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初級魔法しか使えず、火力が足りないので徹底的に攻撃魔法の回数を増やしてみることにしました  作者: 大地の怒り
第三章

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プロローグ

三章イメージが大体できたので更新再開です。

まあ、いつも通りだと横道にそれるんですが

それもある意味で、いつも通りなのできっとなんとかなるさ


 先日、竜王の卵を発端にして起きた古竜たちの騒動。


 虹竜と黒竜、どちらが卵から孵化しようとしている王の世話役になるか。

 どちらも絶対に自分は嫌だと、問題を押しつけ合う二匹の竜。


 流れで彼らの争いに巻き込まれ、最終的に何故か虹竜と争うことになったトールは、満身創痍になりながらも激闘を終え、ついでに王の卵の孵化時期をずらすことで、古竜たちの問題を解決(先延ばし)した。

 


 それから……三日が過ぎ。

 

 

 ガンガン、ガンガン。

 

「……んぁ?」

 

 不快な金属音が鳴り響く。


 宿のベッドで気持ちよく寝ていたのに、ドアの向こう側から耳に入ってくるノイズ。

 放置していれば、そのうち止むだろうと思っていたが……。

 

 ガンガン、ガンガン、ガンガン、ガンガン

 ガンガン、ガンガン、ガンガン、ガンガン

 

「う……うるせえ」

 

 ガンガン、ガンガンとしつこく繰り返される音。

 どうやら音は俺が起きるまで止まないようだ。

 

「なんだよ……もう」

 

 俺は仕方なくベッドから起き上がり、ドアをあける。

 そこには……。

 

「ふぅ、疲れた。まったく……ようやく起きたかい」


「女将さん?」

 

 女将さんの両手には料理用のお玉。

 右手と左手に交差するように握っている。

 

「……」

 

 ジッと俺を見てくる女将さん。


 なんで俺、強引に起こされたんだ?

 怒らせたような記憶はない……と思う。


 お玉でグランドクロスとか撃ってきそうな構えだけど。

 

「無理矢理起こして済まないね。どうしても伝えなければいけないことがあって、あんたが起きてくるのを待ってたんだけど、ずっと寝てたもんだから……」

 

 どうやら、怒っているわけではないようだ。

 女将さんが理由を説明してくれる。

 突然な話だが、諸事情により宿をリフォームすることになったらしい。

 そのため、明日から休業するそうだ。

 その旨を俺に伝えにきたらしく、俺は今日にでも宿を出ていかなければいけないらしい。

 

「悪いね。わざわざウチを利用してくれてるのに、こっちの都合で追い出してしまって」


「いや、それはいいですけど……また随分急ですね」

 

 もうちょっと早く言って欲しかったなぁ。

 そうすれば、もっと余裕を持って行動したのに……。

 

「いや、だって、あんた三日間眠り続けていたんだよ。会話なんてする機会はなかったよ」


「み、三日って……まじですか?」


「まじだよ……しかも、もう夕方だよ」

 

 予想外の言葉に驚く俺。

 それでギリギリのタイミングになってしまったわけか。

 どんだけ寝てんだよ、俺。

 

「本当に疲れていたんだろうねぇ、様子見に来た時、部屋から元気ないびきがしたから大丈夫だろうとは思ったけどさ。さすがにちょっと心配になってしまったよ」

 

 まぁ……虹竜との戦いでは何回も死にかけた。

 三日寝続けていても無理はない……か。



 

 それから、急いで宿を出る支度をする俺。


 といっても、荷物なんて殆どないのですぐに終わる。

 宿の人たちにお世話になったお礼を言い、外に出る。

 とりあえず、すぐにでも今夜の宿を探さないといけない。

 

 この世界に来て、右も左もわからなかった頃。

 俺は冒険者ギルドに宿を紹介してもらった。

 そんなわけで、またギルドへと向かうことにしよう。

 俺が眠っている間の情報収集も少ししておきたいところだしな。

 ついでに飯を食おう。

 三日間何も食ってねえからお腹ぺこぺこだ。

 

 

 夕焼け空の下を歩いて冒険者ギルドへ。

 ギルドの中に入ると……。

 

「……見て、あの人」


(うん?)

