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初級魔法しか使えず、火力が足りないので徹底的に攻撃魔法の回数を増やしてみることにしました  作者: 大地の怒り
第三章

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セル家へ

 

 街中でレイスに襲われた俺だったが、危ないところをセルに助けられ、その流れで彼女の家に泊まる(保護される)ことになった。

 

「……ここだ」


「ほほほう」

 

 建物を見て、フクロウの鳴き声みたいな声が反射的に出る。

 少し歩いてセルの家に辿り着く。

 三階建ての凄く大きく白い家だ。

 実に頭の悪そうな感想だが、特徴は十分捉えているはずだ。


 セルは結構大きいと言っていたが、結構なんてもんじゃないだろう。

 家というか、屋敷というか、学校の体育館とかそんなサイズである。

 この辺は高級住宅街で大きな建物が立ち並ぶが、その中でも目立つ。


「ついてきてくれ」


「あ、ああ……」


 俺は日本生まれのド平民。

 若干気遅れしてしながらも、セルの案内に従い、門をくぐり中の建物へと続く石畳の道を歩く。

 敷地全体が煉瓦っぽい材質の赤黒い擁壁で囲まれている。

 門の向こう側には大きな庭が広がり、通路の傍には石像が等間隔に並んでいる。

 日本であれば犬とか放し飼いにしていても不思議ではない。


 なるほど……理解した。


 これなら俺一人くらい増えても問題ないだろう。

 きっと、他にも誰かが住んでいるだろうし。

 一つ屋根の下に男女がどうとか、さっきは余計なことを考えてしまったな。

 

「気楽にしてくれていい。普段は父さんもいるが、今は私一人しかいないから」


「……え?」

 

 どうやら、俺はまったく理解していなかったようだ。

 

「この、大きな家に二人だけ?」


「ああ」

 

 い、意味わかんねえ。

 普通、こういう屋敷には使用人とかいるものだじゃないの?

 まぁセルは冒険者であって貴族というわけでもない。

 いなくても駄目ということはない……のか?

 

「広いだろう……無駄に」


「……まぁ、うん、無駄に」

 

 とても少人数で暮らすようの家ではない。

 ここまでのサイズだと不便なんじゃないか。

 

「父さんが二年くらい前に建てたんだが、広すぎて一人だと管理が追いつかない。定期的にお手伝いさんを呼んでいる。父さんも遠征とかで留守にすることの方が多いし、本当に困っているんだ」

 

 ため息をはくセル。

 じゃあ、何故建てた? ……と突っ込みたくなる。


 セルの父親は最高位となるSランクの冒険者だ。

 そりゃお金もたくさん持っているだろうけどさ。

 

「なぁセル、何度も聞いてすまんが、本当にいいのかな? 家にお邪魔して……」

 

 先ほどは軽く考えていたが。


「部屋は余っている。遠慮しないでいいぞ」


「いや、遠慮とかそういうのじゃなくて、一応生物の分類上、俺はオス、セルはメスなんだが……」


「お、オスとかメスとか言うな。な、生々しい……」

 

 少し顔を赤らめるセル。

 お互い子供じゃないのだ。

 言いたいことはこれで十分伝わる。

 

「だから、ほら……心配じゃないのか、万が一ってことも」


「万が一といっても……今のトールに何ができるんだ?」


「まぁ……そっすね」

 

 悲しいけど、今の俺は魔法が使えず非力である。

 セルを力づくでどうこうなんて無理ですわ。

 

「それに……その時はその時だよ。私の見る目がなかっただけ」


「か、恰好いいっすね、セルさん」

 

 よく、そんなに割り切れるもんだ。

 好意に甘えるわけだし、そんな真似をするつもりはないが。

 

「だから本当に気にしなくていい。それに、この家に一人きりだと少し寂しく感じる時もあるしな」


「身体がですか?」


「ははは……トールは本当に面白い、なっ」

 

 瞬間、いつの間にか抜いた剣先を俺の喉元に突きつけるセル。

 

「理解していると思うが、私は……反撃しないとは言っていないからな」


「さ、さーせん」

 

 セルさん、笑顔が超怖いです……やめてください。

 俺が先端恐怖症だったら泣いてるぜ。


 会話の流れに極々自然に混ぜ込んだ、高度なセクハラだったが、これ以上展開するのはやめておこう。


「普通に、言葉通りの意味だよ」

 

 コホン、と小さく咳をしたあと話を続けるセルさん。

 そりゃこんな広い屋敷に一人じゃなぁ。

 

