5話 忠告
私は毎朝あのふたりに会わないために誰よりも早く学校に来たつもりだったのだが、
私の席に見知らぬ人が座っていた。
5話 「忠告」
誰だあいつ。
窓の外を眺めていて全くこっちに気がつかない。
「あっ」
やっと気づいた……。このまま立ったままなのかと思ったが。
「待ってましたよー!先輩〜なかなか来ないからもう帰りそうでしたよー」
いや、これでも早く来た方だからな。
「1つ言いたいことがありまして、」
はいはい。
「果たし状をトイレに貼っていたはずなのですが、あなたが釣れなくてもうこの手段に走りました。てことで、あなたに言っておきますけど。」
「ちょっと待っ……」
「咲先輩は私のものですから。」
ドヤ顔で私の席の前に仁王立ちしている。
果たし状……トイレ……
「それだけなんで、じゃっ」
「待って」
私は教室から出ていこうとしたのを無理矢理止めた。
「あんた東雲有亜でしょ」
東雲家
この地域では結構有名らしく、毎年たくさんの人がこの家に集まりなにやら会議をしているだとか……
「あんたは東雲有亜。東雲家の次女。なんであんたなんかがこの平凡すぎる高校にいるか聞きたいところだけど、それよりもさっきのセリフ、聞き捨てならないわね。」
私は空いた席に座り、東雲は立っていた。
「咲って羽場咲のことでしょう?あの子があなたのものだって?いつ誰が決めたのよそんな事。」
恋人にすらなっていないくせに私は何を言ってるんだ。
「先輩にはわからない。これからもずっと……私の気持ちなんて。」
私の制服のリボンをつかみ耳元で彼女は囁いた。
「なっ」
「これは忠告。私が嫉妬しているからってことじゃなく、羽場咲には関わるな。それじゃあ」
今度こそ東雲は出ていった。
しばらく空を見上げ考えていた。
「羽場咲と関わるな」
それは私がトイレの手紙を見つけるまでに言っといてくれよ。
ため息をつくと、扉の方であのふたりが……いや、1人だった。
私を睨んでいる。まぁいろいろあったから仕方ないだろう。私は再び窓の外を眺めた。
「消えればいい。」
声が聞こえた気がした。