 

 なんだ? 入った途端、かなりの数の視線を感じたような。

 

「あ、もしかして例の……本当なのかしら」


「意外というか、思ったより普通な感じじゃない?」

 

 元々、俺は珍しいジョブである吟遊詩人。

 それなりには注目を浴びていたが……。


 若干居心地悪い雰囲気の中、誰か見知った顔がいないか探す。

 すると、聞き覚えのある少女の声が耳に入る。



「あ……トールだ」

 

 声がしたテーブルを見る。

 夏なのに黒一式の見るだけで暑そうなローブと三角帽を纏った、見た目も年も中学生くらいの少女。

 見るからに魔法を使いますといった容姿。

 目が合うと一瞬だけ顔を綻ばせ、手招きしてくる。

 

「さ、こちらにどうぞ……お座りください」


「お、おう、さんきゅ、ティナ」

 

 ひょこっと自分の椅子から立ち上がり、ご丁寧に俺が座る椅子を引いてくれるティナ。

 別に病人ではないから大丈夫なんだけど。

 

「どう、調子?」


「ああ、ぐっすり眠ったおかげか特に問題ないよ」


「そう、よかった」

 

 心配するティナに、平気だと言う。

 戦いの疲れも今は特に感じない。

 

「ちなみに、あれから古竜たちに動きは?」


「今のところはなにも……きっと森で大人しくしている、と信じたい」


「そう、だな……信じたいな」

 

 まぁ何か起きたら、きっと俺は叩き起こされているだろう。

 竜王の卵の方も異常はないと思うんだがな。

 ちなみに、ティナ曰く、卵の件とか深い事情まで知るのはギルドの上層部と当事者の俺たちだけって話だ。

 面白半分に刺激されても困るだろうしな。

 まあ卵は魔の森の奥地にある。

 高レベルの冒険者でなければたどり着けないらしいが。

 

「ところで、ティナ」


「なに?」


「なんか俺、やたらと他の冒険者たちに見られている気がするんだけど」


「それは、決まってる……」

 

 ティナが視線の理由を教えてくれる。

 虹竜と戦って生き残り、認められたという新人冒険者。

 注目を浴びるのは十分過ぎる理由とのこと。

 激しくドンパチやったせいで、湖には結構な爪痕も残っている。

 ギルドも避難指示まで出していたくらいだし。


 つっても、俺が直接虹竜と戦っている現場を見たわけじゃない。

 荒唐無稽な話過ぎて、半信半疑の奴が大半らしいが……。

 

「今後、トールの噂を聞いて、どこかのパーティから勧誘とかくる、かも……」


「そうかな?」


「まぁ……こない可能性も高いけど」


「……どっちだよ」

 

 でも実際、外から見たら大分訳のわからない存在だしな。

 しかし、勧誘が来るとしたらこの世界に来た時と比較して俺も成長したものだ。


 あの時はパーティを組むなんて、マジで困難な状況だったし……。

 

「スカウト来ても、トールが集団の中でうまくやっていける気がしないけど」


「お、俺を社会不適合者みたいに言うのはやめろ」

 

 これでもコミュニケーション能力は低くない……はず。

 

「トールは一人だけルールの向こう側で戦ってるようなもの……あんな馬鹿火力、並のパーティじゃ周りに気遣って全力出せない。組むならせめて、最低限の連携とか練習してからのほうがいい」

 

 ああ、そういう意味ね。

 バルさんにも似たようなことを言われていたが……。

 

「というか、それ以前に当分は無茶しない方がいい、以前話した魔力回復の秘薬の話、覚えてる?」


「……なんとなく」

 

 虹竜戦の前、ティナからもらった秘薬。

 魔力を一気に全回復させる効果がある優れもの。

 

「薬……ありがとな。この借りはキチンと返すよ、遠慮しないで言ってくれ」


「うん、しっかり返してもらうから安心する」


「お、おう」

 

 ティナの言葉にちょっと怖くなる俺だった。

 凄く貴重な薬だそうだし、なければ死んでいたのだから文句はないが、少し身構えてしまうぜ。

 

