表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初級魔法しか使えず、火力が足りないので徹底的に攻撃魔法の回数を増やしてみることにしました  作者: 大地の怒り
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/70

エピローグ

本日二話目です

ご注意ください

 卵を放置すると世界が滅ぶという突拍子もない話を聞き、俺はティナの膝から跳ね起きる。


 い、いくらなんでも飛躍し過ぎだろ。


 古竜たちに事情を聞くと、竜の卵を放置すると、母体の代わりに世界中からエネルギーを吸い尽くそうとするらしい。


 しかもその場合、孵化後は不純なエネルギーまで取り込んだせいで、邪竜と化して暴れ回るとかなんとか。


「な、なぁ……前にティナに聞いた、大陸が消えた話って」


「それが原因だったのかも……しれない」


 真剣な表情で頷くティナ。


 文献では人間が竜王の怒りで滅んだと記載されていたそうだが。

 もっと無差別的な話だったのかもしれない。


 竜王の卵、想像以上に危険な物だった。

 マジで扱い間違えたら超威力の爆弾そのものじゃねえか。

 災厄の卵呼ばわりされるのも当然だ。


「じゃあ今って、世界規模で超危機的状況じゃねえか」


『そうだぞ』


『人間たちにとっても竜王様の件は他人事ではないのだ』


 本当に笑えないんだけど。

 それならなおさら、早く決めて欲しいが。


(でも……そうか)


 見方を変えればこいつら自身が世界のために身を捧げてんのか。

 外れくじを引いたこいつらに、ほんのわずかばかりも同情する気持ちはないが。

 まぁ誰だって自ら犠牲にはなりたくないわな。


「ところで……虹竜さんよ」


『なんだ小僧?』


「今、相当な傷を負っているけど大丈夫なのか? 母体として耐えられるのか?」


『………………そういえば、そうだな』


 数秒の沈黙のあと。


「『…………』」


 俺と虹竜レライアの無言の視線が黒竜リナリアスに注がれる。


『……え?』


 その意味を理解していくリナリアス。

 虹竜が無理なら、代わりは黒竜しかいないわけで……。


『ふ、ふん……レライアは強い、この程度の傷、何の影響もないはずだ』


『いや……思った以上に小僧の一撃が効いている』


『下手な演技はよせ……私にはわかる』


『貴様こそ適当なことを言うな。外で見ていただけの貴様に小僧の凄さはわからんよ』


 み……醜いわぁ。


『不思議だ。小僧に与えられた痛みが急に愛しく思えてきた。感謝の念すらある』


 こんなことでお礼を言われてもなぁ。


『ふ、ふざけるなよ! ここまできて、そんな消去法的決め方があるかっ! な、納得いかん!』


『と、言われても仕方あるまい……我だって辛いのだ』


 見てたら、また険悪な雰囲気になりつつある。

 放っておいたら、またドンパチやるんじゃねえか?

