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Mundus non re agnoscis ≫—僕達の異世界青春—≪  作者: ヒカワリュー
あの娘への性《セクサス》
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第31話 「恋愛へのプロセス」―――②

『――と、言うわけで、今日は行けそうにないわ』


『――うん、了解! 頑張ってエスコートするんだよ?』


『――え!?こんなんにエスコート云々うんぬんあるの?!』


『――あはは、まぁ、オロオロしなければいいさ』


『――ほんとに?僕にアドバイスできるなんかデートの作法みたいなのないの?』


『――…………頑張って~』


『――おい!なんだよ今の間は!?』


『――あはは~』



 僕はリポレムさんの用事に付き合う前にラーへと連絡を入れていた。いつもは生徒会室に来るのに今日だけ来なかったら心配するだろうからだ。

 え、心配してくれるよね?


……まぁそれともう一つ。


『――ラー、()()に繋いでくれ』


『――ん?わかった』


『――……なんやねんヴィル!今、タッシ―と【魔界伝説~世界の果てへ~】やっとんねん!邪魔すんな!』


 何それすっげー気になる。

 でも……そうか、今はゲームに熱中か……なら。


『――あぁーごめ~ん。そっかぁぁっぁぁぁ今取り込み中かぁ~~~。

じゃァ~連絡切るわぁ~~~僕ぅ、今からぁ、リポレムさんとデートなんだわぁ。それじゃぁ、またぁ』


 ふっ。

 勝った。


『――……おい待てやゴラァァァァッァァ!!どういうことやワレぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??

 (あ、ちょっとたんま!ヴィルが連絡して来てるから!待って!タイム!!ハメ殺しすんなって!ほんま!……タッシぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!)


 ふっ。

 圧勝。


 ヴィルはオムに何がとは言わないが()()()という優越感で満面の笑みを浮かべて通話を切る。



「―――連絡は終わったの?」


 僕が戻って来るや否や彼女は僕にそう聞いた。

 そこで僕は「はっ」と気づく、リポレムさんは僕が連絡をしている間健気に壁にもたれて暇を持て余していたようなのだ。


―――っ!?

(おぉっと、この僕ともあろう人間が()()()を待たせてしまったようだ。いくら必要な業務連絡と言えど、これではノット紳士だ……)


 僕は能力を発動し高速でさらには効率的な動きで近くの花壇から花を摘む。

 ここは紳士に、そして大人の余裕的な雰囲気を醸し出して。まぁ……実際は僕の方が年齢下だけど。

 あ、いいや!そんなことは関係ない。


「ごめん、お ま た せ♡」


 名前は知らないけどなんか見た目が綺麗な青色の花を彼女に差し出し、ウィンクをバチコリ。


「……え?」


 あぁー残念かな。彼女はこんなにも可愛らしいのにレディな扱いを受けたことがないようだ。

 僕のイエス紳士な対応に戸惑っている。ん~ここは女の子の対応にも()()()()()()()僕がエスコートするべきか。


「あぁ~戸惑わなくていいよ、僕に任せたまえ」


 もっかいウィンクをバチコリ。


「……」


 oh~戸惑わなくていいと言ったけど、やはり最初というものはどうにも慣れないものだ。

 こうなったら、完ぺ~きに、そして、ビュ~ティフルに僕がリードするしかあるまい……そう、紳士としてね。


「それじゃあ行こうか♡」


「……え、あぁうん……行こっか」


(よし!()()()()だ!ちょっとくらいなら僕もラーみたいに出来てるんじゃないか!?

 今一瞬、リポレムさんの顔が、能力の名前を付けられた時の【クルちゃん】みたいになってた気がしたけど、多分気のせいだろう。うん気のせいだ。

 イケる!出来る!出来るぞ!この僕だって女子と会話ができるんだ!)


 世界が何周しようとも彼の行動がイエス紳士と成り得ないのだが、そんなことは考えもつかない妄想と他者でしかイケメンを知らないヴィルにとって、これこそが真摯で紳士なイケメンなのだろう。

 そのある種おぞましい光景は、彼を知らない者からすれば気絶もの、彼を少し知っている者なら卒倒もの、彼をかなり知っている者なら目を逸らしてため息を吐きながら気絶していくレベルの大惨事。

 普段から怖いその目つきは中途半端にカッコつけようとして、血走ったような性犯罪者の眼差しそのものだ。

 しかし、かなり危ないゾーンまで来ているにもかかわらず、ギャルさんとの一件で変に調子づいてしまった彼はこのままでは止まらないだろう。


 ヴィルが自分の勘違いしている優秀さに惚れ惚れしていると、唐突に通信が入る。


『――あぁ、メーデー、メーデー。

 あぁ、今すぐー、その手に持った花を捨てなさいー。

 あぁ、その花のー、花言葉は【叶わぬ恋】ですー綺麗だからって適当に摘まないー。

 あぁ、それにその花はー、園芸サークルの花ですー後で謝るのは僕ですー。

 あぁ、もう一度言いますーその花を手から離しなさいー』


『――ん!?ラー!?なんで花を持っているって知ってるんだ!?』


『――オムが後を追えってうるさ……ヴィルがなにか粗相をしていないか心配だから後をつけてるんだよ』


(今、普通にホントのこと言おうとしていたよね? ラー、君たまにそういうところでポンコツになるときあるよね? 思ってもないなら言わなくていいんでしてよ!?

