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初級魔法しか使えず、火力が足りないので徹底的に攻撃魔法の回数を増やしてみることにしました  作者: 大地の怒り
第二章

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古竜騒動11

本日三話更新、二話目です

ご注意ください

 虹竜が創り出した時間を知らせる火球は残り五つまで減っていた。

 戦闘開始から五分が経過し、閃いた虹竜に一撃を与える策。


 浮かんだアイデアを実行可能なのか、頭の中で組み立てていく。


 奇襲とは油断した隙を突くということだ。

 意識の外からの攻撃。それは切り札的な超速度の攻撃だったり、背後からの攻撃だったり、寝ているところの暗殺だったり。

 暗殺を奇襲というのか微妙だが……まぁ細かいことはいい。


 極論から言えば相手に反応をさせないことだ。


 俺の魔法は絶対に詠唱が必要だ。

 短縮詠唱で詠唱を早くしても虹竜のように無詠唱とはいかない。

 詠唱時点で攻撃が読まれ、必ず一定の対応時間を虹竜に与えてしまう。

 虹竜のように無詠唱が使えればと思うが、こればかりはどうしようもない。


 だが……疑似的に無詠唱のような扱いにすることはできる。

 虹竜の対応時間を減らす方法はある。


『……どうした、もう諦めたか?』


「ふん」


 そうやって人を見下してろ。

 何が来ても自分ならどうにでもできると思ってるようだが、その考えが甘いってことを教えてやる。


 てめえの自信を打ち砕き、絶対に度肝抜いてやる。



 ここからの俺は貴様の想像を超える。



【【オオオオアアアエイアイウアアウエイオウエアイアアオオウ(300)】】】


『ぶ、ぶっ壊れたか、きさま……なっ!』


 意味不明な発言の直後。

 空中に出現する極大ファイアボールを見て、目を見開く虹竜。

 いつぞやの母音によるフル詠唱の全力合成弾だ。


『ぐ、おおおおおおおおおおっ!』


 驚きの声をあげる虹竜。

 猛スピードで飛んでいく極大ファイアボール。

 ボディに届く直前で火竜に変化されちまったか。


 今度のは結構惜しかった。

 うまくやればいけそうな手ごたえを感じた。


『な……なっ、なにが起きた?』


 かなり混乱している虹竜。

 相当に動揺しているようだ。


『貴様、なにを……した? どうして魔法が発動するのだっ!』


「さぁ……な」


『……ま、まさか、さっきのアレは詠唱なのか?』


 ぶつぶつ呟く虹竜。

 千年生きてきても、知らないことはあるようだな。


 あれが俺の切り札……というわけでもないんだが。

 どこで何が役に立つかわかんないもんだな、本当。


「で……どうだ?」


『なに?』


 俺はまだ困惑している虹竜に問いかける。


「さっき偉そうに言ってくれたが……読めたか? 予測できたか? 俺の魔法が?」


『お、おのれ……』


 無詠唱はできない。

 それでも魔法を予測させないことはできる。


 本能的な反応か、上空へと距離を取ろうとする虹竜。


「まさか、逃げはしないよな……」


『ほざけ、小僧っ!』


 挑発に乗り、ピタリと止まって吼える虹竜。

 だが勝負はここからだ。

 決して俺は有利というわけではない。

 魔法が単発なのに変わりはないから、当てるのは簡単じゃない。


『…………来い』


 集中モードに入る虹竜。


 なんだろう……この雰囲気。

 テニスとかで、どの球種のボールが来るか待っている人みたい。

 スピンボールか、スライスボールか、フラットボールか、ファイアボールか……みたいな。


 虹竜はまだ、さっきのがファイアボールの詠唱を母音にしたものとは気づいていないようだが、何度も詠唱して聞かせたくはない。

 母音詠唱とはいえ各属性魔法の詠唱に違いはある。

 何度も詠唱すればファイアボールだと読まれてしまうだろう。


 だったら……もっともっと、攪乱するしかないよな。


「「「「あいうあかおえあさすどいおいあおいうあおいおいいうえおあいうあえおぬううねのかあいおいあおいうあでっくせいいうおいうあおうあおえあ」」」」


『な……な、なにを』


 再び戸惑いの声をあげる虹竜。

 外から見たら完全に危ない人だが……。


「「「「いおいあおいうあぐどおいおいいうだべすぎえおあいうあえおあいいいあいおいいおいいだだずうおんぶろぬこでまんごいおいうああいいあうおううえあおいうあぐどおいおいいうだべすぎえおあいうあえおあいいいあいおいいおい」」」」


 中から見ても間違いなく危ない人だと思う。

 ファミコンのパスワードを口にしてるみたいだ。


 ひたすら意味のない声を何度も残響させて音の大洪水を発生させる。

 自分でやってなんだがうるせえな、不協和音にも程があるだろう。


『……っ』


 顔を顰め不快気に俺を睨む虹竜。


 以前セルとの模擬戦で、魔力を込めた声(詠唱)と普通の声を区別されたから、その点も考慮して発声した声にはすべて魔力を込めてある。

 これで俺が詠唱を唱えてもかなり聞き取りにくくなったはずだ。

 木を隠すなら森の中、どの部分が詠唱なのか簡単に判別できないはずだ。


 残り時間は約四分……あまりちんたらしている時間はない。

 不協和音の中に母音詠唱を忍び込ませて詠唱。

 ウォーターボールの全力合成弾。


『オオオオオッ!』


 水竜形態に変化していく虹竜。

 詠唱は雑音の中に紛れ込ませている。

 仕掛けられるタイミングは読めていないはずなのだが……。


(想像していたより反応が早いな)


 二度目で警戒しているからか?