 このまま虹竜と黒竜の様子を見てたら、最後まで決まらないこともあり得そうだ。

 俺らも酷い目に遭いそうだし、もうちょい真剣に考えてみるか。


 ったく、本当に世話のかかる奴等だ。


 つったって、竜王の目覚めまで時間もない。

 俺たちもこいつらも誰も傷つかないで済む方法なんて……そう簡単に思い浮かぶとは。


「いや、ある……かもしれない」


「え、トール?」


 閃いてしまった。

 今の俺は頭が冴えているのかもしれない。


「一つだけ、この事態をうまく乗り切る考えがある。竜王が暴走することもなく、俺たちもお前たちも傷つかず幸せになれる方法だ」


『『な、なんだとっ!』』


 俺の言葉に揃って目を大きく開く古竜たち。

 とりあえず、考えていることを古竜たちに伝えることにした。


『『…………なんと』』


 一通り話を終えると、竜たちは唖然としていた。


「トール……すごいアイデア、横道に逸れたともいうけど。でもそれ、可能なの?」


「わかんねえけど、試す価値はあると思う。俺は提案しただけ……後はお前らの選択次第だ、どうする?」


 俺は古竜たちの返事を待つ。

 俺の提案は第三の選択肢といっていい内容だ。

 虹竜も黒竜もその提案は予想していなかったようで。


『『……』』


 沈黙したまま考える古竜たち。 


『ど、どう考える……レライア?』


『た、確かに小僧のやり方が成功すれば……誰も傷つかずに済むかもしれん、穏便に済ませることができる』


 正直、竜的にちょっとどうなのかという提案なんだが悪くない感触だった。

 まぁこいつらの竜王に対する逃げ腰的な考え方などを見るに、納得してくれそうな感じはしたが。

 顔を見合わせ相談する二匹の竜……そして。


『よし! ……一か八かで小僧の案を試してみるか』


『うむ、ここでずっと悩むよりはよさそうだ! 失敗したらその時また考えるべきだ!』


「わかった……じゃあすぐに竜王の卵の元に連れて行ってくれ!」




 話が進み、時間もないので早速移動を開始する。

 卵は魔の森に保管されているそうだ。

 俺たちは虹竜の背に乗り魔の森の上空を西に飛んでいく。


 傷を負っている虹竜だが、普通に飛行するぐらいなら問題ないとのこと。

 風のバリアで俺が落ちないようにと、気を遣ってくれる虹竜。



 三十分ほど飛行し、辿り着いた森の奥。

 そこには底の見えない巨大な地下空洞が存在していた。


『この下に竜王様の卵がある』


 竜二体が入っても問題ないほどの広大な空間。

 巨大な地下空洞をゆっくりと百メートルほど降りていくと、下に台座と上に置かれた竜王の卵が見えてきた。

 卵なのに俺より大きい、直径二メートルぐらいはありそうだ。


 でもまぁ……王というには小さい気もするが、母体の中に入るとなるとこれぐらいのサイズが限界かもしれない。


 ゆっくりと虹竜の背から地面に降り、卵にそっと手を触れる。


「これが……竜王の卵か、ちょっとザラザラしてんな」


『一応言っておくが、下手なことを考えるなよ』


「わかってるよ」


 ちなみに卵は凄まじい強度だそうで、古竜のパワーや魔法でもどうしようもないとか。


「さて、やるか。そっちまで影響があるかもしれないから、できるだけ離れてくれ」


『『わかった』』


 ティナを背に乗せた虹竜と黒竜が上昇していく。


 卵を見ると全体に紫色の斑点ができている。

 本来なら、すぐにでも母体に入れなければならない状況だ。


 ガタガタッ ガタガタッ(卵の動く音)


「う、うおっ!」


『こ、これは……』


『まずいぞ』


 い、今、大きく卵が動いたぞ。


 台座の上で揺れる卵。

 まるで卵の中から早く母体の中に入れろと訴えているような。


『こ、小僧! 頼む!』


『もう時間もないようだ!』


「ああ……任せろ!」


 空から声援が飛んでくる。

 さっきまで戦っていた相手なのに少し不思議な感覚だぜ。

 自分自身の未来のために、その千分の一くらい彼らの未来のために……。

 うまくいってくれよ。



 俺は息をゆっくりと整える。


 そして……。




(さぁ……深く、深く眠れ、竜王よ)



