スキル検証、演習準備
※はじめに注釈です
魔法の表記についてです。
残響数が増えると「」の数が増えるため、ブラウザの仕様によってはおかしな部分で改行されてしまうようです。
33発だとこんな感じです
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ファイアボール」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
凄くわかりにくいので、「」が多い場合、ひとまず下記のように数字で表現しました。
「「「「ファイアボール(33)」」」」
なんか年齢表示みたいになっていますが、暫定的にこんな感じです。
表記については後で変更するかもしれませんが、よろしくお願いします
模擬戦を終えた翌日。
朝起きて宿を出た俺は湖へと向かう。
演習が始まる日までレベル上げに勤しむことにしたのだ。
セルは仕事で街にいないので今日は俺一人、魔物と戦うのはちょっとだけ心細いが、ずっと彼女に頼るわけにもいかない。
「……よし、いつでもこい」
湖に着いた俺はスライムの出現を待つ。
数分も経過しないうちに湖からスライムが出現した。
のそのそと、地を這いながらこちらに近づいてくる。
俺はスライムと十分な距離を保ちながら魔法を放つ。
「ファイアボール」
淡く掌が光りだし、射出される火の玉。
一発だとスライムを倒せないのでもう一発。
「ファイアボール!」
ジュワッと音がしてスライムが蒸発する。
魔法は発動、短縮詠唱も無事成功。
昨日は偶然調子がよかっただけ……ということもなさそうで、一安心。
次のスライムは残響スキルで倒してみよう。
昨日セルから注意されたように周囲に誰もいないか確認も忘れない。
「「ファイアボール!」」
再びスライムが湖から登場したのを見て魔法を放つ。
眼前に出現したのは二つの火の玉。
ボン、ボンと時間差で飛んでいきスライムに着弾。
そのままあっけなくスライムは消滅した。
こっちも問題なさそうだ。
実質、一回の詠唱で魔物を倒すことができた。
二つの火の玉は同じ形、同じ大きさで同等の威力のようだ。
さて、ここからは残響スキルの検証といこう。
****残響****
声を残響させ反復させる。
反復間隔は調整でき、歌を残響させることで効果時間を引き延ばすことが可能。
スキルの説明文を見ると歌の効果時間を引き延ばすとあるが、詠唱における残響スキルは本来の用途と違うスキル使用法だ。
昨日セルとも話したがこのスキルは魔法詠唱と組み合わせることで、とてつもない相乗効果を発揮する。
残響させる回数分だけ詠唱を省くことができ、時間あたりに発動する魔法が増える。
結果、超高速の魔法展開が可能となりダメージ効率が飛躍的に増加する。
その癖、詠唱は一回分でいいのだから馬鹿げている。
さて、模擬戦で使用した時、発動したファイアボールは三発だった(内スキル分は二回)。
それ以上、残響回数を増やすことは可能なのか?
残響回数の制限はあるのか? ……などを検証していく。
次のスライムが登場したので、俺は残響スキルを四回にして魔法を放つ。
「「「「「ファイアボール」」」」」
詠唱終了と同時、五つの火の玉(詠唱が一、スキルが四)が飛んでいく。
ボボボボボン、と衝撃音がしてスライムが死んだ。
うん、スライムに撃つにしてはオーバーキルな気がする。
二発目の時点で息絶えているだろうに、少し悪い気もしてきた。
ま、まぁスライム愛護団体がいるわけでもないし、深く考えないようにしよう。
次は残響回数を倍の八回に増やしてみよう。
「「「「ファイアボール(9)」」」」
九個の火の玉が出現する。
出てきたスライムがボボボボボボボボボンと……以下、省略。
「……お、おいおい、滅茶苦茶やばいぞこれ?」
これまさか、回数制限ないんじゃないのか?
