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異世界へ

 転生準備が整い、神殿で爺さんとの会話が終わると視界が切り替わる。


「……っ!」


 頭上に広がる晴天。一瞬で外の空間へ。

 さっきまで神殿にいたのに、急に強い日差しを感じたせいで目を手で覆ってしまう。


 動かずにボーッとしていると、少しずつ目も慣れてくる。

 ワイワイ、ガヤガヤと聞こえてくる……人々の喧騒。

 ここはどこかの街の噴水広場らしい。

 細かい水しぶきが身体にかかる。

 転送されたのが、魔物のいる森の中とかダンジョンじゃなくてよかった。


 服もちゃんと着ているし、靴も履いている。

 服は灰色のチュニック、茶色いズボンに茶色の革の靴。

 素材はわからないが、あまり上等な感じはしない。

 まぁ前世で死んだときに着ていた学校の制服は目立つだろう。

 それよりはマシか。


 視界には街の通りを歩く人々の姿が見える。

 大人から子供まで……人も結構多い。

 彼らは突然ここに現れた俺に驚いている様子もない。

 なんか不思議な力が働いたのだろうか? なんでもありだなファンタジー。


 なかなか活気がある街のようだ。

 噴水広場では子供たちが水をかけあって遊んでいる。


 子供たちを見ていて俺は羨ましいと思った。

 俺の身体はこの世界の人たちのものと変わらない。

 つまりまぁ、何が言いたいかというとだ……。


「……あ、あちぃよ、水浴びしたい」


 上空に太陽がギンギンと煌めく。

 炎天下の真夏ってやつだ。

 暑さで不快指数はマックスだ。

 皮膚から汗がどっと噴き出してくる。


 本音を言えば子供の中に混じりたいけど代わりの服なんてもってないしな。

 水遊びしている子供たちが羨ましい。


「こら! もう、じっとしていなさい……」


 ふと声の方を見れば、一組の親娘の姿。


 年齢は母親が三十前後くらい、娘が五、六才ってところか。

 ママさんが水遊びでビシャビシャになった子供の髪に手を近づける。


「風よ、我が手に集え『ウインド』」


 ママさんがそう言うと同時、掌が淡く光りだす。

 掌を起点にして風が生じ、子供の濡れた髪をなびかせる。

 魔法で風を送り込んで、ドライヤー代わりにしているようだ。


(おぉ! あれが魔法か……すげえなぁ、ん?)


 魔法に興味津々な俺が、ジッと濡れた子供の様子を見ていると。

 俺の視線に気づいたママさんが、子供を庇うように俺の視線の前に立ち塞がる。

 どうやら危険人物として警戒されたようだ。


 ロリコンって奴は時空を超えても存在するのかもしれない。

 ちょっとガン見し過ぎたので、俺は反対側に視線を向ける。

 別の場所に移動することにしよう。


 異世界に来て変態呼ばわりされたくもない。




 ぶらぶらと街の通りを歩く。


 移動しながら身体の具合を簡単に確認していく。

 爺さんの言っていた通り、基本は前世の肉体と同じみたいだ。

 歩いていて違和感も感じない。


 視界の高さも変化がないことから、身長は百八十センチメートル程度と同じ。

 腕にあるホクロの位置とかもそのまま再現されている。


 さっき噴水広場で水面に映りこんだ自分の顔も、前世の自分の顔だった。

 とりあえず、地球と同じように動くことができていることが確認できた。


(……あ、そうだ)


 こっちの確認も忘れないようにしないとな。

 別れ際神様に聞いておいたんだ。

 ステータスオープンと心で念じる。

 すると、ボンヤリと半透明のウインドウが眼前に浮かぶ。



 名前:池崎透

 LV:1

 HP(生命力):15/15

 MP(魔力):100/100

 力:10

 素早さ:10 

 体力:10

 取得魔法:なし

 ジョブ:

 スキル:魔力回復(特大) 魔力増量(特大)

 言語伝達、言語伝達、言語理解、言語理解


 来たぞステータス。

 ゲームみたいでちょっと感動してしまう。


 ちなみにステータスウインドウ、この世界の住人なら誰でも使えるらしい。

 ただし、他人からは見えない仕様となっている。


 俺は自分のステータスを確認する。

 スキルの恩恵で魔力がずば抜けて高い数値。

 今、この体に魔力があるという実感はないがな。

 他は横並びというか、特に良いところもなければ悪いところもない気がする。


 次にジョブだが……欄が空白になっている。

 爺さんはこの世界に来た時に必ず一つジョブが与えられると言っていた。

 何か取得条件があるのだろうか。

 スキルについては予定通りだ。

 一部重複していてアレだがあまり考えないようにしよう。

 スキルのもう少し詳しい効果とか見れないのかな?

