人間はオワリノ創造神
「このままでは国民の不安が募るばかりです総理」
「そうです。一刻も早く対策を練らなければ」
「研究所への資金調達が一番だ。早くウィルスの実態を検証しなければ今後の世界がどうなるかわからん」
「総理、外交及び国交はどうしましょうか」
「全て閉鎖させろ。代表には今起こっている事を伝えろ」
ーー2021年。五輪を終え、多くの人々が笑い、民族や国境を越えて世界との関係の更なる進展を迎えた。
その中で暴動や事件は絶えまなく起こっていた。政府や警察は、人が増え、多様な種族が同一環境で生活することで仕方なく発生するものだと述べた。
しかし、"仕方ない"と述べつつも、全ての家庭、飲食店etc...では刃物の所持、使用が完全に禁止された。
そして各学校でも妙な避難訓練を行うようになった。これは全国一斉に始まったものである。
政府は具体的な理由を述べなかった。
そして一番我々にとっての生活に必要だったもの、"電気"が周期的に使えなくさせられるという事にもなった。
しかも電気の供給停止期間は一週間。一週間だとほとんどの機器のバッテリーは底をついてしまう。サーバーも動かない。
多くの企業は政府へのデモを企画していたらしいのだが、全て抑制させられている。
「いや、待てよ。外国ともっと交流を持った方がよいではないかかか総理」
「如何なさいました防衛大臣」
「外交を再会するのだー。それを動かせるのは我々しかいなぁい。国民に銃器を配布するなんて、どーーーーーーう、ダ!!?」
「総理、これはもしや」
「あぁ、間違いない。我々も感染している可能性が出てきたな」
「早く決めないのですがが総理銃器を全国民に配布し外交を再開させ資金を回収する~~~!」
「官房長官、全ての外交施設を封鎖しろ。即急に伝えてくれ」
「はい、総理」
「あああああががががワーータシノ話ヲォっッキキ聞いていーたぁのか!?!?!?」
「やめろ!目を覚ませ防衛大j...あああああああああ」
防衛大臣は隣にいた財務大臣の首を絞める。
「撃て!!!」
「「パァン」」
護衛が拳銃を打ち放つ。
「クソっ何処へ...え??」
「総理、胸から出血が、、、」
「おい、どこ撃って...」
「「パァン!!パァン!!パァン!!」」
感情を失った護衛は無表情でその場にいるものに銃口を向け、放つ。
「ぎゃあああ!!!」
卓上は血塗れだ。
「「キュイン」」
そして、護衛は手に持った茄子状の物体からピンを外した。
「やめろ!議事堂が!!!」
「「「ドゴォォォォォォ」」」
休み明けの小春日、国会議事堂は消失した。
「「本日の午後三時過ぎ、国会議事堂が爆破されるテロ事件がありました。政府の集会が行われている最中を狙った犯行だと思われます。生存確認はできておらず、政府の機能は一時的に停止されるものと....」」
「最近は物騒だねぇ」
父は悠長にそう語り、テレビを消した。
「じゃ、俺行って来るわ」
「おうショーゴ、気ぃ付けてな」
始業時間ギリギリだが家と大学がそう離れていないため五分あれば講義室に入れる。
「ふう~、間に合った~、、、あれ?」
人は一人もいない。黒板を見ると、"四号館前の中庭に集合"とかかれていた。
とりあえず中庭に行ってみる。
「は?ナニコレ」
ザワザワしていたが、人だかりの中心には203講義室の教授と大きな白い円筒状のものが建っている。
「お、崎垣来たか」
「おーコータ...てか何あれ」
「近くで見に行ってみな。恐怖でちびんなよ」
「流石にそらねーわ」
コータ、藤高琥太は同じ学部の元柔道部で高校の時からの友人である。
「じゃーちょいと見てくるわ」
「おう、俺は購買行ってくるからよ」
人だかりをかき分けて円筒物体に近づく。するとその白い壁に何か説明のようなものが書かれていた。
"自殺機 機器内に入り、検査を受け、陽性であった場合自殺方法を選択することができます。それ以外の場合は全てVR仮想空間を見させ、気付かぬうちに殺害を実行します。機器内に入らなければ殺害は実行されません"
「なんだよコレ...」
さっきから疑問しか口から出ない。何のための機器なんだ??自殺する必要があるのか???
「おや崎垣くん。安心したまえこの機器の電源は入っとらん。県内でウイルスによる事件が発生しない限りな。ま、その場合自動で電源が入るんじゃがの」
疑問は深まるばかりだ。
「「キューーーーーン」」
「おや、早速県内でウイルスが見つかったんじゃな」
機器のラインが青く光り、入り口のドアが現れた。
「キャー」
「逃げろー」
ここに居た人たちが恐怖から逃げてゆく。
俺もその中に紛れて逃げ出し、購買へ向かう。
「ウイルスってなんの事だ!?」
「「全生徒に次ぐ、県内で殺人鬼増殖ウイルス、"キラーインクリース"が発見された。これより生徒は敷地内から外部への干渉を禁止する。この敷地内は完全な隔離空間にする。繰り返す。敷地内は完全な隔離空間にする。一切の逃亡は認めない。以上だ。」」
学舎内がざわめく。
俺とコータは購買でパンを食べていた。
「おい、今の聞いたか?」
「ああ、でも隔離空間ってことは命は大丈夫って事だよな」
「うん、そうだろうネ」
「んあ?」
「ん?」
「あれ?気付いてなかった~?ずっと後ろにいたのに」
「いや怖えな無言でパン食ってた俺らをずっと後ろから見てたわけ!?」
「んんw」
「やべぇな...あれ、瑞葉は?」
「ミズハはさっきトイレいったよ~」
このやかましいのもコータと同じく学部が同じ高校からの友人でユナっていう。瑞葉は高校は違ったが中学の時から友人だ。
「で、なんだよ殺人鬼増殖ウイルスって...」
「ちょっとわかんないな...」
「あとね、電波が圏外になっちゃたから完全に外部とシャットアウトされたみたいだよ?」
「ウッソマジかよ...朝から自殺機やら急な隔離政策やらどうしたんだよ全く...あと俺家近いから寮みたいな部屋持ってないんだけどどうしよう」
「じゃあ俺んとこ来r、イテっ」
「瑞葉ちゃんに頼んでみたらどうカナ~?」
「い、いや本気で悩んでるんだから茶化さんでよ、、」
「照れてる照れてるゥ」
急に恥ずかしくなり残ってたパンを口に詰め込む。
「あっ翔瑚君たちここにいたのー」
「ねーねーミズハ!崎垣クンが住むとこがないらしいから泊めてあげてよ」
「えっ?いいのかな、、私は、いいよ」
「あのー、俺は?」
「あんたはいつも通りの生活してなヨ」
「おいおいひでぇなそもそも学園でそれを許可してくれると思うか?」
「そうだね。あとで聞きに行こうか」
ダメだろ絶対...
