第4話 「異世界を知る」―――③
「……ほら起きろ!」
そう言ってタッシ―は、恐れという概念を知らないかのごとく、寝ている竜種の巨体をズカズカと蹴る。
竜種は、僕の全力とは程遠い、フェイントありきの攻撃を躱すことなく全てを自分の体で受けとめ、結果地面に倒れていた。
僕がずっとビクビク怯えていたのも杞憂だったらしい。竜種と言っても、個体差があるのかは知らないが、あれぐらいの攻撃で沈むようなら、僕達の脅威には絶対に成りえない。
その見上げるような図体と、圧迫するような雰囲気に、いつの間にか僕は飲まれてしまっていたらしい。あそこでタッシ―が僕の背中を押してくれなかったら、今頃も僕は勘違いをしながら永遠と殺そうとしてくる相手に説得をしていたに違いない。
まったく、自分自身の慎重さと臆病さ、それと考えこんでしまう癖は嫌になってしまう。
今、僕は戦闘のあった場所に仮設テントを立てて竜種が起きるのを、石から出てきた皆と一緒に待っている。
こちらは謂れのない罪で殺されそうになった訳だが、それでも意志は通じることが分かったし、この世界について色々聞きたいのだ。
正直な話、僕は全然話を聞いてもらえなかったり、めちゃくちゃに殺されそうになったから、むかっ腹がたって仕方がないんだけれど、情報を聞きだすために殺さずに生かしてある。
めちゃくちゃに刻んでしまった傷は、タッシ―が能力で治してくれた。だけど、そのせいで情報を聞き出すのに使える体力がなくなってしまった。厳密にいえば体力はあるのだが、体力温存の観点からの判断だった。
でも、そのおかげで全身抉られまくった傷は完治しているはずだから、そろそろ起きてもいい頃なんだけど……。
「……ム?」
倒れ伏した態勢のまま、目を開けた竜種は眼だけで辺りを見回し、状況をつかもうとしている。
若干、驚いているようにも見えるが、どうにも人間とは顔の作りが全く違うからか表情を読み取れない。
ほら、虫なんかの表情は読み取りにくいだろ?……虫は違うな。
竜種のあのさっきまでの口ぶりから察するに、“力”言い換えれば“武力”には相当の自信があったんだろう。あんな一瞬でやられたんじゃ、本人もよく理解できなくて当然だ。
見てみても状況が掴めなかった竜種は状況把握を捨て、飛び上がり、また声高に偉そうに声を荒げた。
『キサマラ、ドンナ術ヲ使ッタカハ知ランガ、コノワレヲ眠ラセルトハ』
『褒メテヤロウ、シカシ、己惚レルナ。キサマラガ相手ニシテイルノハ、この龍し―――』
「―――はい、もういいからそんな展開」
「不毛」
「文字数の無駄やな」
翼を広げ飛び上がったのも束の間。速攻で僕に翼をへし折られ、チェビに浮力を0にさせられ、オムに地面へと熱い接吻をさせられるワイバーン。
もうこんな三下の茶番はいらないのだ。力量差がわかるように、僕とタッシーでぼこぼこに踏みつける。
「「へーいへいへーい」」
いじめをしているようでかわいそうだが、少々心苦しかったが、命を取られそうだった事実を免罪符にして構わず続行する。
やめるように懇願する声が聞こえるがまだまだ続行。
『ヤ、ヤメロ!』
『キ、キサマラ!コンナコトヲワレニシテ、許サレルト…ア、チョ、待ッテ』
『イタッ、痛ッ、止メテ、ホント、待ッテ痛イ、イタイカラ!』
『チョ、ホント止メテ!? ナンデモイウコトキクカラ、ネ? ネ!? ネッ!? エ、チョタ、助ケテー!!!』
その後、もちろん傷は治した。
。。。
「それで竜種、お前には聞きたいことが山ほどあるんだ、答えるよな?」
僕は程ほどに脅すようにして相手にこちらの優位を見せつける。断ったらわかるよな?と。今度はこちらが力を誇示するのだ。
『答エレバ解放シテクレルノカ?』
さっきまでの威勢はどこに行ったのか弱々しく聞き返してくる。
「あぁ約束してやる」
「情報と命のギブアンドテイクだ」
それを聞くと竜種は考え込むように項垂れた。
きっと誇り高き龍種なんて言ってたから、プライドなんかは相当高いんだろう。いま、そのプライドと保身の気持ちがせめぎ合っているころだろう。
さぁどう答える。
。。。
『―――ダガ断……」
電光石火の勢いで竜種の頭を殴りつける。
言わせないよ?この竜種の最も好きな事の一つは自分で強いと思っている奴に「NO」と断ってやることだ、なんて言わせないよ?
