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後編② 公爵家子息ミハイル=ベランドン無双

「国王陛下、並びに王妃様、御前を失礼します。私はベランドン公爵家次男のミハエル=ベランドンと申します」

「その婚約者のオレリアン伯爵家次女、レーネル=オレリアンと申します」

「証言の許可をいただけますでしょうか?」

「……よい。許す」


ああ、国王様と王妃様が労り目をなさっている。

そうですよね。証言するって事はエレナにまとわり付かれたって事だから。

サラーシャ、大物を釣ったんだから任せるわ。

よろしく。

こら。小さく舌打ちしないで。


「ベランドン様、レーネル様、ありがとうございます」

「「いえ」」

「では、わたくしたちにご相談なさった事を話せる範囲で構いません。お話し下さいますか?」

「「はい」」

「では、私から」


ふわー……ベランドン様から怒りオーラが……。

おふぅ……レーネル様は視線でエレナを射殺しそうだよ。


「そこの令嬢と初めて顔を合わせたのは、確か……最高学年になって1か月も経たない頃だったと思います。

友人達とその婚約者の令嬢達と交流の茶会をしている所へ、招いていないのに同席されました。

断っても頓珍漢な返答をされ、結局最後まで居座られました。

しかも、許可していないのに勝手にファーストネームで私を呼ぶのです。

もちろん何度も注意しましたが、この令嬢は止めませんでした。

その後からは、なぜか私を見かけると駆け寄ってきて、こちらの都合も聞かず話しかけてきました。何度も何度も。

その頃から、そこの令嬢は私の手や腕に触れたり、不自然に身を近づけたりしてきて、気味が悪かったので、私はこの令嬢を避ける事にしました。

すると、『なぜ避けるの?』と余計に声をかけてきますし、お茶会にも何度も勝手に同席されました。

日が経つにつれて言動が段々と酷くなり、レーネルが横にいても『二人きりでお話しできませんか?』『その婚約者は貴方には似合わない』『私の方がきっといいはずよ』と耳を疑うような発言を繰り返すようになりました。

時には、ぶつかって来られて腕に巻きつかれたり、衝突していないのに転んで『歩けないので抱き上げてください』と言われたりしました。

また、レーネルが横を通り過ぎただけで転んで『この女が押した。助けて』と言われた事もあります。

これでは何をされるか分かりませんから、徹底的にこの令嬢を避けていますと、ある日『レーネルが呼んでいるからこちらへ』と言われ空き教室に連れて行かれました。

しかし、その教室にレーネルはおらず、謀られたのだと悟りました。

この時、令嬢は事もあろうか両手を広げて私に突進してきたのです。

『さあ、邪魔者はいませんから、どうぞ抱きしめてください』と。

恐ろしくて慌てて距離をとると、いつの間にかいらっしゃっていたランドバーグ嬢とラシャーム嬢が令嬢の腕を捕まえて下さり、事なきを得ました。

その場はランドバーグ嬢とラシャーム嬢のおかげで何とかなりましたが、今後はどうなるか分かりません。

ほとほと困り果て、私はランドバーグ嬢とラシャーム嬢にご相談いたしました。

すると『はっきりと拒否を示されてください。そして、今後ずっとそのご姿勢を続けてください』とおっしゃり、より一層風紀に注意を計らう事をお約束してくださいました。

元々お2人は風紀を乱すそこの令嬢によくご注意をされていましたが、お約束以降、そこの令嬢が子息に近づかないように計らったり、2人きりで対面するのを阻止したりして下さいました。

私もそこの令嬢が接してくる度に、勘違いも甚だしい事、迷惑である事、淑女として気持ち悪い事、大嫌いだという事、レーネルを愛している事、をはっきりと言い続けました。

その期間は、恐らく1か月程。

そうしてやっと、そこの令嬢は私の所へ来なくなりました。

しかし……代わりに友人を狙って同じような事をし始めたのです!