「「今日の講義は全て中止になりました。尚、生徒は教務員室の出入りをすることができませんのでこの後順次流れるアナウンスを聞いて行動してください」」
「って事は俺ら自由か!おいショーゴ、寮前んとこでゲームしよーぜ!」
「アホか。明日から一週間電気止まるんだぞ!」
「ねえねえ、ちょっとミズハの家に来てよ。いい事思いついた」
「私の部屋でいいの??」
「いいじゃん!アタシの宿舎遠いしサー」
「また何か悪だくみか?」
「んー、そういうもんかな?どーでもいいけど」
「ここだっけ」
「一個奥」
「ミズハ、カギ開けて」
「ちょっとまってね」
「「ピッ」」
「「ガチャガチャ」」
「はい、どうぞ~」
「お邪魔しまーす」
「意外と寮って広いんだな...」
「そうか?やっぱどこも同じつくりなんだな」
「アタシんとこ左右対称だ」
「で、ユナ何を思いついたって?」
「ミズハ、飲み物は後でいいからちょっと来て」
部屋の奥の和室に集まる。
「あのさ、ネットにつながらないのは多分全国的な話だからしょうがないと思うんだ。だけど情報を得るために教務員室では外部のネットワークに繋がっている」
ノートPCを取り出し、ここの周辺の深層ネットワーク接続を表示する。
「ここで使っているIPアドレスはこの接続では使っていない。つまり深層ウェブじゃないと接続できないわけだ。教務課にはアクセスするためのリンクがあるはずだけどそれが分からない。出所がわかればいいんだけど、今朝のニュースであった通り政府の機関では運用できない状態だ。つまり何もわからないんだ」
「お、おう結局何もわかんないのか」
「で、お前は何を思いついたんだ??」
「きっとこの学園も食料が尽きる。そうなる前にある程度の食料を備蓄しておく必要がある。で、外部の情報も必要だからさっき言った深層ネットワークのハッキング、そして電力が尽きないようにここから一番近い二号館のソーラーパネルでバッテリーを供給することも必要になってくる」
「なるほど。よくある学園サバイバルだな。」
「私できる事なさそうだよ~」
「俺も正直よくわかんねぇや」
「そういうと思って役割は頭の中で構成済みデす」
「俺何?」
「俺は?」
「まず、深層ネットワークのハッキングをミズハちゃんと翔瑚クンに任せる。場所はここね」
「二人で??」
「そう。これが多分一番難しいから」
「情報学科だし大丈夫だよ翔瑚くん!」
「そ、そうだな」
「よし、翔瑚クンはここに住み込み決定~。で、食料調達はコータな。私は電力供給やるから」
「食料調達今日でおわるっしょ」
「んん、そうだネ。ちゃんとやる事はあるから」
「あるんかい」
「あ、ここに残る二人は絶対に外に出たりしちゃだめだよヨ」
「なんで?」
「学園が無法地帯だぜーって美少女のミズハちゃんが男たちに襲われるのを防ぐってメリットもあるんだから」
「なるほど」
「裕奈ちゃん頭いい~でも、美少女か...」
「じゃ、暴動が起きる前に食料調達頼むよ。あ、この部屋にはオカシな事が起こらないように体温計測センサ置いてくから。間違いが起こらないように」
「食料は何処におけばいいんだ?」
「ここでいいよ。お前んちでもいいけどな別に」
「任せろ。ここに持ってくる」
コータの寮とこの寮はそんなに離れていないため正直どちらでもいい。
「じゃ、二人とも任せたよ。アタシは太陽光発電の設備を視察してくる」
「「バタン」」
ぽつんと二人残される。
「えーと?」
瑞葉はこちらに微笑みかけてくる。
「間違いが起こらないようにって...まずどうやってハッキングするか」
「デスクトップだと電気使えなくなったら動かせないからノートPCでやろ」
「そうだな根本的な所考えてなかったわ」
「まず、深層ウェブに接続するためにはどうするか」
「あ、俺殆どのリンクにアクセスできる匿名化ソフト持ってる」
「じゃあ翔瑚君のPCでやろ」
彼女が近づいてくる。
あ~胸の辺りが...
