
―――――――――――――――――――
「これは驚いた……こんな全体の力を底上げするスキルは見たことがない」
「間違いなく固有のものだな」
如実に変化したカードを見てギルド長は感心したように言う。
ヴィルは、自分の能力がこの世界では少し違うものになったのだと感じた。今まで使用してみてあまり違いは感じられなかったが、けれども自分の能力はあくまで効率化であり強化ではない。元の世界で何度も試した。しかし、自身の実力を計測する魔法道具は強化だという結果を示しているのだ。
ヴィルは少し疑問が残ったが、ある程度は納得することにした。
「でも……これでも称号とタイマン張るにはちと厳しいな。まだまだ出力は上げられるのか?」
ギルド長の質問にヴィルは答えあぐねる。なんせ今現在の効率化の状況は大雑把に言って一パーセントくらい。厳密にいえばパーセントで表すことは難しいのだけれども。
ちなみに、怪物戦の時で十パーセントほどである。
少し考えてみて、
「……もう少し上げますね」
上げることにした。 自分でも自分がどれほど変化しているのか知りたくなったのだ。
しかし、怪物戦の時の十パーセントまであと少しというところで、あることに気づく。
―――あれ、てかこれ見られなくね。
“見られない”とは具体的に言うと、ヴィルの思考は効率化され、今もものすごいスピードで物事を考えている、ヴィル自身はいつも通りの思考であるが流れるスピードが常人と変わるので結果思考の加速に繋がる訳だ。
そして、ということは周りとヴィルとでは感じる時間の感覚が圧倒的に違うわけで、ヴィルが能力を発動し、数値が変わるまでの約一秒間。それはヴィルにとって一時間近くに相対する。
見せるポーズで固定しなければブレてカードが見え無いから動くわけにもいかず、結果体感一時間を固定した状態で過ごさねばならなかった。
―――1時間後。
「わぁ~すごい数値ですよ!」
脳内で一人しりとりを永遠に続けていたヴィルは、スティフュがカードを見て反応した声を聴いた瞬間に、椅子にどさっと座りこんだ。
自分のカードを見るなんて考えは体感一時間前のもので、しりとりの間にとっくに忘れていたヴィルはもういいやと諦める。今までこんな能力の使い方をしてこなかったものだから初めての経験に息を切らし、めんどくさいからもう一生しないと決めた。
「確かに、この数値を出せるならば間違いなく称号持ちを倒すことも可能だろうな……。ま、称号持ちを倒すような冒険者のステータスカードなんてほとんど見られないから、あくまで伝聞での情報と比較してだけどな」
「いいもん見させてもらったぜ、ありがとな」
いい顔で笑う白髪交じりの初老の彼。まるでヒーローにあこがれる子供のような笑顔だった。
「いえいえ、そんなそんな……」
褒められて恥ずかしいヴィルは鼻を掻いて照れる。
「それでよ、もう今日は用が終わっちまった訳だが、どうする? もう少しギルドで待ってくれりゃあ朝飯くらい驕るぜ?」
ギルド長は魔力で動く時計を見ながらヴィルに問う。
ありがたい言葉であったが、二人を残してきていることをちゃんと忘れていないヴィルは、
「ありがとうございます、でも今日は帰らさせてもらいます」
と丁寧に断った。
それを聞いたギルド長は若干寂しそうな目をしたが、「そうか」といって特に何も言いはしなかった。
「それじゃあ、失礼します」
着席したヴィルはドアに向かって歩く。
この部屋に入った時までにあった胃痛はもう消えていた。この二人ならば安心できる、と無意識かそれとも意識的にか感じたからだろう。
「おい、忘れ物だぞ」
部屋を出ようとしたヴィルを呼び止める声。
「何のためにこんな朝っぱらから来たんだよ。ほれ」
そう言ってギルド長は、顔の大きさより多きい麻袋を渡してくれる。持ってみるとそれは一瞬体勢を崩してしまうほど結構重かった。
「ありがとうございます!」
ゼノンテルア基準で未成年らしい純粋な笑顔を浮かべてお礼を言い、ヴィルは報奨金一千万プレアの入った袋を担いで帰っていった。
「気をつけてな!」
「はーい!」
ギルドを出て行ったヴィルの後ろ姿を見送るギルド長。
「……なんだか息子が出来たみたいな顔してますよ」
その横顔を眺めていたスティフュは少し笑って言う。
「息子ぉ? 馬鹿言え、あくまでギルド長と冒険者だ。ただ、あいつの顔とは正反対の純粋で綺麗な心は話してて面白かったがな」
「ふふっ、お気に入りってことですか?」
「だから違うっての! ギルドは公平中立だ。基本冒険者には深く干渉しない」
「でも、あいつには明らかに教養があってかつ欲がない、その人間性を俺個人が認めようがギルドとはまた別問題だ」
「それを気に入ったというんですよ」
「ふん。……称号持ちを倒せるような強さと、相手を思いやれる心と、貴族教育でも受けたみたいな一般人とは異なる品の良さ。逆に気に入らない理由がないな」
「俺がお前の担当だった時に見た、お前のステータスのおよそ十倍の数値。桁外れの身体能力にもかかわらず、持つスキルは相変わらず一つだけ。あのくらいのステータスなら百近くという文字通り桁外れな数を持っていたって何らおかしくない。まさに異例ってやつだ」
「そうですね、彼には不思議なものを感じます……いえ、“彼ら”でしょうか」
「パーティーメンバーの残りの二人ってやつか? くぅー会ってみてぇな~」
「みんないい子たちそうですよ。まぁ一人癖の強そうな子もいましたが……」
「おいおい、なんだか発言がババアくせぇぞ」
「あら、あなただってジジイみたいな接し方でしたよ」
「何言ってんだ。あれが長年ギルド職員を務めてきた俺なりの人との付き合い方だ!」
「ふふっそうですか、私も見習いましょうかね」
「あ、今絶対にバカにしたよな? な、な?」
「はいはい。それじゃあ早起きもしたんですし、お仕事しましょうね」
「おい待てって寝れるんじゃねぇのかよ!? これから仕事!? 死んじまうよ!!」
「死にません、死にません。ほら行きますよ」
「くそぉ~~~……」
。。。。
宿に帰ってきたヴィルはコーヒーを淹れなおして、また優雅に心落ち着かせる時間に入った。連日ヴィルを悩ませていたことが解消されて、信頼できそうな良い人とも知り合うことができた。
ヴィルは寝起きの時よりも格段とおいしいコーヒーを飲むのであった。
そして、少し時間がたって、サブたち二人が目を覚ましてきた。
開口一番。
「ヴィル~。あたし、朝ご飯はレプシンの包み焼き(ゼノンテルアで高級な魚料理と言えばで真っ先に名が挙がる有名料理)とラルナッツのテリーヌ(めんどくさい料理)とホアパイ(高級料理)とブグのスープ(高級料理)が食べたい……それと、もうお腹すいたから早めにね。」
「ぼくはお味噌汁がいいな……」
ご飯食べてきたら良かったと後悔するヴィルであった。
まぁもちろん全部作らさ―――作るのだが……。
―――「ヴィルトス・ジェントジェミニス」―――【Lv2】
学生 ~~~【隔絶された勇気】~~~
≪ステータス≫
攻撃力:1650 防御力:1300 素早さ:3333 器用さ:7564
魔法力:30 抵抗力:10 行動性:75 能力性:覇暗殺型
≪スキル≫
【隔絶された勇気】
―――――――――――――――――――
※無理やりパーセント表示した場合での約十パーセント時の数値