 いや、そんなことを気にしている場合じゃない!)


 僕は慌てて持っていた花を花壇にぶっさす。


(ふぅ、あぶないあぶない……。もう少しで、悲恋の花(こんなもの)を生徒の人通りが一番多くて一番目立つ花壇に植えている園芸サークルの怨念(おんねん)的な何かが(かか)るところだった)


 悲恋の花のエキスさえ残してしまわないように超高速で手を掃いつつ、気持ちを切り替えてリポレムさんのことをチラチラと見る。

 僕達は今。目的地まで歩いて移動しているわけだが、歩き出してから一切の会話はない。

 

(これは……どうすればいいんだ。わからないぞ……)


 メッキの紳士が剥がれてきたただの童貞コミュ障強面は、あるはずもない異性とのコミュニケーション能力を引き出そうと頑張ってはいるが、もちろんそんな“経験”がものを言う案件においてヴィルほど力不足の者はおらず。何かを話そうとする努力が、ヴィルの口元を「パクパク」と動かす。


 そんな折―――


『――あぁ、メーデーメーデー、なぁヴィル、なんで何も話さんの?』


『――げぇ、スペラもいるの?』


『――()()とは失礼やな。それにうちっていうか、みんなおるけど』


(みんな!?なんだよそれ!みんなして僕のデートを盗み見してるっていうのか!?あ、まぁデートかどうか怪しいところではあるけれど……。どんだけ僕のことが好きなんだよ!そんでどんだけ暇なんだよ!ちゃんと仕事しろよ!! まぁ僕も仕事なんてここ数週間やってないけどね!!!)


『――オホンッ!!……まぁみんないるのは、いいとして……ちょうどいい!ねぇ、僕どうしたらいいんだよ!この沈黙の状況耐えられないよ!

 それにさぁ!こんなことに誘われるってことは僕期待していいのかなぁ!?全くの脈なしではないのかな!?

 もう分かんないよ!!』


『――とりあえず()()()()()()()ええんとちゃうがぁ?』


『――えぇ…めっちゃ怒ってる……』


 通信であってもオムのドスの利いた声は十分に殺意を乗せていることがちゃんと伝わってくる。

 これはヴィルには与り知らぬことだが、今オムは男連中全員に羽交い絞めされた状態で言葉を発している。なぜそうなっているのかということと、その羽交い絞めが無くなったときにどうなるかは……まぁ察してくれ。

 そして、オムの殺害予告にかぶせるようにシスが会話に入ってきた。


『――だいたん、に、キス、して、みるとか……?うん、それが、せいかい……だから、言い出した、シスも……キス、する』


『――え!?ちょっと待って!シス!みんな見てる!ちょっと今はヴィルのことを……っ!ギャー!!!』


 突然なシスの爆弾発言にラーは悲鳴に近い音割れした叫び声で答えた。


(えぇ……アレ? (マイエンジェル)はいったい何をしについて来たんだろうか?ただラーといちゃつくために来たんではないだろうか?さてはお兄ちゃんの事見てないな?)


『――ちょっとあなたたち何しているの!そ、その、私も見ているのよ?あ、あぁ……そんなハレンチな……』


(うん、チェビに至っては僕のこと興味関心すらないね……はぁ)


『――おいヴィル、いったい何をしているんだ、情けないぞ。そういう時はだなぁ~~』


『――おっ、タッシーは何かあるのか?さっすがモテ男は経験の引き出しの数も違うねぇ』


『――勝手に相手がなんか喋ってくるから男は何もしなくてもいい』


(……だめだこれ。こいつらいったい何のために来たんだよ。 今のところラーしか助けになってないぞ、ヤバい……)


 メッキが完全に剥がれた愛すべき童貞コミュ障強面ボッチは、間が持てない事に大粒の汗を流し始める。

 ついには、何か話そうと開けたり閉めたりしていた口が一向に言葉を話さないからか「もにゅもにゅ」と奇妙な動きをとり始めてしまう。



(やばい、そろそろ五分は沈黙状態が続いている……何か、何か話さないと……!)


「あああ、あのーなんか、そのー、あのー……休日は何してるの?」


 やっと出てきた当たり障りのない無難な質問。これが限界。


「え!?……うーんとね、休日かぁ……友達と遊びに行ったり、自分の部屋で勉強したりとかその時々で変わるから、あんまり『これをする!』っていうのは決まっていないかな~」


「そ、そうなんだー決まってないのかー……」


「……」


「……」


―――終わったぁぁぁ!

