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後編① レイティー達の反撃

(レイティー視点)



言ってもいいのかな?

でもこれ、単なる見世物になってない?

まあいいか。

まさか本当にでっち上げの物品とエレナだけの証言で冤罪をきせられると思わなかった。

国王様からお許しが出たし、言いたいことぶっちゃけてもいいのよね?

そっちから言う? と隣を見ると、サラーシャはどっちでもよさ気な顔をしていた。

では、私から。


「元第2王子フォーネル様」

「レイティー様、貴族籍を除籍された者は平民だから様はいらないですよ」


ちょっ、しょっぱなから突っ込まないでよ。

ジロリとサラーシャを見ると、肩をすくめられた。


「え~、元第2王子フォーネル……さん。元宰相ご子息シューベルさん、元騎士団団長ご子息カイルさん、元魔導師団団長ご子息マーティスさん、元男爵家三女エレナさん」


一人一人視線を合わせると、真っ白な顔でガタガタ震える5人―――エレナは滝のように涙が出ている―――は、媚を売るような懇願するような顔で私を見つめた。

いえ、私にそんな視線を向けられても困りますが。


「そもそも、私達がなぜエレナさんをいじめたり暴力をふるったりすると考えたのか、その根拠や理由は何だったのでしょうか?……国王様、この方々にもしゃべってもらってもよろしいでしょうか?」


『何で先に訊いとかないの?』ってボソっと突っ込まないでよ。

ちょっと忘れてたのよ。


「良かろう」

「では、まずフォーネルさん」


衛兵さんにアイコンタクトを送ると腕が緩められる。


「私は冤罪だなんで知らなかった!! 全部シューベルやカイっ!!!」

「訊かれた事にだけ答えろ」


わっ。びっくりした。

勢いよく口を開いたかと思ったら、人のせいにするなんて……。

衛兵さんのフォローが無かったら、延々としゃべり続けられそうだったし。

でも、あれは痛そうだね。


「答えろ」

「私がエレナを気に入ったからだろう?」


ウワ~……なにその懐柔しようとしている笑み。

というか、なぜ好かれていると自信があるのかな?

サラーシャが言う、頭に花が咲いてるってこういう事なのか。

ちょっと、サラーシャ微妙に体が震えてます。噴出さないで下さいよ。


「では、他の4人も同じ考えですか? 首を振って答えてください」


あれ? 男の子達は縦に首を振ってるのに、エレナは横。


「エレナさんは違うようですね。では、どういう根拠、理由だと?」

「っごめんなさいごめんさないごめんなさいごめんなさっ!!!」


エレナが怒涛の平謝り。

衛兵さん、揺さぶって発言を止めた。

さすがに女子に暴力はしない。紳士的だわ。

けど、今更謝られても……。


「エレナさん、謝るという事は後ろめたい事があると言っているようなものですが、今聞いているのは、貴女がいじめられた理由です。答えて下さい」

「……ぁ、こんなつもりじゃなかったの……だって私ヒロインだから……これだって演技でしょう? 私は王子妃になって幸せになるんだもの。ねえ、やめて? ……私がヒロインだから嫉妬してるの? でも、貴女達は悪役だもの。消えて当然でしょっっ?! 痛っ!!」


関係ない事をしゃべり出したけど、衛兵さんに止め無いようにアイコンタクトしたら見事に本音をこぼしてくれた。

『コレ、どうする?』とサラーシャを見ると、口元がニヤついてて怖かった。


「では、皆さんの根拠は端的に言うと『嫉妬』ですね?」

「くすくすくすくす。わたくしたちにとって、その根拠はまずありえないですよ?」


ちょっと! いいとこ持っていかないでよ!

それに男の子4人、エッて顔しないで。

人の好みは十人十色だから、当たり前でしょう。

サラーシャも『あと、よろ』って投げないで。


「はあ~そうです。私達にとって『嫉妬』はまず有り得ませんわ。なぜなら、フォーネルさんをお慕いしていませんから」


もういいや。サラーシャも適当に投げてるし、私も言いたいこと言ってやる。

5人は罪人だし、何を言っても怒られないよね。

ふふふ。男の子たち、目が真ん丸に開いてる。

ついでに、『自分は好かれてる』って思い込みが激しい事にも気付いて、恥じてほしい。


「私達は、フォーネルさんをお慕いしているから王子妃候補に選ばれた訳ではありません。王家のご命令です。それに、私達は……いえ、私は一度もフォーネルさんをお慕いしているとも王子妃になりたいとも申し上げた事はありません。むしろ、なりたいと思った事もありませんので、王子妃になる事に執着しておりません。他に王子妃にふさわしい方がいらっしゃいましたら、進んで候補を降りたい、と王家にも家族にもお伝えしてありますわ」

「わたくしもレイティー様と同じです。ですが、王家のご命令ならば、レイティー様もわたくしも忠誠を尽くす身ですから全力でお答えしたまで」

「ええ、それが当然の事ですから」


たまには真面目に話してくれるのね。

え? また私? 

サラーシャ言わないの?

『フォローに回る』って、ただ面倒なだけじゃないの?


