第15話 「異世界冒険者☆爆死☆」
迷宮最上部。
本来、僕達が請け負った仕事と言うのは遺跡内の5階部分までの清掃なのだが、ここは生徒会という集団に身を置いている者の性か、どうせなら全フロアやっちゃおうぜ的なノリでここまで来てしまった。
そしてここまで来ると、どうやら他の同業者の方はいないようで僕の敏感な感覚でも、誰一人として冒険者の気配は感じ取れない。
後はこのフロアを掃除するだけで終了なのでせっせと始めるとする。
「ヴィルー晩御飯なにー?」
唐突にアシミ―が聞いてきた。
ちなみにサンドウィッチもどきを食べたのはついさっきのこと。
「…まじかよ、まだお昼から全然経ってないぞ」
「いやー気になって~」
「なら、好きなの作ってやるから、帰るまでに考えとけよ」
よほどうれしかったのか、アシミ―の顔が一気にパァーと明るくなる。
「やったー! 何にしよっかなー」
「さぶちーは何がいいと思う?」
「え? あ、うーん何が食べたいだろ、さっき食べたばっかりだからあんまり想像できないな…」
相も変わらずモップで「ゴシゴシ」と床を撫でているサブは、アシミ―からの質問に掃除を一時中断させ、頭を悩ませる。
しかし、そう考え込まれても、悩むくらい難しいものだと作るのもめんどくさいから、出来ればごめんこうむりたいところだ。
「あ、でももう1週間も向こうの料理食べてないから、郷土料理とか―――あ」
―――その瞬間、その一時、その一瞬。
サブが言葉を言い終わる、ちょうどその前かその後に、事件は立て続けに起こった。
それは、サブの「カウントが…」の声が早いか、アシミ―の歩くために踏み出した右足が明らかな陥没式スイッチの罠を踏み抜いたのが先か、はたまた僕が天井から降ってくる無数の矢を見るのが一番か。
なんにせよ―――やばい!!!!
「え、ちょちょちょ!!!」
天井から降りしきる大量の矢に全くの反応、回避、迎撃、が取れずにいるサブ。
陥没式のスイッチに足を取られてバランスを崩した結果、続く左足でも別のスイッチを踏みつけてしまうアシミ―。
「やば~」
―――いやノリ軽っ!!!
慌てて僕は【隔絶された勇気】を発動させた。
いつもの何十倍にも早く、効率的に、伝わっていく思考と感覚が遺跡からの攻撃を全て教えてくれる。
矢が描くであろう到達までの空路。着弾、着陸地点。全てを読みきり避け切る。
腰が引けて転びそうなサブを右肩に担ぎ、両足を床にとられ転倒寸前、あわや身近な壁に手を付けてバランスを保とうものならそこまでもが陥没し、刹那前回避したはずの結果に戻ろうとするアシミ―を、転倒してしまう前に左肩に担ぐ。
着弾まで、ほんのコンマ1秒以下の雨たちは最小限の体の動きで蹴り飛ばす。
そして走るわ走る。
その時、
<ガコンッ
突然、遺跡の内壁が大きく開いたかとおもうと、何か重い物質が「ごろごろ」と転がる音が聞こえてくる。
その鈍く地響きを伴った重低音は段々とその勢いを増しているようで、聞こえてくる音は、大きく、さらに大きくなっていく。
「ヴィ、ヴィルトス君? な、何この音?」
「分からんが…たぶんやばいな」
「ヴィル~あれ見てよ!」
まるで有名人を見つけた子供のように、僕の左肩で興奮冷めやらぬアシミ―が指さすのは―――
Oh~ BIG ROCK
「逃げろぉぉぉぉっぉぉぉ!!!!!!」
僕の等身をはるかに超えるバカでっかい岩石が僕達めがけて転がってきた。
「やっほー!!!逃っげろ~!!」
「何笑ってんだよ!? 助けてよ!!??」
「ヴィル~」
「ん!?」
「が ん ば」
「こんちきしょーーー!!!!!」
僕の肩上で,おじさんのように自分の太ももを「ばしばし」叩きながら、ゲラゲラと笑いまくるアシミ―。
度重なる驚きでサブはとっくに気絶している。
振り返って思いっきり殴ってぶっ壊したいところだけれど、今の肩に二人を背負っている状況ではそれも不可能だ。
振り返るのにもいつもより時間がかかるし、何よりこれ程までの大きさの岩を実害なく砕き弾き飛ばすにはそれなりの力が必要になり、そんな余裕を作る時間はない気がする。
僕の拳が岩に当たるより前に、とんでもない速度でこちらに迫ってきている岩が僕と二人にぶち当たる方が幾分か早い。
これも何もかも、アシミ―が協力してくれさえすれば解決するのだが………期待はできない。
「ほらほらー走りたまえ~ヴィルトース!!」
よし、今日の晩御飯はアシミ―の嫌いな宿屋のパンに決定だ。
「こなくそぉぉぉぉ!!!!!」
二人を下ろすこともままならず、岩の軌道から逃げることさえできず、速度を出すこともあまりできず。まさにピンチ。
しかぁぁぁし!!!
