202話 嫌いじゃないけど好きでもないなら嫌いと言って
202話 「嫌いじゃないけど好きでもないなら嫌いと言って」
黒い物体はどんどん大きくなっていく。
「お前ら……なんでそんなにマフラーが必要なんだ?マフラー女にあったことあんのかよ。」
「もちろん。そのマフラー女が今行方不明だから手かがりになると思ってこの子を捕まえたの。」
黒い物体のそばにいるその女の子はそう言って立ち去ろうとした。
「待ってください。」
女の子が振り返ると桜葉は窓から飛び降りた。
「桜葉!?」
黒い物体にしがみついた桜葉は菊野のマフラーに向かってよじ登っていく。
女の子が黙っているはずがない。
「誰か知らないけど……邪魔しないで!」
足で何回蹴られても桜葉はめげずについにマフラーを菊野から取り外した。
「お願いするよ!アイって人!」
桜葉が私に向かって投げたマフラーはタブレットに変わり、さらにアイになってこちらに飛んできた。
『大丈夫ですか?』
「いや、お前が大丈夫か?」
『はい……あの黒い物体……近づいてきていますね。』
「ヤバいって。今度こそ捕まる!!」
すでに菊野と桜葉は見えなくなっていた。
本当にどうしよう。
試しに雷をうってみるか。
『ダメです。効きません。』
「お前……」
いろいろ聞きたいことがあったがそれどころではない。
あ、こいつをここから消せばいいのでは?
みんなが登校できないようにしたのだからこいつにだって効くはずだ。
『あの二人をどうするのですか?』
あーそれもそうだな。
って考えてるうちにもう飲み込まれそうなんだけど!!
「ん?まぶし……い?」
尻餅をついている私の前に立つアイは手に短冊を持っていた。
そこから光が出ているのだ。
黒い物体は次第に吸い込まれて無くなっていった。
女の子が呆然としている。
「何をしたの?あなた。」
『いま……あなたを認識中です。』
「とぼけないで答えてよ。」
『確認が終了しました。あなたは……』
「みんなマフさんを探してる!トレードマークだったマフラーも!マフさんのものを返して!どこにいるのか知ってるんじゃないの??ねぇ。」
『……あなたはマフさんという人になにかしてもらったのですか?』
「はぁ?」
『わけも分からないけど何となく探さないとって気持ちになってません?』
「何を……!」
『あなた達は何も分かってないんです。第1このマフラーは菊野歩、彼女のものです。そちらこそ邪魔をしないでください。』
ピシッと言い切ったアイは私を引っ張りあげ短冊を女の子に向けた。
『文化祭が終わって月雲家の件も終わればあなた達も分かってくるはずです。あと、月雲雷さんに危害を加えるつもりならこの短冊を破ります。どうなるかと言うと……』
「……分かった。」
女の子は割れた窓から飛び降りてどこかへ消えてしまった。
「それ……いいのか?」
『破れても修復すればここに入っているデータは消えません。燃やさない限り。』
「中でちゃんと生きてんのか?」
『ええ、タブレットと同じように。』
短冊には〈私が全てを守りたい〉と書いてあった。
その文字を見た途端、自分の情けなさに落胆した。
『またお手を……』
差し伸べられた手を掴まず、肩に力をかけて立ち上がった。
プライドが高くてわがままで誰も助けられない。
こんな奴に何ができるってんだ。
『大丈夫ですよ。あなたは捕まらなかったんだから。』
そうか、お前は心が読めるんだなと思いながら別の校舎に繋がる廊下を歩いていた。
小説更新を休ませていただきます。申し訳ございません。
来週こそ2話更新します。頑張ります。
追記 (11月17日)
結局頑張りませんでした。2話更新難しいです。ごめんなさい。