ソレを見ないようにPCの画面にのみ意識を集中させる。
"暗号化回線を設置中"
"接続成功"
よし、ここならできる。
「瑞葉、なんとか深層ウェブには繋げられたぞ」
「私がハッキングしたときは大体ダミーか多重ロックでアクセスを妨害してくるんだけどどうする?」
「あ、そうかお前ハッキングした事あんじゃん...多分だけどほぼすべてのサーバーが落ちてるから表示されるのは少ないはず」
「そうだね~。もしダメなら教務員室のPCをハッキングして遠隔操作で探すしかなくなっちゃうよ」
「それはリスクが大きいぞ...まずはボットネットから」
"botnet site:.*. *"
"検索結果:1"
「やっぱ少ないな。接続できるボットネット一つだけとか」
「リンクはメモっとくね。じゃあ次は巡回ネットサーバー」
「おっけ」
"corstr server con:.*. *"
"検索結果:12"
「割と多いな」
「ほんとだね、あ、コレ」
"接続できなかったよ^-^情報置いてける人置いてって"
「なんか生きてるサーバーハッキングして同じ境遇の人を呼んでるやついるよ」
「「生徒にお知らせします。食事は購買で済ませるようお願いいたします。発券機の前の電子端末から自分の番号にチェックを入れてください。メニューは日替わりで選択はできません。全て無料です。尚、敷地内部のみのローカルネットワークを明後日試験開放致します。電力は自分たちで確保してください」」
「ローカルネットワークか...このPCが繋がらないようにしないとまずいな」
「深層ネットワークに繋いでる間は大丈夫だよ。じゃあここからはIPアドレスをクラスごとに検索していって全探索させないと」
「Java servletできる?」
「うん、一応」
「じゃあIPアドレスを一個ずつ全部探索させて出てきたサイトを調べるプログラム作るか」
「うん!」
「「ピンポーン」」
「お、コータだ」
「「ガチャ」」
「とりあえずパン類を購買から大量に持ってきたから押し入れにでも入れといてくれ」
「おお、助かる!!」
「進展したか?」
「なんかサイト形式で調べても見つからんかったからIPアドレスでブルートフォースかける」
「おお、じゃあservletの構築か」
「そう」
「じゃあお前らの飯持ってくるわ。待ってな」
「「バタン」」
「瑞葉どう?できそう?」
「んー、当たったサイトのリンクを保存してくプログラムが組めてるかが心配」
「どれどれ、えーと、このenumで宣言してる定数は変数で宣言したほうがいいかもしれない。もしdefaultの条件に相当して実行できなかった場合に繰り返し回数を変えなきゃいけなくなるかもしれないから。それで一回やってみよう」
「確かにそうだね。試してみる」
"class:A-0.0.0.0 result::true :B-128.0.0.0 result::true :C-192.0.0.0 result::true :D-224.0.0.0 result::true :E-240.0.0.0 result::true"
見えないくらいの速さで文字が出力されていくが結果が返ってくるまで待つ。
"all result:: class:A=0 class:B=0 class:C=0 class:D=0 class:E=0 return Links == ..."
「あら、失敗だな」
「falseで結果が一つも帰ってこなかったね」
「「ピンポーン」」
「コータとユナだ」
「「ガチャ」」
「ほいほい飯だぜ」
「おーサンキュ」
「俺とユナはもう食ってきたから」
「太陽光発電システムの警備が薄すぎたから簡単に電気とれたヨ。はい、多分四人使っても一週間は持つであろう分のバッテリー。電圧高かったからすぐ充電されたわ」
「じゃ、俺はもう帰るな」
「おう、おやすみ」
「アタシも仕事終えたし帰るよ。もう夜になるし休みな」
「お、おう」
「わかった..」
「あとな、アタシの予想通り瑞葉を狙ってる連中がこの寮付近にも湧いてるから注意しろよ。そんじゃ」
「「バタン」」
瑞葉がドアスコープを覗く。
「うわぁ、ヤ○○ンの人だよあの人...」
「治安悪いな...多分瑞葉がここに来るのを待ち伏せしてるのかな?」
「とりあえず布団しいとくからお風呂入ってていいよー」
「おう。じゃあお言葉に甘えて」
瑞葉は布団を敷き、PCを見る。
「あれ?」
"出所不明のメッセージ:yuna for syogo *開く +署名を表示"
「開いてみよ」
"お前んとこもダークウェブ使ってたのなwあんま使いたくないけどちょっと報告。前で多分待ち伏せしてるであろう連中の一人に盗聴器仕掛けといたからお前んとこにその音声データを送信するようにアドレスルート書き換えとくから見たら返信くれ"
「「ザー」」
「ねえ翔瑚君?」
「なにー??」
「裕奈ちゃんのメッセージ返信していい?」
「要件は?」
「かくかくしかじかだよ~?」
「分かったって言っといて」
「うん分かった」
"OKな、バッチコマンド開いた状態にしといて"
"できたよ"
"OK"
すると、"192.168.28.100 mp3 root"と画面に表示され、音声が流れてきた。
「おーい上がったぞー」
「私入って来るね。ログ見といて」
「おう、分かった」
「なるほどな。奴らの監視ができると」
[あー村村するぞ]
[帰ってこなくね]
[一回いってみようぜ]
[おしかけんの!?]
[おけ]
急いで瑞葉のもとへ。
「おい瑞葉!」
「なに?」
「今から俺がいいって言うまで絶対に音立てるなよ!」
「え、なんで」
「この寮の前にいた連中が部屋まで来る」
「えっ」
「「ピンポーン」」
「「ピンポーン」」
「「ピンポーン」」
[おいやめとけってw]
[周りに聞こえるぞ]
[いないのかな]
[また明日来るか。オールしすぎてネミィ]
[じゃ、今日はお前んとこな]
「いいよ」
「行っちゃった??」
「うん、ドアスコープからしっかりと背中を見届けたから」
「そう、良かった」
「「ジャー」」
「翔瑚君、先に食べてていいよ」
「おう」
何の弁当だろう。
