第30話 「恋愛へのプロセス」―――①
『――オペレーション、フォームα、どうぞ』
『――オペレーション、チェンジザβ、どうぞ』
『――オペレー……』
『――うっさい!兄ちゃん!いっかい黙れ!』
『――……ラジャー』
『――あ、あはは……じゃ、じゃあ作戦行動に入るよ、各員―――』
―――行動開始だ!
ラーの作戦開始の合図を聞きながら、僕は叫んだ。
「どうしてこうなったぁぁっぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
・・・
事の始まりは本当に些細なことだった。……いや些細でもないのか、少し見栄を張った。
それはいつもの学校生活の中で起こった。
。。。
襲撃事件からもう三週間も経ち、「時間が過ぎるのも早いなぁ」なんて言葉が口から出そうになる穏やかな1日。
あれからの学園はというと後と前でそう大差はない。普通に授業は再開されたし、校舎も元通りだし。
僕はというと、ギャルさんから言ってもらった言葉のおかげで、なんだか前より自分に自信を持てるようになったし。
まぁだからと言って、クラスでの状況が急激に変わったりするわけじゃないんですけどねぇ。
平々凡々な毎日。普通の毎日が戻ったのです。
あ、でも。
変わったことが一つ。
「おーい先ぱーい!飯くおーぜー!」
そう、あの時の少年と結構仲良くなったのだ。
あの騒動の後、会った時には開幕ドロップキックを食らったけど、それからはこうしてお昼ご飯を一緒に食べるような仲になった。
周りからは、「あの子脅されてるんじゃない?」とか「事件の予感……」とか「少女趣味から少年に!?」とか言われてるけど。
全く気にしないし、僕は僕の好きなようにするから周りの言うことなんか、ちっとも気にならないね。
……ぐすん。
……あぁ、紹介が遅れた。彼の名は、【クルース・カーポ】
最近ではよく生徒会室にも来ている。
生徒会のみんなには『クルちゃん』と呼ばれているが本人はあまり好みの呼び方ではないそうだ。
そんなクルちゃんにもウザがらみするバカが彼のあだ名の名付け親。
哀れとしか言えない。
さらにオムはクルちゃんの能力にまで名前を付けた。
【天を駆けるは人の脚】と。
「あ、あはは~う、嬉しいな~」なんて……死んだ顔で喜んでたよ。
まぁここまで紹介したクルちゃんだが、本編には全く関係ない。
なので関係あるところまでスキップ。
<ちょっと俺の初紹介シーンんんー!!!
<ズバッ!
作者「貴様など、これから先に出演予定などそんなにないわ!
「そん、なぁ……」
作者「ふんっまた下らんものを切ってしまった」
そいじゃ、本編
・・・
それはクルちゃんの自己紹介が終わった後のその日の放課後のことだった。
僕がいつも通り、特にやることもないけど取り敢えず行っとくか―みたいなノリで生徒会室に向かおうとすると……
「―――ヴィルトス君」
後ろから声をかけられた。なにこのデジャブ。
後ろを振り返るとそこにいたのは、久々登場。『リポレム』さんだ。
「な、なに?」
若干きょどってはいるがまだ、自然な返事。問題点はない。
もしかしたらギャルさんとの会話で女の子との会話の耐性がついたのかもしれない。
ついに……僕も脱ボッチか!?
「あのね、こんなことをヴィルトス君に頼むのもなんだけど……」
(な、なんですかなんですか、その不穏な雰囲気は。あ、あの……そろそろ死ねやとかですか。
最近、新しい友達出来たりとか結構満ち足りているので、そのお願いは受理しかねます……
それともそれとも、焼きそばパン買ってこいやとかでしょうか。それなら、いともたやすく五秒以内に購買に行って買ってきますが……
あぁでも、僕の財布に入っているの僅か 3 0 ゼノ。これじゃあ子供のお菓子も買えない。
……いやでも待てよ、もしこのパシリが美味棒を買ってこいというものだったら……?
はっ!それなら、三本は買える!
美味棒の値段は人類に優しいたったの10ゼノ。超お買い得!!
……っは!?このおバカ!
なんで忘れていたの!?
この学園での買い物は学園外より少しだけ高いの!
美味棒も“10”ゼノじゃない!
―――“11”ゼノ!
くそっ!これじゃぁ!美味棒を三本買えないじゃないかぁぁ!!!
おのれぇ学園!このことを見越していたというのか!?
はっ!……あのくそ学園ちょぉぉぉぉ!!!
見える!見えるぞ!学園長が高笑いを浮かべる顔がぁ!
