208話 そして今日話し始める」
読者の皆様、いつもお読みいただきありがとうございます。
お待たせいたしました。
来年のどこかで更新すると宣言してから1年以上が経ち、ギリギリその来年中である今年の大晦日に更新という形となりました。長い間更新できず、申し訳ございませんでした。
これからの更新は不定期となります。2021年もよろしくお願いいたします。
208話 『そして今日、話始める。」』
「よく覚えてないんだ」
誰だ?お前は。
「また始めからやり直すことはできない。わかってるよね?」
だから何なんだよ。お前は!
「そりゃわからないよね。君は僕に会ったことがないのだから。」
長い長い廊下をずっと走っている。
街坂と月雲がこちらを向いた。
『どうなってるんですか先生、これ』
『月雲、私に聞かれても困る。まぁでも、道は合ってるはずなのにいつまで経っても着かないということは、校長が何か企んでいると言うことだろうけどな。』
「ちょっと!先生聞いてます?」
心で会話していたから街坂が話しかけてきたことに全く気づいていなかった。
「すまない……えっと、何だ?」
「いつになったら辿り着くんですか?!」
「いや、私にもよくわからない……」
街坂はため息をついてその場にしゃがみ込んだ。
「『壁の欠片』にも似たようなことが起こる話があったんですよ。兄姉っていうアイドルユニットのお話で、ある日兄貴が居なくなって、不安になった姉貴が探すんだけど、いつもの場所に行こうと思って歩いていた道がずっとずっと続いていて、兄貴が見つからなかったって話」
スマホをいじりながら不機嫌そうに語る街坂に月雲はある質問を投げかけた。
「その後、姉貴と兄貴って人達はどうなったの?」
「兄貴が……」
気になる答えは大きな声にかき消された。
「街坂ぁぁ!!そこの教師と女もだ!!俺は納得してねぇぞ!!」
彼は……ん?誰だ?
「園原じゃん。どうしたの?」
園原……うちのクラスの人間ではないのか?
「俺らがやろうと思ってた内容を先に採用するんじゃねぇよ!!今すぐ別のにしろや!!」
「それは無理だよ、もう決まったことなんだから」
「じゃあ俺が何としてでも止める!辞めさせてやる!!」
「園原にそんな権利はないでしょうに」
園原がこのまま「小演劇を辞めさせる」の一点張りなのは大体予想がつくから、私は心を読むことにした。
『千鶴に何としてでも止めろって言われたんだっ!どんな手を使ってでもやってやるんだ!!』
長島千鶴の知り合いなのか。
これを月雲に伝えて……
「どうせ千鶴でしょ?あの子相当根に持ってたみたいだからさ、皆勤賞取れなかったこと」
『なっ!』
街坂、やるなこいつ。
「……そこまでしなくてもどうせ劇は中止よ」
月雲は私の方を見て、次に街坂の方を見た。
「明日、大変なことが起こる……貴方達にとっては……ね」
街坂は園原の腕を引っ張って走っていった。
月雲はただ茫然と立っていた。
長い道はまだ続いているようだ。2人はギリギリ見えるところまでしか走っていない。私達はあの2人を追うべきだろう。
でも、月雲は動こうとしない。
「大丈夫か?」
私が近づこうとしたらいきなり動き出した。
物凄い速さで追いかけていく。
月雲に追いつく気力が私にはないので、ゆっくり歩いた。
道は果てしなく続く。
だんだんと眠たくなってきた。
遠くの方で月雲が街坂達を捕まえているのが見える。
早いな……
私は眠りについた。
「おはよーーーーーーーー!!早く起きなさーい!!」
やかましい声が聞こえる。これは校長か?
「うむ、月雲ちゃんも起きてよー??あっ和田さんもいたんだ?ほれほれ、近くに来てみなよ!」
「……」
月雲は目を擦りながら起き上がる、私もゆっくりと立ち上がった。
「和田……さん?」
「おはようございます。月雲さん。」
「今……何時?」
「朝の7時です」
「え?」
私も慌てて時計を見た。
日付も示している時計だ。今日が何の日か……
知りたくなかった。
「いよいよ文化祭が始まるんだよ!3人ともテンション上げて!!」
大変なことが……本当に起きてしまった。