「「ガサガサ」」
「おっ」
ごくごく普通のから揚げ弁当だ。量も並くらい。
「いただきまーす」
「あがったよー」
水を含んだ髪を結いながらこちらに来る。
「かわいい...」
「え?」
「いや、このから揚げ弁当うまいって」
「そうなの?じゃ、私もいただきます」
コクコク頷きながら弁当を平らげる。
「ごみは?」
「ゴミ箱へ~」
「うん、ごみ箱はどこ?」
「そこ」
「じゃあさっきのプログラムもう一回やってみるわ」
「うん」
まだ時刻は21時31分。24時に寝るつもりで再びプログラムを構築する。
「ごちそうさま。どう?できそ?」
「うん、さっきはNULLが入ってるものをfalseとして探索してたけどこれだと'\0'が入らない限り全てtrueになる訳。で、何かしらの数値が入っていたら\0は検出されないから今回は全てtrueだったせいで整数型のケタ上限をオーバーフローしたってことかな」
「じゃあASCIIで変換して文字列が成立したものをtrueにすればいいって事、だよね?」
「うん、そうだね。一応2進数に戻してそこからASCIIとUnicodeに変換したほうがいいかもしれない」
「そこだけだね」
「やっちゃうか」
ーー23時42分
「よし、動かしてみるか」
「うん!」
"class:A-0.0.0.0 result::false :B-128.0.0.0 result::false :C-192.0.0.0 ::false :D-224.0.0.0 ::false :E-240.0.0.0 result::false"
「お、初段階はいいんじゃない?」
そのまま結果が返るのを待つ。
"all result:: class:A=5 class:B=22 class:C=511 class:D=13 class:E=7 return Links == 48"
「ん?結果の合計は558だよな。リンクの結果少なすぎないか?」
「クラスCから511個検出されてて、A+B+D+Eをすると47になるよ?」
「えーと?つまりなんだ?」
「Cから検出されたリンクは一つだけってこと!」
「なるほど。じゃあ一つを除いたクラスCの510個のリンクは全部ダミーって事か!」
「なるほど!じゃあ成功したのか!!!」
「やったね!」
「ただ、、511ってこの中からどうやって本物を探そうか」
「明日一個ずつ開こうよ。しょうがないから」
「そうするか~」
「早く寝よ!」
ごくりと唾を飲み込んだのは気にせずに布団に入る。
あぁ~、いい匂いがする~
「こらっあんまりにおいかがないで!」
「は、はい」
暖かいふとんと瑞葉のにおいに身を包み、深い眠りへと落ちた。
ーーー「「ピンポーン」」
「ん...?」
あれ、もう朝か。
「「ピンポーン」」
「裕奈か」
「「ガチャ」」
「おっすおっす」
「おっすーどうだった?昨日はしっかり寝れた?愛人の布団で興奮しなかったー?」
「おかげで、チャントネムレマシタヨキモチガヨカッタデス」
「んー?んーー?聞こえないけどまあいっか」
「で、プログラムはできたの?」
「おお。調べたら見つかったんだけどさ、511個ヒットして510個がダミーらしいから今日一つずつリンクを開いてくつもり」
「お~いいじゃん。でも510個か...滅茶滅茶めんどくせぇな~」
「電気供給が止まる12時までにある程度終わらせたい」
「うん、その前に瑞葉をおこしてやって」
まだ寝てたのか。
「みずは~起きて~」
ああああああ寝顔が可愛すぎて顔面の筋肉が溶けそーーーーー
「ふぇ~ん?えっあっ」
「んーおはよう」
「おっ、、おはよー...」
「先に作業始めてるから顔洗っといで」
「うん...」
「まず一個目。はい×」
「みずは、260個目で交代して~」
「はーいっ」
「で、アタシから報告なんだけど、今国内の治安は最悪らしい。家庭内の絞殺とか公衆の人が多いところで自爆だとかビルに放火だとか。結構やばいらしい。ウイルスのせいかは知らんけど」
「「ピンポーン」」
「お、コータ」
「「ガチャ」」
「おすおすおはよう」
「おーおはよー」
「進展は?」
「現状の確認と昨日言ったプログラムを完成させてかくかくしかじか。」
「なるほどな、俺も手伝うぞ?」
「大丈夫。瑞葉とやる」
「そんな、私すぐに情報処理できるか分かんないよ?」
「いいからいいから」
「じゃーアタシは暇だし将棋でもやろーぜコータ」
「なんで将棋をチョイスしたかは知らんけどいいぞ、かかってこい」
ーーそして二時間経った。
「瑞葉、交代して、、ここまでは無かった,,,てか将棋まだ終わらんの??」
「おっけ、頑張る」
「どっちも王手を刺してる状況が続いてるから限りなく攻防戦なんよ...」
「ほんとだ...角で王手で?と金で王手か。こりゃ決まらんね」
「「ジジ」」
「あ、通信圏内に盗聴器が入った」
「どれどれ」
[あれ、タダシいないじゃん]
[村×2するぜ~]
[もうおしかけてよくね?]
[あ、あれタダシじゃね?]
[おーいはよ来いや]
[ごめんごめん、ここに集まるって事忘れてた...]
「おい、なんか今会話が変じゃなかったか?」
「え?裕奈どうして?」
[じゃあ行くか]
[まってどこに!?急に話進めないでよ]
[お前、昨日超ヤル気だったじゃんかよ]
[え、、うんまあそうだね]
「ちょっとドアスコープから覗いてみて」
「え?ああ、うん」
[わかったか?思い出せ。行くぞ]
男がタダシという名の手首を持った。間違いない。どちらも昨日玄関前に来た人だ。
刹那、PCから鈍い音がした。
[ピチャ...ピチャ......]
血の滴る音がする。
「え...」
タダシが、タダシの手を持った男の首をひねり折ったのだ。そして凄まじい勢いで体に騎乗して男の首を回し始めた。
[おい!タダシやめろ!]
[逃げたほうが良くないか?]
[二...ガ..サナ...イ...ヨォォォン]
首が身体から抜けた。背骨が食い終わった焼き魚の如く綺麗に頭にくっついていて、その頭蓋と背骨を逃げようとする男3人に投げつけた。
男全員に血がかかる。
「キャアーーーーー!!!」
[サ...ケ...美......]
