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初級魔法しか使えず、火力が足りないので徹底的に攻撃魔法の回数を増やしてみることにしました  作者: 大地の怒り
第二章

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活動再開

少し区切り悪いんで、二話同時更新してます

 初心者演習、ブラッドヒュドラとの激戦から三日後の朝。



「ふぁ~あ」


 大きな欠伸をして、まだ眠たい目を擦りながら宿のベッドから起きる。

 ここ数日、俺は宿でのんびりと過ごしていた。


 起きて飯を食べて寝て、起きて飯を食べて寝て……食っちゃ寝だ。


(ま……こういう時間も必要だろう)


 身体に不調があるわけではないが、心の休養ってやつだ。

 今の俺は冒険者だ。何かに縛られているわけでもない。

 生き急ぐことはない、働きたい時に働けばいい。

 二千万ゴールドとお金もたんまりと入ったしな。


(しかし、二千万て……十六歳の高校生が得られる金額じゃないよな)


 やべえな、金銭感覚が麻痺してくる。


 前世で経験したコンビニバイトとか、週三で月五万くらいだったし。

 いや、通貨が違うので円との単純比較はできないんだけど。

 過去、貯金が六桁すら達しなかった俺としては大金過ぎてイマイチ実感が湧いていない。


 十年くらいは何もしなくても生きていくことができる。

 節約すれば二十年以上もいけるかもしれない。


 いや、ルルル草をチマチマ採取しながら稼ぎつつ暮らせば、一生でも……。



「……よし、今日は外に出るか」



 思考が株主優待券と貯金とかで生きるネオニート寄りになってきたところで、考えを切り替える。

 こういう些細なところから堕落が始まるからな。

 ちょっとのんびりするのはいいが、あんまりだらけてもな。


 まぁ正直、これ以上宿にいても別段やることがない。

 娯楽が食事くらいしかない。

 スマホとか時間潰しになる物がないから、引きこもる理由もない。

 外に出たほうが充実した時間を過ごせそうだ。


 とりあえずここ数日の情報収集も兼ねてギルドに顔でも出しておこうか。

 何か面白そうな情報も得られるかもしれない。




「おはようございます、ユリアさん」


「あ、トールさん」


 ギルドに入ると、受付嬢のユリアさんの姿を発見したのでご挨拶。

 踏み台に乗って、掲示板に依頼用紙を張りつけているようだ。

 ユリアさんが作業を中断して踏み台から降りる。


「あ、あの……トールさん、身体の方は?」


「ええと、もう大丈夫ですよ」


「よかったです。ここ二日間、ギルドで姿を見かけなかったので、もしかしたらと思って……」


 俺の答えに、ホッと安堵の息を吐くユリアさん。

 かなり心配させてしまったようだ。

 やっぱり今日ギルドに来て正解だったな。


「まぁ……ちょっと疲れたんで、宿でのんびりしていたんですよ」


「そうですよね。トールさん、あの……先日は色々と申し訳ありませんでした」


 深く頭を下げるユリアさん。

 彼女が謝罪しているのはブラッドヒュドラの件だ。

 ギルドへの面倒な報告はバルが代表してやってくれた。

 こうして直接、謝罪されたのは初めてだったりする。


「トールさんには本当に、ゴブリンの件もですが、その……」


「今回で酷い目に合ったの二回目ですしね」


「うぅ」


「頭を上げてください。気にしてないといえば嘘になりますが、その分ユリアさんにはお世話になってますしね」


 この世界に来て右も左もわからない俺に色々教えてくれたのは彼女だ。

 仕事だからといえばそれまでかもしれないが。

 あまり気にしないように言う。


「それよりも、まだまだ若輩者なもので今後とも色々と教えていただけると嬉しいです」


「トールさん……はいっ! 任せてくださいっ」


 彼女とはこれからもいい関係を築いていけたらと思う。


「あ、そういえば……トールさん少し時間あります?」


「はい。今日は特に用事はないですけど、どうして?」


「実はトールさんに副ギルド長が会いたいと……」


「副ギルド長が?」


「はい、副ギルド長は今執務室にいますので、よければ今から会ってもらえたらと……」


「まぁ……かまいませんけど」


 突然の話だけど、特に断る理由もないので頷く。



 ユリアさんに案内されて、少し緊張しながら副ギルド長のいる部屋へと。

 ドアをノックをすると、向こう側から渋い男の声が返ってくる。


「失礼します、副ギルド長」


「ユリア君か……どうした? ん? そちらの彼は?」


 部屋に入ると、執務机にいたのはダンディな感じのおじ様。

 オールバックの髪に綺麗に揃えられた黒髭が魅力的。

 将来、こういう感じに歳をとっていきたいと思わせる大人の魅力があるね。


「こちら、バルさんが話していた初心者演習に参加していたトールさんです」


「おお! 君が最近色々と噂の吟遊詩人か」


 副ギルド長が椅子から立ちあがり、手を伸ばす。

 俺はその手を握り握手をする。


「ええとトールです、よろしくお願いします」


「この街の副ギルド長をしているラムザだ。まぁ知っているかもしれないが……」


「えぇと、確か……奥さんをバルさんに狙われた方ですよね」


「あ、あの馬鹿……そんなことを触れ周りおって、羞恥心てものがないのか」


 顔を歪める副ギルド長。


「コホン、まぁ……それは一先ず置いておくとして、演習の件はすまなかったな」


「謝罪はさっき、ユリアさんにも言われましたよ」


「君たちは命を失いかけたのだ、謝罪など何回重ねたって足りはせん。バルは君がいなければ全滅の憂き目もあったと話していた。そうなった場合、ギルドの信頼は地に落ちてもおかしくなかった」


