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Mundus non re agnoscis ≫—僕達の異世界青春—≪  作者: ヒカワリュー
冒険の始まり《オーネス》
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第18話 「異世界真剣勝負」


 さぁて始まりました。第2回鬼ごっこ!!

 まるで最愛の人物を探し求めるように遠く離れたこの王都の地までやって来た化け物選手。

 化け物選手は前回ヴィルトス選手陣営の奇策に破れましたからねー、これは早々のリベンジマッチということでしょう。

 そしてヴィルトス選手走って走る! 森の木々など全く気にせず自身が持つ最高のエネルギーを精いっぱいに使って地面を蹴り上げています。

 ヴィルトス選手が飛び立った後はまるで地面で何かの爆発があったかのようなクレーターが出来ています!

 しかし! 化け物選手も負けていませんよー。 糸の絡まった傀儡(くぐつ)のように奇怪で、変幻自在な関節を持ってして予想外な高速移動をしています。

 ですが、遺跡の最上階で受けた爆発のダメージは相当なものです。ところどころの表面は()ぜ、右腕に至っては跡形もないですね。やはりあの爆発から咄嗟に逃げ切ることは不可能だったのでしょう。それでもあの一瞬の間にここまで原型を残せるほど回避行動が取れているのですから大したもの、いや素晴らしいと言えるでしょう。


 今はまだ両者の距離に進展はありませんが、今後の展開に是非とも注目したいものです!


・・・


「ムリ!ムリ!ムリィィィィィィィ!!!!!!!」


 両手に花、さらには背中にも花。

 計3人を担ぎ上げ、あの悪鬼羅刹の顕現から逃げ続けるヴィルトス。

 昨日のことがデジャヴのように流れていく。


「…って命の危機に見るのって走馬灯じゃね!? やべぇじゃん!!」


「ヴィル~私鬼ごっこあきたー」

「かくれんぼにしよ~」


 右腕でがっちりと掴まれているアシミ―は面白く無さげに不満をこぼす。


「ばっかやろう!! このほぼ真後ろに敵がいる状況で隠れるだと!? 隠れる間もなく八つ裂きだよ!」


「ヴィ、ヴィルとすく―――ぐべぇぇー」


 左腕に拘束されているサブは今までの超高速な逃走劇に脳を揺らし、ヘンゼルとグレーテルのパンの道しるべのように、広大なこの森林に吐しゃ物の足跡を残してゆく。

 

「ちょ! ヴィル! さぶちーが吐いちゃったよ! もっと快適な運転できないの!?」


「馬鹿言うなぁぁぁ!!!」


 今の状況を鑑みて、有り体を文にするならば、ジェット機のエンジンが付いたベニヤ板1枚の(いかだ)が地平線の果てまで水しか見えない海のど真ん中で3人の人間を乗せて、さらには突然の嵐に巻き込まれている状況。

 とでも形容すべきか。簡潔に、安全運転なんぞ糞くらえ。

 

「アシミー! 面白くないってんなら即行で終わらすためにもなんか手伝ってくれ! 頼むから!」

「逃げ続けてたらいつかは追いつかれそうなんだ!!!」


 昨日より悲痛そうな表情を顔いっぱいに広げて、自分の右わきの方に怒鳴り散らかすヴィル。

 元より、誰もこんな長丁場の鬼ごっこなど望んでいない。 


 されど…


「ことわーる! あたしはか弱い乙女だから無理~」


「どの口が言ってるんだ! この! この!」


「あ、あぁぁー!やめへー!!」


 さっきまでは腕に担がれている二人を慮って腕をなるべく振らずに走っていたヴィルだったが、その自制を解き、アシミ―を捕まえている右腕だけを「ブンブン」と動かす。

 しかし、やめてと言っているアシミ―だが、その様子に緊張やその他のマイナス的ものはなく、楽観、歓楽以外の何物でもない。


「―――それでは私がっ!」


 「ばっ」と名乗り出たのはヴィルの背中にしがみつくように引っ付いている、ギルド職員―――スティフュだ。

 

