ーー少年は世界を分離した。ーー
――2362年12月。
僕の周りには沢山の小型撮影機が飛んでいた。僕は遂に人類史上初めて,時間移動に挑戦する。レシラスが僕を見送る。時間を合わせ,紀元前2019年へと旅立ったつもりだった。しかし僕は気づいてしまった。
「いや…これ…紀元前じゃなくて…紀元2019年になってるんだけど…。」
僕はキャンセルボタンを連打した。しかし時間移動装置は光の道を進んでいった…
――その時,少年は世界を分離した。
――遡ること1か月。
「早く起きてくださいっ!セレマス兄さん!」
…………。
「早く起きてくださいってば!」
…………。
「起きてくださいっ!」
バシッ。
叩かれる音が聞こえた。それと同時に腹から全身にかけて痛みが広がる。
「いてっ」
「なにやってるんですかっ!今日はメルラ博士が開発した時間移動装置の最初の搭乗者を決める大イベントですよっ!このままだと遅れちゃいますっ!」
妹のレシラスが言った。目を擦りながら階段を降りる。2362年,地球。建物の9割は多量家族住居という円柱状の40~80階建ての昔でいうところのマンションのようなもので形成されている。人口は溢れ返り,地球と火星では土地が足りなくなってきている。技術がなんとか追いつき、建物の高層化が進んだことで,土地がなんとか足りている状況だ。人々は基本運動も室内でできる設備になっているため,外にはあまり出ていない。
「…ったく。地球人から一人時間移動を決めるといってもその確率は何千億分の1だぞ…そんなのに該当するわけないだろ…」
「はぁ…兄さんは本当ネガティブですよねぇ。ほら、抽選が始まりますよ!ネットを早く開いて!」
空間操作画面を開いた。指を特定の向きに動かすと空間上にCGとして現れるタブレットのようなものだ。画面にメルラ博士が映る。
「さあ皆さん,只今より抽選を開始します!時間移動に立候補する人は"立候補"をタッチしてください!」
「ほらほらっ!抽選が始まりますよっ!」
世界中の立候補者は100億人だった。その中の一人に選ばれるとでもレシラスは思っているのか?画面内で抽選が行われる。そうして一人のユーザーは選ばれた。
「ついに決まりました!人類で初めて時間移動をする人は…セレマスさんです!」
それみろ。僕じゃない。
…………。
…………!?僕なんだけど。