幸い、友人達もランドバーグ嬢とラシャーム嬢に助けて頂き、本人達も毅然とした態度で接する事で何とか被害は免れました。

私のように迷惑を被っていた者達は、お2人のお働きに大変感謝しております。

ただ、そこのご令嬢は子息達に相手にされない事をお2人のせいだと言い張り、周囲に吹聴し出したのです。

そこの令嬢の言動を正しく理解している者は、そのような嘘は信じておりません。

そこの令嬢が転入してから、私も含め、多くの者がランドバーグ嬢とラシャーム嬢にお助けいただきました。

私は、お2人がいじめも暴言も暴力もされていないと証言いたします」


……ベランドン様かなり怒ってらっしゃったのですね。

え? 『公爵子息無双』? ……サラーシャ、私も同感です。

まさかここまで詳しく話すとは思わなかった。

レーネル様を悪者に仕立て上げようとされてかなり怒り心頭のようだったけれど、その怒りは解けていなかったのね。

ベランドン様がエピソードを話せば話すほど、ベランドン様へ憐憫の視線が増えたけど。

しかも、話しの途中から、ざわめきが広がって、今じゃ会場中がエレナに嫌悪の眼差しをむけ、5人を見ながらボソボソ話でもちきりだよ。


この話を聞いてあの5人は……。

……あれまあ、問題児達には完全に亀裂が入ったね。

男の子たちがエレナを睨みつけてる。

そりゃそうだよね。エレナの様子をここまで詳しく話されたら信用できないよね。

でも、君達も同じその手管で落ちたんじゃなかったっけ?


「では、ワタクシもお話しいたします。

ワタクシはそこの令嬢に『ミハイル様に相応しくない』『身を引いたらどうですか?』『ミハイル様が可哀想』『ミハイル様を縛っている』『ミハイル様は気を遣って優しくしているだけ』『ミハイル様は、本当は私が好き』『私の方が相応しい』『ミハイル様を解放しろ』と、色々と何度も言われました。

しかも、ミハイル様がいらっしゃらない時は口に出すのも憚られる様な言葉遣いで言われます。時には怒鳴られた事もございます。

そして、ミハイル様が側にいらっしゃる時には、腕に縋り付いて甘えた口調でミハイル様に言っていました。

あまりに酷いマナーですので注意しますと、『性格が悪い』『意地が悪い』『いじめるな』『私は悪くない』と反省する様子は全くなく、ご自分の事を棚に上げてワタクシを侮辱なさいました。

この令嬢は、ご自分の都合のいい事だけ耳に聞こえ、ご自分の都合のいいように物事を解釈し、ご自分の都合のいいように物事が運ばないと人のせいにいたします。

もはや、妄想に取りつかれていると言っても過言ではない程、話が通じません。

それでも、サラーシャ様とレイティー様にご助力頂いて、何とか接する機会は減りました。けれど、現実が見えていないのか、ワタクシへの侮辱はつい最近まで続いておりました。

『ミハイル様は私を愛している』『今にミハイル様は私の所へ戻ってくる』と。

このように妄想に取りつかれた令嬢の言う事は妄想でしかなく、サラーシャ様とレイティー様がいじめや暴言・暴力をしたというのも、現実が把握出来ていない戯言でしかありません。

サラーシャ様とレイティー様は、このご令嬢に、礼儀マナーや淑女としての在り方、貴族としての心得を懇切丁寧に教授されていただけであり、いじめ・暴言・暴力など一切されていらっしゃらない事を証言いたします」


ぅわ~……レーネル様、最近までそんな事言われてたんだ。

知らなかった……。

けど、ミハイル様も知らなかったのか、エレナに極寒の視線を飛ばしてるよ。

あとで、宥めてあげてくださいよ、レーネル様。


証言を終えると、ミハイル様とレーネル様は国王に一礼して元の場所へ戻って行った。


ん? 『エレナを見ろ?』

……ああ、男の子4人に見捨てられてやっと本当に怯えだしたね。味方がいないって。

『でも、まだ諦めてないっぽい』って?

え? まだするの? そろそろ〆に行こうよ。


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