こんな時でも僕はへこたれない! 負けてたまるのか!! 気合と根性と情熱で【隔絶された勇気】を使わず、肉体的能力だけで走ってやる!!!
僕は隔絶された勇気を使う際に、誰かを肩に乗せて精密な行動をしたことがない。
ただ走るだけでいいなら大丈夫だろうけれど、くねくねとしたこの遺跡の中で逃げる、ということはかなり体幹と足さばきが必要になる。
一人での効率を求めたことしかない僕には【隔絶された勇気】はむしろ邪魔だ。
「おらおらおらおろろあおろあろあろあろあおらおろおあろあらおらおらら」
言語もめちゃくちゃになるほど走る。
走り続けていると、少しづつ、少しづつではあるが岩と僕の距離は離れていっている。
徐々に、徐々にではあるが、その互いの距離というのは確実なほど離れ離れになっていく。
着実に、一切の油断なしに、集中を切らさず、焦ることなく、逃げることのみに全力を費やす。
そしてついには―――
「―――…オーケーだ!」
「これでも食らえ!!!でか物ぅぅぅぅぅーーーーー!!!!!!」
相手との絶対的距離を取り、壁を蹴っては一気に反転。肩に担ぐ二人の安全に確りと気を回しつつ、足に力を溜めて、腰で支え、背骨で固め、一気に開放する。
さらには【隔絶された勇気】の集中を挙げて出力を上げて発動させ、僕の全力を底上げさせる。
溜めに溜めた力の奔流は解放されると同時に、自分の役割を最大限に全うしようと、力のままに乱れ暴れまわる。僕はその溢れ出るエネルギーを【隔絶された勇気】によって精密さを格上げた神経で御しし続ける。
僕が繰り出すは―――渾身の蹴り。まごうこと無き蹴り。
両者が触れ合った瞬間、突き抜け迸る岩と僕の右足とで生まれる衝撃は、僕の脚を奔り、股を通って「ずんっ」と左足に降りかかってくる。
しかしその全ては、僕の足を壊すことなく【隔絶された勇気】によって、効率的に床へと全て流れ出ていった。
されど、岩の方はそうともいかない。
僕と岩との熱い熱い情熱のぶつかり合いによって生まれたエネルギーを、逃がすことなくその身に受け、大轟音と共に一気に爆裂四散していった。
飛び散った破片の一粒でさえ僕達の方に飛んでくることはなく、僕の蹴りで生まれた風圧で向こうの方へと蹴り飛ばす。
「ふぅー」
力んでいた全身を呼吸と共に休ませてあげる。
「おつかれ~」
まるでちょっとした一仕事後の同僚にかけるような声音で苦労を労ってくるアシミ―。
そんな態度を取り続けていたら、さぞ読者からのヘイトを買っているだろう。ざまぁ。
「…あたしのこと嫌いなの?」
が、まるでこちらのことを見透かしてきているかのように、とってもかわいい顔で、とっても怖い雰囲気で、僕を睨み……見つめてくる。
「いえ! そんなことはありませんっ!!!」
そうだよな!? 読者の諸君もとっても可愛くて自由意思を持ったアシミ―ちゃんが愛おしくて堪らないよね!?
