8話 妹
更新遅くなって大変申し訳ありません。PV1500突破しました、ありがとうございます。今後とも宜しくお願いします!
朝の日差しが眩しい。
こんな穏やかに朝を迎えたのは何年ぶりだろうか。
ゆっくりと体を起こす。
そして今、自分が置かれている状況を確認する。
頭が痛い。確か、私は迷宮に囚われていて、そしたら冒険者の人が来て……そうだ、一緒に逃げたのだ。
「おはよう、詩織ちゃん。よく寝れた?」
「はい。ありがとうございます」
この人は誰だろう。異世界から来た私の名前を知っている。まあ、私の名前を私が知らないので合っているかどうかわからないが。
「に、逃げて下さい、あの男が私を追って来てしまいます!」
私は、私を囚えた男のことを思い出した。助け出してくれたこの人を私と同じ目に合わせる訳にはいかない。
「詩織ちゃん、それはないんじゃないかな?助けたからにはそのくらい……」
目の前の人が私に迫ってくるような気がした。この人はあの男とグルで、また私を──怖い怖い怖い怖い!
「こ、来ないで!来ないでよぅ」
私は座り込んで、恐怖のあまり失禁してしまった。
「え?ご、ごめん!ど、どうしよう!」
目の前の人が慌て出す。私をまた虐めるのではなかったのだろうか。
「と、とりあえずお風呂入ってきたら?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!許して下さい!なんでもしますから!」
私がやらかした物を掃除させてしまっている。掃除してやったという事実を口実にまた私を嬲ったりするんだ。
私は懇願するように許しを乞う。
「べ、別にいいよ、私が悪い部分もあったんだし。お風呂入ってきな?着替えの用意はして置くから」
「わ、わかりました。ありがとうございます」
取りあえず指示に従っておこう。
それから私はお風呂の場所を訊いて、そこへ向かった。
◼
私は身体を隅々まで洗い、湯に身を沈める。何年ぶりだろうか、お風呂に入るのは。
私、相当臭かったのではないだろうか。だから執拗にお風呂に行くように勧めたのか。
「お兄ちゃんに会いたいな」
もとより叶わない願いだと分かっているけれど。
これ以上、湯に浸かっているとのぼせると思い、お風呂から上がる。
用意してくれていた服に着替え、元いた部屋に戻る。
◼
「え、えーと。単刀直入に訊くけど、なんで迷宮の
中に囚われていていたの?」
ダンジョンではなかったのか。
私は、迷宮に囚われた経緯を話し、囚われている時に行われたことを泣きながら話した。
「話してくれてありがとう」
女の人はただそれだけ言って、私を抱きしめた。
なんだか懐かしい匂いがした。
そして、何故だかとても安心感があった。
私は啼泣した。今まで独りで抱えていた物を誰かに知ってもらう、それだけで胸のつかえがとれたような気がした。
◼
十分ほど経って、少し落ち着いて来た。
「ありがとうございます。そういえば貴女の名前は?」
「え?」
何かおかしなことを言っただろうか?
「……やっぱりか。私は雪華心音。日本から来たの」
「心音さんですか。宜しくお願いします。もしかして何処かで会ったことありますか?」
既視感がある。
私が殺される前、兄と私と……誰だろうで遊んでいたような……。思い出せない。もしかして心音さんだろうか。
「私が殺される前、いつも三人で遊んでいたのはもしかして心音さんですか?」
……そうならば、私と心音さんは恋敵になる訳か。
小さい頃、好きな人が同じってことで同盟やらなにやら組んだ覚えがある。
「え?殺されたって……?事故じゃなかったの?紫苑からそう聞いたんだけど。……ごめん、訊いちゃいけない事だったかな」
「いや、別にいいですよ。もう終わった事ですし。私は両親に殺されたんですよ、多分、お兄ちゃんも世間体を気にして言えなかったんじゃないでしょうか……というかお兄ちゃんはどうしていましたか?」
正直心配だ。イジメられても抵抗すらしなさそうだし、私がいないと引き篭ってそうだし。
「旅に出ちゃったよ、強くなって帰ってくるって」
……えーと、話が掴めないな。外国にでも行くのかな?
「あの、ね?紫苑もこっちの世界に来てるんだよ」
やだなぁ、そういう嘘には騙されませんよ?
心音さんをみると神妙な表情でこちらを見ている。
「嘘、じゃあないですよね?」
「ほんとだよ、早く会えるといいね」
──お兄ちゃんに会える!中性的な顔付きだったけどカッコよくなってるかな?素からカッコよかったけど。
思わず口元が緩む、仕方がないじゃないか。もう会えないと思っていた好きな人に会えるのだから。
神妙な顔つき→神妙な表情
編集しました、申し訳ございません。