7話 勇者
6話を先に読んでもらわないと、内容が少しよく分からないかもです。
前半はサービス?回です。
紫苑に助けられて迷宮五十階層から帰ってきて今、私は王女とお風呂に入っている。
この国にも湯舟に入る習慣はあるらしいが、実際に使うのは貴族が多いとのこと。
「あ、あの……ノア王女、なぜ、私なんかと一緒に?」
「そちらの世界でいう、裸の付き合いってやつですかね、それと少し確かめたいことが……」
「確かめたいことって……ひゃう!?や、やめてください!ぁんっ」
「ど、どうしたらこんなに胸が豊かになるのでしょうか……あぁ、気持ちいいですね」
ノア王女は私の胸を揉みながら自分の胸を見比べ、ブツブツ何かを言っている。
「そ、それ以上はほんとに!はぁ、はぁ。な、何だったんですか!うぅ……私の初めてがぁ……」
「何やら落ち込んでいる様だったので慰めてあげようかと、」
慰めるって、慰める行為の方ですか!?自分でではないけれど。
「お気遣いいただいてありがとうございます」
「そんな固くならなくていいって言ってるのに……胸は柔らかいんだけどな」
「む、胸は関係ないですっ!」
そんなこんなでお風呂から上がり、部屋に戻ってからお風呂での出来事の相手を紫苑にすり替えて一人、悶々とするのであった。
◼
翌朝。
澄み渡る青空の下私達は二人一組で魔法の練習をしている。
「雷撃!」
「防御壁!」
私が攻撃魔法を放ち、秋人君がひたすらそれを防御するということを今やっている。
二時間ほど経ち、MP残量が減ってきたので魔法の練習はこれで終わりにする。
因みに、MPが減少すると倦怠感を覚えるのでMP残量を0にはしない。
私の今のステータスは、
雪華 心音
Lv.65/100
HP 28000/28000
MP 1800/12092
ATK 30000
DEF 29000
AGL 42000
SKILL 「転移者」「回復特化」「勇者の光」
「回復特化」・・・自分、又は他者のHP、傷を癒す魔法を使用した際の効果が5倍になる。
「勇者の光」・・・全系統の魔法の威力が10%上昇する。
「どうだ?レベル上がったか?」
「ううん、まだ全然」
私と秋人君はステータスの共有をしている。一緒に戦う仲間だからだ。
この世界の経験値はモンスターを倒すことで獲得出来るが、魔法の使用やトレーニングなどで次レベルアップ時に上昇する幅が大きくすることができる。
なので、何もしないでモンスターに挑みレベルアップする人とトレーニングに励んでからレベルアップする人とでは歴然とした差が生まれる。
「紫苑かっこよかったな、ドラゴン相手に勝っちゃうなんて。私達より強いんだから帰ってくればいいのに」
「まあ、あいつも男だからな。戻って来たくても戻って来れないんだろうよ」
「気にしなくていいのに……」
はぁ、とため息をつく。
「どうかなさったのですか?心音様」
そこにノア王女がやって来た。
「い、いや、な、なんでもないで、すよ?」
紫苑のことはまだ誰にも話していない。隠さなければ。
「なにか私に隠し事でもしているのですかね?」
マズイ!話を逸らさなければ。
「もうすぐお昼ご飯ですよね!先に行ってますね!」
◼
午後は迷宮に潜ってレベル上げだ。
私たちは三十階層でレベル上げをしていた。そこで私は足下の石につまづいて岩肌の壁に寄りかかると、いや、寄りかかれなかった。
「いてててて、何ここ?壁が透明になってる!」
目前の敵を秋人君が全て倒してからこっちに駆け寄ってくる。
「なんだ?隠し扉か?」
「と、とりあえず先に進んでみようか」
不良三人に入り口のところを護らせ、隠し扉の中へ進む。
奥に進めば進むほど濃くなる血の匂い。
「ここが一番奥のようだ」
「ん?こっちにまだ少し道が……」
突き当たりを右に道がまだ続いていた。
「うっ……更に血の匂いが濃くなっ……?」
ビチャリ。
足下を見るとそこには血溜まりが。
「きゃあああああぁあぁっ!」
思わず悲鳴を上げてしまった。
「どうした!?心音!」
慌てて秋人君が声をかけてくる。
「血……血が……」
私は恐怖のあまり、足が竦み地べたに座り込んでしまった。
その時、秋人君のでもない声が聞こえた。しかも物凄く何かに焦った声で。
「冒険者の人!早く逃げて!!」
私は声の主を見つけた。そこで見たのはあまりにも不自然な光景だった。
鎖で繋がれた声の主の少女の周りに血が散乱しているのにも関わらず、その少女の体には一切の傷が見当たらなかった。
いや、私はこの光景を知っている。
これは出血し、外部の物にその血が接触した際に回復魔法を使った形跡だ。
回復魔法を使うと傷口は癒えるが、傷口から出血した血などは消えないで残るというものだ。
「早く逃げて!!」
「分かった!あなたも!」
私は鎖を外し、その少女を連れ出した。
──それが「あの」出来事の最初の原因だったのだろうか。それでも私はこの事を後悔しないだろう。
◼
城の宿舎。
裸だった少女に上着を着せて走って帰ってきた。
今は、私の部屋に連れてきている。
「あなた、詩織ちゃんだよね?」
紫苑の三年前に亡くなった妹だ。そのころだっただろうか。紫苑が人を避け始めたのは。
閑話休題。
「ひぃ!……私は……私は?私は、誰?あなたは私のこと知っているの?」
「ごめんね、怖がらせちゃったかな?人違いかも知れないけどね、うーん。じゃあお兄ちゃんのことは覚えてる?」
「し、紫苑のことですか?」
「そうだよ!やっぱり詩織ちゃんだよ!」
私がそう言うと、詩織ちゃんは安心したのか泣き始めてしまった。一頻り泣くとそのまま寝てしまった。何があったのか訊くのは起きてからにしよう。
勇者サイドの話が何話か続きそうです。