そうだよね!?
「ならいいけど」
―――危なかった……。
「ん? あ、うー」
ちょうどその時、サブが気絶の状態から戻ってきた。
「こ、ここは…?」
どうやら驚きのショックで記憶があやふやなようで、ここがどこだかあまり思い出せていないよう。
しかし、それも一時的なものだろう。直に思い出す。
誰もが一安心、解決、と思った矢先。
<ペタ…ペタ…
変に潤った物体が、乾いた地面を跛行するかのような、不安定な音が響いてきた。
それはカエルのような小動物が出すちんけな音ではなくて、まるで幽鬼の存在が実体を伴ってしまったかのような恐怖感を臭わせるもの。
岩を砕いたことによって生まれた土ぼこりが、ようやく全て地面へと帰っていた時。僕達が今まで逃げていた方向から、ゆらゆらと歩いてきたのは――― 人 であった。
がしかし、ただの人ではもちろんない。その頭身は優に“14”を超える。
一本一本が小刀であるかのような太さと長さと鋭利さを兼ね備えた爪を生やし。
奇怪とも表現しきれない、崩れたというにはあまりにも怖さに優れたある種整った顔面。
背骨はズレ、歩き姿はまさに幽鬼その者の有様だ。
今まで見てきたどの怪物より、一層怖さと存在感の格が違う《モンスター》。
異形、という言葉が一番お似合いなその怪物は、悠然とした様子で徐々に徐々にこちらへと歩み寄ってくる。
互いの距離が10mを切ったころ―――やつは動いた。
まるで、狂いきった自動車のように前進してくるやつ。
「ヴィール!!第2ラウンドだ~!!」
「こんちきしょぉぉぉぉっぉーーー!!!!!!!!!!」
怖さで溢れる涙を呑みこんで、光の反射より早く駆け出した。
走っては走って、走り続けて早数分。
さっきまでの岩石との戦いにようやく勝利したかと思えば、次なる刺客は百パーセント濃縮還元の化け物ときた。
“恐怖”という、与えることはあっても感じることが極端に少ない感情を、現在進行形で一心に味わっているヴィルは頭を空っぽにして走り続ける。
さっきと何ら条件は変わりない。ただ逃げ続けるのみ。
しかし、仮にさっきとの相違点を挙げるとするなら…化け物が岩よりも数段速いことと、化け物が絶えず御自慢の切れ味抜群の爪でこちらの命を刈り取ろうとしてくること、だろうか。
人の形は辛うじて成していたとしても、実際の様子や行動は、歪んだ背骨ゆえか二足で走ることかなわず、二本の足と指に生えたギラギラの爪をスキーのストックのような形で地面に突き刺して、ギリギリバランスを保っているという大変不安定な状態なのである。しかし、やつの個性としてならまさに打って付けの方法で、こちらへと高速で這いずり寄ってくるのだ。
もういっそすべてが恐ろしい。
「アシミ―!!!! 助けてぇ!!! 死んじゃう!!死んじゃうぅぅぅ!!!!」
「死んじゃったら死んじゃった時で骨はしっかりと持って帰ってあげるから!」
「任せろ!」といった具合で、めちゃくちゃなことを平気で言ってのける彼女。
咄嗟のことで、肩の二人を下ろすことが出来なくて、今現在も僕の肩上には二人の人間がいるのだが…片方は今日の能力使用回数限度を迎えて気絶したただの一般人、もう片方はこちらを手伝う気はなし。
対して、敵は暴力と恐怖のハイブリッドが、ゴキブリと融合したかのような存在。
勝てる気がしません。
岩からの逃走中は若干の余裕が僕にはあったが、こいつとの追いかけっこで余裕を生むことは不可能に近い。それこそ【隔絶された勇気】を発動しない限り絶対に、だ。
しかし、さっきも言ったが能力を発動してしまえば、この勝負、どう転ぶか分からない。