 随分と立派だ。

 年下扱いして、なぁなぁに済まそうとしないのは好感が持てる。

 でも、年長者にこうして頭を下げられて喜ぶ趣味はないわけで……。

 正直、今回の件はイレギュラーだ。

 Aランクのバルさんを引率に選んでくれたりと、ギルド側も安全配慮はしてくれていた。


 ただ……相手があまりに悪過ぎた。


 だからって、ギルドに文句を言いたい気持ちもないわけではないけどな。

 俺は人間的にそこまでできていない。

 だが、まぁブラッドヒュドラの討伐報酬と別にギルドの方で何かしらしてくれるという話だしな。

 一先ずはギルドへの貸しということにして話をすすめる。


 しかし……運命ってやつは不思議なもんだと実感。


 バルさんが奥さんに手をだそうとしなければ、彼が演習を引率することもなく、俺は死んでいたのだから。


 そう思えばまぁ……いいのか? いや、全然よくねぇな。


 ユリアさんは俺を副ギルド長に紹介したあと。

 一礼して部屋を退出し仕事に戻っていった。

 俺はラムザさんと話を続ける。


「あ、そういえば……初心者演習ってまた参加しないと駄目なんですかね?」


「どちらでも構わない。君が望むなら参加してもいいんだが……現在Bランク未満の冒険者は森に入ることは禁じられている。次の機会はいつになるかわからないぞ」


「なるほど」


 それならまぁ……無理に参加する必要はないか。

 先の戦いで合成魔法を扱えるようになり、戦うだけの力も得た……と思う。

 まぁメリットは森の歩き方を復習できるくらいか。


「さて、トール君。君に会いたかったのは謝罪以外にも話があったからなんだ。今回の演習の件でランクアップ試験の推薦状をバルから貰っていてな……」


「へ? ランクアップ試験?」


「ああ……そうだ。一つ飛ばしてDランクへのな」


 そういや初心者演習の説明で少し触れていたな。


「演習の報告書を見た時は信じられなかったよ。バルに何度聞いてもブラッドヒュドラを最終的に倒したのは君だっていうんだ」


「いや……まぁ、無理もないと思います」


 誰がFランク冒険者がAランクモンスターを倒せると想像できるのか。

 実際、他の冒険者たちの間でもバルさんが頑張って倒したことになってるしな。

 俺とバルさん以外、咆哮で気絶してたから戦いを目撃した人もいない。

 無理に俺だと主張しても、嘘くさくなりそうなので特に訂正はしなかった。


「バルはふざけた部分も多く、私利私欲を挟むこともあるが、こういったことで嘘をつくような男ではない」


 一応バルは副ギルド長にそれなりに信頼されているらしい。


「報告での君の評価だが、戦闘面では最高評価に近いものだった。単純な戦力としてみればAランクでもおかしくない程と」


「あ、ありがとうございます?」


「そして、窮地における精神力、ここ一番の対応力もなかなかだと」


 まじかよ。


 わりとヤケクソ気味だったんだけどな。

 とにかく、死にたくない一心だっただけで。


「反面それ以外、フィールドなどにおける冒険者としての知識、経験については不足していて、演習参加者の中で最低評価だったが」


「はは…………ですよね」


 上げて下げるスタイルの副ギルド長。

 そらそうだよな。否定する材料が見当たらない。


「でも、バルさんは推薦してくれたんですね」


