第12話 「友達という未知」
今日も今日とて、生徒会の仕事は続く。
本日の業務内容は迷子になった飼い九官鳥の捜索だ。
飼い主の生徒によると、いつも通り学園に行って帰ってくると自分の寮の部屋からペットの九官鳥がいなくなっていたのだという。
鳥籠のカギをかけているからと部屋の窓を開けっぱなしにしてしまっていたそうだ。おそらく、鳥籠から運悪く出てしまった九官鳥がその窓から学園敷地内へと逃走したのだと考えられる。
こういったペットの捜索依頼は結構な頻度で生徒会に来る。
今月でもう二件目。
寮での動物の飼育は基本的にオーケーだからこういった依頼が多いのだろう。
動物を介す能力を持った能力者もこの学園にいるので、そいつがペット飼うのは良くてなんで自分は駄目なんだと訴える生徒が多くて動物の飼育が許可されたそうな。
まぁ寮生活で家族と離れ一人寂しい寮生活には欲しい存在なのかもしれない。
―――まぁ僕は動物は嫌いだからこの仕事は好きにはなれないが……
やや億劫になりながらも、ヴィルはちょうど手が空いていたアシミ―を連れて学園内の捜索を開始するのだった
え?捜索ならラーやオムの能力をつかえば一瞬だって?
まぁそう意見もある。というかそれが一番正解に近い。でもそれじゃあダメなんだ。あれだって……優秀な人材がいたとしてそいつが何でもできるからって全部そいつに任せるのは違うだろ?
確かにそいつがやった方が速いけどなんでも任せるんじゃなくて違う人も出来ることがあるなら手伝った方がいいに決まってるじゃない?
まぁたしかに作業効率はかなり落ちるけれど。
ラーやオムに任せた方が良かった、なんてことにならないためにも真面目に仕事に取り掛かるヴィル。
まず初めに、学園の至る所に通っている道の脇に生えている樹木や草の分け目なんかを探してみるが……九官鳥どころか痕跡さえも見つからない。
作業開始からそろそろ一時間は経過しようとしているのに、だ。
ちなみに、もし飛んで学園の敷地内を出たなら即、分かるようになっているので今のところ学園から出ていないことだけは分かっている。
ヴィルがせっせと草木をかき分ける横で、アシミ―も同じように木の上や九官鳥が羽休めしそうな枝木の上を探す。
アシミ―が手伝ってくれるのが意外だって?
アシミ―は性格は一部最低ではあるけど、こういうことは綺麗な笑顔で嫌味ひとつ言わずに普通に手伝ってくれる。
生徒会の仕事も真面目にやるときはあるというわけだ。
「いない……なんか痕跡見つけたか?」
「う~ん見てなーい、ほんと、どこに行っちゃったんだろう……」
授業が終わり放課後となり、遅れて帰る生徒やサークルに勤しむ生徒に怪訝な目で見られながらも僕達は捜索を続ける。
何か痕跡でもあればそこから僕の隔絶された勇気を使って追うことも出来るんだけど、こうも何も見つからなくては地道に探すしかない。
―――(最近、能力名スラっといえるようになったな……まぁ口には出さないけど)
ちなみにアシミ―の能力は探し物には全く向いていないので……いや、向いていないわけではないんだが、方向性は違う、まぁそういう意味ではあてにならない。
…一緒に探してくれているのにアシミ―に失礼か。
僕達がガサガサと草木を分けて痕跡を探していると、そこに突然声がかけられる。
「よっアシミ―、こんなとこで何してんの?」
―――げっアシミ―のギャルグループの一人だ。
こういう時は他人のふりをするのに限る。
ただでさえ友達の友達はどう扱ったらいいかわからないのにギャルとか無理だし、リア充度でスカウター壊れるわ!
「いやぁ九官鳥が逃げちゃったらしくてその捜索ぅ、生徒会のね」
「へぇー、まぁなんか大変なんだね生徒会って」
「そうなのです!忙しいのです!えっへん」
「えっへんとか今日び聞かねぇわ~きゃはは~」
二人してけらけら話してる姿を後ろに僕は黙々と痕跡を探す。
話しかけられたら終わる、無になるんだ、無無無無……
「なぁ鬼ちゃん、お前も探してんのか、きゅうかんちょう?を」
無無無っ!!!!!
なんでこっちにくんだよ!アシミ―と喋っててくれよ!
てか鬼ちゃんって誰だよ!?
「……お、おにちゃん?」
……声、裏返ったし。
頼むからもうこれ以上話の風呂敷を広げないで!