僕は念押しにあと数発殴りつけておく。
「もう一度聞くぞ、答えるよな?」
『………ウ、ウム』
「ラーよろしく」
肝心なところはラーに任せて、僕は準備に入る。
「はいはい、交渉は僕の仕事ですよーと」
「それでは、竜種様少々手荒な顔合わせにはなってしまいましたが、ご質問よろしいでしょうか」
そう言ってラーは、丁寧な口調ではあるが、しかしそれでも相手を増長させないように、こちらが絶対的優位であるように見せ、会話を始めた。
「まず初めに、この私たちが今いる場所について教えてもらえますか」
「名前、地名、どこの国に属すか、など詳しくお願いします」
『ウ、ウム、ワカッタ』
『場所、カ。ココハ、セプテンブス大陸【盟約の地】』
その言葉を聞いた瞬間、生徒会の面々はここが異世界であることが絶対的に確定したのだと理解する。
『イツカラアルカハ、ワレデモ知ランガ、ダイダイ龍種デアルワレラガ、ココヲ管理シ、外敵ガ入ラヌヨウニシテイル』
『故ニ、人間ガココニ入ル事ナゾ、アッテハナランノダ』
『オオカタ、コノ【盟約の地】ニ財宝ガアルトイ噂話ニデモ、釣ラレタノダロウガ、ソンナモノハ、存在シナイ』
『ココニハ、枯レタ土ト死ンダ世界ガ広ガルダケヨ』
『ワレガ、力デ貴様等ヲ、排除スルコトハ敵ワンヨウダガ、ソレデモココカラ、疾ク、去レ』
『何度モイウガ、ココハ、人ガキテイイ場所デハナイノダ』
そう、竜種は力強く言い切った。
人間と同じ心があるかは知らないが、心を折るように、こちらが情報を得やすいように、完膚なきまでにぼこぼこにしたはずなのに、それでも竜種は、いや彼は、自分が敵わないと知りながらもさっきから言う龍の使命とやらを守ろうと、僕達に去るように強く訴えかける。
『ソレト、ワレハ下等種ナドデハナイ』
『イクラワレヨリ強カロウト、龍ヲ愚弄スルコトハケッシテ許サナイ』
『訂正シロ』
またこの会話だ。
僕達の竜種に対しての知識と彼の言う下等種というものに、なにやら認識の齟齬のようなものがあるようだ。
これは、世界が違うことによる弊害なのか、はたまた別の要因が…?
僕が考える間もなく、ラーは次の行動に出ていた。
「申し訳ない、私たちの見識が浅かったようですね」
「謹んで訂正します」
「龍種の…」
『アイナール、ダ』
「アイナール様」
「ちなみにここの守護はアイナール様以外いらっしゃらないので?」
『オラン、ココハ、龍種ノ頂点ダケガ守護ノ座二ツケル』
え?最強?
これは……僥倖。ハードモードが一気にイージーモードに見えてきた。
「それでは質問を続けさせていただきます」
。。。
その後、龍種のアイナールを質問して分かったことがいくつか。
まずここは、【セプテンブス大陸】の【盟約の地】ということだが、盟約の地は途方もなく広く、セプテンブス大陸の半分近くは占めているそうな。
そして、僕が北上していたのは間違いではなかったようで、あと数十㎞も行けば都会から外れた農村があるそうだ。つまりはこの世界にもちゃんと人がいて文明があることが分かった。
そしてセプテンブス大陸には国が三つ“帝国”“王国”“聖国”覚えやすいだろ?
