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こんな時代に、三人の出会い! 2


 朝のSHRも終わり、本来なら転校生への質問攻めなんかが行われて然るべきの、次の授業までの空き時間。窓際一番後ろの席に座ることになった転校生逢沢君の周りには誰も居なかった。それもそうだ。この転校生は自己紹介で霊能力者アピールをし、ひとつ前の席には同じく自己紹介で霊能者アピールした男がいるのである。

この教室の窓際後ろの席二つのエリアは、さながら心霊スポットだ。誰も近づきたくないだろう。


「いやぁー月イチ、いや今年イチ笑わせてもらった。サンキューな!クックック」


隣の席のヤンキー女子が、肩をバシバシ叩きながらそう言って教室を出て行った。痛かったが、女子と会話したのは久しぶりだったので少し嬉しかった。会話といっても一方的に話されただけだったが。あと意外にいい匂いがした。

しかし今教室を出ていくって事は次の授業はもうサボるつもりなのか?


「なんか皆変だな、こっち見ないし」


後ろの席で逢沢君が不思議そうに首をかしげる。皆意図的に見ないようにしてるよ、心霊スポットだからね、見たら呪われちゃうからね。


「・・・あぁ~、あの、詳しくはあとで話すよ。放課後は空いてる?今日は短縮授業で昼休みがないからさ。」


「おう!サンキューな!吉野・・・下の名前聞いていい?」


道成(ミチナリ)だよ。」


「んじゃミッチーだな。案内よろしくな、ミッチー!俺の事は気軽にトールって呼んでくれ。」


僕が言うのもなんだが自己紹介の一件さえ無ければ、会話した感じその爽やかフェイスも相まってとてもいい好青年なんだがな。僕もそのことには触れず、そうこうしているうちに次の授業のチャイムが鳴った。





*************************************







そして放課後。


「やっと終わった、さぁミッチー!話そうぜ!」


「っととりあえず案内しながら話すよ!さぁ!行こうか!」


教室に残っている生徒達の背中から、無言の圧力を受け、トール君を強引に教室の外へ連れ出した。あのまま教室に残って話を続ける事は僕のチキンハートでは耐えられない。

トール君も何かを察したのか、それからはあまり喋らずに、僕の案内に従って二人で校舎を歩いていた。


「それで、やっぱ自己紹介のアレ、マズかったのか?」


案内を終えた体育館から校舎に向かって歩く途中、トール君が不意にそう言った。どうやら自覚のある分、あの時の俺よりはマシなようだ。今のうちに引き戻せるなら戻してあげるのがやらかしの先輩である俺の役目だろう。

そこで僕は、入学時の忌まわしき自己紹介事変の詳細を語った。優しく、かつ慎重に、同じ過ちを犯した仲間としてこれからどうしていくべきかを考えようと。


「とまぁそういうわけで、うちのクラスじゃ心霊関係の発言はタブー視されてるんだ。主に僕のせいで。だけど君にはまだ時間がある、悪いことは言わない、全部ギャグだったことにするんだ、そうすればまだ逆転の可能性は残ってる!」


そしてあわよくば実は転校生と僕と二人で共同でついた悪い冗談でしたー!で僕の評価も覆されることを期待したい。我ながら一発逆転のいい手だ。

しかし当のトール君からは意外な返事だった。


「なるほどなー、そういう理由か。でも、だからかー。しかし本当のことだしなー。だから撤回は・・・しないかなぁ。」


絶句である。僕の体験を伴った力説でも彼を変えることはできないってのか?


「いやいや、考え直してよ!今ならまだ取り返しがつくし、それにほら皆を騙すってのもさ、後々自分の心が痛くなるよ。ほんとに心が痛くなるんだよ・・・。」


「いやまぁ本当に、見えるって騙るのは良くないんだけど、俺は本当に見えるからなぁ。」


「早い方が傷も浅くて済むんだって!ね?考え直して二人でこれからクラスでの立ち位置をどう取り戻すかって案を・・・」


「おっ、例の二人いたいた!」


トール君をなんとか説得しようと試みている最中、隣の席のヤンキー女子がこちらに近づいてきた。

どうやら僕ら二人を探していたようである。


「やーっと見つけた、教室に戻ってもいないからどこ行ったかと思ったぜ。例の二人、霊の二人か?クックック・・・おい、笑えよ。」


会った早々オヤジギャグをかますこのヤンキー女子、あれから結局放課後まで教室に戻ってくる事はなかったが、僕ら二人にいったい何用なのだろう。


「話あっからちょっと面貸せよ。校舎裏な。」


あの自己紹介事変から今まで何もなく、さらに笑ってくれた彼女にいじめの標的になる心配は無いと安心しきっていた僕も、これから起こることは受け入れるしかなかった。クラスに二人も頭がおかしい奴がいたらそらこうなるわ。でも実際こんなテンプレみたいなことあるんだな今どき校舎裏呼び出しってー。

彼女は現実逃避を決め込む僕と、落ち着いた様子のトール君の肩に手をまわし、半ば強引に校舎裏へと連行された。


「そんなビビんな落ち着けよ、取って食いやしないって!」


ヤンキーなんて今までもこれからも全くかかわる予定無いし一番忌避してきた人種だしましてや女子に肩に手をまわされ落ち着けって元中二病現在進行形陰キャにゃこれで落ち着けってのは土台無理な話である!ひゃあやっぱちょっといい匂いする!


「お前ちょっとキョドりすぎ・・・。」


肩に回された手が外された。いや、普通にちょっと凹む。下心はちょっとしか無かったんですよ。






*************************************






校舎裏には二人の男ヤンキーが、一人の女ヤンキーを囲むようにしてたむろしていた。周りは独特な匂いと心なしか白いモヤがかかっている気がした。

こんな時代に未だにこんな奴らいんの?無理、怖っ、マジでボコられるやん。僕親父にもぶたれたこと無いんですッ!