これが神語で言うところの【孔明の罠】かぁぁぁぁ!!!!)
「あの買い物に付き合ってほしいの!」
「その……服の……」
(この世は弱肉強食ぅ!食うか食われるか!
僕は食われるのか!?美味棒に!?いやだぁぁっぁ!!!!)
―――ん?……今なんと?
「……あの、聞こえてた?」
「かいもの、につきあって……ほしいの……」
そうリポレムさんはその可愛らしい顔を恥ずかしそうにほんのり赤らめながら言った。
。。。
きたぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ!!!!
これは女子との初めてのデート。
デート!
それは、僕ごろの年頃なら誰もが憧れるイベント。
かわいい女の子とのなら、なおさら期待値も上がるってもんですよ。
学校外でのふれあい。そして芽生える新たな感情。
その感情の名に気付いた時には、もう……
ぐへへへへへ。
……しかし待つんだ童貞ボ~イ。これは果たして本当にデートか?
最初から信じ切るのはエリート童貞としては間違っているのでは?いや、しかし相手はリポレムさんだ。
それこそアシミ―とかなら……いい感じの雰囲気で自分に惚れさせといて、いざ相手が自分に告白してきたら嫌われない言葉で断る。最初から付き合う気なんてこれっぽっちも無いのにわざとそういう雰囲気になるように仕向けるのだ。
そんな純情な男子の心を弄ぶようなことは平気でやるだろうけど。
ならこれはどっちだ?罠か、本命か。ここの判断を見誤れば僕に待つのは“死”のみ。
よし!こういう時は自分の天使と悪魔に聞いてみよう。
『ねぇねぇこれは信じていいのかな?』
『そんなことを信じる必要はないんだ。どうせ騙される。今すぐ生徒会室に逃げろ』
『いいえ!そんなことはしてはだめよ!』
『くそっ!おのれ!天使!』
『それでは女性から逃げたという汚名がついてしまうわ!せっかく自信がついてきたのに出鼻を挫かれたなんてことになったらいけないわ!殺すの!殺すのよ!完膚なきまでにボコボコにするのよ!そうすれば、リポレムという存在はいなくなるわ!』
『天使、それは良い案だな。がーはっはっは』
『げーへっへっへ』
。。。
…………疲れ溜まってるのかな僕。
「あの、ヴィルトス……君?」
「あぁ!ごめん、ちょっと考え事してた。それで……買い物だっけ?」
「どうして僕なの?」
「あっいや、ちょっと恥ずかしい話なんだけどね……?」
「私、もう18歳で成人してるのに……今までその……こいび、と?が居なくて……」
「だから、身の回りから、変えていこうかなって、おもって……その……」
あっ察し。
もう恥じらう姿がビューティフル。
つまり要点でまとめれば彼女はこの年齢まで彼氏が一人もおらず、それに危機感を持ったわけだ。そこで彼氏ができないのは自分に何か原因があると思ったわけで、そこでまずは自分の服装から変えてみようと思ったわけか……。
うーん動機が可愛い。それにその恥ずかしくてもじもじしてる感じも可愛らしい。
特に手を前の方で組んでるから……その、なんていうか、ふふっ。
あれがね、ね、強調されてましてね。
まぁ可愛い。
―――だが残念。
リポレムさん、あんた一つ忘れてるよ。学園制服だよ。
学園内で異性に私服見せる機会は休日に出かけない限り早々こねぇよ。
まぁでも、彼氏ができないのは自分に何かあると本気で思ってたり。制服なのに私服で男子にアピろうと考えている当たり。
そういうところが総じてかわいいので、おーけぇです!
いやでも待てよ……やっぱりそれならなんで、
「僕に頼むんだい?」
「その……ヴィルトス君生徒会だし」
「それにヴィルトス君なら気兼ねなく話せるかなって……」
なんだ、なんか特別な意思があるわけじゃないのか。期待して損した。いや損というほどでもないけど、別にいい感じの雰囲気から始まる訳でもないのか……。
僕の僕が120度辺りから35度くらいまで下がった。
「うん、わかった」
「そういうお願いなら生徒会としても断るわけがないさ」
「まぁ僕にセンスを問われたら少し微妙な感じだけど、でも精いっぱいお手伝いさせていただきます!」
「うん!ありがとう!」
私服を変えたところであまり意味がないことはあえて言わない。
なぜかって?
……ぐへへへへへへへ。
こうして僕はリポレムさんと共に、服屋などが立ち並ぶ娯楽地区の街道へと向かうのだった。