名前もあるそうだが、アイナールは知らないらしい。まぁでも国が出来ているっていうなら人もそれなりに居るだろうし、本の儀式の内容を揃えることもそこまで難しくはないのかもしれない。
次に、アイナールはかなりの年月を生きているそうなので、過去に見たことがないかと思い、僕達がここに来た原因と思われるあの本を見せてみたのだが、これまたアイナールは知らなかった。
それと、僕が一番恐れていた龍種という存在も知らなかった。
龍種であって龍種ではない。うーん異世界ギャップはかなりややこしいようだ。
言葉が通じるあたり、こちらの世界にもゼノンテルアと共通する何かがあると思ったんだが、今のところは非共通点の方が多い印象だ。
アイナールの存在がこの問題を顕著に表している。さっきも言ったが龍種、龍種、竜種、下等種、これらのゼノンテルアで習った知識では補えない齟齬。
それはこの先、僕達の足を引っ張る可能性がある。なので早急に解決しておきたい問題の一つだ。
アイナールの話では『ワレヲ破ル者ヲ屠レル相手ナドオルトハ思エンガ』というのだが、やはり念を押すように何度も言うがここは異世界、例外や既知では補えない問題もあるはず。
そう楽観視はしていられない。
でも、その前に。よし、良い感じに準備完了。
ちょうど、聞きたいことも大体聞けたし、頃合いだろう。
「ラー準備できたぞーいつでも始められるぞー」
「アイナール様、大変参考になる情報ありがとうございました」
「それでは―――」
『ウ、ウム…デハ、ハヨウ立チ去レ』
『早急ニ出テ行カンノデアレバ、刺シ違エテデモキサマラヲ殺スカラナ』
「え?」
『エ?』
『……』
『……トイウカ、キサマラ、立チ去レト言ッテオルノニ何ヲ道具ヲダシテ……』
「何って……普通にバーベキューだけど」
僕が言ったバーベキューという単語をアイナールは知らないのだろうけれど、その単語から嫌なものを感じ取ったのか、先程よりももっと分かりやすく、驚き、若干の恐怖も交じった表情をしている。
ラーがさっきまでの丁寧さを失った雰囲気になり、口を開いた。
「もしかしたら、僕達は知らず知らずのうちに、重罪を犯していたのかもしれない」
「それは、認めよう」
「でも、だからと言ってなんの情状酌量の余地もなく、ただ立ち入り禁止の場所に入ったからって命を無慈悲に奪われるなんて―――許しはしない」
「異世界だろうとなんだろうと、僕達は自分たちの道を進む」
「ゆえに、それを阻み、あまつさえヴィルの、僕達の命を脅かした。その代償はあまりにも大きい」
「僕達に歯向かったこと、あの世で後悔するんだ」
ラーは、通常においては冷静でいつも最善手を打つ努力をする。しかし、これまでのことを振り返ってほしい。ラーは学園のみんなやがピンチにあった時、こと生徒会のメンバーに危機が及んだときは、報復はきっちりするタイプの人間だ。
そう、ラーは怒っているのだ。殺されかけた僕よりも、ずっとずっと怒っていたのだ。
「ヴィルを焼き殺そうとしたんだ」
「肉を焼かれて、食われる覚悟はできているんだろうな……?」
アイナールの悲しい雄叫びが、何もない荒野に響き渡った。
・・・
ぐすん、ぐすんと。涙を浮かべている人物いや、龍物が一人。アイナールだ。
「も―泣くなよ、男だろ?食わないでやったんだから、泣くなってば」
『ソウイウ問題デハナイノダ!アレ程ノ恐怖ハ何千年モ生キテキタガ味ワッタコトガナイワ!」
『ソレニワレハ一応“雌”ダ!』
あの時、冷静さを失うほどキレていたラーは本気でアイナールを食おうとしていた。
僕はてっきり普通の肉を食べると思っていたのだが、怒ったラーにはアイナールは丁度いい食料だったようだ。
誇りや何たらを捨てたアイナールは、バーベキューはやめてと懇願したのでラーの熱も冷め、今こうして生きている。
本人曰く、戦いで死ぬのは本望だが焼いて食い殺されるなど、龍として恥や恐怖でしかないらしい。
ちょうど、移動手段も欲しかったので、お互いに水に流すことと僕達の移動手段になることで手を打った。