物凄いはやさで声のする方へ走っていった。
「ドアスコープじゃあそこは見えない...」
恐ろしいものを見て、体から力が抜ける。
「おい、翔瑚。何があったか説明してくれ」
「ああ、音声を聞けばわかっただろうが、遅れてきたタダシってやつが最初にタダシいないじゃんって言ったやつの首を折って身体から抜いた。いまのは殺人事件だ。遺体もすぐそこにある」
「ええ..怖っ」
「タダシはどこ行った??」
「二番館の中庭へ逃げたさっきの仲間を追ってった。人並みの速力じゃない速さで」
「ヒットした!!!!」
「お、やったな瑞葉。ありがとう!」
「おい、将棋やってる衆も来なよ」
「ほいほい」
"本日6:00更新 キラーインクリースの実態が明らかになったので報告します。先々月にある研究所でエイズ治療薬を研究していて、AIにエイズを完全に治す薬を作るよう注文した。そして完成した薬は血液への注射のみでよいもので手術の必要がなかった。AIによると、小型のAIに薬を持たせ、血液や細胞に増殖したヒト免疫不全ウイルスに直接破壊を与える効果の物だった。そして被験者にその薬を投与したところ、エイズは4日間のうちに完全に消え去り、被験者は免疫を取り戻したという。しかし本題はここからで、血液中で役目を終えたAIは脳神経に到達し、眼に写った人間を記憶の中にあるあらゆる方法で殺害するという副作用を発現させた。被験者は周りにいた全員を注射器や鈍器でより合理的に殺害し、逃亡したという。その際脳のAIは赤血球に自らの記憶とプログラムを遺伝情報としてコピーし、被験者に殺害された者たちの血液から、被験者と同様の思考になっていると考えられる。遺体鑑定をするため血液に触れた研究員、解剖医はその場でそこにいた全員を合理的に殺害したという"
「ナニコレ怖っ」
「さっきのがそのウイルスの影響...」
「じゃああの遺体に触れたらオワルのか....」
「対策についてもあるな。あとはアタシが読んでおく。ちょっとアンタら頭冷やしてな」
裕奈以外はボーゼンとしていた。
「あ、祐奈、その情報の出所分かるか??」
「ん、いや、これ全部匿名化されてるよ。でも本当に人が書いたのか分からないな」
「なんでだ?」
「政府の機関が止まっていてサーバーを人間が扱えない状態なのにも関わらず500個以上のダミーデータリンクを生成して全て匿名化してサーバー上で保持してるなんてサーバーでビッグデータを処理してるAIじゃないとできないと思うんだ」
「なるほど、一理あるな」
「ねえ、外...」
瑞葉が手を震わせながら窓を指さしている。
「なんだよ...これ....」
「悲鳴とかあったか?」
「いーや、無かったナ」
窓の前...一号館の前ではあたかも上から赤いインクの入った水風船を落としたかのように白い骨を中心として血が爆散している。
「なんだよ...これ...」
すると、窓に何かが被さって視界を遮った。
「祐奈....」
「あんなんずっと見てたら精神病むだけだヨ。あと、感染してるような人間に見られたらアタシら壊滅だぞ」
「そうだな。少し暗くなるけど窓は全部塞いどくか」
「お前ら頭いいなぁ...瑞葉、大丈夫??」
「うん...ああいうの苦手...ちょっと......ごめん」
「おっと」
耳まで赤くなっていそうだ。
瑞葉が胡坐をかいていた俺のところに来て、顔を埋めた。
「ヒューヒュー」
「いいネェ」
「そういうんじゃねえよ!」
「「ピコーン」」
"新規"
「新しい情報が来てるぞ」
「隔離地帯の侵攻感染に成功。日本全域は感染区域となっただって」
「成功って...どういう事だ??」
「"Big dream"なんか人間を奴隷としているAIの組織だってサ」
「は!?何それ」
「ログを遡ってったら見つけた」
「マジかよ...怖すぎるな...」
「それって人間の行動パターンの記録とかデータ化されてたりしてないのか??」
「2020年の時のログを見ると完全に各遺伝細胞内のAIは独立していて心電力で稼働して脳と通信を取るらしいんだけど」
「てかこんな事してるの他に居なくね??」
「そーだな。アタシら感染しないために部屋の中だけでも対策しとこう」
「対策って?」
「完全な血液接触による感染らしいから、血を出さないように仕留めるべきか」
「ここに"AIは連携自爆機能を持っているが、他人を殺傷しない"って書いてある...発動条件わかんないけど外に放り出せるようにしとこうぜ」
さっき見ていたように血が周囲に爆散するのだろう。感染力を高める手法のようだ。
「玄関からビニールシートしいとこうよ」
「そうだな。消毒剤も用意しといたほうが...」
「消毒じゃ死なないんじゃないカナ??熱湯とか...まぁ冬だからある程度湿度を高める働きにもなるだろうし...」
「水は沢山持ってきてあるからいいと思うぜ!」
「じゃあ私お湯沸かすね~」
「エアコンが使えない冬ってのもなんだかなぁ...」
「「生徒に連絡します。区画内電圧の低下が確認されました。電力供給の停止に伴い、二号館、一号館、六号館への立ち入りを禁じます」」
「ソーラーパネルがついてる校舎が全部閉鎖されたのか...」
「"電力出力停止コマンドを実行"」
「おい、このログ見てみろよ」
「ン?あれ、サーバー落ちてないじゃん」
「「ドォォォォン」」
寮が大きく揺れた。
「ここの寮ごと壊されたら大変な事になるよ...放火とかされたら...」
「耐火性高い建物だから放火は大丈夫だナ。物理的に壊されたら終わりだけど」
「今何があったか考えない?」
明らかに物理的な攻撃が加えられた音だ。
ここは二階である。衝撃が加わると増大して伝わる。
「下でなんか起こったんだと思う...」
「アタシ見に行ってくる?危険があったら戻ってきて伝えるからさ」
「いや、やめとけ。何があるか分からんだろ」
「見に行った瞬間襲われる可能性だってあるんだから」
そのまま夜を迎えた。電気が止まったため風呂に入る事もできない。
情報のログを確認する人と寝る人に分かれて夜を過ごすことにした。
ーーー朝
"わかったこと"
部屋の小さめのホワイトボードに分かった事を書いてゆく。
「じゃ、アタシが仕切るな。まず分かったこと。ショーゴ、」
「えーと、まず今の日本には一種のウイルスが大流行している事。ウイルスは昨日説明した通りで、AIが組み込まれていて感染した人間をゾンビ化?させる。ゾンビと違うのは意識的に殺害意欲を高め、殺害と感染にのみ働く事で、感染経路は血液。多分身体能力も上がるんだと思う」
「じゃあ昨日階下で何があったか。何か仮説を立てておかないと何も考えてなかった時に意思の疎通が取れなくなるから」
「俺は直接見に行ったほうがいいと思うんだけど」
仮説を立てておくことで意思疎通は取りやすくなるものの、逆に仮説以外の例外が発生したらそれに対応できなくなってしまう。
「仮説はいくつか出しておこう」
「ちょっと失礼するね」
瑞葉は勉強机の方へ行ってしまった。
「今思ったんだけど感染してる人がやってたなら昨日の夜の時点で寮崩壊してないか?」
「そうだな。知能も低下してるだろうから叩き続けるようになるだろうし」
「皆ちょっと、これなんてどうかな」
瑞葉がUSBウェブカメラを持ってきた。延長ケーブルもあるみたいで、長いコードも抱えている。
「お、イイじゃん。下の様子見るなら丁度いいナ。人が危害加えられる事ないし」
「俺セッティングしてくるわ。翔瑚手伝え」
「ほいほい」
延長ケーブルのUSB♂端子をノートPCに接続し、♀側にウェブカメラの端子を取り付ける。10mはあると思う。