「成人したのに何を……と思うかもしれないが」


「大人だろうが寂しい時は寂しいだろ」


 都会に出て、家族と離れてホームシックになるなんて話は頻繁に聞く。


「子供の時よりは我慢できるだろうけどな」


「そう……だな。私も子供の頃は父さんが留守にする時は、教会に預けられたりしていたよ」


 セルの母親は幼い頃に病気でなくなっており、父親は仕事で留守にすることが多かったそうだ。

 昔、子供の頃に暮らしていた家では、父親が留守の時は一人になるので、街の教会に預けられ、シルクと一緒によく寝泊まりしていたらしい。

 二人の仲がいいのはそういった背景があるようだ。

 いわゆる幼馴染というやつだな。


 少しだけ、己の身の上話を語るセル。

 そういえば……あまりセルとそういった話をしたことはなかったな。




 建物の中に入る。


 内装は特別派手というわけではなかった。

 殺風景とまではいかないが、絵とか壺とか最低限の装飾品が置かれているだけ。

 頻繁に誰かを招くための家でもないから、必要以上に見栄を張る必要もないそうだ。

 仕事とかで用があるなら、きちんとギルドを通せということらしい。

 シャンデリアが天井から大量にぶら下がっているなんてこともない。


「それで、こっちが……」


 フロアの間取りを丁寧に教えてくれるセル。

 トイレ、浴室、ダイニングなど、遊戯室的なものまであった。

 セル曰く大体の説明が終わったそうなので、リビングのソファーでゆっくり談笑する俺たち。



「他に気になることがあれば、その都度遠慮なく聞いてくれ」


「わかった、色々とサンキュ」


 何から何まで本当に助かるぜ。

 俺はセルに礼を言う。


「それと、トールの部屋だが……一階なら空いている好きな部屋を選んで構わないぞ」


「了解、そういえばまだ、二階から上は案内してもらってないけど」


「ああ、二階と三階は殆ど埋まっているんだ。父さんの荷物置き場とコレクションルームと化している」


 どんだけ面積使ってんだよ。


「もしかして、無駄に広い家をわざわざ建てた理由って、それ?」


「ああ、トールの思っている通りだ」


 困ったように言うセル。


「そうだ、トール。ここに住む上で一つだけ、しっかりと約束して欲しい」


「なんだ?」

 

 真剣な顔のセル。

 お世話になるんだから、勿論家人のルールには従うつもりだが……。

 

「決して一人では二階から先に行かないと」


「それは……どうして?」

 

 できたら理由が知りたい。

 中途半端に止められると、好奇心が湧きだすからな。

 

「部屋を守る守護像が、トールを侵入者と認識して動き出す。私と一緒の時なら問題ないが……他にトラップもあるしな」


「わ、わかった」

 

 そんな存在を個人の家で所有しているのか。

 きっちりとセキュリティについては対策されているようだ。

 なんでも、庭の石像もセルの声一つで動き出すとか……。


 しかし、ドラゴンスレイヤーのコレクションルームか。

 ちょっとだけ興味があるな。


「たぶん、トールが期待しているものではないぞ」


「それはセルの目が肥えているせいじゃないのか? 普段からお宝ばかり見ているから、刺激に慣れてしまって……とか」


「いや、そういう問題ではなく……」


「???」


 はっきりしない口調のセル。

 よくわからん。


 ま……そのうち見る機会もあるかもしれないか。



「そういや、セルの親父さんは今何をしているんだ?」


「この国の王様からの直接の依頼だ。守秘義務もあるから、詳しくは教えて貰えなかったが……」


「ふぅん……それでも、こっちも街の一大事だったんだし、返事くらいは欲しかったところだよな」


「ああ、それは少し変だとは思う。まぁ、あの父さんに限って、連絡がとれなくても心配はいらないとは思うが……」

 

 そのあたりは、娘として信頼しているらしい。


「なぁ……親父さん、もし戻ってきた時、家にいる俺を見て激怒したりしないよな? いきなり攻撃してきたりはしないよな?」


「細かいことを気にする人ではないよ。きちんと私が納得してるなら問題はないはずだ」


「そ、そうか……」


 それならいいが。


「外から見たらあれだ。父親の留守にお邪魔する娘の彼氏みたいなもんだからな」


 うちの娘に何してんだタイプの過保護な親父さんだと困ったことになりそうだ。

 最高位冒険者を怒らすとか洒落にならない。


「まぁ、うん。そういった話がないこともないんだがな。これは私も後で知った話だが……昔、招待された城の晩餐会で一度会っただけの私を、気に入ってくれたのかなんなのか、強引に側室に迎えようと影で画策していたらしい女好きの王子を父さんが殴……」


「……」


「と、口が滑った。これは秘密だったな、忘れて欲しい」


 うん、しっかりと忘れよう。


「ま、そん時は家から逃げるわ。トイレ借りてましたとか、押し切って……口裏合わせよろしくお願いします」


「……前から思っていたが、トールって思いがけない大胆な行動するけど、凄く思考停止したように雑にもなるよな」


 そんなこと言われてもな。


「とにかく、きちんと私が説明するから大丈夫だ。さっきの王子の件は私の意志を無視して……という話だしな。事情があるなら話も聞いてくれるさ。そんなに心配せずとも、トールと父さんは相性悪くないと思う。父さんも割といい加減だしな」


「だと、いいけどな」








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