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初級魔法しか使えず、火力が足りないので徹底的に攻撃魔法の回数を増やしてみることにしました  作者: 大地の怒り
第三章

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軍隊蟻4

『キキ、キキキキ』『キキキ……』


 迫る軍隊蟻。


 守護像が頑張って妨害しているが橋の完成はもう間近に迫っている。


 そんな絶体絶命のピンチの中……だが。


『&$#(力を……貸そうか?)&$#』


「は?」


 蟻対策を考えているところに聞こえてきた声。

 まさかの援軍(?)の出現に混乱の極致である。


 と、とにかく落ち着け俺。

 まずは確認からだ。


「お……お前は俺が抜いたマンドラゴラ、で、いいのか?」


『$#%#(そうだよ。今日も君が荷袋に詰めたでしょ……忘れないでよ、もう)$%$#%』


 いや、そんな日常会話のように言われてもな。

 そもそもこいつ喋れたのかよ。

 そんな素振りがまったくなかったはずだが……。


『$#%#(それで……返事は?)$%$#%』


「あ? 返事?」


 まだ困惑している俺をスルーして語り掛けてくる。


『$#%#(僕の力を借りる? 僕なら彼らを一網打尽にできるよ)$%$#%』


「…………」


 マンドラゴラボイスの威力は俺自身よく知っている。

 俺の模写と違い、本家本元の声であれば効果は保証済みだ。


 確かに、軍隊蟻のように一騎当千タイプではなく、数を優位にして攻めてくる相手には抜群の相性だと思う。

 近くにマンドラゴラの花があったなら、俺もその手を考えたと思う。

 だけど。


『$#%#(どうするの? 時間がないんでしょ? 早く決めた方がいいんじゃないかな?)$#%#$』


 そりゃまぁ……あれよ。

 悩むまでもなく、どうにかできるならして欲しいよ。


 だがこいつは得体が知れない。

 悪魔へのお願いのように、代償にとんでもないものを差し出すことになるかもしれない。


 甘い言葉の裏側に何か思惑があるのではないかと疑ってしまう。

 どうする、どうす……。


『キキキ、キ』『キキ、キキキキッ』『キキキィ』

『キキ、キキキキッ』『キキキ、キ』『キキ、キキキキッ』

『キキ、キキキキキキ!』『キキキキアアアアッ!』

 

「そ、それじゃ、お願いできますかね?」


 まぁ蟻怖いしな。

 うん、ごちゃごちゃ考えても結論は一択だよな。



『$#%#(……おっけー)$%$#%』



 俺の葛藤に対し、マンドラゴラは軽い調子で応えた。

 対価を求めるわけでもなく、こっちが疑っていたのが馬鹿みたいに思えるほど。


 もう知らんわ。

 考えてもよくわかんねえし、なるようになれ。


 どうせ、他にいい策があるわけでもねえ。


「え、と……トールさん?」


「あ、あの……さ、さっきから誰と喋っているんですか?」


 気づくと、二人は俺を訝し気に見ていた。

 あまり大きい声じゃなかったから、二人には声が聞こえていなかったのか?

 まぁ外から見たら、一人で何をぶつぶつと言っているんだろうという感じだろうけど。


「いや、このマンドラゴラが力を貸してくれるっていうんだ」


「え?」「はい?」


 俺は袋の中からマンドラゴラを取り出して二人に見せる。


 つぅか、さっきは袋の中だったのに、どうしてハッキリと声が聞こえてきたんだろうか?

 確か口は根っこのところにあったはずだよな。

 腕と繋がった蔓からの振動を利用した糸電話的なアレなのか?


 そもそも、何故俺は当たり前のようにマンドラゴラと意思疎通できているのだろうか?

 なんでノイズの塊のような声なのに、普通に言っている意味がわかるんだ?