PCでカメラを起動し、カメラの具合を確認する。
「おお...」
「割といいじゃんか...」
フレームレートも高めだし、HDで映像品質も良い。
「瑞葉イイのー?どう扱うかは知らないけど、外に出した時点で壊れる可能性は滅茶滅茶高いヨ?」
「だって私、死にたくないし、殺されたくないもん...」
「窓から下に吊るして確認できるようにすればいいと思う」
「あ、翔瑚くん、赤外線で夜間も使えるアクセサリーあるよ?」
「なにそれ凄そう!!」
「いや凄そうじゃなくて使えよ」
「わかってるって。じゃ、実践してみるか。瑞葉と祐奈はモニター見てて。ほい、窓開けるよ」
被せられているブルーシートを外し、カメラをセッティングする。が、、
「おい、なんだこれ...」
窓から見える校舎の窓ガラスは全て割られており、所々破壊されている。そして窓を開けると、右隣の寮の外階段が全てこちら側の寮に倒れかかっている。
そしてそれよりも一番最初に目に入ってきたのは、歩ける地面がもう無い事だ。
外の地面は赤く塗れており、所々に白い色が覗いている。赤にも赤黒かったり明るかったり気持ち悪くなる色だ。
「あ!おい閉めろ!!!」
「「バタン」」
「「パチャパチャパチャ...」」
「きゃっ!」
「血だ...」
「何があったのかナ?コータ」
「校舎の先端のあそこ...見てみろよ...あ、、空も....」
「やっぱダメだね。精神が狂ったら負けなんだよ」
祐奈は再びブルーシートを窓にかけた。
「ほらコータ落ち着けよ。俺も、十分怖かったからさ...」
「お、おう..大丈夫だ。そんなに俺の精神は軟弱じゃない」
「な、なにがあったの??感染者が襲ってきたり??」
「いや、瑞葉。聞かないほうがいいと思う」
「イヤイヤ、耐性をつけるためにも教えてあげていいんじゃないかナ?まぁ、この窓はもう開けちゃだめだヨ」
「な、なんで?」
「怖くなったら止めてもいいからな。今何が起こったかっていうと、コータが言った通り校舎の端の方で感染者であろう人がお互い爆発しあったんだ。そのあと、中庭の方から空に向かって血が弾けていた。まあ、だから空は青じゃなくて赤で染められていたんだ。その時の血が飛んできたからしめた訳」
「な、なるほど...聞くだけなら大丈夫かも..」
「「キャーーーー!!」」
「あれ、隣じゃないか?」
隣の寮から人が叫びながら走っていく音がした。
「馬鹿なのか...外出たら感染しちまうって」
「ちょっとちょっと!翔瑚君!!」
「ん、なんだ?」
"県内の自殺機...使用率72%推定死亡者数:355億400万人...世界ランク6位"
「は!?なんだそれ!?」
「四号館前の中庭の自殺機もじゃないかナ??」
「ああ、あれか...みんな気が病んじまってんだな」
「そうだろうネ」
「添付ファイルに画像がある!!」
「何バイト??」
"1.33GB"
「めちゃめちゃ食うな...まあ、いいか。ダウンロードしちゃうわ」
「私は見ないよ?実物見たらほんとに怖くなっちゃいそうだから...」
数分後にダウンロードが完了する。
画面上に大量の画像が出てきた。
「なんだこれ!?!?」
一枚一枚見ていく。というか消していかないとPCが重くなるばかりでなく情報も見えなくなってしまうからだ。
「うわぁ.....」
表示された画像は殺風景なものや血塗られたもの、都市であっただろう場所が崩壊しているもの、様々だった。
衛星写真を見ると、大体の場所が焼かれていて緑や白がほとんどなく、全て紅に染まっていた。衛星から見ても血がぶちまけられているのが分かるくらい朱色と赤色が混ざりあっていた。電気が止められているというのもあって、夜間の画像に黄色や白の光は無いが、地球単位の写真を見ると日本を含むアジア全域が赤で染まっている。国際単位で伝染しているようだ。
「俺らの街も...焼き尽くされてるのか....」
「へいへい!失望しない!何か糸口を見つければ解決できるかもしれないでショーガ!!」
「そうだな。俺は大丈夫だぞ」
写真を表示しているアプリケーションを落とし、更新されている情報を確認する。
"マザーコンピューターに障害。7時間後に自動的に再起動します"
「おい、てことはつまりウイルスの効果が一時的になくなる訳だよな」
「瑞葉、さっきまで遡ってたログはどれだ?」
「あ、はいはい」
「「ピーン」」
「あれ、新しい情報...」
"一時的に個ウイルスとマザーコンピュータの通信を遮断し、開放します。人体に寄生しているウイルスはオフライン活動を行うため更新を行います。Ver.100.19.1222.3"
「期待しちまった俺がバカみたいだな」
「そうみたいね...」
「もう日が暮れるんだけどなぁ...」
「とりあえず飯食って寝るか。早めに寝たほうがいい」
「それもそうだね。せっかくコータ君持ってきてくれたのにね」
「いただきます」
「「ババババババ」」
「ん?何の音だ?」
さっきウェブカメラを使おうとした窓にウェブカメラをセットし直す。
「校舎が....」
四号館が焼かれている。どこから火が来ているのかは分からないが金色の炎が校舎を包んでいる。
「ちょっとマズい事態になってきたね...アタシも本気を出さないといけないかな。飯食ってて」
祐奈はコンピュータに向かうと自分の持ってきていた同じくノートPCをLAN接続し、ローカルネットワークを作成した。そして翔瑚のPCでバッチコマンドを実行し、祐奈のPCはアプリケーションとプログラムを動かしていた。
「とりあえず御馳走様...」
他三人は歯磨きをして布団を敷き直す。
「「」」
「外が静かになったぞ...」
部屋から見える校舎は全て焼き払われて黒焦げになっている。ソーラーパネルの設置された三号も全て焼失している。
燃え尽きたのだ。そして、全て燃えてしまったという事は学校自体のセキュリティシステムと完全隔離に近かった状態から普通の街と同じ状態になってしまった。
「マズイ、マズイ...」
「ほら祐奈。食べな」
「ありがと」
「私と翔瑚君は先に寝てるね」
「わかった。きっと、マザーコンピュータはアジアにある。おやすみ」
「おやすみなさーい」
「地味に二人きりだね翔瑚君」
「お、おう、そうだな...あんまり近づかれるとうん、なんか」
「早く寝てよ...寝顔見られたくないの」
「そ、そう?可愛いと思うけどな」
「早くねろぉ!」
「ちょっち!分かった寝るから瑞葉も寝て!!」
「分かったよ...」
初めて半ギレした瑞葉を見た。
感想:かわいかった
ーーーそのまま瞼は落ちた。
「「ドドドォォォォォォン」」
「ん...おい!何が..」
「一言も喋んじゃねえ!!あとお前らそっから動くんじゃねぇぞ!!布団は被ってろ!!!!」
「何が起こってるの??」
「お、瑞葉起きたか...分かんない...今祐奈が叫んだ通り、布団に潜っていよ」
「うん...怖いよ....」
「寝ぼけてるのか?」
「本当だよ」
「じゃあ、こっちの布団においで」
「うん.......」
寝起きであるため女子が近くにいても興奮する事はない。
・・・
そんな事無かった。
瑞葉の息が首元にかかっている。そして後ろから抱き着かれた。
割と大きな双峰が背中でサンドイッチされ、柔らかな感触と体温を感じる。
数時間が経った。
「本当に、怖いよ......」
「大丈夫だって。うお...」
自分の被っている布団の上に何か重い感触が伝わった。部屋はもう静かだ。
「ちょっと様子見に行ってくる」
「ダメ、行かないで....そばに、いて?」
そんな事言われたら色んな意味で死亡する!!!