初心者の僕にはハードルが高いのぉぉぉぉ!!!
ヴィルは内心半狂乱になりながらも、ギャルにビクつく気持ちが勝ったことによって何とか問いをひねり出した。
「あんた妹いんだろ?それで怖いから鬼ちゃん、どうよ」
どうって言われましても……
「あは、あはは……」
乾いた笑みを浮かべることしかできないヴィル。そんな彼に対して、ギャルは―――。
「? ……なぁアシミ―、こいつ見た目だけで全然怖くないのな」
(そうなんです!無害なんです!
だから早く離れてぇぇぇ!!!)
「そうなの!ヴィルったらみんなに怖い怖いって誤解されててとってもかわいそうなの!」
(…よくもそんな思ってもないことをスラスラ言えるな)
ちなみに今の言葉をアシミ―の本音にすると、
『笑えるだろ?こんな女子ともまともにしゃべれないピーピーピー(自主規制皆さんのご想像にお任せします)野郎が鬼とか言われてんだぜ?傑作じゃねぇか!ぎゃはは!』
多分こんな感じだと思う。
「なんか、かわいそうなんだな鬼ちゃんも」
「あたしだけでも仲良くしてやろうか?」
そうなんです、かわいそうなんです。
でもいまこの状況自体が可哀そうなので早くはなれT,,,え?―――今なんと?
「…だめなのか?」
「ふぇっ!?い、いいんでしょうか?」
「なんで鬼ちゃんが聞き返してんだよ、あたしも面白い友達は大歓迎だぜ」
彼女はけらけらと愉快そうな様子でさらりとそんなことをお言いになりやがるであります。
だ、だめだ言語が……
こんなめんどくさい仕事の間にまさかこんな奇跡が起きるなんて!!
人生何が起きるかわからないなぁ!!!
「よ、よろしくおねがいイタシマス,,,」
声を段々と萎ませながらも、何とか最後まで言い切るヴィル。
「なんでそんなに声小っちゃいんだよ、ほんと顔だけだなインパクトがあんのは、あぁよろしくな鬼ちゃん!」
「あっやっべ、あたしもサークルの仕事あるんだった!こんなとこで油売ってる暇なかったわ!」
「じゃぁなアシミ―!鬼ちゃん!」
そう言い残して彼女は嵐のように忽然と去っていってしまった。
彼女は本当に罪な女ですよ、僕の心を盗んでいきました。うふふ、うふっ。
てれれてってってーん、思わぬところでヴィルは女子友達ができた。
ヴィルの中でレベルの上がる音がする。
(あっそういえば名前聞くの忘れた。まぁ今度自分で聞こう)
突然の幸運に胸を震わせ、気分は絶好調になったヴィル。仕事に掛ける情熱も跳ね上がるというもの。
「さぁ早く探すぞぉ!!!」
「おっなんかテンション上がってるね!あたしも頑張るぞぉぉ!」
やる気満タンで、がさっと手を突っ込んだ植え込みにふわっとした感覚を覚える。
引き抜いてみるとそこには真新しい羽根が。
―――いやぁ良いことっていうのは続くもんだなぁ。
感慨深い気持ちがまで出てくる。
さっそくヴィルはその羽に染み付いた匂いを効率化した嗅覚器官で嗅ぐ。すると、あっという間にその羽の持ち主までの匂いが辿れるようになる。
ヴィルはアシミ―と共に匂いを辿って走り出した。
・・・
「わぁありがとうございます!」
「もう心配したんだからなぁ!」
その後、僕達は飼い主のところに無事に九官鳥を届けることができていた。
まぁ僕の顔はつつかれたあとが山ほどあるが。
僕は昔から、人からだけじゃなくて動物にも怖がられていて、懐いてくる子なんて今までいなくて、それが災いして動物嫌いになってしまった。
正直に言うと僕自身は嫌いではないんだけど、不可抗力のように嫌われるから、少し苦手意識を持ってしまうというか……
今回も追い詰めた九官鳥に窮鼠猫を噛む的に顔を何回もつつかれた。
―――九官鳥は比較的おとなしい性格のはずなんだけど……
それから、依頼主の生徒にたくさんお礼を言われて、アシミ―と帰路についた。
時間が時間だから、生徒会室には戻らずそのまま帰る。
つつかれたところがまだズキズキと痛むが、そんなことは気にならない程、僕の心は晴れていた。
なんて素晴らしいんだろう! この僕に女友達が!
チェビ?スぺラ?アシミ―? 論外だ論外。
友達とは違う。
まぁそんなことはどうでもいい!
今日は最高の一日だったな!




