94話 そこに戻れ
94話 「そこに戻れ」
「嫌だ。」
皆が教室から出てしばらく経ったあと、雨璃は窓から飛び降りようとしていた。
「何をするつもりなんだ?」
空乃は雨璃の服を掴んで離さない。
「咲を殺せない。咲がいなかったら私はここにいないし、アンタらとも深く関わっていなかった。だから絶対に殺せない。」
「はぁ……。そう言うと思ったよ。」
ポケットから小さな紙を出した。
「これは困った時に使えよ。」
「困った時に?」
「最終手段だってこと。」
ちらっと覗くと意味のわからない字が見えた。
【けりわたきぐちーれるい】
「じゃあさよなら」
離された雨璃はどこかへ消えていった。
「栗山桃と鎌倉夏菜ペアは例の神社に戻ってタブレットに戻り指定場所に来てね。」
「はっはい!」
別に同い年なんだしそんな答え方しなくても……と密かに思いながら
私達は目的地に向かう。
「雨璃?」
神社に着いたら彼女がタブレットを持っていた。
「これ使うんでしょ?ほい、」
「わぁっ!」
投げられたタブレットに私は吸い込まれた。
キャッチした夏菜は慌ててタブレットを起動する。
「雨璃は何をしようとしてるの?」
「もう今からじゃ何もできないよ。」
「じゃあ一体?!」
ヅーヅー……『夏菜?』
「桃!これで指定された場所に行けるね!」
『雨璃はいいのか?』
「あっ……」
「勝手に行けば?」
私達は従うことにした。
「雨璃はやっぱり羽場咲の事が好きなんだね。」
『何故そう思ったの?』
「あの寂しそうな顔がそういう事なのかなと思っただけ。」
『そうか。』
じゃあ夏菜は私のことが好きなのだろうか。