「不得意分野があったとしても、君の力をFランクで腐らすには惜しいとのことでな」


 総合評価でDランク足り得ると判断してくれたようだ。

 例えるなら数学百点、英語三十点で平均すればそこそこみたいな……。

 科目による足切りみたいなのは存在しないらしい。


「知識や経験というのはやる気さえあれば、時間をかけていけば身につくからな」


 副ギルド長が言う。

 俺が経験不足のまま試験に合格してDランクになっても、ギルドの方で紹介する依頼を厳選すれば問題ないとのこと。

 力量に合わせて依頼をこなしていき、少しずつ成長して貰えればという話。


「まぁ推薦を貰ったといっても、実際に試験を受けるかは君次第なんだが、どうする?」


 どうすると言われてもな。

 突然過ぎて何も考えてなかったよ。


「質問なんですが、Dランク試験の内容ってどういう感じなんですかね?」


「その時々によるな。受験者の冒険者の特性によって内容は変わったりもする。例えば先日行われたのは受験者たちが複数人でパーティを組み、共通の依頼をこなし、それを同行していた試験官が、各自そのジョブに見合った十分な役割を果たしていたか評価して合否を決定するものだった」


「なるほど」


 でも……俺の役割ってなんだろね。

 吟遊詩人らしいことができるわけでもない。

 とりあえず魔物を片っ端から倒せばいいのか?


 ちょっと面倒な試験になりそうな予感もする。

 バルさんにもお前の戦闘スタイルは初見の奴とパーティを組むには向いていないと言われたしな。


「あとはシンプルに模擬戦を行うケースもあるな」


「模擬戦ですか」


「ああ、こちらが用意した試験官と一対一での形式でな」


 そっちのほうがまだわかりやすいな。


「あのバルが認めた君にギルドとしては興味がある。今の私の考えとしては試験を行うなら、実力を正確に把握しやすい模擬戦を考えている」


「あ、あまり期待されても期待に応えられるとは限りませんよ」


「はは、プレッシャーをかけたいわけじゃないから、気楽にやってくれればいいさ。今回の推薦は早くランクアップするチャンスを得たというだけで、落ちてもペナルティがあるわけじゃない」


 俺の緊張をほぐすように笑みを見せる副ギルド長。


「仮に失敗しても、ランクアップに少し時間がかかるというだけだ。君は若いんだから少し遠回りするだけさ。精々、推薦したバルの評価が落ちるだけだ。大したことじゃない……恐れるものは何もない」


「は、はぁ……」


 なんか一瞬、笑みに黒いものが見えたぞ。


「それと模擬戦だが……人目につきたくない、どうしても隠したい手札があるというならギルドで配慮するつもりだぞ。訓練場を貸切りにしたりな」


 あ、それはちょっと助かる話だな。


「ちなみに、模擬戦をするとして、相手がバルさんてことはないですよね?」


「それだけはない。さすがに推薦人を試験官とするのは公平性の面で問題があるからな」


 よかった。ちょっと安心した。


 あの人の場合、自分から立候補しそうな雰囲気があるからな。

 俺の戦闘スタイル完全にばれてるし、戦うのはご遠慮願いたい。


「ま、試験については次会う時までに考えておいてくれ」


「わかりました」







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