 会話短かっ!また黙っちゃうよ!どうすんだよこれ!?

 こんなんどうやって新しい人間と交流していくんだよ!?世のコミュ力抜群どもは、どんなパーフェクトヒューマンだよ!?


「えぇと、ヴィルトス君は何かあるの?」


 ヴィルが慌てふためくのも束の間、流石にこの状況に耐えられないのはヴィルだけでなくリポレムもそうであったため、気を使ってリポレムも質問を返した。


(よし!聞いてくれた!これで会話は終わらない!)


 ……


(待てよ、せっかく聞いてくれたけど……答えるものがないぞ?……どうしよう!

 休日はオムとずっとゲームしてるよ、とかなんかかっこ悪いしなぁ……。かといって僕がやっていること……?くそっ!思いつかない!)


 うーん精々……


「……筋トレかなぁ」


 一瞬のうちに悩みに悩んだヴィルは、特に変わり種のものでもなく変に偏見を持たれやすいものでもなく、ある程度の「すごい」が含まれたものを言葉に出す。


「えぇすごいね!」

「私もそういう運動とか日常からやるべきなのかなぁ」

「特に最近重くなってきたと思うこともあるし……」


 そう言って彼女は自分の腰回りや上半身を見回す。


(大丈夫だよ。太ってなんかないさ。そう感じるのは全部、そのむn……おっと失礼。これ以上は野暮というものかな)


『――ちょっと何してるのヴィル!』


 脳内でのシミュレーションが先行してしまっていたヴィルに咄嗟にアシミーが指摘する。


『――そういう時はさりげなくそんなことないよって女性を褒めるの!

 ほら早く!』


『――え!?わかった!』


「……そ、そんなことないさ!」

「全然そんなふうには見えないって!十分かわいいよ!気にし過ぎだよ!」

「まぁでも!健康のために少しはやったほうがいいかもシレナイネー!」


 咄嗟に出た言葉としては上出来なものに彼女の反応は、


「え、そうかな……?気にし過ぎなのかなぁ……うん、でも、ありがとう」

「褒めてくれて」


 それなりに良いものであった。


『――よっしゃー!ありがとう!アシミ―!助かった!!』


『――別にいいけど、そういう時はさりげなく「運動したいならもし良ければ僕としない?」みたいにさり気なく誘って次に会う口実を作るものだよ』


『――そ、そんな高等テクが!?』


『――まぁ今さら言うのも狙ってるように感づかれるから辞めといた方がいいよー』


 気まぐれで悪女なはずのアシミーからの素晴らしい助け舟にいっそ感動すら芽生える。


『ほら、話を途切れさせないように。今チャンスを無駄にしたのを挽回できるように!頑張って!


 多分、アシミ―のことだから()()では思ってないだろうけれど、たとえ嘘でもこうやって応援してくれるのはありがたい。

 それに助言が何より助かる。


『――ほらほらーせっかく会話の糸口があるんだから、そっから話を分岐させていって!』


『――よし!分かった!』


(いい感じに雰囲気が良くなってきた……!)


『――考えなくていいから思ったことをそのまま言葉にする方がヴィルの場合は純粋で好感が持てるから!』


『――うん!わかった!』


(リポレムさんが笑ってるぞ……もしかしなくてもめちゃくちゃ調子いいんじゃ……)


『ほらそこ! 言葉の節々に不快にならない程度に褒めることを忘れない!』


『――ナルホドナルホド!!』


(これは夢にまで見た“カップル”に限りなく近いのでは!? 僕も自然に笑いが出るし、何より心が癒される感じがすっごくする! あぁ……友達と、それも女の子と話すのがこんなに楽しいだなんて……)


『――そういうとこで唐突に自分の腹筋とか見せて男らしさっちゅうのをアピールするのが()()かもしれんな~~(ボソっ』


『――よし分かった!』


<バッ!


 僕は着ていた服をまくり上げる!


「ほ、ほら!運動だって毎日少しやるだけでもこんなくらいにはなるよ!」


「……え?……キャー!!!」


 彼女のほぼ条件反射に近い安全装置的痴漢撃退術(ビンタ)が僕のほほに飛ぶ。


「ぶげっ……!! ……どぅわっさぁぁぁぁぁ!!!!」


 勢いよく宙を飛ぶ僕。

 そして、堅い地面を転がる僕。

 非力な彼女の全力の拒絶に微かな頬の痛みを知って、それに意識を向けるほど()()()()()に限りない憎しみを飛ばす。


(はめやがったなぁぁっぁぁぁっ!!!!!)


―――あの野郎(オム)!絶対ぶっ殺してやる!!!


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