79話 オレンジのアイスクリーム
79話 「オレンジのアイスクリーム」
2人の嘘を聞いた私達3人はじっとするしかなかった。
彼女達はこの時間軸の事情を知っている。しかし、聞いたからどうとでもなる話じゃない。
どうすればいいんだ……。
あ……ありあ?
「ん?」
「どれがいいんだい?」
「へ?」
ある夏の日のこと。
母様と姉の京子様で「カラフルアイスクリーム」に来ていた。
母様のサラサラとした緑色の髪が揺れる。
「決められないのなら私が選ぼう。」
「い、いいです!私が選ぶ……です。」
「そう。」
店名の通りカラフルだった。
食べたことないからな……。
はぁ……適当に目を瞑って選ぼう。
えい!
「オレンジ?」
「お前さんの髪色に似ているな。これでいいのか?」
「う……はい。」
味はまぁまぁだった。
でも、オレンジという色が忘れられなかった。
「有亜?」
「はっ!真理……さん?」
「真理でいいよ。で、どうかした?」
「少し思い出を……ね。」
「そう。」
真理は少しため息をついた。
「この時間軸の東雲有亜と鎌倉夏菜、外で誰かが来ないか見張ってるけど栗山桃や羽場咲に勝てるのかしら?」
「うむ……。別の時間軸の鎌倉夏菜は寝ちゃってるしここからは動けないし……。」
私もため息をついた。
「ねぇ、有亜?」
「何?真理。」
「その……ずっとマフラーをしてる理由を教えて。」
「それがね、母親に無理やり着けさせられてるからわからないの。外せないし。」
「外せないの?!え?じゃあお風呂とかどうしてんの!?」
「そのまま入ってるよ。」
「嘘だろ……。」
愕然としている真理の横で寝ていた鎌倉夏菜がゆっくりと起き上がる。
「昔流行ってたよ。」
「何が?」
私は彼女の顔を真剣に見る。
「あなたの場合マフラーだけど、昔、能力者が一つの物に力を宿すのが流行ってね。その物を大事に身につけると運が上がるんだよ。そして、それを身から離す時能力が使えるようになるんだってさ。あなたのマフラーが何なのかはわからないけど。」
「へぇ……だから母様は絶対離すなって言ってたのか。それ以前に離せなかったけど。」
「有亜……。」
また沈黙が続いた。
だって何もできないんだもの……。
いや、
「マフラー使ってみるか。」
「マジで?」
「おー!」
「もうこれしかないからな。」
私はマフラーを引き剥がそうとした。
「大丈夫かな?脱げるかな?」
「大丈夫。それしか今は頼れないからマジで頼む。」
「大丈夫だよ。それに頼るしかないんだから頼むよ。」
「アハハハハハ……。ええい!とっとと能力使わんかい!」
マフラーはするりと私の首から離れた。
ボンッ
「タブレット?」
画面がぱっと映った。
「3人とも、はじめまして。」
オレンジと白色が混ざった髪色の少女がそこにいた。




