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Mundus non re agnoscis ≫—僕達の異世界青春—≪  作者: ヒカワリュー
思い出は後ろに《プレイリトン》
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第46話 第一部完 「僕たちの波乱万丈な夢」


 ぱちぱち、と火の粉を挙げて燃える焚火に手ごろな薪をくべる。

 山々の自然な香りと、焚火独特の炭っこい匂い。少々きついそれは、初めのころは咽て(むせて)しまって文字通り煙たいものでしかないけれど、こうやってずっと薪をくべていると、その感覚もなくなってきて、むしろ非日常感を感じれてなんだか楽しくなってきた。

 焚火の炎から視線をあげて空を見上げると、輝く星空たちが、真っ暗な空に一面と誇るように輝いている。


 神学の学者さんの中には、神学の発展はこの星の生態系や気候に著しい影響を与える、と言っている人もいるそうだが、もし仮にそれが本当ならば、僕は嫌だなと思う。だってこんなに広くて綺麗な景色が見えなくなってしまうだなんて、あまりに損じゃないか。

 僕は壮大かつ愛くるしい夜空を見上げながら、地面に寝転がる。

 柔らかいウールのベッドもなかなかに魅力的だが、たまにはこんな硬くて土まみれのベッドでもいいかもしれない。特に、天井の美しさが気に入った。

 

 視線を横にしてみれば、遠くの方で、みんなが思い思いの料理を作っているところだ。美味しそうな物もあれば、一瞬で誰が作っているかわかるような、酷い見た目の物もある。

 

 昼間は外に出れば暑くて敵わないといえども、夜になれば、ほどほどに寒いが吹く。「びゅー」と僕の傍を心地よい風たちが過ぎ去っていく。その風に運ばれるようにして僕を呼ぶ声が聞こえる。

 僕は新たに薪をくべて、みんなの所に向かった。


「ほら、せっかくの長期休暇。みんなで楽しもっ?」


 スペラが僕の手を引いてくれる。


 僕達は今、学園の敷地から飛び出して、ラーの家が保有する広大な平地に来ている。

 つい先日、学園の学期が終わり、長期休暇に入ったところだからだ。幸いなことに、僕達全員が総合順位をキープすることができたので、普段の激務や今学期の異常な数の事件事故の解決、それらすべてに対しての打ち上げ兼労い会をするため、この場所にキャンプをしに来たという訳だ。

 

 スペラに強引に引っ張られている僕に、ちゃっかり自分の作った()()を食わそうとしてくるオムは片手で吹っ飛ばしてやった。

 ここは言ってしまえば、プライベートキャンプ場。誰もいやしないので、高らかにオムのコケざまを笑ってやる。

 すると、


「おいヴィル」


 スプーンを持ったタッシ―が僕に声をかけてきた。


「ん?どしたのタッシ―」


「これを目を瞑って食べてみろ」

「誰が作ったか当てられたら、今日のチェビの下着の色を教えてやる」


「……」

「……ふぅー……まぁお腹空いてるし?……やってやらんでもないかなー?的な?むしろやらせてください的な?」


「あの……ちょっといいかしら、勝手に私の個人情報をだしにしないでちょうだいと何で言えば……」


「……あ、いや、ご飯。食べるだけなんで」


「じゃあ、なぜ悟りを開いたような顔をしているのかしら?」


「……」

「ふぅー、やるか、タッシ―」


「ちょっと待ちなさいヴィル!」


 僕は、チェビの静止の言葉なんて気にもせず、タッシ―が手渡してくるスプーンを掴み、そのシチューらしき物体を口いっぱいに頬張る。

 それは、シチューというには牛乳ぽい臭みが残ってて、野菜は全体的に硬いし、ジャガイモに関してはまったく火が通っていない、噛めない。

 小麦粉のダマだってあるし……うーん。


「……まずい」

「なんだこれ、こんな横着(おうちゃく)の塊みたいな料理は、作ったのはタッシ―か?」


 にやにやと、笑みを浮かべて、さも作戦成功という具合でこちらを見るタッシ―。

 その、人をイライラさせることには定評のある顔は、僕を見るのをやめてゆっくりと向きを変える、そして視線が動いた先には―――


「―――おにいちゃん、嫌い」


 愛らしい頬をぶぅと膨らませて、こちらに軽蔑の目を向けてくるマイエンジェル(我が妹)

 どうやら、一生懸命つくった料理だったようだ、普通に悲しんでいる。急いで弁解の言葉を述べるも、「もう知らない、どっか、いって……!」と、突き放されてしまった。

 タッシ―の大笑いが耳に響くが、それよりも、シスに言われた言葉が僕のライフを削りきる。地面に倒れるように大の字にくたばる。


 倒れたまま、視線を上に向けるとチェビが「ふんっ」と鼻を鳴らし。


(よこしま)なことを考えているから、そうなるのよ」

「少しはその、イノシシみたいに思ったことをすぐに言う癖を治しなさい」


 チェビもチェビで怒っているようだ。若干イラついたように僕に説教してくる。


「おい、そうは言ってやるなチェビ」

「そう言うお前だって、()()()()気合が入っているじゃないか」

「なんだ、ラーと同じ空間で寝泊まりするから気合でも入れてきたか?」


「……」


 静まり返る一同。

 タッシ―の無差別攻撃が始まったのだった。

 タッシ―の爆撃攻撃を食らったチェビはみるみる顔を赤くして普段は顔色一つ変えないのに、恥ずかしそうにして「ばっ」とスカートを押さえて下着を隠すようにする。

 まぁ物理的に見えているわけじゃないから隠しても意味はないのだが。


 羞恥(しゅうち)の炎で顔を真っ赤にしたチェビは「待ちなさい!」と声を荒げてタッシ―を追いかける。

 タッシ―はタッシ―で大笑いしながら逃げ続ける。

 向こうの机では、さっきのシスが作ったシチューをラーが肩を震わせて、普段は上品に食べるのに今回はカタカタと音を鳴らして、むせ返るほど、喜びながら食べている。涙を浮かべているがきっと嬉し涙だろう。頑張れ、ラー。