 ウェブページのリンク的なのを期待して、ステータスウインドウの文字を押してみる。

 すると……新しいウインドウが開いた。



 ****言語理解****

 言語を理解できるようになる。



 ****言語伝達****

 言語を対象に伝えるのを様々な面で補助する。



 舐めてんのか?


 いや、もうちょっと、もうちょっとさぁ……。

 これだと意味合いが広すぎるというか漠然としているというか。

 むしろ回りクドい表現になっただけじゃないか、これ。


 まぁいい……次だ次。


 ****魔力回復(特大)****

 魔力回復速度に補正。六十秒で全回復する。


 ****魔力増量(特大)****

 体内魔力を大幅に増やす。

 レベルアップに応じて魔力増加量が大幅に増える。



 よかった。


 魔力関係についてはキチンと記載されていてわかりやすかった。

 まだ魔法を覚えていないんでなんとも言えないけど、一分で全回復ってきっと凄い回復速度なんじゃないか?

 特大とついてあるだけはありそうだ。




 困惑しながらも、ステータス確認を終えたあと。


 気を取り直して、移動しながら街の情報収集を続けていく。

 視線が忙しなく動いてしまうのは仕方ないだろう。


 ここは異世界、見るものほぼ全てが新鮮そのものだ。

 荷車を馬に角の生えた生物に引かせる商人。

 本当に地球ではない世界に来たんだと実感する。

 自分のことながら上京したばかりの田舎者と変わらないな。


 不揃いな石畳の道が街中にずっと続いている。

 道に合わせて煉瓦や石造りの家が並ぶ。

 全体的に街並みが随分スッキリして見える印象だ。

 空がよく見える。

 家の近くが電柱だらけだったから、その辺もあるかもしれない。

 これについては俺の地元の問題なので、あんま異世界関係ないけどな。


 不衛生な感じはあまりしない。

 建築技術、科学技術は発展していないが、ある程度魔法技術で代用できていると爺さんが言っていた。

 どこかに浄化設備的なものがあるのかもしれない。

 街並みもそうだが、この世界の人たちはもっとファンタジー感満載だ。

 背中に弓を装備した狩人っぽい人や、三角帽子を被った魔法使いっぽい人。


(……おぉう)


 ふと、金髪の女戦士とすれ違う。

 かなり大胆な露出度の高い服を着ている。

 胸と股間部分だけの鎧、大事なところだけをガードしている。

 確かビキニアーマーとかいうやつだ。


(すっごいな……あ、あれで身を守れるのか?)


 まぁこの世界には魔法がある。

 バリアとかなんか特殊な効果が装備品に付与されてるのかもしれない。

 それはともかく、随分露出が激しい気もするが羞恥心とないのだろうか?

 だが、周囲を見てもとくに珍しがる様子もない。

 この世界ではわりと日常的な光景のようだ。

 現代日本の路上であんなの着てたら人がすぐ寄ってくるぜ。


 無論……警察官がだけど。


 さて、少し街の雰囲気が掴めたところで。

 ぼちぼち本格的に行動指針を決めないとな。


 ていうか俺金が一銭もないんだよな。

 今夜の宿賃すらないよ。

 噴水広場には時計台が設置されており、時刻は午後一時を指していた。

 ちなみにこの世界にも四季があり、一日は二十四時間で時間の感覚は地球と同じだそうだ。


 天体配置とか、そのへん意識すると凄く変な気もするけどな。

 そもそも空の太陽が、地球から見える太陽と同一とは限らないし。

 異世界という時点で深く考えるのは無駄だろう。



 ……と、考えが逸れたが、とにかく夜までにお金を稼ぐ。


 爺さんも最初のお金くらいはサービスしてくれてもよさそうなもんだけど。

 まぁその代わり? にいくつかスキルを貰えたんだからよしと考えよう。



 まずどこに行くか? 


 とりあえずこの手の定番といえば冒険者ギルドである。

 爺さんも冒険者ギルド押してたしな。

 自然と言語は理解できている。

 並んでいる店の看板の文字も読めるしな。

 コミュニケーションをとるのに困ることはないだろう。


 だが、ギルドに行く道順がわからないので。


「……あの、すみません」


「はい?」


 親切そうな感じの人をチョイスして、道を尋ねると、丁寧に教えてくれた。

 お礼を告げて親切な人と別れ、ギルドへと向かう。

 噴水広場から十分ほど南西に歩くとギルドへとたどり着いた。



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