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初級魔法しか使えず、火力が足りないので徹底的に攻撃魔法の回数を増やしてみることにしました  作者: 大地の怒り
第二章

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シルクの依頼

二話同時更新 二話目です

 ランクアップ試験に関する副ギルド長の話が終わり、ギルドのホールへと戻る。


 さて、模擬戦はともかく、これからどうしようか。


 せっかくギルドまで来たわけだし、何か面白そうな依頼がないか、依頼の貼られた掲示板を見てみたのだが……。


(う~ん)


 現在、ブラッドヒュドラの件もあり、低ランク冒険者は森に入ることを禁止されている。

 Fランクで受注できる依頼は少ないようだ。

 こういうのを見ると、やっぱり少しずつでも、ランクはあげるべきなんだろうなと思う。


 ギルドも仕事の少ない俺たちに配慮してくれてか、普段は貼ってない街の掃除とか雑務的な仕事が結構貼ってあった。

 本当に色んな仕事を扱うんだな、冒険者ギルド。

 だが報酬を得て生活に余裕が出て来たこともあり、金銭的なものにそこまでの魅力を感じてないため、無理して受けようという気持ちにならなかった。


 それなら気分転換ついでに買い物にでも出かけたほうがいいか。

 今後、戦闘系の依頼を受けるなら、服とか装備品もボチボチ買い揃えないといけないしな。



「――っ」


(……ん?)


 と、色々考えていると聞き覚えのある声がした。


 声の発生源、受付カウンターの方を見てみるとユリアさんと話す見覚えのある女性。

 ゆったりとした白いローブを着た金髪の女の子。

 その隣にはエプロンを身につけた四十くらいのおばさんが一人。


(……あれは)


 三人の話がひと段落するのを待って話しかける。


「シルク……おはよう」


「あ……トールさん。おはようございます」


 挨拶を交わす俺たち。

 シルクは先日、結界修復の件の時にセルと一緒に知り合った教会のシスターさんだ。


「シルクはどうして朝からここに?」


「ギルドに依頼を申し込みに、ちょっと困ったことが起きまして」


「……困ったこと?」


「はい、実は今日、午前十時から教会近くの公園とその通りでフリーマーケットが開かれるんですが」


 フリーマーケット、各家庭で持ち寄った品を交換、売買したりする地域住民同士の交流の場だが、本業の商人も参加しているそうだ。


 模擬店もたくさん並び、他にもちょっとしたイベントも行われる。

 教会の方でも簡単な出し物として、子供たちとシスターがステージで歌を歌ったりするとか。


「フリーマーケットか……ちょっと行ってみたいかも」


「はい、是非来てください。半年に一度開かれるんですけど、好評で規模も回を重ねるごとに大きくなっているんですよ」


 丁度買い物をしようと思っていたし、何か面白そうなアイテムも見つかるかもしれない。

 今はお金もたんまりとあるしな。


「ただ、その……」


「なんだ? 開催が危ぶまれる事態が起きたとか?」


「いえ、そうではないんですけど」


「わたしが説明するよシルクちゃん。巻き込んじゃったのは私だしね」


 おばさんはシルクと交流のある、飲食店を経営する奥さんだそうだ。

 店は普段から教会と繋がりがある。

 といっても、宗教的な繋がりという話ではない。

 教会で炊き出しなどを行う際に一時的に店から道具を借りたり、色々と協力を受けているそうだ。


 今回、問題が生じたのはこの店。


 人がたくさん集まるいい機会なので、外で臨時出店する予定だったのだが、昨日店の従業員が二人揃って夏風邪で倒れてしまったとか。

 それで急遽ヘルプとして、ギルドに募集しにきたとのこと。


 回復魔法は風邪とかウイルス系には効かないのか?

 火傷には効果があるのに……この辺りの線引きがよくわからんよな。


「普段お世話になっていますし、私も手伝うことになったのですが、午後からはイベントの準備などで、どうしても抜けなくてはならないので……」


「とにかく、一人でもいいから人手が欲しくてね」


「……なるほど、そういうことか」


 開催は今日の午前十一時から、現在時刻は十時、かなりギリギリのタイミングでの人員募集。

 人が集まる可能性は低いが、駄目元でギルドに来てみたとのこと。


「トールさんはどうですか? 今日は予定を入れていないという話でしたよね」


「お、俺ですか?」


 ユリアさんが俺に話を振ってくる。

 おばさんとシルクの視線がこっちに向く。


「どうにかお願いできないかい? 給金はできる限りはずむからさ」


「私からも、もし時間があるようでしたら……」


「う~ん」


 どうしよう?

 正直お金についてはあまり気にしないんだけど。


「どんなことを手伝えばいいんだ? 言っておくけど俺、料理とかはできないぞ」


「特に難しいことはないはずだよ。あくまで臨時の店だからね。設備の問題もあるしメニューの数は絞ってある。調理は私たちがすべてやるから、完成した料理を運んだり、接客をメインに手伝って欲しい。お昼の混雑時間だけでも凌げれば、あとはどうにかなるからさ」


 大体の仕事内容を理解する。

 それくらいならできそうだし手伝うのは構わない。

 混雑時間を過ぎれば自由時間にしていいそうなので、他の店を見て回れる。


 というか、この流れで断るのは結構勇気がいるよな。


「わかったよ……まぁ俺にできる範囲で頑張って手伝うよ」


「本当かいっ!」


「助かりますっ! よかったぁ~」


 喜ぶ女性二人。

 大きな胸に手を当て、安堵の息を零すシルク。


「でも、せっかくならシルクや子供たちの歌うところをちょっと見てみたかったな」


「それは……すまないね、時間の関係上無理だと思う」


「いや、まぁ次の機会もあるでしょうし」


 申し訳なさそうな顔のおばちゃんに気にしないように言う。


 まぁ、イベントも今回限りというわけではないしな。



「歌……」


 そこでポツリとユリアさんが呟く。


「そうだ、シルクさん。せっかくの機会ですしトールさんに歌を教えてあげては?」


「歌を、ですか?」


「はい、ちょっとした追加報酬という形で……」


 ユリアさんの言葉にキョトンとした顔のシルク。


「トールさん。ギルドで冒険者登録をした時、吟遊詩人の『歌』で一つだけ取得条件が判明している歌があると話したのを覚えていますか?」


「ええと、確か……子守唄でしたっけ?」


 子守唄……その効果は敵味方問わず眠くさせる。

 ただし相手が興奮状態だと効果がない……だっけ?


「そうです、シルクさんなら完璧に歌えるはずですよ」


 俺はシルクの方を見る。


「か、完璧かどうかはわかりませんけど……私でよければお教えしますよ。ウチの小さい子供たちのお昼寝の時間によく歌ってあげてるので」


「うん? シルクは聖女なのに歌の効果が発生するのか?」


「そういうわけではないんですが……元々歌がゆったりとした旋律と言いますか、特にスキルの効果がなくても眠くなるというか」


「ああ、そういうこと」


 せっかくだし、俺はシルクにお願いする。


 シルクの歌を聴くこともできるし、子守唄も覚えておけばそのうち役に立つ……かもしれない。



(や、役に立つよな……きっと、たぶん)

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