「話を続ける。薬の副作用でトールは当分の間、魔法が使えない」


「ああ、そう言っていたな」

 

 ティナが俺だけに声が聞こえるように。

 一応弱点的な話なので。声のボリュームを落として言う。

 薬の使用は一つなら問題ない。

 だが、二つ食べると副作用が出ると話していた。

 

「当分って……どれぐらいで治るんだ」


「う~ん」

 

 俺の問いに、口元に手を当てて考えるティナ。

 

「長ければ半年……くらい?」


「え! そ、そんなにかかるのか?」

 

 な、長いなぁ……おい。

 それはちょっと困るかもしれない。

 

「強力な効果のアイテムには、それに見合った代償が当然ある。我慢する」


「仕方ない……か」

 

 秘薬を二つ使わなければ、虹竜に一撃与えることは不可能だった。

 後のことなんて考えていられる状況じゃなかった。

 ブラッドヒュドラの討伐報酬があるから、半年ぐらいなら無茶しなくても生活するだけの蓄えがあるのが救いだ。

 

「あれ? でも体内に魔力は感じるんだが……」


「魔力があっても強引に魔力を回復させたせいで、体内魔力回路がダメージを負ってずたずたになっている。うまく魔力をコントロールできないから魔力を流せないはず、試してみるといい」

 

 ティナの言う通りに試してみる。

 確かに体内に魔力はある……だが。

 普段と同じように魔力を循環させようとしても思うように動かない。


 それどころか……。

 

「ぶあっちいいいっ!」


「え?」

 

 指先で突然、激しい痛みを感じた。

 強烈な燃えるような感覚。

 

「ふぅ、ふぅ……」

 

 あまりの熱さに手に何度も息を吹きかける。

 

「な、なんだぁ、今の」


「たぶん……だけど、魔力が身体全体に流れずに、指先の一点に急激に集中したんだと思う」

 

 そんな俺の様子を見て、ティナが呟く。

 なるほど、よくわからん。

 

「……驚いた」


「なにがだ? 今の悲鳴がか?」


「違う、そっちじゃない。これならトール、予想よりずっと早く元に戻る、かも……」


「ほ、本当か?」


「うん、そもそも普通の人なら、今みたいに魔力を動かすだけでも三ヶ月はかかる。どうしてだろ?」

 

 疑問符を浮かべるティナ。


 でも、よく考えたら俺の場合、普段から馬鹿みたいに魔力消費と全回復を繰り返してるからな。

 神様のプレゼントしてくれた魔力回復(特大)、魔力増量(特大)のスキル。

 その恩恵か、急回復に身体が慣れているのかもしれない。


 理由がなんにせよ、想定より早く治るなら凄く助かる。

 

「あと、それともう一つ注意を、ちょっとトールの身体が変質している可能性もある」


「はい?」

 

 不安になるようなことを呟くティナ。

 

「ま、まさかとは思うが、魔女の秘薬だけに女体化とかしないだろうな?」


「トール、案外似合いそうな気もするけど」


「褒めて欲しいわけじゃないんだよ」

 

 俺は否定の言葉が欲しいんだ。

 

「さすがに……性転換したなんて話は聞いたことがない」


「ほっ」

 

 ちょっとだけ、安心する。

 この年になって今更、女として生きていくのはな。

 今のところは魔力がうまく制御できない以外に、身体に違和感はないが。

 

「確か、話だと普段より魔物が寄ってきやすくなるとか、そんな感じだったと思う……とにかく、元に戻るまで気をつける。魔法が使えない、今のトールは一般人と変わらないから……」


「そうだな」



 なんにせよ、当分は無茶はしないようにしておこう。

 本当に。




 


お読みいただきありがとうございます。

再開お待たせしました。

いただいていた感想も返信はできていませんが読ませていただいております。

励みになるコメント感謝です。


以下、ご報告です。


おかげさまで、ありがたいことに本作の書籍化が決定しております。

出版社はGAノベル様となります。

こちらの詳細については後日、後書きか、活動報告などでさせていただけたらと思います。


どうかよろしくお願いいたします。

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