龍種は一度でも負けると、勝手に種族間に知れ渡ってしまうそうで、それにより頂点の座から自動的に降ろされてしまうそうだ。
だから頂点の務めである盟約の地の守護もなくなるから、と移動手段であることをを引き受けてくれた。
今頃、次の守護の座についたものが盟約の地に向かっているころだ、と言っていた。
それと、龍種は負けた相手に服従する義務があるとか何とか、なんでも龍種は強さを基盤として成り立つ社会なようで、一度でも他種に負けた敗者の烙印がある者は負け犬のレッテルを張られ、一族皆からとてもひどい扱いを受けてしまうそうだ。一見脳筋そうな龍種の世界も、とっても複雑なもののようだと感じた。
そして今、僕はアイナール背中に乗り空の旅を満喫しているところ。
速さで言えば、それほど速くはないが楽しいのと、楽なのとでかなりいい感じだ。
何より、ご飯を食べる前は僕一人の旅だったのに対して、今は話し相手もいる。最近コミュニケーション能力があがってきたと自分で思っている僕は、アイナールとほどほどに会話を続けることができていた。
今ではもう、戦っていた時のような変な会話にはならない。
アイナールもそこら辺は割り切った性格なのか、特に会話に支障はなかった。
みんなはバーベキューした後、また石の中に戻っていっているのでここにはいない。
アイナールの背中は十分みんなが乗れるほどに広いのだが、ご飯を食べた後、すぐに空の旅はきついとのことで、またしても僕だけが現実世界に残る形となった。
今頃、石の世界ではお昼寝タイムといったところか。
まぁ、吐くなんていうエネルギーの非効率接種は、僕の能力が許さないので適材適所ではあるが………。押し付けられたと感じるのは気のせいでないだろう。
でも、事実上の仲間となったアイナールだが、流石に信用しきるのは早計だ。
全員が石に入ってアイナールの背中に固定しておくのは流石にまずいだろう?
タッシ―の能力で洗脳や調教も、本人曰く不可能ではないらしいが、タッシ―がそんなことはやりたがらないのは僕達みんなが知っている。
まぁ、僕自身もこの空の旅が満更でもないので、気ままに風を感じることにするさ。
しかし、空の旅も良いが、ふと疑問に思う。
「こんなにばっさばっさ大きい音立てて、飛んでいるのに、何で僕はアイナールに気付けなかったんだ?」
そうなのだ。アイナールはその巨体に似合う、それは大きな翼をはためかせて空を飛んでいる。こんなに大きくて響く音がするのに、あの距離まで僕が気付けなかったのはさすがにおかしい。
ちなみに、アイナールに敬称はいらないと本人から言われた。
龍にとって、勝った人物が負けた相手に敬称を付けるなど愚弄以外の何物でもないそうだ。
『ン?ソレハワレノ【スキル】ガ発動シテイタカラダロウ』
(“すきる”? なんじゃそれ。全く知らない単語だ。異世界特有の異能力か?)
なんて事を考えていたら僕は不思議そうな顔をしていたのか、それを見たアイナールもこれまた不思議そうな顔をする。
『マサカアンナニ強いステータストスキルヲ持ッテイナガラ、スキルヲ知ランノカ?』
「うん、知らないよ、なんだよスキルって」
『スキルヲ知ラントハ……タダノコソ泥ト思ッテオッタガ、コレハ何カ訳アリナ予感ガスルナ』
「訳あり…うーん、まぁ言っていいか」
「僕達、この世界の人間じゃないんだよ、さっき見せた本があるだろ? 多分あれのせいでこっちの世界に来てしまったんだ」
『世界ヲ飛ンダ?マルデドコゾノ勇者ノヨウダナ』
「勇者?なにそれかっけぇな、そんなもんがこの世界にいるのか」
「もしかして僕達も勇者なのか?なんかすっごい大変な旅になるかと思ってたけど急に元気出てきたわ」
『オ主ガ、勇者、カ。」
『ナイナ』
僕のささやかな期待をよそにアイナールは一刀両断。バッサリと切り捨てられる。
「……なんでないってわかるんだよ」
『勇者ニハ手ノ甲ニ勇者特有ノアザガアルカラナ』
『オ主ニハソレガナイ、ダカラ勇者デハナイ』
―――あぁそうですかい。一気にテンション駄々下がりだよ!
