73話 キーパーソン
私は憧れていた、強きものに。
しかし今はもう普通でいたい。
返してよ。私の日常。
73話 「キーパーソン」
「マフラー女……東雲有亜。」
「お久しぶりというべきかしら」
私は手から紙を出した。
「これ、あなたから奪ってたものよ。返すわ。」
栗山桃に渡そうとすると拒絶された。
「いらないわ。捨てるなり燃やすなり好きにして。」
「そう。」
私は手の中に再びしまった。
「あなた達は何をしているの?」
多分、ボスが誰か探ってるんでしょうけど。
「アイデアを出しあってるの。」
「アイデア?」
「んー……簡潔に言うとボスは誰かって感じ?」
やっぱり。
「マフラーさ……有亜さんは一体何をしにここへ?」
「教えてほしい?」
「まぁ……はい。」
「私も教えてほしい!」
「じゃあ帰ってちょうだい。」
『えー』
「正直あなた達がいると邪魔なのよね。だから、はやくはやく。」
「ちぇっ」
栗山は舌打ちを何回もしながら出ていったが、鎌倉はしばらく立ち尽くしていた。
「どうしたの?出ていかないの?」
「少し……思い出したことがある。」
「へぇ」
「『アリスのアリス』って本。」
アリスのアリスは私も読んだことがある。
確か誰かに勧められて……はっ!
「栗山桃!!」
「あなたも気づいたみたいだね。栗山桃はまさにキーパーソンってとこかな。」
手を振って去っていった彼女の背中を掴みかけてやめた。
「今はまずあの人に会わないと。」
私はベンチの上に立ってあたりを見渡した。
「フフッ」
「わっ!」
足を滑らせて落ちてしまった。
「京子様!?」
「……」
京子様はベンチの背もたれに腰掛けて足を組み長い髪をさらっとかきあげた。
「久しぶり。元気?」
「京子様……。ずっと探していました。」
「待たせてごめんなさい。あら?あの緑ツインテは?」
「母様ならどこにもいませんが。」
「そう?いた気がするんだけど……」
「京子様。」
「何かしら?」
「裏ボスはわかりましたか?」
「えぇ。」
「ならやっと私!」
「ただいろいろ無理な事があってね。」
「無理な事?」
「そのうち必ずわかるわ。」
「京子様?どこに……」
「友達と待ち合わせしてるの。じゃあ。」
「教えてくれないんですね……」
「……じゃあ1つ教えてあげる。」
「!?」
「裏ボスを作った裏ボスは栗山桃。」