 とにかく虹竜の防御リズムを崩す……それしかない。


 通常魔法の弾幕を生成して発射する。

 三百発分の合成弾をいつでも撃てるように、残り魔力と魔力回復速度をしっかりと計算しながら。

 ファイアボール計算で秒間五発までなら、俺の魔力は減ることはない。


『…………』


 多少被弾しても虹竜の警戒は途切れない。

 虹竜の気を少しでも逸らそうとするが、今度は見向きもしねえ。

 視野を広く持ち、俺の全力の一撃だけを警戒している。


『なんだ、これは……?』


「???」


 訝しげな顔をする虹竜。

 ここでどういうわけか、虹竜が通常魔法の弾幕攻撃に対し迎撃姿勢を取る。


 合成していない初級魔法なんて被弾してもダメージはない。

 それなのに、試すように俺の魔法に自分の魔法をぶつけて相殺していく。

 いくらなんでも、この場面で弾消し遊びをしているわけじゃないだろう。


 空を飛ぶ虹竜に向けて様々な角度から飛来する俺の魔法。

 最初こそ迎撃に失敗して幾度か虹竜に被弾していたが、時間経過とともにピンポイントで迎撃される数が増えている気がする。


『なんだか知らんが、不思議な感覚だな』


 まさか、読まれてきている……のか? 発動タイミングを。

 時間は残り三分を切った。


(どういうことだ?)


 虹竜の俺の魔法に対する反応、かなり余裕が出てきている気がする。

 発射タイミングも詠唱も読めるはずがない……なのに。

 勘が当たったとは考えにくい。


 なんだろう? すげえ嫌な予感がする。


 残り二分を切った。

 事情は理解できないが、このまま様子見をしていても埒があかない。



(ここで……いくか)


 これ以上時間を与えちゃいけない雰囲気がある。

 俺は仕掛ける、大勝負を。 


 全力合成弾のファイアボールを空へと発射。

 俺は虹竜に火球が着弾する前から、ティナに貰った回復の丸薬を急いで飲み込む。


 回復していく魔力。そして……即座に次弾のウインドボール。

 全力合成弾の二撃目。しかも、巨大火球の背後に隠した本命攻撃。

 これまで一度もお披露目していない風魔法の最速攻撃。


 これは完璧に読んでもいない限り、対応できないはずだ。


 だが……。


『オオオオオオオオオオッ!』


「う、そだろ」


 まるですべてを読んでいたかのように。


 火、風、と流れるように変化をする虹竜。

 二撃目も問題なく防御されてしまった。


(な……何故だ、どうしてここまで完璧に防がれる?)


 賭けに失敗した衝撃は大きく。

 残り時間はあっという間に過ぎていく。


 最後の最後に全力合成弾のアースボールを虹竜に発射。

 小型の隕石を思わすような攻撃。

 魔法耐性以前にもしかしたら物理攻撃的要素のありそうな土ならばと期待したが。

 虹竜は地竜形態に変化し、そのまま巨大岩石を正面から受け止める。


 そして、地上に降りてくる虹竜。


『無駄だ。最初に説明しただろう、我は魔力波長の変化を応用し、その竜の性質に肉体を変化させることができると。魔法耐性だけの話ではない、地竜であれば物理防御力も格段に向上する』


 め、滅茶苦茶過ぎる。


『まぁ欠点もいくつか引き継いでしまうのが欠点だが、地竜なら代償として飛べなくなるようにな』 



 そして……。


『ふん、時間切れだな』


「…………」


『だが、さっきは少し驚かされた。まさか貴様が魔女の秘薬まで所持しているとは思わなかったぞ』


 虹竜形態に戻り、再びゆっくりと上昇していく虹竜。


(い、意味が……わからない)


 呆然とする俺。

 虹竜は秘薬を所持していると思わなかったと言った。

 言葉通りなら虹竜にとって予測外だったはずなんだ。


 だというのに、まるで思考を読むかのような虹竜の行動。


『凌がれた理由が理解できない……といった顔だな。正直、我にもわからん』


「な、なんだよそれ……まさか、勘で全部当てたとでも言うつもりか」


『さぁな。だが不思議と何度も声を聞くうちに、詠唱と雑音の区別がつくようになってきた。貴様の詠唱は、精霊への言葉はあの雑音の中でも伝わってきた』


「……まさか」


 精霊に作用することで、大幅な詠唱補助効果を生んでいたと推測していた言語伝達スキル。

 もしかして、繰り返すうちに言語伝達が虹竜に対しても作用していたのか。


 よりによって攪乱したい相手を助けちまうとは、なんてこった。


 だとしたら……俺の詠唱内容はどう頑張ってもこいつに読まれる。


(こいつに不意打ちを当てることは絶対に)



『他者を騙す貴様に相応しい、小賢しい知恵を絞った弱者なりの戦略、少しは楽しめたぞ』


「…………」



 流れる一筋の汗。そしてついに。



『さて、思い残すことはないか? ……小僧』



 虹竜の雰囲気が豹変する。


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