『♫♩♫~♩♪♫~♪♫♩~』



 薄暗い地下空間に相応しくない優しい歌が響き渡っていく。


 まだ早い。

 今は目覚める時ではないのだ。

 我が子守歌により……深く、深く眠りの世界の中へ、いっそ永遠に。


 今回の問題は竜王が目覚めることがきっかけで発生した。

 ならば、竜王が目覚めなければ何の問題も起きないのだ。


 そういうわけで、もう少し寝ていてもらおうと思う。


『♫♩♫~♩♪♫~♪♫♩~』


 のんびり、ゆったりとした旋律が空間に漂う。

 今も抵抗するようにガタガタと揺れる、竜王の卵に俺は子守歌を聴かせ続ける。


 以前教会で子守歌を聴かせた時、子供たちは朝かなり遅刻して起きてきた。

 眠りに誘うだけでなく、眠りを深くする効果もあることを知った。

 とはいえ竜に対し効果があるのかはわからない。

 だからそこはもう賭けだ。

 物理と魔法が効かなくても歌なら効くかもしれない。


 効果が出るまで俺は一生懸命歌い続ける。

 五分、十分……と歌い続け。

 当初、ガタガタッと揺れていた卵は徐々にその動きが小さくなっていく。



 三十分後ついに……。


『……き、消えていく、模様が』


『信じられん、白一色に、完全な休眠状態に戻っていく』



 完全に卵の動きが静止した。



「ふぅ……うまくいったようだな」


『『オオオオオオオオオオオオッ!』』


 地下空洞に大きく響き渡る歓喜の咆哮。

 二匹の竜の喜びようが伝わってくる。


 見れば、上空で仲良くハイタッチとかしてた。



 これにて竜王の卵は封印……いや、休眠したようである。






 竜王の卵を落ち着かせたあと。


 俺たちは虹竜に街まで運んでもらう。


『ふはははははははははははははっ!』


 悩み事が解決した虹竜は上機嫌で空を飛んでいた。

 黒竜は一応念のため、もう少し残って卵の様子を見ておくそうだ。


「虹竜、街の少し手前で下ろしてくれ、あまり近づくと街の皆を驚かせちまうから」


『……わかった、任せておけ』


 素直に同意する虹竜。


『こ、小僧』


「……なんだ?」


『その……た、助かったぞ。貴様は我らの恩人だ』


 声のトーンを落とし、少し照れくさそうに呟く虹竜。

 出会った当初からは考えられない、虹竜の感謝の言葉。


『迷惑もかけた……大きな、とても大きな借りができた。何か困ったことがあれば言え……我の出来る範囲で力を貸そう』


「……虹竜」


『種族名ではなくレライアと呼べ……汝には我を名で呼ぶ資格がある』


「レライア」


『そうだ』


 色々有ったが、最終的に俺は虹竜に認められたらしい。

 まぁ……とにかく、すごい伝手ができた。


 でも正直、認めなくてもいいから、騒動に巻き込まないで欲しかったな……って。


「ティナ……そろそろ街に着くから起きな」


「ん、あぅ?」


 ティナは歌を聴いて二十分くらいで眠ってしまったらしい。


 教会でも俺と同年代のシルクより、子供たちのほうが効果があった。

 もしかすると対象によって更に補正がかかるのかもしれない。

 子守歌だけに成熟していない個体の方がより効果が強いとか。

 ティナにそれ言ったら嫌な顔されるかもしれないけど。


「ん、トール、成功したの?」


「ああ……バッチリだ」


 ゴシゴシと瞼をこするティナ。

 俺は親指を立てて返事する。


「無事、危機は去ったよ、世界の平和は守られたんだ」


『ああ、小僧のおかげで卵を次の時代に繋ぐことができそうだ』


「な、なんだろう……言葉だけなら、凄く立派に聞こえる」


「はは……まぁな」


 やってることは問題の先送りだが。

 まぁ人間含め、いつの時代もそんなもんさ。


 ちょっとだけ、世界の歴史を変えてしまった感があるけど。

 あんまり気にしないでおこう。

 俺なんかが深く考えたってどうしようもねえし。


 いつか竜王が再び目覚めようとするかもしれないが、未来のことは未来の奴が解決すればいい。

 そこまで面倒見きれるか。


 そんなことを考えていると街の夜の灯りが見えてきた。 


(ああ……今日は本当疲れた、早くベッドにダイブしてえ)


 戦い通しだった長い一日が終わる。



 ようやく……ぐっすり寝れそうだ。


これにて初級魔法二章終了となります。

ここまでお読みいただきありがとうございます


9.27追記


感想、メッセージなどありがとうございます。

お待たせしております。


ゆっくりですが三章も書いております。


ぼちぼちアップさせていただきますので

もうしばらくお待ちくださいませ




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍一巻、二巻GAノベル様より発売中です。
クリックで購入サイトに飛びます
初級魔法カバー画像
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