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Mundus non re agnoscis ≫—僕達の異世界青春—≪  作者: ヒカワリュー
征服と名の付く願望《コンティディム》
19/75

第15話 「仕事と名の付くお泊り会」―――②

「それじゃあ、よろしく頼むねぇ~」

 

 そう言ってラーたち他六名は帰っていった。

 今日僕はこの学園校舎内でアシミ―、オム、と共にお泊りしなければならない。

 なので、いつもならみんなと帰っている時間には帰らずに、これから見回りをして教室で就寝する。

 班に不満はないけれど、欲はある。

 いや正直な話、やっぱり不満はある。


 この仕事は警備という名目になってはいるが、実際はそんな固くしなくていいらしい。「そんなに緊張しなくてもいいよー」とはラーの言葉だ。

 僕達の班は順番的に最後のグループだから、ラーのグループやタッシ―のグループはすでに昨日とおとといに寝泊まりしている。

 それでその二班から聞いた感じでは、特に異常は起きなくてお泊り会という成分の方が大きくなっていったらしい。

 まぁ僕達は学生だし、こんな雰囲気だからこそ言える話もあるんだろう。

 うん―――だからこそ不満がある。


 ()()を思うとまだ仕事がぎっしりしていた方が気持ち的にも楽だったかもしれない。

 いったい何が不満かって?


 ……アシミ―のことである。


 夜の学校、もちろん校内はサークルで残っている生徒くらいしかいないし、その少数の生徒だってそう遅くないうちに寮に帰るんだ。

 何が言いたいかというと僕たち以外の人は極端に少なくなるということ。

 その事とアシミ―のことがどう重なるのかと言うなれば……


「おいぃぃぃオムぅぅぅ!! なんか面白いことやれよっ!!」


「……なんかおもろいことやれってそれ結構犯罪級の言葉やで……」


―――もちろん、猫を被る相手がいなくなるのでこうなる。

 もうすっごいめんどい。


 それこそ、生徒会以外で唯一冗談が言える相手のミクスなんかに、アシミ―と同じ部屋で一緒に寝泊まりした、なんて言ったらすごく驚くだろうし羨ましがられるとも思うけど……僕達からすれば虚無感しか感じない。

 確かに第三者目線なら美少女幼馴染と一夜を共にするなんて“えらいこっちゃ”ではあるが、この状況でも僕のナニはぴくりとも動かない。むしろ後ろにめり込んでくるレベルかも。

 言っただろう。アシミ―にそんな情は一切湧かないと。


「おいおい、なんだよオムゥゥ。やらしい目であたしのこと見やがって、まっあたしの可愛さに惹かれるのはわかるけど」


「……見てへんし、見やんし」


「ちっ正直じゃねぇなぁ、サービス、だ♪ぞ♪」


 お風呂上がりのまだ熱気をまとって火照った体で何の躊躇いも無しに悩殺ポーズをとるアシミ―。もし仮に僕達の立場に普通の生徒がいたなら、名剣ポークピッツが聖剣エクスカリバーに究極進化しているだろうが。

 悲しいかな。

 僕は……僕達は……むなしさばかりが増していく。


 他の二グループはこの時間、いったい何をしていたんだろうか。

 学生らしく恋バナとかしていたんだろうか。 あのタッシ―が恋バナか……ふふっ面白いな。

 ラーたちの所はいいなぁ……シスとチェビ。もう何が羨ましいか言えないくらいに全部羨ましい。


 それに比べて……なんだこれ。


「やめっやめてぇぇー!!! 助けてぇぇぇ! ヴィルぅぅぅ!!!」


「ほれほれ、ここが、ええんやろ~」


 え? オムがアシミ―を襲っている? 助けなきゃ? 逆逆。


「俺の貞操がァァぁ!!ぼーっと見てんと助けろやっ!!あ、やばいほんまに!!」


 