「えっ…」


 スティフュが名乗り上げるのと同時に、これ以上ない幸せがヴィルを包みこんだ。


―――思い返せばそうだ。王都に向かうときも、王都についてからも、サブはサブで頑張ってくれてはいるもののサブの性質上そう上手く本人の思うように事は進まない。

 それにもう一つのことに比べればそんなこと屁でもない。

 アシミ―だ。やつはやることなすこと全部人頼み。終いには着替えや食事までやってくれと言われるのも時間の問題。僕は召使いや奴隷ではない。

 そう、そこで、だ。誰かが、自分の、自分以外の誰かが。僕に代わって、僕のお願いを、聞いてくれる。

 これほどまでに素晴らしい気持ちはいつぶりだろう。たぶんまだ一月も経っていないだろうけれど、もう何年振りかのようにさえ感じてしまう。

 あぁ…これが、仲間、か。

 仲間って…いいな…

 オムが何だかマシに思えてきてしまったな…


「―――ジェントジェミニス様! 一つお願いがあります」

「少しの間だけでいいので直線に走って頂けるでしょうか?」


「そ、そのくらいなら! 任せてください!」


 久しぶりに誰かが言うことを聞いてくれたという幸福を噛みしめて、言われた通り馬鹿正直に真っすぐ走る。目の前に迫った木々はまっすぐ進むために頭でカチ割り進路を開いた。さらに与えられた幸福感により心なしか「おぉぉぉ!!」とやる気で速度が徐々に上がっていくような気もしなくはない。

 

 横の移動が無くなり、横のブレが無くなったことにより、ヴィルの背中にくっついているスティフュの体が少しだけ、安定する。

 そのうえで、スティフュが取る()()()()()とは―――


「―――『()えるアギナの登臨(とうりん)』―『時雨(ときさめ)雲母(きらら)惜敗(せきはい)(ぬぐ)い』―『開闢(かいびゃく)の槍持て』―『鮮明に』―『我が指し示す方を(えぐ)りきれ』ッ!!!」

「【一直線上の越流(アーク・アルドレイク)】!!!」



 俄然、スティフュはまるで己の指先から()()()()()を吐き出すかのようにして構え、一度叩き潰されたゴキブリのように崩れた()()()でこちらを追いすがる()()に向ける。

 そして、彼女が(うた)にしてはやや不出来なものを唱え終わったが最後。

 

 彼女の見詰めた眼前の光景は、存在そのものまで抉り、削り、穿たれた。

 それはまるで、昨日のデジャヴだ。

 テラメアの、あの傍から見れば、狂った感情が作りだしてしまった、あの兵器のよう。

 違いがあれば、それはもう―――僕達の方には決して()()()()()()()()ということだ。



「何それめっちゃかっこいいんですけど」


 ヴィルは目を輝かして言った。


。。。



「『一直線上の越流(アーク・アルドレイク)!!!』」


 ギルド職員スティフュの(うた)により呼び出された大量の水は、流体にしてはあり得ないほど真っすぐにそれも空中を激流の如く流れ、森という木々に囲まれているはずの景色に過剰な風穴を開けたのだった。


 それを間近で見たヴィルは目を輝かす。


「す、すげー!!!!」

「スティフュさん! そのめちゃくちゃかっこいいのもスキルなんですかっ!!??」


 さっきまでの警戒心と美人女性への忌避感はどこへ旅去ってしまったのか。背面にいるスティフュを下ろし、童心を取り戻したかのように肩まで掴んで質問攻め。

 余談だが、もしこれがオムなら興奮のあまり気絶している。二人とも能力が地味だったり自爆攻撃だったりでいまいちぱっと見のかっこよさに欠けるので、この“the cool”な感じが堪らなく羨ましいのだろう。


「ジェ、ジェントジェミニス様…! お、落ち着いて、ください!」

「せつめ…説明しますからーーーー!!」


 ギルド職員の制止などもうヴィルには届いていない。何故ならヴィルトスの目には大き【羨】【望】の文字が刻まれている。

 アイナールに教えてもらった、元の世界とは違いこの世界での不思議な力【スキル】は誰にだって得られる能力、というのが興奮材料にもなっている。

 ヴィルトスにとって是非とも可能性をつかみ取りたくて必死なんだろう。


 それから5秒ほどたって興奮冷めやらぬヴィルトスを正気に戻すためアシミ―が一喝。

「ヴィル―――うるさい」 愛妹のシスに何か良いことを言われた時と同じくらいの人生の最高潮を迎えていたヴィルは一気に地面へとたたき落される。

 好奇心を手放すことと引き換えにヴィルは正気を手に入れた。



「…え、えぇとそれでは、ご存じないようなので【魔法】と【スキル】の説明を―――」


「―――【魔法】っ!?」


「喋るな、黙れ、座れ」


ヴィルにしか聞こえない程度の小声でアシミーが言う。


「はぃ……」


 たまらずヴィルは萎縮した。


「それでは魔法とは―――」


スティフュは急に縮こまったヴィルを若干不思議そうに見たが、すぐに請われた魔法の解説を始めた。


「―――この世界(セプテンブス)に何千何万もの種類が存在する【スキル】。

 その中でも【詠唱】というものを必要とし、その詠唱を手段、【魔力】を媒介にして生み出す()()()()()、が【魔法】です。

 魔法の中に、石を生み出す魔法がありますが、スキルにも似たようなものがあります。

 ではこの二つの【石を生み出す】という()()に何の違いがあるかといいますと、まず【魔力】という【体力】とは違った独自の概念を使用するのが魔法。スキルは体力を消費します。この魔力というのは体力と違った概念だとよく言いますが特に体力との違いはありません。