突然異世界に飛ばされた身から、一気に勇者というかっこいい称号を得られると思ったけれど、現実はそう甘くはないらしい。まだ僕達はコソ泥の身分のようだ。
『ソレデ、スキルノコトダガ―――』
―――アイナール曰く、スキルとはこの世界にある異能力の総称だそうだ。この世に生きている生物の多くはこの不思議な力である『スキル』を持っているのだそうだ。ここまでを聞くと、ゼノンテルアと何ら変わりはないように思えるが、この次に聞いた言葉が僕の度肝を抜いた。
『スキルは、強き者になればなるほど多く持っている、それは武力的な強いに関わらず、一定の世界において強いを表すものは皆、須らく多くのスキルを持っている』
いや、ずるくね?
僕達は一つの能力を神から与えられて、それをやりくりしながら生きているのに、こっちの人々はいろんな能力を手に入れてそれを使い分けてるのか……やっぱりずるくね?
しかも、さらに羨ましいことにスキルというのは自分で取捨選択できる物のようで、自分の将来性を見越したスキル選びをするのが一般的らしい。
つまりは、自分で好きな異能力を選んで自由に身に着けることが可能だというのだ。
アイナールが補足するように、希少性の高いスキルや便利すぎる、いや強いスキルは、やはり習得にも時間や適性その他諸々が絡んで、誰もが持つようなものではないらしいが。まぁそれも当たり前だろう。
みんながみんな、Sランク能力相当の物を持ってたら一瞬で世界が滅びるわ。それにみんなが持っているなら希少性は高くないし。
とまぁこんな感じで、この世界にも能力に酷似した力があることが分かった。
アイナールが飛んでいた時に、僕が見えなかったのは【飛翔中は地上にいる者には見つからない】スキルらしい。なんでも、自由に世界中を飛び回っていたころに、地上からの視線が鬱陶しくてこのスキルを習得したんだとか。
そんな大した事じゃないことで、いちいち異能力を手に入れられるなんてまったく…羨ましいことこの上ない。
あ、それと、さっきアイナールが言っていたもう一つの知らない単語。
【すてーたす】についてだ。
これは身体情報を数値化した技術らしくて、大人の世界や競争の世界で強さの基準になるそうだ。
でも、これは僕らの世界にだって似たようなものがあった。
夏の時期になると、計測器を倉庫から引っ張ってきて、握力、体力、走力、とかを測るんだ。
後は、幅跳びをしたり、反覆横跳びなんかもしたりする。
僕達のゼノンテルアでは、学生の間にしかやらないことだけど、このセプテンブス大陸では大人になってもやるんだろう。まぁこれも文化の違いってやつだ。
それとその後の会話で、アイナールから【ステータスカード】などという新しい単語も出てきた。これは、さっきの“スキル”や“ステータス”、それと名前なんかを特定個人専用の紙に書き記したものらしい。
しかし、これも似たようなものがゼノンテルアにある。
一般的には、社会人の大人たちが持っているんだが、【名刺】というやつだ。
そこには流石に身体計測の結果なんかは載っていないが、自分の名前や能力が書いてあって、初対面の相手に「よろしくお願いします」ってな感じで渡す物だ。
多分、ステータスカードというのも同じような役割なんだろう。
アイナールからこの世界について色々と聞いているとき、地平線の向こうに岩山の終わりが見える。
その終わりから先には草木があり、十分な人の住める環境がこのセプテンブス大陸にあることが、僕の目には見えた。
アイナールを疑っていたわけではないけれど、実際この星に人間がいるのか少し不安だった。
だって、ここに来てから未だに僕は、乾いた土と岩山しか見ていない。そりゃあ不安にでもなるわ。でも、草木が見えたことによってその不安も解消された。
よし、そうとなればまず向かうは、都会から外れた場所にあるという、【盟約の地】に最も近い辺境の村。
【フィーネスの村】へ!