そんな推測が浮かんでくる。
次のスライムに対し、残響回数をさらに倍の十六にしてみるとこれも成功。
そしてさらに、残響数を倍の三十二に。
「「「「ファイアボール(33)」」」」
これも推測通り、三十三個のファイアボールが展開されて飛んでいった。
……あ、そういえば。
魔力回復があるから調子に乗って連発したけど、魔力消費とかどうなってんだろ。
魔力を確認してみる。
名前:池崎透
LV:7
HP(生命力):32/32
MP(魔力) 148/303
大分魔力が減ってるな。
残響スキルで増やした魔法の分も魔力は消費するらしい。
さすがにそこまで甘くはないか。
まぁ俺には魔力回復(特大)スキルがある。
六十秒で全回復するから魔力切れしてもすぐリカバリーできる。
でも……あんまり調子に乗って撃ちすぎないようにはしよう。
最大で同時に六十発撃てるが強力な分、魔力消費が凄まじい。
計算上は一秒に一発なら連射しても魔力は減らないが、扱いには注意が必要だ。
そのあとも、スライムを倒しながら残響スキルの検証を進めていく。
最大数の六十発でも試したが無事成功。
今のところ残響回数に制限はない。
他、ファイアボールを例にわかったことはこんな感じだ。
残響スキルで大量展開されるファイアボールだが、イメージをしっかり持てば射出方向を色々と変化させることが可能。
例えば自身の周囲に展開させて、一発目は右、二発目は左、三発目は上といった具合だ。
これにより複数の魔物相手に同時攻撃ができる。
今の俺ならゴブリンが複数で来てもどうにかなるかもしれない。
それと、残響スキルで複製される詠唱の間隔を調節することもできた。
つまり、各ファイアボールごとの発射間隔をある程度調整することが可能。
説明すると、間隔を一秒刻みくらいに設定すればボン、ボン、ボン、ボン、ボンて火球が飛んでく感じ。
残響間隔をその半分くらいに短かくすれば発射音はボボボボボン。
ちょっと頭の悪い説明になってしまったけど、イメージ的にはこんな感じだ。
残響間隔を長くすれば発射まで時間の余裕ができ、各ファイアボールで狙いをつけやすくなり、無駄な魔力消費を避けられる。
もちろん速射重視なら残響間隔を短くすればいい。
宿で別料金で作ってもらったサンドイッチを昼食に食べ、夕方までスライム狩りと魔法練習に勤しむ。
スライムを二十五体討伐したところで俺は街へと戻った。
それから三日間、俺はスライムを討伐していく。
ついにレベルは十二まであがっていた。
演習前日はスライム討伐を二時頃と早めに切り上げて街に戻る。
翌日の演習準備のため、今日の午後は街で買い物タイムだ。
「こんにちは~」
「あ、トールさん」
俺は魔法屋さんへ。
店番の女の子とご挨拶。
「どうですか? ファイアボールは使いこなせてますか?」
「バッチリですよ……ファイアボール抜きじゃ生きていけないくらいです」
「そんな大げさな……でも、お役に立ってるようでよかったです」
いやもう、大げさでもなく本当に。
ファイアボールは俺に自信と活力を与えてくれた。
「今日は、どういったご用件で?」
「えぇと……ウォーターの巻物を購入しようと思いまして、ちょっと遠くまで出かけるので、そろそろ買ったほうがいいかなと」
「なるほど。水を自分で生成できれば荷物も減らせますしね」
魔法で水を用意できれば、サバイバルでとても有利だ。
ガラスケースから巻物を取り出す店員さん。
「あれ? ……巻物がこの前より増えてますね」
「はい、先ほどヒールの巻物が入荷したんですよ」
「ヒール? 回復魔法ですかね?」
「はい、光魔法の巻物なのでとても珍しいんですよ。火、水、土、風はそれなりに入ってくるんですけどね」
「へぇ……」
回復魔法か……すごく興味がある。
ポーションの一つも持っていないしできれば購入しておきたいな。
初級魔法でも下級ポーションと同等の効果があり、侮れないそうだ。
止血したり、軽度の切り傷や擦り傷などの治癒ができる。
即時使用すれば感染症などの予防もできる。
さすがに骨折を直したりとか、失った腕を生やすとかそんな効果はないそうだけど。
「おいくらですかね?」
「七万ゴールドですね」
七万ゴールドか、他の巻物よりもお高い。
スライムの核を売って稼いだので、所持金は十一万ゴールド近くある。
ウォーターの巻物と合わせて九万五千ゴールド……買えなくはないな。
残金が一気に減るが、演習は一泊二日で食料など、基本現地調達するとのことなのでお金は使ってもどうにかなるっちゃなる。
「あの……ちなみにお取り置きとかって」
「すみません、こちらはお取り置きは……」
無理か。
まぁ希少な巻物って話だし、普通に売れるだろうしな。
やっぱり買っちゃうか? この機を逃すといつ買えるかわかんないし。
それに今ならスライム討伐で定期的に稼げるし……ね。
そんな風に自分を納得させる理由を作り出す。
「ありがとうございました~」
結局、物欲に負けて買ってしまう俺。
前回同様に巻物を使用して魔法を習得し、店を出る。
うん……大丈夫、後悔はしないはずだ……きっと。
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名前:池崎透
LV:12
HP(生命力):76/76
MP(魔力):500/500
力:41
素早さ:40
体力:39
取得魔法:ファイアボール(5) ウォーター(3)(NEW!) ヒール(5)(NEW!)
ジョブ:吟遊詩人
スキル:
魔力回復(特大) 魔力増量(特大)
歌 調律 残響
言語伝達、言語伝達、言語伝達
言語理解、言語理解、言語理解
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少しずつ、魔法が充実してきた気がするぞ。
レベルも上がりステータスも順調に向上している。
MPもファイアボールがちょうど百発撃てるまでになった。
レベルが十を過ぎたあたりから全体的にステータスの伸びが増えた気がする。
そのあとは適当に雑貨屋などを回り、必要そうな物を購入して宿に戻り、翌日の演習に響かないように、夕食を食べて早めに寝ることにした。