 使いすぎれば疲れますし、度を越えれば倒れます。

 その2。魔法には【詠唱】という段階が必要になりますが、スキルにはその段階はありません。

 その3。魔法の習得は比較的スキルより簡単だということ。もちろん例外はございますが。

 その4。スキルというのは主な場合先天的な生まれ持ったものが多いです。それとは違って魔法は後天的に知識によって会得するものがほとんどです。

 習得難易度の問題や危機的状況に陥った時の打開方法などの点から、【魔法】というのは冒険者やそれと同じく戦闘を必要とする職業の方が多く取得します。

 逆にスキルは利便性などの点から、冒険者の()()の方が自分の護身の術を広げるために後天的な“修行”などで体得します。


 そして魔法というのは所詮は全ての源である【スキル】の一角でしかないのですが、最近の人々の認識では魔力と体力の概念の違いから、別のものとして捉えている方も多いのです」


 人差し指を立てながら魔法世界の豆知識的なものを追加しつつ、とても分かりやすい説明をするスティフュ。

 ヴィルは「なるほど~」と秒間三往復の程度で頭を縦に振って聞いた。

 

「それで、魔法についてもう少し詳しく説明しますと、魔法の発現には先ほども言いました【詠唱】とさらに【術名】が必要です。

 私がいま使用した魔法は【一直線上の越流(アーク・アルドレイク)】これが術名です。

 そして私が唱えた【詩】が詠唱。

 魔法には(くらい)があって、詩が1つであれば【第一詩律(エナ―)】、2つであれば【第二詩律(ディア)】など数字の順番に上昇していきます。

 この2つは習得難易度や詠唱難易度から、低級と俗に称される簡単な魔法です。効力や威力も低い物ばかりですね。

 つまりは、魔法とは詩の数言い換えて位によって効果も習得難度も変わるわけです。ちなみに私がさっき撃った魔法は詩が()()なので【第五詩律(ペンティス)】の魔法です。私の本気の本気魔法です。

 なので説明しました通り、魔力を大幅に使用したため枯渇してしまい、もうくたくたです。 まぁ私が枯渇しているのは魔力なので体力はおぶっていただいてたおかげで満タンなのですが、やはり動けそうもないです」


 その後も、ヴィルの「魔力ってどんなものなの」とか「魔力は僕にあるのかな」とかいう興味深々な説明がいくつか続いたが、冒険者の味方であるギルド職員のスティフュは惑うことなくスラスラと適した答えを述べたのだった。


「―――以上が冒険者の基礎知識範囲を一部抜粋した魔法に関しての知識です。いかかだったでしょう?」


 聞き終わったヴィルは残像まで作って高速で頭をブンブンと振り、子供じみた言動でその続きの言って欲しい言葉を待った。

 

