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Mundus non re agnoscis ≫—僕達の異世界青春—≪  作者: ヒカワリュー
征服と名の付く願望《コンティディム》
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第16話 「後輩と名の付く同輩」


 あの夜から、数日が経ったころ。


 あれからも数日間は生徒会がローテーションして寝泊まりし学園内を見張ったが、僕達のグループがあの人形を発見してからは特に怪しい人物や現象は見られなかった。

 結局、人形を操る真犯人を特定することはできず、それにあの心霊現象騒ぎがいったい何の目的で行われていたのかも(つい)ぞわからなかった。


 しかし、一応の平和は訪れたのでこれにて解決である。 まぁこれ以上追及したところで犯人が分かるとは思えないし、生徒会が出来ることといえば何か危うげな事態に陥らないように予防線を張って、気を抜かないことくらいだろう。


 さて、そんなこんなで今日は何をするのかというと。

 ここ数日の間に、誕生日を迎えてランクB以上の能力を手に入れた12歳の若者たちが何人か新しく学園に入ってきたので、その子たちに学園の案内をすることになっている。


 僕をこの仕事に当て振るのは少しどうかと思ったが、ラーがやってと頼むのだから仕方ないだろう。

 まぁでも僕は小さい子や、年下とかは嫌いじゃないし、この仕事も別に嫌じゃない。

 むしろ好きまであるが……

 

「チェンジ」


 ……相手の子がどう思うかはまた別の話……


 予定のところまで迎えに行ったはいいが、開口一番それを言われて傷つかない猛者はいないだろう。

 こういった仕事はこれで三度目だが、


「わぁ生徒会の人ってかっこいい!!」って羨望のまなざしで言われたりだとか、

「よ、よろしくお願いします」って緊張交じりに初心(うぶ)な感じを見せてくれたりだとか、


 そんなありきたりな会話をしたことはない。たいてい最初は会話にすらならない。

 まぁかなりの要素で僕の顔がいけないんだろうけども……はぁ。

 そこまで怖がらなくていいじゃないか。

 

 しかし、僕も初対面の相手にはいろいろ言われてきている、いまさらこんな言葉じゃへこたれない。……ぐすん。


「は、はじめまして、今日君たちの案内をする生徒会重労働課のヴィルトス・ジェントジェミニスです、よろしく」


 なんとか初めのあいさつは噛まずに言えた、と意識中で胸を撫で下ろすようなジェスチャーをとって安堵する。その安心感は意識から洩れ、不意に僕から笑みをこぼさせた。


 そんな僕の笑顔を見て、目の前にいる二人は顔を強張らせるように…もっと事実に近づけた言い方をするなら恐怖に染まったような顔をしていたが、きっと学園に入りたてだから緊張しているんだろう。僕の顔がいけないとかそういうのじゃないはずだ。だって笑顔は人に安らぎと安心を与える物だろう? 確かに、ラーほどの心地の良い雰囲気は出せないかもしれないが、僕の笑顔はまだ素面よりマシだ。やっぱり二人とも緊張しているんだ。うん、そうに違いない。


 狂気の連続殺人犯だってナイフを置いて衣服を脱いで丸腰になって土下座しながら交番に自首しに行くであろう、“笑み”をそうやって心の中で誤魔化すヴィル。

 目の前の新入生が全く身動きを取れないのは二人ともが強い証。意識を保っていられる位には強い。


 

(えぇーとそれで、今日僕が担当するのは二人、男の子と一人と女の子一人だったかな)


 緊張癖のあるヴィルはやや下に向けていた視線を上げて、二人を見る。顔面蒼白になっている二人を視認し、ちゃんと二人いることを確認する。


 確認すれば、ゆっくり呼吸をして、今日の目的を思い起こす。


 この学園の寮に引っ越してきたばかりで、何も知らない子の子達に学園のノウハウを教えてあげるのも生徒会の役目。

 張り切っていこう!


「えぇと、案内をする前に何か聞きたいこととかはありますか」


 会話下手な僕のために、ラーが用意してくれたカンニングペーパーをちらちらとめくりながらなんとか生徒会としての振る舞いをする。



 そこで、おずおずといった()()が抜けきっていない雰囲気で「ねぇ」と、さっき僕にチェンジと言ってきた気が強そうな男の子が手を挙げた。


「……重労働課ってなにさ」



 少年は恐怖に支配される心理の片隅で、迷走した自我が先ほど眼前の男が言ったよく分からないものが気になった。今聞くことで無い質問を今したのは少年の少年ゆえの強がりな部分があったのだろう。

 少し高圧的なニュアンスを含んだ声だ。


 その上から目線と言われても仕方のない高慢な態度にヴィルは……


―――あぁよかった、てっきり「なんで生きてるんですか」とか、「犯罪はしたことありますか」とか聞かれるのかと思った。

 それなら答えられる。


 めちゃくちゃ安心していた。

 生徒会外での会話経験の微量な貧しさがここで良き面で出た。ヴィルは少年の態度に「緊張しなくなって良かった~」なんて効率化している思考で考えていた。

 ヴィルはまぁまぁおバカなお人好しだった。


「あぁ重労働課っていうのは生徒会の役職みたいなものなんだ、結構名ばかりなところはあるけどね」


 この課っていうのもなんかのときに、その場のノリで作ったなんちゃって役職である。

 ちなみにシスだったらお茶くみ課で、オムは安全保証課、縮めて安全保障課(アホか)

 他にも全員分あるけど割愛!