【隔絶された勇気】は効率を生み出すことができる能力であるので、僕以外の人間が抱く感想は「それこそ、どうとでも効率的にできんじゃね?」というものであろうが、そうともいかないのだ。
例えば、部屋の電気をつけるというシチュエーションで考えてみよう。
一般的な人間が持ち得る能力では、電気をつける方法は1~3通りくらいだ。
しかし、隔絶された勇気を発動した僕はそれが十倍にも何十倍にもなる、と言えるだろう。
だとしても、そこには弊害が生じるのだ。限られた選択肢を有り余る効率論で増やしたとして、どれがどういった結果を生み出すのか分からないのだ。
もしかしたら最善と思われるスイッチは片面だけの照明をつけるだけのスイッチかもしれない。
つまりは、効率化した先に何が生まれるかは、時として僕の想像を超えてしまうということ。
人を担ぎながら効率化した身体で逃げ回るには、どういった効率が必要なのか、能力の使用者である僕自身が分かっていない。
でも、能力によるリスクを恐れ、自分の力だけで逃げ回ることが不可能なのは自明の理。
それに半端なことでは相手は倒せないようだ。
さっきから、前に繰り出した足を使って床の石版をかかとで蹴り飛ばし、追いかけてくる【やつ】に一発くらわしてやろうと頑張っているのだが、ことごとく爪で「ちょんっ」と弾かれてしまう。
弾かれないように威力を強めようとすると、強すぎる衝撃が飛ばす前に石板を打ち砕いてしまう。
「アシミ―!!!!頼む!!頼むから戦ってくれえぇぇぇ!!!!」
自分が持つ男の矜持など地に捨て置いて、肩上でまるで絶叫マシーンにでも乗るかのように、楽しそうに、はつらつとした満面の笑みでいる彼女に、再三助けを懇願する。
しかし、世の常は必ず無情かな。
「いける!! いける!!! ヴィルだったらこんなやつワンパンだよワンパン!!」
本当にそう思っているのかそれとも僕を馬鹿にしているのか、この緊張的な場面で考える余裕は微塵もないけど、ただ言えることは一つ。
―――今日の晩御飯は断食だよ!!!!
「あぁ!!!もういい!!」
「サブ!!!サブ起きてくれ!!!」
期待値0のことにはもう何も期待することはない。
それならば違うことに賭けよう
「………………う、う…-ん」
「サブ! 良かった、起きてくれた!!!」
「………ヴぃ、ヴィルトス君…?」
「あれ、ぼく…」
「説明は後だ!! 後ろを見ずに今すぐ、僕のカバンから暗黒物質を取って僕に渡してくれ!!」
「いいか!? 後ろは見ずに、だぞ!?」
「後ろ…? う、うん」
気絶から無理やり戻して第一声がこれなのはかなり申し訳ないが、こちらはこちらでかなりやばい。
少しづつではあるがじりじりと距離を詰められてきている。さっきの石っころとはまるで逆だ。
「えーと…暗黒物質、暗黒物質…あー…あった!!!」
「あったよ!ヴィルトs―――…ぐばっ………………」
僕の肩上に、お尻から座るような形でいたサブは上半身をひねらせながら、僕の背面にあるカバンをあさり、暗黒物質を探していた。
その際、僕の忠告を律儀に守り、後ろを見ないでいたが、お目当ての物を見つけた途端にその緊張感が解けてしまった。ゆえに、僕の真後ろにいる異形で、異端で、人外の、化け物を直視してしまったわけだ。
考える間もなく意識は命より一足早く刈り取られ、その美少年を超えた美少女の性別詐欺然とした容姿を、目ん玉ひっくり返してまで崩し、僕の肩上で倒れ散った。
当然―――
「暗黒ぶっっっっしーーーーーーつぅぅぅっぅぅぅ!!!!」
倒れたサブには度々申し訳ないが、サブがまた気絶したことよりも、頼みの綱が長く暗い遺跡の床に転がっていったことがかなりショックだ。