「な、なので練習さえすればジェントジェミニス様でも使えるようになるかと…」


「うおっしゃぁー!!!!!!!」


 かっこいい魔法を覚えようと心に誓うヴィルだった。


「…ちなみに先ほど魔法とは攻撃の手段だと言いましたが例外があって、その中でも有名なのが他者の怪我を治す回復の―――」



―――デジャブ。


 既視感的な電波が脳を貫いた。


 それは相手にするには馬鹿馬鹿しいが、決して看過するほど甘くはない“何か”だった。

 この世の根底をその可憐な童顔で踏みにじる()()への罪と罰はそれほど軽いものではなかったらしい。



 豪快さも謙虚さも、そのどれにも属さない幽鬼な行動は()()を最高の化け物へと仕立て上げる。

 慈悲も、優美も、正確さも何一つ持ち合わせずに、いや―――不要だと言わんばかりに捨て去って、削ぎ落した肉体には恐怖だけが残った。

 そして、黒より黒いその空虚な闇を見て、顔面の蒼白さは何の冗談か。破れた腕から滴る血液は何の化粧か。

 何かには白を切り裂く鋭利な爪と、極端な足の長さで相手との距離を詰められる俊敏さがあればそれで十分だった。

 しかし、この世のものではない効率厨たちにはその爪は掠りさえしなかった。


 荒野にたたずむ立方体の真っ黒な遺跡。

 全十層からなるその建物は製作者が建造して以来、踏破されることはなかったが、程よい空間と丁度いい敵により冒険者というハイエナが毎日のように入り浸っていた。

 覚える必要は皆無だがその遺跡の名は【ティレイザーの遺跡】といった。

 厳重に隠された第十層つまり最上階は、今は破壊されたためほとんど誰も見ることは叶わなかったが、本当ならばそこには巨万の富が眠っていた。


 何かはそれを守護していた。

 どこからか入り込んだ羽虫一匹も第十層への侵入を拒んでいた。

 しかし、やはり何かは初戦で敗退を喫したし、暴力的な破壊に巻き込まれたのだ。

 

 けれど何の因果か何かは……いや、よそう。何かの名誉のためにもあえて言おう【守護者(ガーディアン)】と。

 そしてそう、守護者は生き残った

 しかし守るべきものは無し。


 片手程の頭しか持たない守護者は考えた。己の行く道を。

 そうして迷った末に導きだした答えが任務の続行であった。すなわち排除である。

 それは意識的なものなのか、製作者の思惑なのかは誰にもわからないが、結果として守護者は身が持つ限りに敵の排除を遂行することに決めたのだ。

 

 しかし、守護者はまたしても敵わなかった。

 全力を出して排除しようとしたのか、それとも全力を出さなければならないほどに壊れていたのかは定かではないが、それでも全力で追いかけても敵に己の一矢が届くことはなく。

 敵の背面より現れた破壊が、なけなしの部品たちを根こそぎ引きちぎっていってしまった。


 地に伏せ、体は硬直し、世界は守護者の闇と同じくらいに暗くなり始めていた。

 その瞬間、()()()()()()()()()

 守護者由来の能力でなく、世界の能力ですらない。

 もっと別次元的な常識をねじ伏せる圧倒的な力だ。

 

 力は守護者の背中を押した。まだ仕事が残っているとばかりに押した。

 暗く黒いその“光”に押されて、ご都合主義の下に任務を続行する。

 


―――怪物の追随は……()()()()()()()()


 微かに聞こえた風切り音、音速を超えた斬撃から音など聞こえるはずないが、それでも微かにとらえたヴィルの第六感は過去の二度にわたる経験からそれの恐ろしさを全面に危険信号として送る。

 命令を受信した感覚は行動を開始する。今すぐに。

 


―――…………シュッ


 無知な自分に学を与えた恩人を守るため、この無防備な状態から最大限の防衛行動をとるヴィルトス。

 未だにヴィルの視界に()は映っちゃいない。でも外の景色がどれだけ遅く感じようがまだ目の前の女性が超スローモーションで説明を続けている態勢であろうがヴィルは走った。

 次の刹那。視界に入る霧のような影、効率化したこの視界でさえこんなにもあやふやにしか奴を視認できない。効率化した目と脳、その間を通るのにかかる時間は刹那以下。だけれども奴の攻撃にヴィルは全くついていけていないことから、ヴィルは奴より刹那以下の時間で過去にいると言える。裏を返せば奴はヴィルより刹那以下未来にいるとも言える。

 兆速。ヴィルは今できる最大限の効率を図る。


 さて、そろそろ0.00000001秒くらいが経った頃だろうか。


「きゃっ……!」

 

 吹き飛ぶスティフュ。圧倒的風圧に地を転がるサブ。静観するアシミ―。

 そして―――右足を()()()()()()ヴィル。


「……チっ、しくじった」


 スティフュを助けるために己の安全を捨て去り、自分よりか弱い彼女を守ったヴィル。

 ただしその代償は思いのほか激しい。脹脛(ふくらはぎ)から下にかけて無くなってしまった足の断面からは、狂い壊れたポンプのように際限なく血があふれ出るのだ。

 止血の効率化を全力で推し進め、すぐに細胞で押しつぶす感覚で閉じ始めるヴィルの右足。されど刈り飛ばされた足の先は「にょきにょき」と生えてくることはない。

 左足を軸に奴から距離を取る。

 

