87話 荒れ果てた神社
87話 「荒れ果てた神社」
3月になっても2月に降った雪が溶けそうにない。
あれから鎌倉夏菜は来なかった。
私はいつも通り常連さんの相手をしていたが暇で仕方がなかった。
まぁ私はどうせここから出られないんだし……
「大変だ!みんな逃げろ!」
ん?
「タブレットはどうします?」
「そんなもの放っておけ!」
ナニナニ?なんで神社の人が慌ててんの?
数分後、視界が真っ暗になった。
「はぁ!?何!?電源切れた?いや……これは……」
タブレットが地面にうつ伏せになっているから何も見えないだけで、電源は切られていない。
じゃあ一体何が……
「くり……山……桃!!」
地面から拾い上げられたから目の前がぱっと明るくなった。
気づけばボロボロになった刀が見えていた。
「刀が喋った?へ?嘘でしょ!?」
「嘘……じゃ……ない。」
「はっ?アンタ何者?」
「私は……雨璃と……言う。もう……時間が無い……。世界が滅びたくなければ……神社の主よ、私をもう一度……人間にして……やり直させてくれ!」
「ごめん、長くてよくわからなかったけど。つまりあなたを人間にしろってこと?」
「そう……だ。できるだろう?」
「いやいやいやいや、無理だって。私はただの喋るデータ。それ以外は何もできないポンコツなの!それに今何が起こってるか説明しなさいよ!」
「う……。今私が……ここに……逃れたことにより……竜巻がおこった。それで神社が荒れたんだ……。人間共は逃げたがな。」
「えっ……あっほんとだ。」
周りを見渡すと壊れた建物の破片が散らばっていた。
「で、私は本当にあなたを人間にできるの?」
「不死身の……幼女に……聞いた。お前なら……できると。」
「信じ難い話ね……。んー……」
「頼む。この通りだ!」
「あなたが私を人間にしてくれるならできるかもしれない。」
「??」
「私が人間になればいろいろ能力を使えることができるっていうこと。」
「私がお前を人間に?そんなこと……」
「私の情報ではその刀は新たな人間を生み出す力を持ってるみたいだけど?」
「そうなのか。では……試してみよう。」
雨璃はスパッとタブレットを切った。
「風だ。空気だ。」
私は人間になれた。
「じゃああなたを人間にするわよ。」
「う、うん。」
私は刀を掴んで光を放った。
すると刀は服を着た幼い少女に変わった。
「あなたはこれから小学五年生の少女。家への道をインプットしといたからそこに行きなさい。」
「ありがとう。感謝する。」
「私もよ、あっあと。」
「何だ?」
「羽場咲とは付き合わないこと。付き合ったら世界が滅ぶ。」