「ふぅーん」


 求めていた回答ではなかったのだろうか、質問をしたのは彼なのにそんなつっけんどんな反応をされたら困る。

 ……つっけんどんは今日び言わないな……


 「それじゃあ」とまだまだ高圧的な彼の質問は続いた。

 

「生徒会って何?偉いの?」


 うーんこれまた答えにくい質問。

 普通の学校の生徒会とは全然違う集団だからなぁ我々は。


「……うーん君の小学校に生徒会はいなかったかい?」


 「いない」と少年。


「僕達は正式名称を【生徒の安全とか学園生活を守ろうの会】と言ってね、日々生徒のためになることをしているんだ」

「だからその過程で学園長先生にお願いすることはよくあるわけで……でも…うーん、僕達はそんなに偉くない……のかな」


 またしても、ふぅーんとだけ返されるが今度のふぅーんはなんか少しだけ興味深そうなふぅーんだったから良しとしよう。


 ただ、と


「生徒会長はとっても偉い人だから気を付けないとだよ、なんなら首が飛んじゃうからね」


 僕は注意的なニュアンスを込めて、にっこりといった具合に、久々に登場リポレムさん張りの笑顔で言ったはずなんだが、女の子の方が泣きそうな目なんだが……

 え、まだ緊張している!?



「そ、それじゃぁ!質問はそれまでにして案内しようかぁ!!」


 僕は空気を断ち切るように、無理やり移動を開始した。


 学園内の色々なところを移動していく間にこの学園の仕組みや様々について軽く説明する。


「えぇと、君たちはクラスの意味をもう聞いたかい?」


「まだです……」


 ひっ、と一瞬肩を震わせてから気弱そうな女の子が答える。


「……あ、えー、えと、クラスっていうのはシーズン毎に行われるテストでの、学力を基本とした筆記点と能力による実技点の合計点で決まるんだ。」

「点数が高い人から上のクラスに決まっていくんだよ」


「だったら、俺は勉強なんて嫌だし下のクラスでいいや」


 そろそろ、ヴィルの顔にすこし慣れてくる少年は余裕を崩さない。


(お、やっぱりそういう思考の子はいるんだな。ここは現実を教えてやろう)


 ヴィルは少年の余裕を知ってか知るまいか、少し意地悪な気持ちでニヤリとほくそ笑みながら……


「別に下のクラスでもいいけど卒業できなくなっちゃうよ?19歳になった時に上位三クラスにいないと卒業できないんだよ」


 だったら、と負けじと少年は反抗的に、


「19になるときだけ本気出すね」


「別にそれもいいかもしれないけど、そのころには同じクラスの子はもうほとんど何歳も年の離れた子達になっちゃうよ」


 ぐぐぐ、っと一筋縄ではいかないと分かった少年は、別にそれでも……などと、ぶつぶつ呟いているが、無理無理、自分だけ成人しているのに周りは小学校上がりって耐えれるわけがない。

 ヴィルは少年を見て肩をすくめる。


「あの……テストには実技があるっていうことなんですけど……私、そもそも能力の使い方もまだあまりわからないんですが……」


 か細い手を挙げながら聞きたいことは聞いておく少女。


「それについては大丈夫!」

「さっきの話は上に上るように急かすような言い方だったけど、そうじゃなくて別に今すぐ上のクラスに上がらないといけないわけじゃないし、そもそもこの学校の筆記はちょー難しいから最初は()()()()()()()()()だけでも()()なんだ、だからそんなに気負わなくても大丈夫!」

「徐々に習得していったらいいさ」


 ヴィルがそう言うと女の子はほんの少しだけ安心したように初めて緊張を解いてくれる。

 といっても、顔面に血の気が戻ってきた程度だが……



 その後も当たり障りのない会話をしながらも学園内の地理を教えていく。

 ここが食堂だとか、ここが一組館だとか。


「おい先輩!」


 唐突に男の子の方からそう呼びかけられた。


「どうしたんだい」


 ラーのような柔和な口調を心がけ、


「生徒会って俺でもなれるのか?」


「うーん無理じゃないかな、今はもう定員いっぱいだし……あれ、でも生徒会に定員の概念とかあるのかな……まぁでもこの生徒会も会長の権力があるからこそ成り立っていると言えるから」

「会長が卒業したらなくなっちゃうんじゃないかな」


 聞かれたことには真摯に答える。


 それと……


「学園内では先輩とは言わない方がいいよ」


「どうして?あんた俺より年上だろ?」


「全員が全員そうじゃないんだけど、学年の仕切りがないこの学園にも少なからず、年功序列的に年齢が高い方が偉いという考え方があるんだ。だから自分を下に見せるような先輩呼びはあまりよろしくはないかな」

「学年の差が無いんだから、同輩、同門だよ」


 きっちりとこの学園の細かいところまで教えておくのも忘れない。


 さっきのことをもっと細かく分析するなら、年齢が下の者が上のものより高い順位のクラスにいたときに、「おいおいどうした先輩」、という煽りが一昔前に流行ってしまったらしいので、そのころからの暗黙の了解、ということでで年齢のことはあまり気にしないようにするというものができたのだった。

 まぁそれでも()()や、()()()()()()で人を見下す奴は中にはいるにはいるのだが。


 僕からの忠言を聞いた少年はそっか分かった、とすんなり受け入れてくれた。

 最初は気の強い子だと思ったけれど以外に真面目な子なのかもしれない。


 二人とも貴族ではないらしいので、この学園についてもほとんど知っていなくて教え甲斐がある。

 会話も段々と慣れてきて、初対面同士だった二人もなかなか会話が弾んでいるようだった。僕が何かを話さなくても、住んでいた地域の話だとか学校の事だとか、そんな当たり障りのない会話で良い雰囲気を築きつつある。


 もう少し学園の散策は続く。

 


 

書きたいことが多すぎて文章がだんだんとおかしくなっていく今日この頃の私……

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