「なんだよ……早くなってんじゃん」


 顔を僅かに強張らせヴィルは悪態をついた。

 それもそうだ。今までのやつの攻撃ならここまで速いものはなかった。というかあったなら死んでいた。


「ジェ、ジェントジェミニス様……あの魔物(モンスター)をご存じでしょうか……!?」

「あ、いえ……まずは助けていただいたお礼を……ち、ちがっそんな事今はどうでも……!!」


 頭が混乱しているのか、言葉と思考がごちゃごちゃになったスティフュは眼を泳がせながらもヴィルにそう問うた。

 けれどヴィルの返事も待たずして自分が掴んだ事実を震えた声で伝えた。


「先ほど追いかけられていた時にもしやと思いましたが……間違いありません! あの魔物は【怖武恐帝(バラストーキー)称号戴冠者(クラウン)モンスターです……」


 痛みで若干の余裕の無さを見せつつも、ヴィルは目線で疑問を訴えた。

 そしてそれに気づいたスティフュは役割として説明を続けた。


「“称号戴冠者(クラウン)”とは有力な冒険者や戦士を打ち倒した魔物や、強大な力を持った者に生み出された魔物の事を、常識の範囲外に居る存在だ、ということで一般的に呼ばれる()()の称号の事です」

「一体全体、なぜこのような場所に守護者シリーズの第二型である怖武恐帝(バラストーキー)がいるのか……」

「先ほども失念していましたが、怖武恐帝(バラストーキー)にあったことがある口ぶりといい、前の最上層との件といい、後で落ち着いたら色々お聞かせ願えますか、ジェントジェミニス様……」


 と言って、額から冷や汗を流しながら、強大な敵を見つめるスティフュはいろいろな疑問を抱えながらも()()()()に入った。


「う、うん……話します話します。生きて帰れたらね……」


 不吉なことを言ったヴィルは無くなった右足を押さえながら、冗談めかしてそういった。お互い聞きたいことが山ほどあるのだ。

 何も語らないうちに死ぬのは御免こうむりたい。


称号戴冠者(クラウン)との戦いは初めてではありませんが、こんな準備の無い状態では今まで有りません……弱音を吐くようですが、二度も奇襲されて助けられている事実がありますので、私なりに行動してみますが全くあてにはしないでください」


 相対する敵への警戒はそのままに、スティフュはギルドの制服を脱ぎ捨て、一瞬のうちに動きやすそうな身軽な装衣へと着替えた。

 腰に差していた短刀はすでに装備済みだ。


 ヴィルもヴィルで万全の状態ではないが、久しぶりの特大の痛みに思わず舌打ちを打って、ナイフを構えた。

 サブはこの緊迫した状況にも気丈に雄々しく仁王立ちをしていた―――と思ったら気絶していた。きっとヴィルの足が飛ばされたことが衝撃で、意識が「ぽこーん」と軽く飛ばされたのだろう。


 そしてアシミーは相変わらず静観し、ただただくだらなそうに指先の爪の手入れをしていた。

 しまいには、「かくれんぼしたかったな……」などと小学生のように話を引きづっていた。


『ブシュッルルルルルルル!!!!』


 三回戦目においてようやく一太刀浴びせたことに守護者は手ごたえを感じていた。

 湧き上がる力が自身の可能性を大いに広げてくれる感覚が溜まらなく快感だった。

 すると守護者の体は変化し始めるのだ。


「ジェ、ジェントジェミニス様……や、奴は遺跡の宝物を吸収していますっ………!」


「宝物を……吸収?」


「はい、いずれにおいても遺跡というものにはなぜか必ず宝物が存在します。

 その宝物には大小様々な価値のあるものがそれはもう大量にあります。遺跡に行く冒険者は怪物(モンスター)だけでなくその宝も目当てで行くのです。

 報告によるとあの長年最上階が未踏破だった遺跡はジェントジェミニス様によって最上階だけが跡形もなく消え去りました。

 そこにあったであろう貴重な宝含めすべてです。そこでその宝の中に()()を含んだ俗に『魔力道具』と呼ばれる魔法を扱える道具があったなら……宿る物体を失った魔力は空中に漂い、そこに生きていた生物―――すなわち今目の前にいるこの怪物(モンスター)に宿ったのです」

「そして今、宿主が私の魔法によって危機的状況になったがために、今度こそ宿主をなくして堪るかと、膨大な宝の魔力は完全に奴に吸収されてしまったのでしょう……ッ!!」


 スティフュの短刀を持つ手が微かに震えた。


 それを見てか、それとも単純なものか、守護者―――怖武恐帝(バラストーキー)は歪み切った全身を震わせる。

 殺戮の権化は今。首をへし折り顔を百八十度回し―――嗤う。



詠唱(仮)は全部意味が分かったうえで間違って使っています。

まぁ作者的には考えてつけた意味があるのですが…

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