これで、問答無用にうんともすんとも言わす隙もない程、一瞬で吸い込んでやろうと思っていたのに…
「やばいやばい!!!! ほんとやばいって!!!」
「んー?」
「アシミ―! もうほんとに万事休すだ! 頼みの綱が切れた!!」
「いやいや、ヴィルにはその拳がまだあるじゃ~ないか」
「ふざけるな!!殴れってか!? 死ぬわ!!」
「なんで?」
「ばっ」と後ろを振り向けば、その物凄まじい顔面をにたぁと歪めて、はよ来い、はよ来い、そんなふうに僕を招いてくる。そんなことは幻聴で、ありえるはずがない、そんなことはないはずだ、そんなことはないはずだけれど…
『キシュアァァァァァァァ!!!!!』
「ムリムリムリムリムリムリ!!!!!」
「やっぱり!!! あんなの殴れっこ無いって!!!!???」
「はぁ~もう、仕方ないな」
やっと協力してくれる気になったのか、それともそろそろこの追いかけっこにも飽きてきたのか、どちらにせよようやくこの現状は変わってくれる。
あー良かった良かった。
―――ん?
「あーあったあった」
「ガサゴソ」と僕のバッグの中身で何かを探していたアシミ―は、ようやくお目当ての物を見つけたのか掘り出した物品を高く掲げ、ご満悦。
―――ん?
「えいっ」
…それは、フィーネスの村を旅立つ時、もしもの時に備えて、自分たち以外の全てを消し飛ばすために、ラーがタッシ―に頼んで各班に用意してもらったもの。
発明王が自身の愛す人物の安全を守るため、過剰、異常、規格外、の三拍子で作った代物。
その効果は絶大で、説明書きもしくはその発明品の名前通り、全てを粉微塵にしても飽き足らず、地平の彼方までもを喰い尽くす。
名を―――『てっぺんの所にあるちょぼってところをポチってするだけで辺り一帯地平線の果てまでどっかーんってなる持ち運び式小型爆弾~』
<ポ―――
それに気づいたが、今。
僕の思考は全て統率され、支配され、指示される。
≪逃げるべきだ≫ と。
【隔絶された勇気】を極限行使し、ありったけを一瞬に引き出す。
世界から掻き消えた僕の右腕は、残像さえ残してやらず、アシミ―の手首のその先の物体をつかみ取り、後ろに投げる。
次いで―――予備動作も、筋肉の働きも、行動の意識も、全てを過去に置いて、前へ、前へ。
一切の―――妄想や虚言でなく、森羅万象さえ霞み消え去り、一人ぼっちにさせて。
壁が僕を通過し、本当はそこに壁などなかったはずと言えるまで、前へ、前へ。
僕が世界を認識できたのはあれから…0.1秒後のことだった。
―――チ
<キュインッ
大轟音……ではなく、“それ”はこの惨劇にあまりにも似つかわしくない音だった。
まるで世界と音が喧嘩別れしたかのように、それはもうあべこべでぐちゃぐちゃ。
僕達がいたフロア、その全てが―――塵一つ残さず、消滅していたのだ。
有り余る暴力は何もない空までを侵食し、食い破ってしまう。さっきまであったような気がした欠片の雲も青に塗りつぶし、優雅にここいらを飛んでいた小さき命の渡り鳥たちも、曖昧な高度を飛んでいたがために、体を削られ、剥がされ、千切られ…
解る、僕には解る。
一見、消え失せた遺跡の最上階以外変化は見られない景色でも、この景色はどこもかしこもおかしいのだと。
真横に。あの最上階があった高さの全てが、地平線までの距離まで…消え去ってしまったのだ。
≪馬鹿野郎ーーーーーーっ!!!!アシミァァァァァァ!!!! 何をポチってる!?!?≫
≪ふざけるなーーーーーーっ!!!!≫
僕はパニックと能力の疲労で、半狂乱になりながらも二人を担ぎながら空へと落ちていった