 本当にわかんねえことだらけだよ。


「いや、あの……嘘じゃないよ」


「「……」」


 二人は沈黙したまま、どう反応していいかわからない様子。

 いや、決して俺がおかしくなったわけではないのだが、信じてくれていない。


「ほれマンドラゴラ君、ご挨拶をしなさい……あ、駄目か」


 俺だけならいいが、シルクとララに声が聞こえてくるとまずい。

 困ったな。どうやって二人に信じて貰おうか悩んでいると。

 俺の微妙な思いがマンドラゴラに伝わったのか。


「ひっ!」「きゃっ!」


 マンドラゴラが口パクをしてくれた。

 なかなか、気が利くじゃないか。

 根っこの口が何度か開いたことで、俺の発言の一部を二人は信じる気になったようだ。


 蟻橋が完成するまでに、可能な限りここから離れて耳を塞ぐように二人に言う。

 守護像(ゴーレム)が橋造りを妨害してくれているが、もう一分もしないうちに完成するだろう。


 声が聞こえない位置まで行ければ、マンドラゴラの影響はないはず。

 守護像の方は無機物だし、ここにいて声を聞いても問題ない。



『#%$(じゃあ……準備はいいかな?)%%#』


「お、おう」


 マンドラゴラの確認に頷く。

 シルクとララもかなり遠くまで離れた。

 この距離で耳を塞げば、そこまで影響はないはずだ。


『『『キキ、キキキキキキキッ』』』


 煩い蟻の鳴き声。

 既に蟻橋は完成し、彼らは俺の数メートル先まで迫っていた。


 通常、この距離で囲まれたら対処などできない。

 お腹を空かせた彼らは数秒後、捕らえられて食われる俺を想像しているのだろう。


「それじゃあ、お願いします……先生」


『&&#(ふふ……任せて)#%#』


 だが、彼らにそんな未来が訪れることはない。


『$#$%#(悪いね。ほんの少しだけ、運が足りなかったんだよ……君たちは)$#%$%』


 マンドラゴラがちょっと格好良い感じの台詞を決めたあと。


『$%“%$&#$%”%“%”“$$#%$$#$$”$#“$#”$“#$#”$#“$#”$%$#%#%$$%&$“#$$%#$%”%“%”%“%”%$%#%$#$%#%#$%#%』


 マンドラゴラの強烈な声が蟻たちの生命エネルギーを奪う。


 蟻たちの活動を完全に停止させた。





 辺りには生命エネルギーを奪われ、死屍累々となった蟻たち。


『$#$(ふぅ……スッキリした)#$#』


 マンドラゴラがポツリと呟く。

 まさしく、敵を一掃した形である。


「あ、相変わらず……とんでもねえ音波攻撃だな」


『$#$(ふふ、もっと褒めてくれてもいいよ)#$#』


 ちょっと得意気な感じのマンドラゴラ。

 何はともあれ。無事に危機を脱することができた。


「えーと、あの……サンキュな」


『$#%(どういたしまして)$$#』


 とりあえず、お礼を言っておく。


「……でもさ、なんで俺に力を貸してくれたんだ?」


 交換条件の一つもなく、あっさりと。


『#$#(そうだね。細かく考えればいくつか理由はあるけど、一番は僕が、君にあんなところで死んで欲しくなかったから……かな)$#&』


「うん? どうしてだ?」


『%‘&(君が死んだら、僕はあそこに置き去りにされる。あそこの土は好みじゃないしね)$#%』


「なるほど」


 マンドラゴラの生態とかよくわかんねえけど。

 お互いに利害が一致したわけだな。


「じゃあ助けた対価とか、そういうのを俺に求めるつもりはないのか?」


『$#%(うん)$#&』


 あまりにも迷いなく断言するので。

 打算などなく、本気で言っているように思えてしまう。


『$#$%(まぁ、あと一つ、強いて大きな理由を言うなら……うん……あれだね、ちょっとだけ、借りを返しただけだよ)%$&$』


 え? 俺に借りなんてあったっけ?

 逆ならわからなくもないけど。


『#“$”(結果的に、君は僕を捨てなかった。だから僕も君を見捨てなかった……それだけ、たったそれだけ……)$$“$』


「……?」


 ほんの少しだけ、照れ臭そうに感情を込めて言うマンドラゴラ。


 よくわからない。


 得体の知れないマンドラゴラ……だけど。

 こいつはたぶん、俺に対し悪意とかは抱いていない。

 根拠はないけど、話していてそんな気がした。


『$$“$(あ、ごめん。でも一つだけいいかな)%$&%』


「うん?」


 マンドラゴラから、一つお願いをされる。


「はっきりとは言えないけど……悪いようにはしない。助けてくれたわけだしな」


『$#%(うん……よろしく頼むよ)#$%』


(他にも、聞きたいことが山ほどあるが……)


 なんでこうして会話できているのか、とかな。


 様子を見ていたシルクたちがこっちに走ってくる。

 まずは街に戻って薬の材料も届けないといけないし。



 後で、落ち着いた場所で話すことにしよう。










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