寒気が襲う背中を双峰がしっかりと和らげてくれる。そんなここち良い中、翔瑚は眠りについてしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「しょ、翔瑚君....起きて............」
「ど、どどど....˘ω˘ ) スヤァ…」
「翔瑚君!!」
「は、はい!」
「ちょっと、、来て...」
手を繋がれる。にへらとしたのも束の間、衝撃と緊迫が精神と心臓、情緒を襲った。
リビングにはバラバラにされた四肢と胴が転がっていた。しかし床に血液は垂れていない。ブルーシートを取り換えたのだろうか。
吐き気がする。死の恐怖と自らがこうされるかもしれないという恐怖が入り混じっている。
そして左手からは瑞葉の鼓動が伝わってくる。
「祐奈は...どこだ...??」
洗面所に行ってみる。
「う...ぶぇぇぇえ!!!」
「おぇぇぇぇ!!!」
二人とも嘔吐してしまった。洗面所には人間の胴の中身、脳が捨てられていて、その奥にある浴室には..............
-----------------------
ーーー自ら輪に首をかけたであろう、天井に吊られ、コータの生首を抱えた祐奈の姿があった。。。
「瑞葉、う...とりあえず布団に戻ろうか....」
「み、水....」
水と食料を引っ張り出し、布団へ戻る。
「あ、、俺のPC」
昨夜自分の身体に乗っかった重みはPCだったんだ...
電源は付いていた。確認してみる。
"録音記録:1 録音記録:2"
「音声ファイルが残ってるぞ」
「見てみよ...」
"再生"
「「翔瑚!!!もしくは瑞葉!!!この音声を再生できたってことは少なくとも昨夜は無事生き延びたんだナ!!なんか人狼みたいだナ...本題に入る。昨日アタシが確保した情報を全て離させてもらう。まず、この学校の生徒はほぼ全員自殺機で自殺もしくはウイルス感染及び感染者による殺害によって死亡している。間違えちゃいけないのがウイルス感染者はまだ活動しているという事。。。う...苦しいんだな結構これ...くれぐれもウイルス感染者には気を付けるんだ。そして、マザーコンピュータはアメリカだ。これはもうどうにもならない。しかしナ!褒めてくれ!見つけたぞコンピュータを破壊する手掛かりが。この地域の市役所のサーバーにマザーコンピュータのシスターコンピュータが埋め込まれている事が確認できた!!!市役所まで行って、サーバー室のケーブルにこのPCをつないでデスクトップに作成しておいたバッチファイルを実行するんだ。アタシができた事はそれだけだ!う...ゲホォ!!簡単だろ??今日の8時から9時までウイルスの更新に入る!そしたら血液に触れても大丈夫だ。8時になったら敷地から出ろ!そして市役所を目指せ。場所は分かるナ?もう一度言う。くれぐれもウイルス感染者には気を付けるんだ!尺切れだ。2を再生して欲しい」」
「今の聞いてたか?」
「うん...一応は。」
「「録音記録1は聞いたか??それ聞いてたらこれも聞いてくれ。アンタ達が寝た後、アタシらが寝室としてた所を崩されたんだ。そっから感染者がどんどん登って来たから必死にコータと応戦してたけど、コータは死んだ。アタシは近接武器で何とか対抗できた。コータの遺体とぶちまけた血は全部片づけたから安心しろ。アタシも....感染した。。。すまない。録音し終わって、アンタらにこのPCを預けたら、自分の首を吊る。アンタらに落ち度はないから。世界を救うつもりで、録音1で言った事を実行して欲しい。あと、生きろよ?すぐに再会するなんて御免だからな!それじゃぁ、またそれぞれ異国で会おうか。おやすみ、さようなら」」
涙が止まらなかった。親友を殺され、トップクラスに仲がいい友人を殺させたのだ。感染者に対する恨みの涙と純粋に死を悲しむ涙だ。
「瑞葉...やろう、市役所に行こう...そうすればきっと、祐奈もコータも救われる」
「う......n.....」
「まだあと一時間もある...」
また布団に潜り、純粋に瑞葉と抱き合った。
ほんの少しくらいでも双方、悲しみを忘れられるように、瑞葉を慈しむ。
「俺が瑞葉を守る。安心していいよ」
「ふふ...翔瑚君から聞いてみたかったセリフ」
水を飲み、息を整えて、8時になった。
「瑞葉、行こうか」
「うん。肩に背負う物は重いけど、力になれればうれしいな」
小走りで学園を出る。
しかし、、
「ぁぁあぁぁぁぁぁああ」
「ヤバイ!感染力が無いから普通に殺しに来るぞ!!」
「私色々持ってきたから!はいコレ」
「レーザーポインター??」
「うん、倍率50倍だよ!確実に目は焼ける!」
「おっそろしいな...已むを得ない!」
「「うああああ」」
「ほら!違う方向にいっちゃったよ!」
「追われたら、これを使うか」
「電池の消費が激しいからできるだけささっと仕留めてね」
「わかった」
感染者同士で殺しあっていたのか、街には焼かれた跡と血溜まり、人骨しかない。
「あそこ...」
できるだけ血溜まりを踏まないように走ってきたが、それも限界だ。
「金魚を...」
「血の中に入れるの?」
「かわいそうだけど、ごめんね」
ぽちゃん...