 スペラとオムは、作っていたトランプタワーを逃げ回るタッシ―に破壊され、ぎゃんぎゃん吠えている。

 サブとアシミ―は狼の遠吠えのように「ワーハッハッハッハ!!」と僕たち以外には誰もいないキャンプ場に笑い声を響かせる。


 僕はその光景を見ながらも、立ち上がり、すたすたとさっきの焚火の方に行く。こっちの方もやっぱり心が落ち着く。

 それで、遠目に生徒会の仲間たちを見ては「ふふっ」と思わず笑みを(こぼ)

 あぁこの光景は、いつも通りで、楽しくて、ほのぼのして、どうも面白くて仕方がないのだ。


 こんな和ましい光景を見ているとふと過去を思い出したくなる。そうだ、今思い返せば色々なことがあった今学期だった。


 新学期早々、変質者の変態的事件があって、それでこの世界の窮屈さを知って。そんな暗い事件があったと思ったら、学園祭なんていうこの学園でも類を見ない企画を催したりして、まぁ僕的には思い出したくない負のイベントだったんだけど。皆はかなり楽しめたそうだからいい。

 そんなこんなで僕だけが落ち込んでいたら、僕にも初めて女子の友達が出来て。あっいまだにあの子の名前知らないや。ギャルさんて呼びすぎたかな……?


 そうやって嬉しいことがあったなら、それの帳尻を合わすかのように幽霊騒ぎがあって。終いには、山羊の狂脚(インペラム)なんかが出しゃばってきて、本当に、あの時は大変だったな。いくら腕があっても足りないくらいで。

 ペリターの事は何が正解かわからくて、必死に悩んだりもした。

 でも、僕は大人になりきれなくて、結局は割り切ることができなかった。仕方がないって言って前を向けなかった。でも、最近ではそれでいいんじゃないかと思い始めている。ギャルさんのおかげかな。

 子供的に、わからないことにはわからないと言って、納得できないことには納得できないという。

 この前の、恋絡みの事件だってそうだ。なにが正解かなんて誰も分かりはしないのだ。だから、僕ができる唯一のことは、分からないなりに僕自身の、僕だけの正解を探し続けること。それだけ。

 結局は、自分が思ったそれこそがただ一つの【正解】なのだ。まぁこの考え方自体がもう、大人ではないのかもしれないが。


 な、ガウガウ。


 そばにいて、一緒に夜空を見上げて寝転んでいたガウガウのあごの辺りをくすぐる。最初の方にあった嫌悪感も、今では微塵も感じない。

 ん?ガウガウは生徒会が預かってるんだから長期休暇になったら一緒に帰ってくるぞ。学園に置いておくわけにいかないだろう。

 

 哲学的なことを考えて、ガウガウを撫でながら夜空の闇に吸い込まれるような感覚に陥りながらも、別のことが頭をよぎった。

 そうだ、リポレムさんも誘えばよかったな。こうしてガウガウと二人して寝転ぶようなことを、彼女と出来たらどれほど良かっただろうか。まぁ誘う勇気はないんだけれども。


 顔を再びテントの方に向ける。

 ラーは三杯目のシチューを食べさせられているところで、タッシ―とチェビの追いかけっこはその他全員を巻き込み、列をなして追いかけあっている。

 僕はその光景に何度目かの笑みが溢れた。

 僕は、ガウガウの頭を撫で終えて、みんなの所に向かう。


「―――僕も入れてよ!!!」ってね。


 

・・・



 散々遊んで、散々笑って、散々怒って、こんなに楽しい一日を過ごしたのはいつぶりだろうか。

 学園に居れば、僕達は生徒会という責任と、義務に板挟みだった。

 もしかしたら、考えもしないうちに力を入れ過ぎていたのだろう。だからこうして子供みたいに遊ぶのが楽しくて楽しくて仕方がないのかも。

 たまにはこんな日もありだ。


 疲れ切って、みんなして地面に大の字になって寝転がっている時、オムが面白いものがあると言い出した。


 そうして持ってきたのは一冊の本。

 なんだか、オムが好きそうな、スチームパンクというのだろうか。そんな感じの雰囲気を纏った本だった。

 オムは本を開き、内容を読み上げる。

 

 内容を聞いた全員が、好奇心を持ってやろうやろうと言った。今にして思えば、きっとみんなテンションが昂っていたんだと思う。

 冷静な判断より好奇心で動いていたのかもしれない。

 


 本の内容を完遂させたとき、僕達がいた場所は―――




―――何もない()()()()()








???「ひとつ、全く(ため)にならない話をしてあげよう」

???「この本の中身をオムは読めたのだろうけど、タイトルについては分かっていなかった」

???「もし、この本にタイトルがあるならば―――【運命】全てを原点とする最初の地への運命だ」

???「さぁようやく、“第一歩”だ」

???「長かった()()()()()はようやく終わりを告げた。そう、彼らにとってこれらは【夢の時間】でしかない。覚めるときは少しづつ近づいてきている」

???「この先の運命は神にも()()()()()()()

はい。長い長い一章のお終いです。

これは言ってみればプロローグなわけですが、今度からは一章一章はそんなに長くはならないと思います。

今後ともどうぞお付き合いくださいませ。

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