 今、オムはアシミ―に組み伏せられてあられもない姿にされている。もう一度言う、オムが、アシミ―に、組み伏せられている。

 なんか……女子友達との濃いスキンシップもありかなと思っていたけど、ないな……うん、ないわ。


 僕の中での幻想がまた一つアシミ―によって叩き壊された。「グシャッ」と。


 そして哀れ、オム。

 君を助けたら次の標的は僕になるんだ、すまない。


 アシミ―に襲われているオムを教室に残して、僕は一人学園の中を散策する。


―――普段、何気なしに生活している学園がこうも雰囲気が違って見えるのか……さすが夜パワー。怖いのは……そうだな平気って程でもないが、このくらいの不気味さなら耐えられる。


 やや腰が引けながらもヴィルは校内を歩きまわる。


 今回の事件、怪奇現象を見かけた生徒の話を(まと)めてみても、出現場所に共通性が無くてどこに現れるのか全く分からない。もしかしたらもう現れているのかもしれないし、もうすぐ出てくるのかもしれない。まさに神出鬼没なのである。


 解決策がこれと言ってないからこそ、ただひたすらに歩き回るしか解決策はなかった。


 さっきも言った通り、他のグループの時も一日中何も起きなくて終わったらしいので、犯人が大事になるのを避けるために、もうすでに身を引いたんじゃないかとも考えられる―――が、もしもの時があってはいけないからな。

 ……今こうして、寝泊まりする教室から離れるように他校舎を捜索しているのも、決してあの部屋にあれ以上居たくなかったわけではない……たぶん。


 タッシ―を介して怪奇現象を見た生徒の記憶を()()けど、どれもパッとしなくて地味目なものばかりだった。

 急にドアが開いたり閉まったりだとか、校舎内をぐるぐる動いている足音が聞こえたり、急に変な人影が現れたりだとか、そんなものばかりだった。

 なので見逃さないようにしなくては……


 ……え? 地味じゃない? 充分ホラー?

 んー、本気になった能力者が怖がらせに来たら、こんなもんじゃ済まないよ。

 幻影で、急に友達とかの顔面を裂けさせる光景を見せて、グロデスクホラー展開にしたり。

 急に知らない場所に飛ばされたりだとか、考えるだけでも埒が明かない。

 それに比べればこんなの怖くはない。

 ……だからと言ってこれが全く怖くないと言えばウソになるが。


<ガタンっ


―――そうこうしているうちに、どうやらお目当てのものに遭遇できたよう。

 不穏な音がする方に僕はゆっくりと歩み寄り、相手がこちらの存在に勘付かないように足音も殺し気配さえも巧みに遮断する。

 廊下の壁から頭だけを出して見えた光景というのは、Ⅼ字の廊下の先にかなり小さめの人影が階段から登ってきては教室のドアを開ける。という訳の分からない行動だった。


 もう少し情報を得たい。そう思ったヴィルは今回の事をより深く理解するためにまだ出ることなく、変わらず凪のような気配を保ち、同時に次は息さえも極限まで抑える。



(もう少し様子を見ることにしよう……)



 ヴィルが怪しげな人影の行動に気を取られていると、後ろから……


「―――おい」


 亜音速の反射。掛けられた声が反響するより早く対応の1手を。


「っ!!!」


 最速で後ろに視線を回し、常人の反射神経などあくびが出るレベルの高速の伝達速度で、脳が腕に手刀を突き出せと命令する。


―――しかし寸でのところで思いとどまる。


 ヴィルの研ぎ澄まされた神経を逆撫でるようにしたのは、なんとオムだった。

 どうやらあの修羅場からなんとか逃げ果せて、窮地を脱し、こちらに合流してきたようだ


 もし、オムを見た瞬間に出した停止命令があと少し遅ければ、オムの頭が飛んでいただろう。


 危険な行為を行いかけたことにヴィルは―――


―――ふぅ危なかった。てへっ。


 とだけ()()した。


「おい危ないやろ! 置いてきやがったから追いかけてみれば、刺されそうになるし、ほんまなんやねん」


「まじすまん」


「まぁいいけど,,,次は助けてくれ、もうすこしで何かしらの初めて取られそうやった」


「いいじゃないか」


「アシミ―は無理」


「まじそれな」


 本人に聞かれたら即殺されるようことを二人で言い合うが、実際問題初めては好きになった人とがいいの!