「そいつらがリョーコの言ってた、自称霊能者?」


真ん中にいるヤンキー女子2がヤンキー女子1に向けて聞く。この子の名前リョーコっていうのか。今更ながら知った。


「そうそう、とりま話すだけ話してみるのもアリっしょ。」


「あぁ?てめぇら嘘ついてたらマジボコッかんな?」


「マジかよ?どう見ても普通の奴と陰キャにしか見えんぞ。」


周りの男ヤンキー二人が視線を上下しながら近づく。この時点でもうボコられた後みたいな精神状態の僕とはやはり対照的に、トール君は落ち着いた表情で立っている。


「やば、そっちちょっとイケメンじゃん。」


ヤン女2がトール君を見て呟いたことで、ゴリゴリっぽい方のヤンキー1が


「あぁン???!!!」


とトール君に迫る。しかし全く動じないトール君。凄い根性座ってるな、僕もうちょっと色々漏れそうだよ。


「それで、話って?」


顔面と顔面がほぼほぼついてるんじゃないかって距離に詰められながら、淡々とトール君が訪ねた。


「ちょリョージいい加減にしろって。ウチら話聞いてもらう立場なんだからよ。ほら、ミキ話せって。」


リョーコさんがリョージと呼ばれた男をトール君から引きはがしつつ、ヤン女2改めミキちゃんに促した。さん、とちゃん、は、僕の心の中のイメージでつけさせていただきます。男にゃ敬称はいらんだろう。


「うん、ウチら夏休み、ここにいるウチとリョージとケンタと、今いないんだけどユイと、四人で遊んでたわけ。したらユイ近くに心スポあるーいうから行ったのね。そしたらなんか急にユイおかしくなっちゃって、なんか叫びだしたり暴れたりして、無理やりリョージとケンタが連れて帰ったんだけど、家ついたらおとなしくなったんだけど、なんかおとなしすぎるっていううか、ユイじゃなくなっちゃって、今日もユイガッコ来てないし、ウチもうどうしたらいいかわかんないのぉ・・・うぇぇえん」


そういって泣き出したミキちゃんの肩にリョージとケンタが手を置き慰める形に。


「とまぁそういうことで、二人にどうにかしてほしいんだけど。やってくれる?」


リョーコさんが、トール君と、唖然とする僕に問う。

いやいやちょっと待てよ、今の話を要約すると、友達四人で心霊スポットに行ったら、一人がおかしくなって、今日も学校に来ていない。だから何とかしてくれと。

いやいやいや、マジ?霊的な用?ボコられないことにひとまず安心したが、それとこれとは話が違う。物質的な問題が解決したら次は精神的な問題が。いや本当にそっちの相談されることなんてあんの?対処法なんか知らないよ!

ここはどうにか上手く取り繕って、早めに帰らせていただく他ない。


「いいよ。三つ条件あるけどいいかな?」


いやトール君?急に何承諾してんの?僕の意見聞いたの?彼女は()()()って言ってたよ?僕も含まれていることに深い悲しみの念を抱くけれども僕も含まれているのなら決定権は僕にもあるはずだよねそうだよね?それに僕がいなくても彼一人で何とかできるはずさきっとそうさ。むしろ僕にできることなんて本当何にも無いんだからね!


「うん、何?応えられる内容ならなるべく応えるよ。」


「一つ目は、そのユイって子も連れてもう一回その心霊スポットに行くことになるんだけど、連れてこられるか?」


「どう?ケンタ」


「・・・大丈夫、連れてくるよ。」


「うん、じゃ、もう一つは?」


尋ねられたトール君が、なぜか僕をチラと見て苦笑し、リョーコさんの方を向いてこう言った。


「二つ目は、ミッチーも一緒に来ること。」


トール君?ちょっと待ってくれよ意味が分からないよ、それだと僕の決定権が危うくなるんだけど。


「ミッチー・・・そっか、じゃミッチー、来られるよな?」


いや拒否権無いじゃないですかヤダー。それにミッチーって、たぶん本名知らないからなんだろうけど女子にあだ名で呼ばれるのってなんか小っ恥ずかしいな。いかん現実逃避が。


「いいいいいいやちょっと待ってよ、いくらなんでもいきなりそんな話されてもね?ほら、いろいろ準備とか」


「ああぁん?てめぇまさか出来ないとかぬかすんじゃねぇよなぁ?」


リョージ君が遠くから凄む。あぁつい心象でも男に敬称つけちゃったよ、だって怖いんだよこの人。


「ハイワカリマシタ」


「三つ目は?」


「一応報酬貰うことになる、タダじゃできないんだ。それだけ言っておく。それ以上は解決した後に話そう。」


「よし、わかった。じゃあなるべく早くお願いしたいんだけど、いつ出来る?」


「今日の夜にでも。こういうのは早い方がいいからな。」


そういいながら、トール君とリョーコさんが握手を交わす。


「じゃあミッチーもそういうことで。ごめんな、でもこれミッチーの為でもあるから!」


いやそんなこと念を押して言われると逆にトール君怪しくなるよ僕本当は関係なかったんじゃないの?


「クックック。よろしくな、ミッチー。」





・・・まぁ、女子と握手出来たのなんて何年か振りだから、一旦はまぁね。この場は良しとするか。

リョーコがなぜ一人は痛い陰キャ、もう一人は出会ったばかりの、この二人に助けを求めたのか。

理由はちゃんとあります。

もうちょい先でそこには触れます

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