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こんな時代に、三人の出会い! 3


2学期始業式、当日の深夜0時。

僕はなぜか一人校門の前にいる。


あれからトール君、リョーコさんと連絡先を交換し、そのままあの場はお開きとなった。

家に帰って風呂に浸かり、あれは夢だったんだと自分に言い聞かせて風呂から上がると、携帯にトール君から「深夜0時に校門集合で!ミッチーの信頼も取り戻せるかもよ!」とメッセージが来ていた。


「やっぱ現実ですよね」


しかし高校入学して初めて連絡先交換したのが、自称霊能者とヤンキー女子って。僕も自称霊能者の変人だったわけだからしょうがないわけだけれども。これから普通の高校生活を送りたい僕の新たなるスタートとしては、いやここから挽回できる未来は思いつかない。

色々と文句を言いつつも、入学時に購入し意気揚々とスマートフォンに入れた連絡用アプリに、初めて増えた女子の連絡先を見てニヤついてしまうのも、いち健全な男子高校生としてしょうがないだろう。

表示されたリョーコさんのアカウントには三枝良子(サエグサリョウコ)、とフルネームで登録されていた。アイコンが犬と抱き合ってる図柄で、リョーコさんは犬を飼ってるのかもしれないな。これまで怖くて顔を直視できなかったが、こうして写真でよく顔を見てみると結構可愛いというか、なんというか、しかも彼女なんかいい匂いするしなぁ・・・


「よっ!」


「ヒャッ!!あぁっ!こっこここんばんは!・・・ってなんだトール君か・・・。」


慌ててスマホをしまおうとしたおかげで盛大にぶん投げてしまった。セーフ、画面に傷は無いようだ。


「早いな!実は結構やる気あるんじゃないか?」


そんなことを言うトール君は昼と全く同じ制服で、特に何かを用意しているわけでもなさそうだった。


「・・・本当にこんな安請け合いして大丈夫だったの?・・・僕が必要ってのもちょっと良くわかんないし。」


いや確かにあそこで断るなんて選択肢は物理的に殴られるという意味で無かったし、しょうがないっちゃしょうがないんだけども。


「放課後にも言ったろ?俺にいい考えがあるって。それにミッチーが必要なんだよ。」


あの後あの場から離れ、トール君と二人になった時、こんなことになっていったいどうするのかと慌てふためく僕に、トール君は落ち着いた様子で俺にいい考えがあるから付いてきてくれと言った。僕は恐怖と混乱で大分取り乱していたが、トール君の極めて冷静な態度を見て落ち着きを取り戻したのだった。


「まぁミキちゃんが言ってたおかしくなったユイちゃん?って人も本当におかしくなったわけじゃなくて、なんかちょっとした悪ふざけとかそんな感じなんだろうけど、解決できなかったら今よりもっと酷いことにならないか心配だよ。」


僕の考えではおそらく、ユイちゃんて子は、あの二人の不良のどっちか、ミキちゃんとリョージの方はどう見ても付き合ってる風だったから、たぶんケンタの方と付き合ってるかなんかで、何かしらの理由で別れたくなったが自分から別れを告げるのは嫌で、おかしくなったフリでもして相手から別れを告げてもらおうとでもしているんだろう。

女子は自分から告白もしないし自分から別れを告げることもしないめんどくさい生き物だとコンビニで立ち読みしたうさん臭い恋愛本に書いてあった。


「うーん、そこは本当だと思うぞ。あの後、三枝さんと連絡取り合って話を聞く限りでは、彼女たちは何回かお祓いにも行ったらしいからな。けれどどれも効果は無くて、それで藁にもすがる思いで俺達に話をしたと。」


「えっ?もう連絡取り合ったの?」


「いやそこに反応?」


いやしかしそれが本当ならもっとやばい状況なんじゃないか?そういうのが本職の人たちにお願いして無理なら僕にはもちろん彼でもなんとかできるとは思えない。精神的な問題を解決するならむしろカウンセリングとか受けた方がいいんじゃないか。


「そういう方法もあるっちゃあるんだけどこの場合はね。それに、俺がどうにかするわけじゃないよ。何度も言うけど、だからミッチーが必要なんだ。」


理屈が分からない、僕にはもちろん霊能力なんてないしトール君が本当に霊能力者なんてのも疑わしい話だし、ましてやカウンセリングの技術なんてもってのほかだ。できるのは自己紹介事変の頃にハマってたオカルト話をすることぐらい、ってそれじゃ逆効果だろ!

そうこうしていると、約束の時間を過ぎて待つ僕ら二人の前に、一台の黒いワゴン車が止まった。ワゴンの扉が開いて、中から降りてきたリョーコさんが手を振りながら降りてきた。


「悪ぃ、遅れた。・・・じゃ乗ってくれ。」


恐る恐る僕が


「えっ?・・・無免許ってことは無いよね?」


と聞くと、運転席から顔を出したリョージに軽く睨まれた。


「俺ぁ18だボケ。」


なんだ。この人たちは上級生だったのか。じゃあリョーコさんがタメ口だったのって一体?


乗り込んだ車内の空気は重く、助手席に座るミキはすすり泣いている有り様だった。

車は十人乗りのワゴンで、運転席にリョージ、助手席にミキ、そして一番後ろの席にケンタと、おそらくユイと呼ばれていた少女が乗っていた。

そしてその様子を見て、これが冗談ではないと、やっと理解することができた。

ユイは焦点の合わない虚ろな目で、無気力に隣に座るケンタにもたれかかっており、そのだらしなく開けられた口から涎を垂らしながら、()()とか()()とか唸っていた。


「・・・ちょっと、これはなんというか、本当にやばいんじゃ・・・・?」


女子高生が他人にどうみられるかを一番気にしている生き物だということは姉を見て知っているつもりだ。自分をいかに可愛く見せたいと思っているかは、巷で流行しているプリクラ、写真アプリや加工アプリを見ればよくわかる。

ユイちゃんも、顔だけ見れば整った顔立ちをしていることはよくわかったが、その様子はもはやどう見られるかなど気にせず、服もパジャマ。ノーメイクで肌はガサガサで、姉にいわせりゃ絶対に他人に見られたくない格好だ。

これは演技なんかじゃないな。


「・・・()()みるよ。三枝さん、向かってくれ。」


トール君がリョーコさんに促すと、


「兄貴!」


運転席のリョージに向かって声をかけた。


あぁなるほど兄弟だったのね。リョージとリョーコ。いや似てなッ!

主人公がシリアスな状況でも無駄に明るいのは、理由があります。

次回ホラーなのでそれまで耐えてくださいすいません。

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