21話 二人だけの秘密
21話 「二人だけの秘密」
「あいつってまさかマリア?」
黙っていた雨璃さんは突然質問した。
「違います。あのクズ教師のことです。」
「あー。」
クズ教師、噂をさらに広めた張本人。
「公園で2人と分かれた後、ふらりと現れたんです。あいつはやっぱりという顔をして近寄ってきました。『やっぱり男だったんだ。』って言って笑っていました。あぁ、こいつには会いたくなかったなと常々思いましたよ。そしてあのクズ教師は帰っていきました。こう言って。『この地域にも噂は広めた。もう逃げられないからね。詐欺師さん。』幸い2人とはこの時から出会う事はなかったので安心しましたが、もう私自身耐えられなかったのでこの地域にも来る事は無くなりました。」
「それから高校ではどうなったのさ?」
「高校では女として過ごしていました。あのふたりは高2になりあなたと縁を切った次の朝で話すまでは私の嘘の噂を知らなかったようで。」
「えっと……それいつ?」
「あなたを押し倒した時です。」
「……!?そん時!?」
「あの時2人は青ざめて出ていきました。私がかつらをとっただけで。」
「じゃああの時、あのふたりに羽場咲人だったってことを示したってこと?」
「そういうことです。そしてあの朝先生に呼び出されたのは私が男子で女装趣味があるとあのふたりが勘違いして報告したからです」
「なるほどね……」
「いろいろ嘘をついてしまって申し訳ございません。」
「別にいいよ。あなたの秘密を私に話してくれたんだから。」
雨璃さんは笑っていた。
「私はあんたが友達で嬉しいよ。」
彼女の笑顔はあのふたりや金髪の少年よりも輝いていた。
「そんじゃこれは二人だけの秘密ってことで!」
「二人だけの……秘密。」
「あーもうこんな時間だね。帰るわ。」
「はい!ではまた明日!」
「へ?」
「え?明日から学校始まりますよ?」
雨璃さんはぽけーとしていた。
何か問題でもあったのでしょうか?
「いや待ってよ。私が家を出たのはいつだ?いつここについた?話してこんなに時間経つもんなの?え?え!?」
いつもより慌てていた。
そういえばこれは余談ですが、
私はあのマリアとあった日いつの間にか部屋に戻って朝ごはんを食べていて……
母がカレンダーをめくっていて……
「明日から夏休みね!」
とまだなんじゃないのって思った事はありましたね。
マリアと出会ったのは6月の末でしたから。




