201話 短冊
201話 「短冊」
私にそんな能力があるのかと言われるとないと答えるだろう。
今まで雷を使って邪魔なものを攻撃し続けてきた。親からも「人を操れる力」みたいなものがあなたにあるとも言われていない。
でも、この世界……この地域に生きている限りありえないこともありえてしまうのが現状だ。
私は桜葉が言うであろうことを大体予測できた。
そして、菊野のことがすごく好きだと言うことも証明された。
「雷さんは歩さんのことが好きだけど、歩さんは雷さんのことが嫌い。月雲家の件とか色々終わってしまったら彼女と一緒にいられる理由がなくなってしまう。だからせめて今だけでも誰にも邪魔されずに歩さんと過ごしたい……そんな思いから無意識に生徒を登校させないようにしている。という事では?」
その通りだ……間接的に私が菊野に告白したみたいになっているが……仕方ない。
「は?」
菊野から出た言葉は私の心を突き刺した。
「なんであんたが私の事好きになんのよ。あんたは私のことが嫌いで私をいじめてたんじゃないの?何があって心が変わるわけ?ピンのことは何だったの?」
次々と出てくる疑問に私は答えようとして答えられなかった。分からないのだ、好きになった理由が。いつの間にかあなたのことが気になってましたと言って果たして菊野に分かってもらえるだろうか?ピンを渡したのは何もわかってなかった頃だったからと言っても殴られるだけなのでは?
いろんなことが重なって、私を押し潰してくる。
表向きは恋を諦めているが、裏ではそれでも菊野に好きになって欲しいと思って自分が全く把握していない力を使ったりして……
考えてる間も菊野は思っていることをバンバン言ってくる。
「じゃあ、マフさんを消したのも……あんた?」
さらに何も言えなくなった。
違うんだ……多分。
「あ、それならもう私あんたと一緒に行動しないから。」
「ずっとしつこいから。罰よ。これは。」
「私のことは諦めて。というか気持ち悪い。」
「もう二度と視界に入ってこないで。」
昔菊野に対して言っていたことを思い出した。
もし、同じことを言われたら私は菊野のことが嫌いになる。
重い。暗闇に引きずり込まれていく。
もう、やめてくれ……
「黙ってないでなんか言いなさいよ!」
暗闇から必死に伸ばした手を菊野は握ってくれた。
「別に心の底から嫌いなら最初から一緒に居ないから。この件が終わっても文化祭とかいろんな行事で仲良くやってやるわよ。昔からしつこい性格なの知ってるでしょ?それに、マフさんのことは大好きだし、正直恋をするならそちらを選ぶよ。だからといってあんたのことを嫌いにならないから。好きでもないけど……。とにかく今は考えるべきことを優先しましょう。」
滅多に流さない涙がポロリポロリとこぼれていた。
遠くから笑って見ていた桜葉は近くにあった笹に目をやっていた。
なぜ桜葉は良かったんだろうか?
「今日は七夕だよね?」
『皆がもっと図書室に来てくれますように』と書かれた短冊を掲げる桜葉。
「そうだけど……まさか短冊に願い事を書いたら何か起こるって?」
「何もしないよりかはマシかと。ペンも紙もそこにあるし、書いてみない?」
今日が7月7日なのかと(ダジャレではない)疑いたくなる。
でもさっさと書かないと誰かが来てしまうかもしれない。
私達はペンを持って願いを書き出した。
2人が何を書いたのかは聞かなかったし見もしなかった。
ちなみに私は
『恋が成就しますように』と書いた。
この時初めて菊野への好意を認めたのだろう。
さて、これからどうするか。
外へ出ていったら誰かに捕まる。
しかし、ここにずっといる訳にも行かない。
迷ってグズグズしている間に向こうから来た。
図書室の窓ガラスを豪快に割って……
「ぎゃぁぁぁ!!」
ガラスを割った黒い物体はほかのやつも割っていく。
見たことない、映画みたいな光景だ。
いや、感心している場合では無い。
すぐ隣を見ると桜葉は吹き飛びそうな私を押さえてくれていた。
しかし、反対側を見るとそこに菊野はいなかった。
黒い物体に捕まってしまっていた。
「もういいよ。あなた達なんて。このマフラーがあればいいんだから。」
本当は更新する予定でしたが、お休みさせていただきます。
なるべく更新をしていきたいのですが、物語を整理するのに時間を要しているのでなかなか書けないことが多くなりました。
最後にちゃんとまとめられて終われるように頑張りますのでよろしくお願いします。ご迷惑をおかけし申し訳ございません。