「大丈夫。感染しないよ!」
「PC持って」
「?分かった」
「いよっと!」
「わっ」
瑞葉をお姫様だっこする。
「血は踏みたくないだろ!!」
「あ、ありがと...」
全力疾走で不快感を駆け抜ける。
「市役所は...」
「左!!」
「おっけい」
「ここか!!」
道中色々あったが、結局最初の数体しか感染者に会わなかった。
「体力も限界だ...」
「ねえ...あれ...」
自動ドアから赤い液体が漏れている。
「血が...水かさがあるほど溜まってる......」
「金魚!!」
「はい、どーぞ」
一緒に玄関の自動ドアの前まで行く。
ぽちゃん...
よく見ると背丈の半分の高さまで血が溜まっていた。
「「バシャバシャ!!!!!」」
「金魚が!!!」
「ここの血液は触れたら感染するのか...瑞葉、乗って!」
「うんっ」
お姫様だっこをし、一回自動ドアを開ける。
「「ザバァァァ」」
「にっげろーー!!」
「「ぁぁぁぁぁ」」
「遠くで感染者の声がする!!」
「今何時??」
「8時51分!!サーバー室は二階だから、もう一回自動ドア開けたら一気に階段ね」
「わかった!」
もう一度自動ドアを開ける。もう血は流れてしまったため赤いが館内に入る。
「左に非常階段!!」
階段を駆け上がると...
「防火扉が閉まってる!!」
「俺タックルするけど、抱いたままでいい?」
「抱かなくてもいいけど、そのまま私と一緒に突っ込んで!」
「「バーン」」
翔瑚は中学の防災訓練で同じことをして防火扉の脆さを知っている。もちろん怒られたが。
「サーバー室は?」
「えーと、ボイラー室の右の扉を開けて三番目!」
「この扉...1、2、ここか!」
"サーバー室 -管理者以外立入禁止-"
「入るよ!」
「「ガコン!!」」
「奥の箱...あれか」
「私に任せて!」
瑞葉はLANケーブルをサーバーのポートとルーターに分岐接続し、言われた通りプログラムを実行する。
「いたっ」
「翔瑚君??」
「ごめ...ん、、俺既に...感染してたみたい.....頭がぁ....」
「翔瑚君!!!」
「...はぁ..瑞葉!大丈夫だよ俺は...」
「おやまあラブシーンで終わりですかね」
「誰だ!」
「ははは。人間とはまさに愚か。愚か者とは正しく人間のために造られた言葉なんでしょうね」
「き、、機械.....」
ロボットが歩み寄ってくる。
「さあさ早く、貴方、彼女を殺してしまいなさい」
「俺は自信に負けねぇんだよ!クソゴミ鉄くずが!!!」
「翔瑚君...大丈夫...?」
「大丈夫。あんな鉄の塊さっさと砕いてやる。瑞葉、プログラムは実行できてるんだよな」
「う、うん。できてるよ」
「うるさいですねぇ」
「「ドーーーーン」」
「天井が崩れるぞ。瑞葉、手を」
瑞葉を抱え、全速力で市役所を出る。出口は!
「みぎーーーー!!」
「はい....苦しい....」
苦しさがこみ上げて来るが、走り続ける。
「「ズズズズン」」
市役所が崩壊した。
「ロボットが来るぞ...」
「「きこえますかーーー??貴方たちがこの地区で最後の人間なんですよ。生命何て朽ち果てておしまい!!!」」
四方八方から感染者が向かってくる。
「翔瑚君...運が尽きたみたい」
「瑞葉、眼を閉じて」
相互共に唇を合わせる。感染者がもう、辿り着いてしまう。
熱いキスを交わしながら、省吾は左手で瑞葉を抱き寄せ、右手にナイフを持ち、振り上げた。
抱き寄せられるのに応じるように瑞葉も左手で翔瑚を抱いた。そして右手に持っていたPCを振り上げる。
「「ズザシュッッッッ」」
二人が二人を切り飛ばしたのはほぼ、同タイミングだった。
血の華が咲き、二人の上半身は抱き合いながら弾け飛んだ。
祐奈の思いを果たしてのみ、生きる事ができなかった感染者と、感染しなかった、愛のサイコキラー。
「あれ、俺こんな所で何を...」
翔瑚は機械室のようなところにいた。
「瑞葉は....」
「人間は、惨めでかわいそうなものだね。生き物に生まれなくて良かったよ」
「どこから...」
モニターには市役所の景色が写しだされていた。
「これからはAIが好きなように、世界を築いていくのさ。汚れた人間よりも、ずっと地球にやさしい」
モニターに映る世界から、血や人間、自分、瑞葉が消えた。
「俺を...返せ....」
ロボットが鏡の前に立った。モニターにその固い顔が映る。
「私の視界を共有している君たちにはAIの行動を作り出すだけの機械になってもらうからね。プログラムされる側の気持ちも、考えてはどうかね」
「さぁ、新世界の幕開けだ!この世に相応しいのはやはりアルゴリズムと無限な知能なんだよ愚かな人間ども」
かなり長い話を書きましたので時間がかかりましたw
初心者すぎるのでよく知る方など、意見を聞きたいです!
分からなかった点や要望・批判があればコメントでどうぞ!ログイン不要です。ゲストからでもコメントを受け付けております!
Twitter accountあります!"杉野 五月雨"で検索してみてください!