 まぁ初めては初めてでも、僕達が言っているのは前で、アシミ―の非道は()()()()ではあるが……


 と考えが逸れた時、オムが、

 

「ほんで、こんなところで何してんのや」


「しぃー!あれを見ろ」慌てて僕は明らかに(くだん)の心霊現象の犯人と(おぼ)しきものを僕はオムに指さす。


「怪しいな、見張んのか?」


「うん、何が目的なのかが分からないんだ、変に逃げられて捕まえて吐かせるのも違うし……」


「まぁ様子みっちゅうことやな」


「そういうこと」



 そして二人して人影を見張るが、その人影に大した動きの変化はない。永遠に上っては開け、元に戻してもう一回、という奇妙な行動を繰り返すばかり。


 その光景を見続け、相変わらず存在を最小限まで抑え見張りの態勢を続ける二人。

 すっかり夜の帳も完全に落ち、月と星の光、後は学園の僅かな光だけがこの世界の光源とも取れるほど、真っ暗なこの学園世界。その真っ暗な学園の世界に聞こえてくる音らしい音と言えば、小さな命たちが一世一代の大勝負を掛けて、命を燃やし生命の循環に励む音ばかり。

 次第に、涼しい夜風が廊下を撫でる音がうるさく感じてくる。


 その中でも人影の行う珍妙な行動は異質なほど響く。耳をふさぎたくなるほどに。 


 そして、二人で見張り始めてから数分が経った頃、やっと変化が訪れる。

 人影がいる、その奥の階段からまた新たな人影が現れたのだ。さっきのよりはデカい人影だ。


 すると、新たな人影は何の躊躇もなく無造作に元から居た人影も鷲掴んで持ち上げた。掴み上げられた方はさっきまでの永久機関のような行動をすぐさま停止し、ピクリとも動かなくなってしまう。

 

 止まった人影に、この明るさの不安定な校舎内でも分かるほどに、明確に首を傾げた大きい方の人影はこちらの存在に気付いているとでもいうのか、向かってくる……が。


「……なんだアシミ―か」


 僕は警戒の糸を切り張りつめていたものが一気に流れ出すように呼吸が深くなる。


 なんと大きい人影の正体は、僕達とはぐれて校内をさまよっていたアシミ―だったのだ。そのアシミ―が手に掴み取っていたのは……両手で抱えるくらいの大きさの人形だった。

 人影だとは思っていたけれど実際は人というにはかなり小さく、単に人形と言っても、シスが肌身離さず持っているかわいい感じのじゃなくて、どこか不気味で一見して不穏な事態を匂わすとても気味の悪い人形だった。


「うーん一応犯人は捕まえたけど、結局何が目的だったんだ?」


「えーわかんねぇこれじゃぁ犯人追跡できんよなぁ」


 人形には痕跡などは一切残っておらず、これでは追えない。でもさっきまで動いていたのは明らかに能力によるものだと思えるし、だから誰かが動かしていたことだけは間違いないのだけど……


「ちっなんだよ二人してあたしを置いてって、やっと見つけたと思ったら今度は人形の話かよ」


 僕達の会話をよそにどうやらアシミ―は拗ねているようだった。

 流石に夜の学校に取り残されたのは心に来たんだろうか。

 もうなんならずっとそれでいてください。


 その後、事件解決とまではいかないが一応の犯人を捕まえることはできたのでラーに連絡をして、もう夜も遅かったので僕達は寝ることにした。


 置いて行かれことがいまだにショックだったのか、アシミ―はさっきまでの狂人さはどこに行ったのかという程におとなしくなっていて、三人で川の字になりながら他愛もない会話をしながら僕達は眠りについたのだった。






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