「ですから、私達は自信を持って主張できます。エレナさんに『嫉妬』したり、いじめたりする理由がありません」

「っっ……」


会場のみなさん、失笑がすごいです。

あ、フォーネルが真っ赤な顔をして俯いた。

やっと分かってくれたかな。


「貴方方がいじめや暴言と言っている事は、マナー違反や淑女として破廉恥な行動に注意しただけですわ。暴力と言っている事も全く身に覚えがありません」

「『下級貴族のくせに』という暴言? は、『下級貴族が上級貴族の方に挨拶をする時は、上級貴族の方に確認を取ってからするものです』と教えた時の事でしょう」


あら、ぶっこまれた。

ん? サラーシャの目が笑ってる。

『パスだよパス』って。

はあ~、分かったわよ。


「あれは、上級貴族の方々がお茶会をされていた所に、呼ばれもしないのに勝手にエレナさんが声をかけたのでしたわね」

「そうそう、正式な自己紹介もしていない初対面(・・・)で、しかも身分が上の方々に確認も取らず(・・・・・・)勝手(・・)に同席したのよ」

「しかも、皆様がやんわりとお断りをすると『心配しないでください。大丈夫ですよ』と場違いな返答をして居座ろうとしたので注意したのでしたわ」

「それが、1度や2度ではなかったもの。何十回と同じ事をするエレナさんに、毎回わたくしたちが呼ばれたのよね」

「2~3回で理解されて下さればよかったのですが……。それを貴方方が目撃されて、『いじめ』『暴言』と勘違いしたのでしょうか?」


ははははは。エレナが会場中から眉を顰められてる。

でも、サラーシャの目がまだギラギラしてるから、終わらないと思うよ。


「『淑女にあるまじき行動』でしたか……。それは、『婚約者がいる殿方をみだりにお話に誘うのは、婚約者の方に失礼になり、淑女にあるまじき行動ですからおやめなさい』と注意した時の事かしら?」

「サラーシャ様、『衆人の前で殿方のお名前を呼び捨てにするのは淑女としてあるまじき行動です。せめて愛称に様をつけて呼ばれたらいかかですか?』と教えた事もありますし、『許可をもらってもいないのに殿方のファーストネームを勝手に呼ぶのは淑女としてあるまじき行動です。きちんとご挨拶をして許可をもらって下さい』と注意したこともありますわ」

「あら、それって一日に何十回言っても直らなくて、見かねた周囲の皆様もお手伝いして下さった注意ね」

「ですが、私達の事だけを取り上げて『いじめ』『暴言』と捉えるのはどうなのでしょうか?」

「ほら、わたくしたちが先導しているように見えたのかもしれないし」

「・・・確かにそうですわね」

「ああ! そういえば、『殿方に、根拠のない婚約者の方の悪口を言うのは淑女としてあるまじき行動です』とか『殿方の手や腕にみだりに触るのは淑女としてあるまじき行動です』とか『殿方にしなだれかかるのは、淑女としてあるまじき行為。即刻お止めなさい』とか、『婚約者のいる殿方に付きまとうのは淑女にあるまじき行動で、変な憶測を呼びかねないからお止めなさい』とか注意した事もあるね」


え~、まだ続けるの? これ。

会場の皆も国王様たちも、あり得ない物を口にしたかのような、ひどい顔になってるよ?

そう思っていると、サラーシャ続けて口を開く。

楽しそうですね~。


「ああ、だから殿方との接し方について注意していた様子が『娼婦のようだ』と暴言を吐いていたと思われていたんじゃないかしら?」

「え? 『2人きりでお会いしたい』とか『私の方が婚約者の方より胸が大きいですよ』とか言ったり、婚約者の方が呼んでいますと嘘の情報を伝えて無理やり殿方と2人きりになるように仕向けたりしてましたよね? しかも、堂々と衆人の前で、段差も石もないところでつまずいたふりをして抱き着いたり、お話し中に腕に巻きついて胸を押し付けたりもして、平気で破廉恥な事をされていたので注意しただけですよ?」

「「「なんと……」」」


『ナイスパンチ』ってなんですか、サラーシャ。

皆さん絶句してますし、まあそうなのかもしれないけど。

でも報告書で知っているはずの、国王様も辺境伯爵様もお父様もなぜ驚いたのかな?

ああ、あんまりにもアレだからオブラートに包んだ表現にしてたっけ。

あら……男の子4人がエレナの事を信じられない物を見るような目で見てるよ。

いやいや、君たちも信じられない事してるから。


「レイティーの言う通りね。わたくしたちは第3者からご相談を受けましたから。……わたくしたちにご相談なさった方で、今、証言をして下さる方はいらっしゃらないかしら?」


?! ここで証人?!

こらこらサラーシャ、無茶ぶりが過ぎる……。

後ろを向いて相談者を探すのは止めてあげて。

あくまで噂で流れるなら白を切る事が出来るけど、ここで証言してしまったら『他家の女の子と触れ合いました』ってなるから。

婚約者の家族も、自分の家族も敵にまわしちゃうことになるから、ホント止めてあげて。


……!! うそ! 出で来るの?! 

え?! 公爵家ご子息のミハイル=ベランドン様?! ホントにいいの?!

あ、婚約者のレーネルも一緒。


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