69話 信用
微かに聞こえる声……
「これでよかったの?」
「完全に殺してる?」
「うん。」
「ならそこで待ってて、迎えにいくから。」
「分かった。」
私は意識を失った。
69話「信用」
私は死んだのか……
でも目は開いていて、いい匂いがする。
コップに氷を入れる音、誰かが階段をのぼる音。
私は手を握ってみた。
「リボン?」
黒いリボンが見える。
五感はどうやらすべてはたらいているようだ。
「大丈夫か?」
少し大人びた声、しかし私を覆う影は小さい。
マリア……か?
「慌てて時間軸移動をしたものだからまだ傷が治っとらんようじゃ。動かない方がいい。」
「あっ……あのさ。私って殺されたんじゃ?」
「死ぬ前に時間軸移動をして傷を癒しまたこの時間軸に戻ってきた。もうあれから1日たってる。」
「1日も!?スノウは!?」
「あやつは追って来ていない。でも、その内来るんじゃないのか?殺しに。」
「マリアは知ってたの?」
「ん?」
「スノウが私達を殺そうとしてたこと。」
「いや、殺されそうになるまで気づかなかったわ。」
「だよね。ははっ……」
スノウだけは、彼女は裏切らないと思ってたのに……
胸が苦しくなるけれど抑えることが出来ない。
本当に……馬鹿なんだ私は……
軽々しいから……こんなことになるんだ。
「信頼する時は命を捨てると思え。」
「へ?」
「今回の教訓、まぁ大袈裟な気もするがの。優しく言えば、信頼するということは命を預けるほど深刻なもの、だから慎重に考えよ、ということだ。」
「……」
「お前さんは私を信用するか?」
「う……うーん……」
「別に信用なんて信頼なんてしなくていい。裏切られた時に傷つくだけだからな。私も1人を傷つけた。」
「マリアは優しいよね。」
「そんなことを言うでない。私はクズの中のクズだ。」
「そう思えるだけでいいんだよ。私なんて自分のことばっかでさ……」
なんだか涙が出ていた。
マリアはハンカチで拭いてくれた。
「ここは栗山桃の家だ。」
「はい?」
栗山桃……?
あの休み時間に話しかけてくる……。
「今私達の存在を一時的に消してもらっている。」
「!!」
思わず飛び起きてしまった。
腰が痛い。
「あの娘はお前さんを信用したがっている。だからお前さんもあの娘を信用してあげてほしい。」
マリアは黒いリボンで髪をくくり、窓に足をかけた。
「また会おう。」
風のごとく消えていった。




