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初級魔法しか使えず、火力が足りないので徹底的に攻撃魔法の回数を増やしてみることにしました  作者: 大地の怒り
第二章

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ランクアップ祝い

 ティナとの模擬戦が終わると、お昼の時間になった。


 俺たちは特別訓練場からギルドに戻り、そのまま酒場へ。

 お昼をセルとティナと三人でとる。


 副ギルド長は仕事で執務室に戻っていった。

 急ぎ特別訓練場の修復工事の手配などをするそうだ。

 結構な感じで壁などに被害を受けており、修復に一月くらいはかかるとの見込みだ。


 最上級魔法の撃ち合いなど、ティナも俺も派手に戦った。

 少し悪い気もしたが、全力を出すための特別訓練場なので気にしないでいいと言ってくれた。

 まぁ……弁償しろとか言われても正直困るんだけど。

 せっかく稼いだ二千万ゴールドが吹っ飛んじまう。



「負けるとは、二度もトールに負けるとは……一回目はともかく、万全で挑んだ二回目は言い訳のしようもない」


「仕方ないさ……トールの最後の攻撃はさすがに読めない」


 連敗に落ち込んだ様子のティナ。


「セル……ごめん、勝利のイメージが足りないのは私もだった」


 セルも模擬戦で俺との賭けに負けたことを知り、ティナが言う。


「ティナ……いいんだ、いいんだぞ」


「セル」


 ティナの頭にポンと手を置き慰めるセル。

 まるで姉妹のような妙な連帯感を感じる。

 

 俺によって与えられた傷の舐め合いをする二人の少女。


 なんだろう。

 そう考えると申し訳なさと同時、案外悪くない気もしてくるから不思議だ。



「そ……それじゃあ食べようか」


 そんな空気を変えるように俺は口を開く。


 テーブルに並んだ肉に野菜に色々な料理の数々。

 待ってたら冷めちまうのもあるしな。


「ん……約束通りお昼は私の奢り、トール、たくさん食べる。デザートでもなんでも好きに頼んでいい。それと、Dランク昇格おめでとう」


「サンキュ」


「でも……次は負けないから」


「はは、返り討ちにしてやるさ」


 負けても、ちゃんと相手を認めるティナの姿勢は見習いたい。


 ではランクアップ祝いを兼ねた昼食。

 戦いで動いて腹も減ったし、遠慮なく食べるとしよう。


「す、すげえな。アイツ……」

「年下の女の子に飯を奢らせてんのか」

「この前は聖剣姫に飯を奢らせてたよな。どういう神経してんだ一体」


「か、乾杯だおらああぁ!」


 周りの冒険者たちの飯が不味くなりそうな発言はスルーだ。

 これはお祝いであって罰ゲームではないのだから。




 楽しい食事を終えたあと。

 テーブルでのんびりと談笑する。


「それにしても、トール」


「なんだセル?」


「以前の模擬戦から、またとてつもなく強くなったな」


「レベルもかなり上がったしな」


 世界の成人平均レベルとされる二十を既に超えた。

 ブラッドヒュドラ戦で命を懸けただけの価値はあったかな。


「ははは、今ならセルにも勝てたりして」


「…………」


 調子に乗って冗談半分で言ってみるが……。

 無言のままのセル。


「あの……マジ顔されると少し反応に困るんだけど」


「実際、否定できないぞ。私は体力と防御力には自信があるが、最後に見せた大火球を受ければさすがに無事ではすまない。それに……」


 セルが少し考える素振りを見せる。


「威力の問題だけではない。トールは短縮詠唱で最上級魔法に匹敵する大魔法を放った。その意味を理解しているか?」


「……」


「戦いを一気に決める高威力の呪文は詠唱に時間がかかる。数十秒、長ければ数分必要な長文の詠唱が必要。対してトールはほんの数文字口にするだけで大魔法を放てる。一瞬でも油断すればあっという間に戦局がひっくり返される相手に、こっちはどれだけ神経をすり減らして戦う必要があると思う?」


「……ん、セルの言う通り」


 隣のティナもセルの言葉に頷いている。


「単独で殆どの距離で戦える超高火力の魔法職、トールはソロ向きだな。逆に尖ったスタイルは仲間との連携が難しそうだ」


「バルさんも言っていたよ。余程の人と組まないと無理だって」


「そうだろうな」


 しかもバルさんと話した時よりも、最大魔力値は格段に増えている。

 もしパーティを組んだ場合、突出した展開力と火力は前衛の仲間を巻き添えにしてしまう可能性も高い。



「正直、トールの実力を見たあとだと、トールの死相も私の勘違いだったような気もしてきた」


 ティナが俺を見て呟く。


「死相? 随分、不穏な話だな。どういうことだ?」


「ああ……実はな」


 昨日ティナから占術スキル(微微微弱)の効果で、死相の気配がすると告げられたことをセルに話す。

 ティナと一緒に思案するセル。


「あの、馬鹿みたいな展開力と魔力があれば、大概の魔物には引けをとらない」


「だがまぁ、トールは実戦経験が不足しているし、状態異常攻めとか、正面からではなく、不意をつかれたらあっさりとやられてしまいそうな危うさはあるが……」


「正面からじゃない……暗殺、とか?」


「ば、馬鹿野郎、恐ろしいこと言うんじゃねえよ」


 長く続けても面白い話題ではないので、ここでこの話は終了する。




「……ごちそうさん、ティナ」


「ん」


 酒場を出る前にティナに礼を言う。


「…………」


 外で会計を済ませるティナを待っていると。

 ふと、隣で無言のまま口元に手を当てているセルが目に入る。


「セル? どうしたよ」


「あ、あぁ、いや……なんでもない」


 食後でボ~ッとしているのか?

 そういや、セルは朝ギルドに戻ってきたばかりって話だったな。

 かなり疲れているのかもしれない。


 ティナがギルドを出て来て、俺たちはそのまま解散した。




「トールに死相が見えるほどの存在、か……まさかな」


 トールと別れたあと。

 セルが発した呟きは空へと消えていった。





 






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